西日本豪雨での建物洪水・浸水被害後の後片付けを見て、その集約化と効率化を考えてみた

2018-07-17 11:53:36 | 政治
 2018年7月5日から7月6日を最大降水量として7月8日にかけて降った西日本豪雨は家屋被害が3万棟超にのぼるという。ほぼ全域で7月9日に雨が上がって、洪水・浸水被害、あるいは倒壊被害に遭った被災者は水が引くのを待って7月10日頃から自力でできる範囲で家の片付けに取り掛かったのだろう。豪雨被害に見舞われずに済んだ近隣居住の近親者が手伝いに駆けつける家もあったようだ。

 洪水・浸水被害に遭った多くの家々が1階部分の高い位置にまで浸水したことから、水が引いた後の建物の中にまで一輪車を持ち込み、角スコップで、それを少しでも傾けて水平状態が維持できなければこぼれてしまう、ヘドロ状になっていて掬いにくい汚泥を慎重に取り扱って、移動中の揺れでこぼれないように一輪車に少なめに盛って、それを家の外にまで運び出すといったことをテレビニュースで見た。

 順番から言うと、先ずヘドロ状の汚泥を処理してから、家具や家電製品、泥まみれになった畳を家の外に持ち出すことになり、それらの内、使えなくなった物は廃棄処分とする。

 各自治体は7月10日頃からボランティアを市内在住者等に限定して募集、7月14・15・16日の連休を狙って募集範囲を市外に広げたようだが、7月10日から7月13日までの間は、豪雨被害が広範囲に亘ってお互いに被災者の身となっていただろうから、近親者以外に多人数のボランティアは望めなかったはずで、その間主として家族だけの片付けとなったことは予想できる。

 当然、高齢者だけの家族、高齢単身世帯は本格的なボランティア活動が開始されるまで満足な片付けは望めむことはできなかったはずだ。家族単位の片付けではなく、町内単位、あるいは自治会単位で被災家族を集めて、それを何家族かに必要人数を振り分けて、決めた順番に片付けていき、片付け終わったら、次の何家族かの片付けに入るという方法を取れば、家族単位の片付けよりも時間を捗らせることができるし、高齢者だけの家族や高齢単身世帯でも、順番が来れば、それなりに満足な片付けが期待できるし、何よりも人力の集約化によって効率化を図ることができる。

 勿論、ボランティアが本格的な活動を開始してからも、同じ方法で順番に家々を片付けていくことにする。

 こういったことだけではなく、スコップと一輪車を使ったヘドロ状の汚泥の根気のいる片付けを見て思ったことだが、現在では汚泥を吸い上げる水中ポンプがある。例えば《寺田ポンプ製作所 汚水用水中ポンプ》の一つは土砂用で、運転可能最低水位については「1ミリ以下の排水の実現」を謳っていて、用途として、「ビル、マンション等の高架水槽の残水排水用」、「プール、水槽、各種ビットの残水排水用」となっている。

 いわば僅かに残っている土砂混じりの汚水でも、吸い上げてしまう能力がある。

 但しこのページには直径何ミリまでの小石まで吸引可能かの説明がないが、汚泥用水中ポンプの中にはホースの吸口先端に直径8mmの穴を細かく開けたストレーナー(液体から固形成分を取り除くために用いる網状の器具)がついていて、直径8mm以上の小石や異物を取り除くようになっているから、今後汚泥処分に自治体や自治会が防災用として汚泥用ポンプを用意する場合はストレーナー付きか、付きでなければ、ストレーナーを用意して、後から取り付けるようにすればいい。

 寺田製作所の水中ポンプは電源が必要だが、現在では殆んどの自治会が防災用に小型発電機を用意していて、東日本大震災での福島発電所の全電源喪失の経験から、水没による発電機の故障を避けるために、実行しているかどうかは分からないが、高い場所に置くことが常識となっている。

 住宅内の汚泥を処理する場合は一人がストレーナーの付いた筒先を垂直に床や畳に接着させて移動、吸い上げを効率良くするために他の何人かが移動に合わせてスコップで汚泥をストレーナーに向けて掻き寄せるか、掻き集める具合にすると、自ずと水位が高くなって、それだけ吸水能力が高くなることになる。

 排水用の筒は繋げれば、10メートルや15メートルぐらいは伸ばすことができる。

 今回の豪雨で家の外や敷地の外に出された汚泥が乾いて粉塵と化して、多くの住民の目や喉に障害を与えているようだが、通行可能な地域、あるいは交通可能となった地域は順番に重機が来て、汚泥をダンプに積んで片付ける方法を取っているが、そのような方法は汚泥が乾くに連れて粉塵を誘発することになる。
 
 このことを防ぐためにはタンクローリー型給水車と汚泥やヘドロ処理のバキュームダンパーの2台を一組として、給水車が汚泥が乾かないように適宜水を掛けてある程度ヘドロ状態に保ち、バキュームダンパーがその汚泥をホースで吸い上げてタンクに一杯にして、一杯にした所で産業廃棄物処理場に運んで処理するという方法を取れば、後々の粉塵化をかなり避けることができるし、処理の効率化を図ることができる。

 産業廃棄物処理場にまで運ぶについてはそこまでの道路に通行止め箇所があるということであれば、住宅街から離れた場所に仮置場を造って、その日の作業終了後にシートを掛けるなどして飛散を防ぐ処理を施さなければならない。

 但しバキュームダンパーは極く特殊使用であって、一般的ではなく、土砂を掴み取ってダンプ等に積む重機と比較して数が少ないかも知れないが、今後の豪雨災害に備えて、自治体はバキュームダンパーや給水車を所有している会社と前以って契約しておいて、順次配置する防災計画を立てておくべきだろう。

 《環境保全株式会社》というページには次のような記述がある。

 〈各種吸引(バキューム)

 遊水池の清掃から長距離吸引作業

 遊水池、調整池、公園池、ゴルフ場池、えん堤、ダム、沈殿池などの汚泥やヘドロをバキューム車で吸引して取り除く作業。

 例えば、ダムなど底の深い池や大量の土砂がある箇所には超強力吸引車が出動。林の奥で車が入れない池や、急斜面で車の止められない場所では、長距離パイプラインを敷設して作業します。〉云々――

 仕事の効率は重機での汚泥処理よりも遥かに高いはずである。

 今回の豪雨災害でも2017年7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心として九州北部を襲い、死者40人を出した九州北部豪雨災害と同じように多くの流木によって河川が氾濫したり、家を押しつぶしたりしている。九州北部豪雨の場合は流木量20万トン以上と言われていた。

 自衛隊員が軽く一抱え近くもある、長さ2メートルか3メートルの大木を5、6人で両側から抱えて運んでいるのを見て、流木の山から鳶口を使って平らな場所に引っ張り出して、引っ張り出した後はそれくらいの流木なら、ローブを掛けて鳶口を天秤棒すれば、体力をそれ程使わずに簡単に短時間で移動させることができるできると思って、2017年7月24日の当ブログ、《九州北部豪雨災害流木20万トン以上:自衛隊その他の途轍もなく非効率・ご苦労な手作業処理 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に鳶口の使用を進めたが、非効率な仕事を相変わらず続けているようだ。

 この記事に載せた画像を再び載せておくことにする。

 住民が汚泥まみれになって汚れた畳を捨てるために畳を平にして長い辺に4人ぐらいずつ張り付いて総勢8人ぐらいで運んでいたが、鳶口を使えは、2人が畳を横に立てた上でそれぞれがの片側に位置して、鳶口をなるべく地面に近い、畳の横中央に突き刺して鳶口の柄自体を持ち上げれば、握る力も入って、少ない人数で、左程体力も使わずに移動させることができる。

 畳が左右どちらかに倒れようとしても、鳶口で両側から挟む形になるから、鳶口の柄や柄を握っている拳によって倒れるのを防ぐことができる。

 軽トラックに積んだ沢山の畳を仮の廃棄場に捨てるときも、軽トラの後部バタを倒して2人一緒になって畳を引きずり出し、荷台に乗った1人が畳の端を持ち上げてひっくり返す具合に廃棄場に積み上げていたが、後部バタを落とした軽トラを捨てる場所までギリギリにバックさせて、二人が捨て場所に立って鳶口を使って、そこに畳を引きずり出す具合にすれば、力も体力も使わずに順次畳を積み上げていくことができる。

 製材所で丸太を積み上げるときに下にある丸太を鳶口を使って順次上に運んで山にしていく方法と同じである。

 また、濁流に押し流されて家の庭に入った一抱えか、それ以上に岩と言ってもいい大きな石を移動させるのに長背後の2人がさ50センチ程の鉄パイプと見えるコロを石の下に置いて、移動と共にコロを石の前方に加えていきながら石を押し、前の二人が石の後方に掛けたローブを引っ張っていく方法で石の移動を行っていたが、2本の短いロープを石を絞る具合にかけて天秤棒にした鳶口でロープの1本ずつを二人で、合計4人で肩に担げば、200キロやそこらの石は一人ずつ50キロ程度の重さとなって、前者の方法よりも体力も時間も使わずに簡単に移動させることができる。

 手だけで持ったり押したりする力よりも肩で担ぐ力の方が大きな重量に耐えることができる。だから、昔の人は背負子に50キロや60キロの荷物を、時には100キロ近い荷物を乗せて、長い距離運ぶことができた。

 昔の人間の方が仕事の効率化を知っていたことになる。機械がある時代になって、機械頼りとなり、自力での効率化に無頓着になったようだ。

 自然災害直後の家の片付けや重機が入る前の流木等の処理は当たり前の道具を使った人力主力が当たり前となっているが、当たり前と思わずに当たり前以外の道具の導入を考えて、集約化と効率化を図るべきだろう。
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