安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定 「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を 直接示すような記述も見当たらなかった」とする “政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき |
女性の地位向上をテーマにした第64回国際ゾンタ世界大会がパシフィコ横浜で開催され、安倍晋三がビデオメッセージを寄せた。「NHK NEWS WEB」(2018年2018年6月30日 11時52分)
安倍晋三「安倍内閣は女性政策は日本の未来を切り開く成長戦略だと位置づけ、この5年間取り組んでまいりました。その結果、上場企業に於ける女性役員数は倍増しました。そして一昨年、日本の女性就業率は25歳以上のすべての世代であの米国を上回りました。
私たちは今、貧困や地球環境などさまざまな課題に直面しており、女性ならではの視点や力はこうした世界的な課題の解決に欠くことができないと確信しています」――
「上場企業に於ける女性役員数は倍増しました」と自慢しているが、どのような「倍増」なのか、具体的な内訳は隠したままである。
2015年12月25日の「第4次男女共同参画基本計画」で「上場企業役員に占める女性の割合」を2015年2.8%から2020年10%へと目指すことで閣議決定している。つまり5年間で7.2%の増加、各年平均して1.44%ずつの累増を目指している。
では、実際の5年間の女性役員の割合を見てみる。
2013年 1.8%
2014年 2.1%
2015年 2.8%
2016年 3.4%
2017年 3.7%
確かに2013年1.8%から2017年の5年間で3.7%へと倍増している。この点は真っ正直な情報提示ということになる。但し各年、+0.3→+0.7→+0.6→+0.3の僅かずつの増加であって、5年間を平均すると、毎年0.38%の増加率にとどまっていて、この増加率で2018年から2020年までの3年間をプラスしても、2020年まで10%の半分には満たない4.48%にしか達しないことになる。
こういった具体的な増加傾向に関わる不都合な情報は隠蔽し、「倍増」という言葉だけを踊らせて、安倍内閣の女性政策がさも成功しているかのように大宣伝する。とてもではないが、こういった自己都合な情報操作は人間が鉄面皮に出来上がっていないとできない。
「鉄面皮」とは「ツラの皮がまるで鉄でできているように恥知らずで厚かましいこと。厚顔無恥」(goo辞書)を言う。
「一昨年、日本の女性就業率は25歳以上のすべての世代であの米国を上回りました」と言っていることにしても、どのような就業形態なのか、形態別の比率を比較せずに言うのは自己都合な情報操作以外の何ものでもない。
「女性議員比率 と社会の幸福度に関する計量分析」(長谷川羽衣子&ひとびとの経済政策委員会/2018年1月27日)には次のような記述がある。
〈列国議会同盟の謁査によると2017年12月1日時点における女性議員比率(一院または下院)の世界平均は23.6%である。日本の女性議員比率はその半分にも満たない10.1%で、OECD最下位、193カ国民中157位という非常に低い水準である。日本の女性議員比率は、初めて女性が国政選挙に参加した1946年に8.4%を記録したものの、それ以降は1996年までの実に53年間、1~3%というあまりにも低い水準に留まっていた。その後は少し増加したものの、現在に至るまでほぼ10%前後で推移しており、内外から問題があると指摘されながらも一向に改善の兆しが見えない。〉――
日本の女性議員の極端な少なさは言われて久しいが、上場企業に於ける女性役員と同じく上がこのお粗末さでは下はさして自慢できない。
「平成27年版働く女性の実情(Ⅲ部)」(概要版)(厚労省)には次の記述がある。
〈女性の役員を除く雇用者に占める「正規の職員・従業員」の割合は、昭和60 年(67.9%)から平成27 年(43.7%)までほぼ一貫して低下傾向にあり、「非正規の職員・従業員」の割合は昭和60 年(32.1%)から平成27 年(56.3%)までほぼ一貫して上昇傾向にある。なお、「非正規の職員・従業員」が「正規の職員・従業員」を上回ったのは、平成15 年であった。「非正規の職員・従業員」のうち、「パート・アルバイト」の構成比は昭和60 年の28.5%から平成27 年の44.1%に上昇している。〉
2015年(平成27)
「女性正規職員・従業員」43.7%
「女性非正規職員・従業員」56.3%(うち、「パート・アルバイト」44.1%)
「パート・アルバイト」が女性非正規の約半数近くを占めている。
正規の割合よりも非正規のそれが上回る形で増加している傾向はさして変わらない。この正規対非正規の就業率を隠して25歳以上の全ての世代での日本の女性就業率がアメリカを上回ったということだけを言い、雇用形態の内訳に関わる情報を隠して自らの女性政策を自慢するのはやはり自己都合な情報操作そのものであろう。
正規雇用よりも非正規雇用が増えていることを言うと、政権側は決まって不本意非正規雇用は男女合わせて5分の1程度で、5分の4はなりたくてなっている本人希望の非正規だとの理由を挙げて、必ずしも政策的な間違いでないと主張する。
次の記事から不本意非正規雇用と本人希望の非正規の比率を見てみる。
「労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)」(総務省統計局/2018年2月16日)
現職の雇用形態についた主な理由
男性(非正規の職員・従業員647 万人)
「自分の都合のよい時間に働きたいから」 ······· 157 万人(26.6%)と8万人増加
「正規の職員・従業員の仕事がないから」 ······· 134 万人(22.7%)と,13 万人減少
女性(非正規の職員・従業員1389 万人)
「自分の都合のよい時間に働きたいから」 ······· 383 万人(29.1%)と,16 万人増加
「家計の補助・学費等を得たいから」 ········· 330 万人(25.0%)と,2万人増加
但しここで正規と非正規の賃金格差を見ておかなければならない。「正社員・非正社員の賃金差の現状」(内閣府)
文飾当方。
〈正社員と非正社員の賃金差等にみられる処遇の違いが大きいことは、我が国の特徴として指摘されてきた。所定内給与額を所定内実労働時間数で除した時給の平均で比較すると、2005年時点では非正社員と正社員の差は1.7 倍、また、所定外給与やボーナスなどの特別給与額を含めた年収全体で時給を比較すると、その差は2倍以上であった。その後、2016年までの10年間で正社員の時給の伸びは1.5%程度であったのに対して非正社員の時給は10%以上上昇した結果、両者の差は縮小したが、2016年時点の非正社員と正社員の差については、所定内給与額ベースで1.5倍、年収ベースで1.8倍程度となっている。〉
所定内給与額とは定期給与のうち時間外手当、早朝出勤手当、休日出勤手当、深夜手当等の超過労働分以外の給与を言う。
時間外手当から深夜手当などまでは当初から格差のある定期給与額よって計算されるから、これらの手当も正規、非正規で格差がつくことになり、全体給与では〈所定内給与額ベースの1.5倍、年収ベースの1.8倍〉以上の格差がつくことになる。
事実、ネットでは年収で言うと、2倍から2倍以上の格差があると記述されている。
要するに非正規雇用を選択する理由として「自分の都合のよい時間に働きたいから」、「家計の補助・学費等を得たいから」は男女共に賃金格差を承知していて、そのような格差のある少ない収入(=自分が就いている非正規の職業の給与)で十分に生活を送ることができる人々だということである。
どのような人々かと言うと、既婚者で、夫の収入がそれなりにあって、あるいは妻の収入がそれなりにあって、妻、あるいは夫が自分が自由に使うことができる小遣い稼ぎか、あるいは女性の場合は非正規選択の後者の理由、「家計の補助・学費等」の足しにするため、あるいは主婦か主夫の立場にあるが、趣味に十分なカネをかけることができる程には伴侶に収入がなく、何もしないのは時間を持て余してしまうから、趣味に使う程度のカネを稼ぐといった人々か、親の収入からだけでは学費を十分に賄うことができなくて、学費や生活費の足しにアルバイトに出る大学生といった人々であろう。
あるいは何らかの大きな志を持っていて、その志を実現するための時間を大切にするために一定の職業には就かずにアルバイトで日々の生活を凌いでいるといった人々も入るだろう。
大まかに言って、この最後の例を除いて、他の人々は自分以外の誰かによってある程度生活が守られている環境にある。
だとしても、非正規雇用にはそのような人々が多く含まれているからと言って、非正規の増加を情状酌量することはできない。なぜなら、「正規の職員・従業員の仕事がないから」という不本意非正規雇用者が依然として134 万人も存在していて、しかも正規社員と同じ様な仕事していながら、賃金に大きな格差があることは無視できないからだ。
そしてこういった不都合な情報は隠蔽したまま、「一昨年、日本の女性就業率は25歳以上のすべての世代であの米国を上回りました」と都合のいい情報だけを手の内のカードとして見せ、暗に安倍内閣の女性政策がさも成功しているかのような場面を手練れのマジシャンか何かのように目の前に描いて見せる相変わらずの自己都合な情報操作だけは得意ときている。
NHKの6月の世論調査で内閣支持率は38%、不支持率は44%と不支持が6ポイント上回り、不支持の理由として「人柄が信頼できないから」が54%とダントツで1位を占めたが、森友・加計疑惑だけではなく、鉄面皮にも自己都合な情報だけで政策宣伝に務める人柄の信用なさ・胡散臭さも「信頼できない」の中に入っていなければならない。