一般的には心がけの悪い行いをすると、悪い行いをした本人がその報いを受けると言われる。それを以って「自業自得だ」とか、「因果応報だ」とか、当然視される。
当然視は悪い行いに対して「自業自得」、あるいは「因果応報」が人間営為に於ける社会的道徳律となっていることを意味しているはずだ。
社会的道徳律になっていなければ、「自業自得」や「因果応報」といった言葉は生まれない。
安土桃山時代に盗賊の首長として活躍したとされる石川五右衛門は実在の人物か架空の人物か説が分かれるらしいが、時代末期に京都三条河原で釜茹での刑に処せられた例は実在・架空いずれであっても、あるいは義賊であるなしに関わらず、「自業自得」、あるいは「因果応報」の社会的道徳律を纏っていることになる。
江戸時代中期以降義賊として活躍したとされる実在人物鼠小僧次郎吉は最終的には役人に捕らえられて、市中引き回しの上、小塚原刑場で斬首され、晒し首の刑を受けている歴史的事実にしても、「自業自得」、あるいは「因果応報」の社会的道徳律の例に洩れないてはいない。
最近は耳にすることはなくなったが、親がかつて子どもを叱って正直であることを求めたセリフ、「ウソをつくと閻魔様に舌を抜かれるよ」も、「自業自得」、あるいは「因果応報」の社会的道徳律を前以って回避したい親心からの注意であろう。
だが、現実にはウソをいくらついても、「自業自得」や「因果応報」を受けずに、いわば舌を抜かれることもなく、ウソを通用させて、ウソの数々から利益を受けている人間も数多く存在する。「憎まれっ子、世に憚る」と言うことなのだろう。
当事者が「自業自得」にも、「因果応報」にも見舞われずに世に憚ることも一つの社会的道徳律となっていることを意味する。当事者にとってはこれを正の社会的公式とすると、「自業自得」や「因果応報」の形を取るそれは当事者に対しての負の社会的道徳律とすることができる。
直接の死者74名を出した広島土砂災害時の2014年8月20日朝の7時半過ぎから、政府危機管理の先頭に立たなければならない安倍晋三は自身の別荘近くのゴルフ場でゴルフを開始し、死者が発生してもなおゴルフを続け、午前9時19分になってやっとゴルフを中止している。
安倍晋三の一国の首相として負っている「国民の命と財産を守る」危機管理に対する怠慢、想像力の欠如はいつまでも記憶して置くために何度も書かなければならない。
翌年の20154月25日放送のTBS「報道特集」 は広島土砂災害時の広島県警無線交信記録を入手、公表している。それによると、住民からの通報が相次いだのは1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降った午前3時頃からで、当時の勤務員が全員で対応に当たったが、入電数が物凄く多くて、全てに対応し切れない状況だったという。
番組は入手した警察無線を全て文字に起こして時間帯別に多く使われている言葉を抽出、その通報傾向から緊急状況の切迫化への推移を割り出している。
午前3時台は、「増水」、「氾濫」、午前4時台は、「土砂崩れ」、「土石流」、午前5時台は、「人命」、「危険」、「倒壊」の言葉が多く占めたと言う。
そして午前5時半には、人命が危険に及んでいる事案や土砂崩れの発生と家ごと流されている通報、生き埋めの可能性もあるとの通報が寄せられたと伝えている。
広島市消防局はこういったことを裏付ける発表を行っている。8月20日午前3時20分頃の土砂崩れで土砂に埋まった子ども2人のうち1人が午前5時15分頃心肺停止の状態で発見されたと発表。
この発表に基づいた2014年8月20日5時56分発信の「NHK NEWS WEB」記事では、裏山が崩れて土砂が住宅に流れ込み、子ども2人が生き埋めになったと見て消防が捜索するニュースを伝えている。
その後その内の一人が心肺停止で発見されたとのニュースを6時25分の発信で報じている。ブログに何度も書いているが、水を大量に含んだ土砂に直接生き埋めになった場合、顔を水や土砂に塞がれて窒息状態を強いられ、例え心肺停止の発見であっても、それが5分も経過していれば、蘇生の可能性はゼロに等しい状況となる。
このときの豪雨災害に対応すべく首相官邸危機管理センターに設置し、情報収集に当たっていた情報連絡室は広島県警や広島市消防局の無線交信記録からの情報収集やネットニュースからの情報招集を行い、重要と判断した情報はゴルフ場の安倍晋三に逐一報告しなければ、何か災害が発生するたびに「被害発生に備えて政府一丸となって情報収集に努めてまいります」とか、被害発生後、「被害の状況を把握すべく政府一丸となって情報収集に当たっています」といった言葉はウソになる。
ところが、8月20日の午前3時4時頃から豪雨を受けて増水、氾濫、土砂崩れ、土石流の通報が広島県警や広島市消防局に伝えられていながら、それが国民の生命の危険への想像力、財産の損壊への想像力を働かせることができずにゴルフを2時間近くも続けていた。
防災担当相の古屋圭司は、「最終的に死亡者が出た8時37分とか8分に総理にも連絡をして、その時点ではこちらに帰る支度をしてます」とウソをついてまでして安倍晋三のゴルフに問題はないとした。
要するに安倍晋三は「死者が出たら連絡してくれ。ゴルフを切り上げるから」と決めていたことになる。国家及び国民の危機管理を預かる安倍晋三のこの心がけの悪さは如何ともし難いが、このような心掛けの悪い行いに対して人間営為に於ける負の社会的道徳律となっている安倍晋三自身に及ぶべき「自業自得」、あるいは「因果応報」は正の社会的公式に変えて世に憚り、その代わりに被災者だけがバカを見ている。
同じことは西日本豪雨での安倍晋三の行動にも現れている。2018年7月5日に気象庁が記者会見で記録的な大雨と土砂災害や河川の氾濫への厳重な警戒を呼びかけていたことに対して安倍晋三は毎年のように発生している多大な人命の犠牲を伴う豪雨災害と同規模の自然災害を「国民の命と財産を守る」観点から想定、政府危機管理の先頭に立たなければならなかったが、既に死者が出ているにも関わらず、同8月5日夜、「赤坂自民亭」で飲酒していた。
この「国民の命と財産」に対する想像力を欠如させて飲酒に励む心掛けの悪い行いは負の社会的道徳律である「自業自得」や「因果応報」という形で安倍晋三に鉄槌が下って然るべきだが、悪運強く正の社会的道徳律に変えて、さしたる影響を受けないでいて、やはりバカを見たのは被災者だけとなっている。
財務省の森友学園に対する違法な国有地格安売却は安倍昭恵を介した安倍晋三忖度の疑惑を生み、加計学園獣医学部認可も安倍晋三による政治関与の疑惑を生じせしめ、状況証拠は限りなくクロそのものとなっている。
心掛けが悪いからこそ、こういった疑惑を生み出しているのであって、当然、「自業自得」や「因果応報」を受けるべきだが、正の社会的道徳律に変えてカエルの面にションベンで、首相の座に居座ることができている。
2018年5月29日に2012年12月の再登板以降の連続在任日数が1981日を記録、歴代3位につけただけではなく、次の総裁選では既に党内で6割の支持を集め、後3年間在任の勢いを見せていることは自身の心掛けの悪い行いを「自業自得」や「因果応報」といった正の社会的道徳律に向かわせることなく、全て正の社会的道徳律に転換させていることを示している。
勿論、本人の意志の力がそうさせているのではなく、悪運の強さがそうさせている。在任日数で言うと、こういったことの割の合わなさを受けるのは次期総裁選挙で対抗馬と目されている石破茂で、その割の合わなさを一身に引き受けることになるだろう。
そしてそれ以上二割の合わなさ、バカを見るのは国民であろう。アベノミクスのメッキがそろそろ剥がれるだろうからである。
安倍晋三の場合はその悪運の強さから、自身の心がけの悪い行いからの「自業自得」や「因果応報」はそのような行いに無関係な他者に全てお鉢が回るようにできているようだ。