2018年7月17日参議院内閣委員会 辰巳孝太郎「日本共産党の辰巳孝太郎でございます。西日本を中心とした豪雨災害に於いて犠牲者は200名を超えました。今も多数の行方不明者も残っています。 この連休中にもですね、この暑さで被災地が捜索(?)などが本当に大変であります。家屋、河川、山林、農産物の被害は甚大となっているわけでありますけれども、総理はですね、この災害対応に当たってできることは何でもやると、こうおっしゃっておられます。じゃあ、先ずカジノの審議やめて、災害対応の協力すべきだと思いますが、如何ですか」 安倍晋三「あの、先程来申し上げておりますとおり、本日もですね、この委員会が開催されておりますが、しかしこの委員会が開催される前にですね、えー、既に官邸に於いて、私自身が危機管理官からですね、しっかりと現状認識についての報告を受け、それに対する対応を指示をしたところでございまし、その後、非常災害対策本部を開き、そこで関係閣僚からですね、報告を受け、それに対する指示をしているところございます。 ま、その指示内容につきましては先程仰いましたように、例えば半壊があったとしても、仮設住宅に入居できるように。それは都道府県、地方自治体の判断でできるようにしたところ、そういう指示を出しているところでございますし、例えば真備町の廃棄物処理対策等についても、新たな自衛隊の派遣等についても、指示をしたところでございます。 それ以外についても先程ご指摘のあった、例えば水道等でございますが、これは厚生労働省の方でございますが、今後の給水等の見通し等に対する更なる指示等もしたところでございます。 そうした意味でできることは全て行っていますし、発災当初からプッシュ型によりですね、対応等も行っているところであります。本日も世耕大臣、あるいは農水大臣とですね、現地に派遣致しまして更に様々なご要望等を承りたいと、こう思っているところでございます。 特に生業(なりわい)についても、心配、私も、現地を訪問した際、長い間醤油屋を営んできた方が殆どが水に浸かって、再開が困難だと、何とか再開をする見通しを持ちたいという話がございました。 まさにオーダーメイド型化(?)してですね。一人ひとり、一企業一企業にあった対応しなければなりませんので、一軒一軒のご要望をこちらから承りにいってですね、対策をしていきたいということでございまして、経済産業省としてもそういう対応を取って参りますし、また農地等も大きな被害を受けておりますので、そうした農地、営農が再開できるようにですね、こちらも全力で支援をしていきたい。 そういう意味に於いて我々政府一丸となって対応しているところでございます。国会のご審議につきましては国会決められることであろうと、このように考えております」 辰巳孝太郎「そうじゃないんですよ。国民が求めているのは、この西日本豪雨による災害に於いて国会決議でも政府に対して全力で傾注して欲しいと求めてるわけですね。 先程総理はですね、国土交通大臣を貼り付けにするのがこの審議ですよ。あるいは今日の審議だってこれ、委員長の職権で立てられましたけれども、連休様々なこともありました。熱中症でなかなか復旧作業も大変だという話が全国で起こっています。連休の最初の審議が、(?)入りの審議がカジノですよ。 何でこんなことをしなきゃいけないのかっていう話なんですよ。総理、先程、要請をしなかったんだと、大臣を(被災現地に)貼り付けにしする要請をしなかったという話がありましたが、なぜそういう要請をしなかったんですか。与党にしなかったんですか。自由党(自由民主党?)にしなかったんですか」 安倍晋三「あの、要請をしなかったかということでございますが、ですから、例えばですね、国会に於いて、こうした委員会に於いてですね、大臣ではなくて、副大臣が答弁できるということになっているのであればですね。それは副大臣が、副大臣を以って答弁をさせて頂きたいと、こう思うところでございますが、いわば国会の運営でございますから、国会に於いて決めることだと、このように思います。 この委員会に於いてですね、副大臣ということで決定して頂ければ、副大臣に答弁させて頂きたいと、こう思っているところであります」 辰巳孝太郎「総理、そういうことじゃないですよ。副大臣だからいいとか、大臣だからということじゃないんです。副大臣だって、大臣だって、一体となって災害対応してもらわな困るんですよ。カジノの審議やってる場合じゃないってのが国民の願いでしょ。 何でこれに応えられないのか。なぜそういうこと、要請しないのかと。総理ね、今、6野党・会派が被災者生活再建支援法、これも議員立法でありますけれども、これ全壊であっても、上限が300万円しか出てこない制度なんですね。これを上限500万円まで少なくても引き上げようじゃないかと、いう法案を提出をしております。 総理、こういう審議をやろうじゃありませんか。これ金曜日まで、22日までですけれども。改正案の審議、やろうじゃありませんか。できることは何でもやるとおっしゃるんだったら、この審議やってくださいよ」 安倍晋三「あの、ま、災害対応というのはですね、まさに基本的には私が陣頭指揮を取るわけでございますが。担当大臣として防災大臣がいるわけでございます。小此木大臣が本部長としてまさに現場の指揮に当たっているわけでございますし、実際にですね、物事を動かしてくる上に於いてはなるべく現場に近いところが裁量権を持って進めていくことが大切であります。 先程の半壊であってもですね。いわばこの仮設住宅に入居可能というのは政府ではなくて、まさに地方自体がそれをできることを可能としたわけでありまして、一つ一つ、この総理、あるいは大臣がですね、指示をしなくてはいけないという硬直的な対応では災害対応ということではできないわけであります。 そういう意味に於きましてはまさに現場がですね、責任と権限を持ってしっかりと対応しているところでございますし、各被災県に対しましては政府からですね、このチームを派遣しているところでございますし、被災者生活支援チームを直ちに発足をし、避難所の生活環境の改善、あるいは一日も早くですね。安心した生活を取り戻せるような、そういう生活支援も政府機関として既にそういう対応をしてきているわけでございました。 そういう中に於いてですね、まさにこの法案の審議についても政府として責任を持って対応しているところであります。そして議員立法に於きましてはまさ国会でですね、ご審議頂ければとそのように思います」 辰巳孝太郎「総理、質問に答えて頂きたいんですよ。被災者生活再建支援法、現在全壊でも300万円です。余りにも少なさ過ぎる。 我々500万円、上限に引き上げるべきだと提案をしております。総理、ご存知かどうか分かりませんが、東日本大震災直後、自民党の政策提言でも、500万円、住宅支援。これ提言してますから。 総理、300万円から500万円、これ審議やろうじゃありませんか。この我々の提言、どうお考えですか」 安倍晋三「これまさに議員立法でございますから、国会でですね、各党・各会派がですね、ご議論頂ければと思っております」 辰巳孝太郎「全く被災者に寄り添う姿勢ではないと思います。災害に於いて初動の対応は決定的だと思います。7月5日の午後2時に気象庁が記者会見で記録的な大雨の恐れがあるとして厳重な警戒を呼びかけました。 午後10時までに大阪・京都・兵庫に於いて11万人に避難指示が出されました。ところが5日夜、『赤坂自民亭』と称した懇親会が開かれて、多くの批判の声がなされております。総理、なぜこれだけの批判が寄せられているとお考えですか」 安倍晋三「えー、官邸に於いてはですね、ここ数年の気象状況を踏まえて6月に大雨に関する情報連絡室を設置をし、継続して情報収集を行うと共に6月29日に開催された地方防災会議に於いても私から梅雨末期の大雨による災害への対応を関係閣僚に指示をするのと大雨による災害に備えてきたところあります。 今回の豪雨に対しては7月5日に気象庁が記録的な大雨となる恐れがあると発表した直後に小此木防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催し、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全態勢で対応を取ってきたところであります」 辰巳孝太郎「総理はこの5日の午後2時の気象庁の記者会見を知っていて、この『赤坂自民亭』に出席をされたんですか」 安倍晋三「今、答弁させて頂きました。気象庁の発表があった直後に、発表がございましたから、小此木防災大臣の出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催をして、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全の態勢で被害の対応に当たってなきたところであります」 辰巳孝太郎「知ってたということですね。これ飛んでもない話だと思いますよ。小此木防災大臣は13日の記者会見で、このときに自民党議員の懇親会が開かれていたことについて、『被災者が見たら面白くない話、一生懸命取り組んでいる者も大勢いる中で政治家として気を引き締めるべきだ』と述べておられます。総理、午後2時に気象庁が異例の記者会見をしたということを知っていたと言うなら、なぜこの懇親会に参加して、なぜこのような酒席は中止しろと言わなかったのでしょう」 安倍晋三「今申し上げましたように私が知っているからこそですね、小此木防災担当、防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催して、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なるの事態にも対応できる万全の態勢で対応に当たってきたところでございます」 辰巳孝太郎「ですから、なぜこのような酒席は中止しろと言わなかったんですか」 安倍晋三「私はこの政府としての対応について万全を期していく立場でございまして、政府としてはまさに今申し上げたようなですね、対応を取ってきたということでございます。いわば気象庁が記録的な大雨となる恐れがあると発表したときにですね、政府は対応を取っていないということではないんであろうと思います。 まさに政府はですね、その直後に小此木防災大臣が出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催して、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全態勢で対応に当たってきたところでございます」 辰巳孝太郎「政府全体と言いますけれども、まさに総理がその会合に出席して、官房副長官も出席していて、防衛大臣もお酒飲んでいたんですよ。 これについては総理、全く不適切だと思わないということなんですか。防衛大臣、官房副長官、出席してるんですけど。これ不適切ではないというお考えなんでしょうか」 安倍晋三「政府としての対応がですね、まさに今申し上げましたように7月5日に気象庁が記録的な大雨となる恐れがあると発表したと直後に小此木防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催して、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全の態勢で対応に当たってきたところでございます」 辰巳孝太郎「先程総理がですね、西村官房副長官のツイッターについて発信を慎重に対応するに注意したって言うんですけど、何がじゃあ、悪かったんですか。西村さんの対応が悪くなかったんだったら、何が悪かったんですか」 安倍晋三「先程各委員との遣り取りを聞いておられたんだろうと思いますが、そんときに西村副長官から誤解を与えたかもしれないということについての、いわば弁明があったわけでございまして、そういう意味で私が注意するように申し上げたところでございますj」 辰巳孝太郎「誰も誤解していないんですよ。政府は初動対応、5日の夜にああいうことをしているついて国民は憤りを持って批判をしているわけですよ。それを素直にね、総理自身が認めないと、本当の国民の生命を守る政府なのかということになるかと思います。こんなときにカジノ 審議はするべきじゃないということを再度申し上げて、私の質問を終わります」 |
辰巳孝太郎が気象庁の警戒予報情報記者会見後の酒席懇親会「赤坂自民亭」への出席は不適切ではないのかと追及したのに対して安倍晋三は「今回の豪雨に対しては7月5日に気象庁が記録的な大雨となる恐れがあると発表した直後に小此木防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催し、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全態勢で対応を取ってきたところであります」と繰返し答弁、出席は問題ないとした。
このような答弁に対して辰巳孝太郎が「(気象庁の警戒予報情報記者会見を)知ってたということですね。これ飛んでもない話だと思いますよ」と批判しても、あるいは「なぜこの懇親会に参加して、なぜこのような酒席は中止しろと言わなかったのか」と追及しても、批判・追及を物ともせずに「私が知っているからこそですね、小此木防災担当、防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催して、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なるの事態にも対応できる万全の態勢で対応に当たってきたところでございます」とカエルにツラに小便を繰返している。
要するに「政府全体として必要な警戒態勢を敷いていた」から、安倍晋三自身の「赤坂自民亭」への出席は問題ないとする構図を取らせている。
但しこの構図は安倍晋三の首相個人の行動と政府全体の対応を分けた問題のすり替えに過ぎない。なぜなら安倍晋三自身は政府全体のトップに位置する最重要な一部分であって、自身と政府全体を分けることはできないし、当然、その行動と政府全体の対応を分けることもできないからだ。
安倍晋三自身は「赤坂自民亭」に首相としてではなく、個人として出席したと言い抜けるかも知れないが、「政府全体として必要な警戒態勢を敷いていた」最中の出席なのだから、自身と政府全体を分けた個人としての出席という言い抜けは効かない。
大体が安倍晋三はこの遣り取りの最初の方で「災害対応というのはですね、まさに基本的には私が陣頭指揮を取るわけでございますが」と答弁している。
いわば「政府全体として必要な警戒態勢を敷いていた」だけでは済まないことを自ら口にしている。最低限、首相公邸にいて、陣頭指揮者である政府のトップとして「警戒態勢」を見守る責任が生じていたはずである。
当然、「警戒態勢」をいっときであっても他人任せにしていいはずはない。ところが、安倍晋三は夜8時半過ぎに「赤坂自民亭」に約50分間も出席していて、終了後の記者団の「懇談はどうだったか」の問いかけに「和気あいあいでよかった」と答えたという。
防衛省サイト 《福岡県北九州市における土砂崩れに伴う人命救助に係る災害派遣について(11時00分現在)》(平成30年7月6日)には次の記述がある。
(1)要請日時 平成30年7月6日(金)09時56分
(2)要請元 福岡県知事
(3)要請先 陸上自衛隊第4師団長(福岡)
(4)要請の概要 人命救助(以上)
この派遣要請は死者のみならず、数少なくない人命救助に関わる安否不明案件、あるいは行方不明案件は既に7月5日夜遅くには始まっていたと見なければならない。始まっていたから、7月6日の朝9時56分という早い時間帯に派遣要請に出なければならなかった。
例えこの派遣が「赤坂自民亭」出席後の時間帯であったとしても、気象庁の7月5日14時00分の災害予想情報を受けた時点で、ここ最近の例年の変化しつつある気象傾向から、少なくとも過去の豪雨災害事例同等の先行きの被害拡大を前以って想定する危機管理を政府全体で認識していなければならなかったことに変わりはない。危機管理は最悪の事態の想定を出発点とする。
にも関わらず、安倍晋三は7月5日夜8時半頃に飲酒を伴う「赤坂自民亭」に出席した。「国民の生命・財産を守る」最高責任者に任じられていることからの国に於ける災害対応の陣頭指揮者という立場上、“政府全体として敷いていた必要な警戒態勢”を見守るぐらいの責任は発揮しなければならかった。
ところが、例年の気象状況の変化からそういった危機管理を想定することなく、「政府全体」と自身を分ける国会答弁に饒舌なまでに執着・終始した。この狡猾・巧妙な言い抜け、責任回避は安倍晋三だからこそできる鉄面皮な芸当であろう。