菅義偉の北方領土墓参団政府関係者等に対するロシア当局の衛星携帯没収抗議に見る不都合な情報の隠蔽

2018-07-24 11:40:07 | 政治

 【謝罪】 

 誤った情報の提供だったことを徹底周知するために再度謝罪文を載せることにしました。
 
 2018年7月16日付と2018年7月19日付の当ブログに、〈福岡県知事が7月5日19時00分に自衛隊に対して「人命救助及び物資輸送に係る災害派遣要請」を行い、引き続いて大分県知事が同7月5日19時30分に同じく自衛隊に対して「人命救助に係る災害派遣要請」を行っていることを2018年7月5日付け防衛省サイト、《九州北部における大雨に伴う人命救助等に係る災害派遣について(21時45分現在)》で記している。〉と書いたが、1年前2017年7月の北九州豪雨災害時の自衛隊派遣でした。

 誤った情報を与えたことを深く陳謝し、平成30年7月6日の防衛省西日本豪雨自衛隊災害派遣の記事に差し替えました。

 改めて深く陳謝します。  

 2018年7月22日、航空機による北方領土墓参団が国後島で入域手続きを行った際、ロシア側が政府関係者やマスコミ関係者らが持参していた衛星携帯電話を没収したこと、官房長官菅義偉が7月23日午前記者会見で記者からこのことを問われてロシア側に抗議したことを2018年7月23日付マスコミが伝えていたが、菅義偉が言う抗議に対するロシア側の反応を何も伝えていなかったから、この件に関する動画の遣り取りを見てみた。

 菅義偉の発言は最初はそれなりにはっきりと発音するが、最後の方になると声のトーンを下げてしまって、その多くがはっきりとは聞こえない発言の終え方をし、何度も聞き返さないと、言葉自体の聞き取りが遮られることになる。

 国会答弁も似たり寄ったりで、最後の一音まで明確に発音することなく、発言を端折るような不明確な話し方となる。

 記者や議場の各議員の背後にいる国民の存在まで意識することはなく、眼の前にいる記者や議員にのみ伝われば良しとの姿勢が最後まで明確に伝えようという意思を削ぐ結果を招いているに違いない。

 常に国民を意識していないから、このようなことが起きる。つまり「国民」という言葉を使う必要に迫られたときだけ国民を意識する、本質は不誠実な性格だということなのだろう。政治家として何様と思っているのかも知れない。

 《内閣官房 菅義偉2018年7月23日午前中記者会見》

 菅義偉(冒頭発言ナシ)「えー、どうぞ」

 記者「朝日新聞の古田です。昨日、北方領土の墓参に訪れた政府関係者とマスコミの衛星電話をロシア当局が没収したとの一部報道があります。事実関係と過去の同じ事例があったのかどうか、教えてください」

 菅義偉「誠に遺憾なことでありますが、えー、現地当局により政府同行者及び同プレスの衛星携帯が没収されたことは事実であります。
過去の個別事案について網羅することは困難でありますけども、現時点で確認した範囲では過去にイリジウム携帯などの電子機器類がロシア側当局によって没収されたことはあったということです。

 当然ながら我が国としては、その際にも抗議を行っております」

 記者「(朝日新聞の古田?)今回のようなビザなし渡航というのはですね、日露当局の主権を先ず棚上げした形で実施しております。そうした中でロシアの国内法を適用されたことへの受け止めと、日本政府として外交上どうした措置を採っていくかについておっしゃってください」

 菅義偉「先ず、ご質問どおり今回の航空機を利用した墓参は(・・・・・?)を利用して実施されております。四島に関する我が国の法的立場については何ら変わるものではありません。

 今般の事案の発生を受け、ロシア側に対しては外交ルートを通じて、『こうした行為は我が国の法的立場に鑑み受け入れられず遺憾である』。この申し入れを行い、抗議をすると共に没収された衛星携帯の早期返却を求めております」

 記者「2点確認差させてください。1点目は最初に紹介があった過去の事例というのはいつ頃起きたものなのかということと、後は抗議した日付等はいつ頃なんでしょうか」

 菅義偉「過去の件については(・・・・・)お聞き頂きたいというふうに思います。22日に抗議とありますけども、在ロシア日本大使館参事官レベルから同外務省に対して、また在サハリン州(?)のユジノサハリンスク総領事館から同地にあるロシア側外交代表部に対して抗議を行いました」

 日本政府の抗議に対するロシア側の反応は何も伝えていない。当初の反応の多くが「抗議内容を本国政府に伝える」というもので、回答までに時間がかかる場合が多いが、これもロシア側の反応の一つであって、抗議とそれに対する回答によって一つの情報としての纏まりを持つのだから、抗議したことだけを伝えるのは情報伝達の意味を成さない。

 特に過去のロシア当局によるイリジウム携帯などの電子機器類の没収は既に抗議に対する回答を得ているはずだから、今回の抗議に対する回答の参考例にならないとも限らないことを考えると、それを伝えないということは情報隠蔽に相当する

記者が「今回のようなビザなし渡航というのはですね、日露当局の主権を先ず棚上げした形で実施しております。そうした中でロシアの国内法を適用されたことへの受け止め」をと聞いたのに対して菅義偉は「四島に関する我が国の法的立場については何ら変わるものではありません」と答えている。

 「四島に関する我が国の法的立場」とは、断るまでもなく、「北方領土は歴史的にも国際法上も日本固有の領土」であり、いわば主権は日本国に所属するという立場を指す。

 だが、現実にはロシアは北方四島はロシアの主権下にあるロシアの領土であることを主張していることになる国内法を適用した。と言うことは、ビザなし交流は「我が国固有の領土」という日本の立場をもとに1992年から北方四島の元島民とロシア人島民らの墓参やその他の交流が始まっているということだが、このような交流に限って相手国の主権行為であるビザ発行を必要としない形でのロシアの主権の棚上げであることをロシアは示したことになる。

 いわばロシアが衛星携帯没収という手を使ってロシアの主権の棚上げはビザなし交流事業に限定した措置であって、北方四島そのものの主権は当方にありと主張したことは日本にとっては不都合な事実となる。そして過去に於いてもイリジウム携帯などの電子機器類没収で同じことを主張した。

 当然、その没収に向けた日本政府の抗議への回答にしても、日本にとって不都合な事実――都合の良い事実ではなかったということであるはずだ。都合の良い事実であるなら、再び没収という手を使って主権を主張することはない。

 このことはロシア側が北方四島はロシア領土であること、ロシアに主権があることを一貫して主張していることと符合する。

 今回の衛星携帯の没収を使った主権の主張は2018年7月18日に成立した「改正北方領土問題解決促進特別措置法」(正式名「北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案」)に関係することはその内容と成立に対するロシア側の反応からも窺うことができる。

 改正内容は北方四島に於ける特定共同経済活動の円滑な実施のための環境整備等を謳い、2019年4月1日からの施行となっていて、領土権や返還については触れていないが、改正前の法律第1条目的は、〈この法律は、北方領土が我が国固有の領土であるにもかかわらず、北方領土問題が今なお未解決である現在の状況並びにこれに起因して北方地域元居住者及び北方領土隣接地域が置かれている特殊な事情にかんがみ、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題についての国民世論の啓発、交流等事業の推進、北方地域元居住者に対する援護等の措置の充実並びに北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する計画の策定及びその実施の推進を図る等のために必要な特別の措置を定めることにより、北方領土問題及びこれに関連する諸問題の解決の促進を図り、ひいては北方領土の早期返還を実現して我が国とロシア連邦との間の平和条約を締結し、両国の友好関係を真に安定した基礎の上に発展させることに資することを目的とする。〉(文飾は当方)云々と、北方四島は日本が主権を有する日本固有の領土であり、早期返還の実現を目指すことを謳っている。

 いわばどう改正しようと、法律全体を見るとロシアが北方四島はロシア領だとしているのに対して「北方領土は歴史的にも国際法上も日本固有の領土である」という立場を取り、その早期返還を策していることになる。

 7月18日成立翌日の7月19日、ロシア外務省はは日ロ両国が北方領土で計画している共同経済活動の実現に向けて信頼醸成を図るとの合意に反し、同計画を進める上で「重大な障害」になると批判、同法が北方領土を日本固有の領土と規定し、「早期返還」を訴えていることを問題視し、平和条約締結問題の交渉に、受け入れられない選択肢を押し付ける試みだと断じる声明を発表したと、2018年7月20日付「沖縄タイムス」は早速のロシア側の反応を伝えている。

 声明は「日ロ関係が劇的に発展している今、なぜ法改正を行う必要があったのか理解できない」という指摘もしていると書いている。

 そこで早速ロシア側は衛星携帯没収という挙に出て、北方四島の主権がロシア側にあることを改めて知らしめたと言うことではないだろうか。

 日本政府にとっての最大の不都合はロシア側が北方四島を返還する気がないという事実である。その不都合な事実に関わる情報隠蔽を心掛ける余り、北方四島に関係する他の細々とした不都合な事実をも情報隠蔽することになる。

 目的は安倍晋三の対ロシア外交が順調に進んでいると見せかけるためである。

 まるで失恋がはっきりした男が相手の女との関係は続いているかのように周囲に思わせるようにである。

 情報はそれが都合・不都合に関係なく、誠意を持って正直に公表しない場合、内政にしても外交にしても国民にどこかでウソ・誤魔化しを働いていることになる。

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