石破茂の総裁選キャッチフレーズ「正直・公正・謙虚で丁寧な政治」は個人攻撃として嫌悪されるべき徳目なのか

2018-08-27 10:01:09 | 政治
 

 2018年8月13日の当ブログ記事に自民党元幹事長石破茂が2018年8月10日に国会内で記者会見して9月の党総裁選への出馬表明を行った後、早々に「私は、正直で公正、そして、謙虚で丁寧。そういう政治を作りたいと思っております」との発言で国民に対する自らの政治姿勢を訴えたが、これらの発言は安倍晋三人格への対義語であって、その証明として森友・加計疑惑に関わる国会追及に対する安倍晋三のこれらの人格とは程遠い答弁を取り上げた。

 要するに石破茂が提示した「正直・公正・謙虚で丁寧な政治」等の徳目は安倍晋三の人格が深く関わることになる政治姿勢に対するアンチテーゼとして突きつけた最大のウイークポイント攻撃だったはずだ。

 そうでなければ、わざわざ「正直・公正・謙虚で丁寧な政治」といった徳目を掲げる意味はない。相手が政治姿勢とすることができないでいるが、それではいけないと安倍晋三を反面教師としてのだろう、自分なら可能だとアピールすることによって初めて意味が出てくる。

 ところが、 このアピールを個人攻撃だとして嫌悪感の対象とする人物が現れた。その人物とは自由民主党参議院幹事長であり、竹下派会長代行であると同時に石破支持で参院竹下派議員21人の取り纏めを一任された吉田博美である。

 いわば身内からの攻撃に遭遇することになった。尤も参院竹下派が石破支持に動いた背景には様々な利害が複雑に絡み合っているようだ。吉田博美は元々は心情的には首相支持だが、2010年に引退して息子を後継者に仕立てている、長らく参院のドンとして政治屋的影響力を誇っていた元自民党参院議員会長青木幹雄が吉田博美から政治の師と仰がれている関係から石破支持で参院竹下派を纏めろと指示を受け、止むを得ず受け入れた石破支持だとマスコミは伝えている。

 こういった利害が絡んでいることも驚きだが、要するに吉田博美は安倍晋三に後ろ髪を引かれる思いでいるから、「正直・公正・謙虚で丁寧な政治」が安倍晋三の政治姿勢のアンチテーゼとして掲げられたことに我慢ならなくなって、個人攻撃だと嫌悪感を示すことになったのだろう。

 確かに各政策の中身、その実現性は大切だが、それらの政策がどのような政治姿勢、どのような徳目に基づいているかによって、政治の恩恵の行きつく先がそれぞれに異なってくることに意を用いなければならない。「正直・公正・謙虚で丁寧な政治」をウイークポイントとする政治家の政策が一般大衆にどれ程の恩恵をもたらすだろうか。

 逆に政治の恩恵を一般大衆に置いていたなら、政治家の政治姿勢は「正直・公正・謙虚で丁寧」といった徳目に自ずと集約されていく。

 政治の恩恵が大企業や富裕層に偏るのは「正直・公正・謙虚で丁寧」であるべき政治姿勢のうち第一番に「公正」という徳目を欠いているからであって、「公正」を欠けば、「正直」も欠くことになり、「謙虚で丁寧」も頼るべき政治姿勢としていないことになる。

 勿論、「正直・公正・謙虚で丁寧」を装うために様々に言葉を費やすだろうが、政治の結果責任はいつまでも多言で覆い隠しおおすことはできない。

 当然、「正直・公正・謙虚で丁寧」といった徳目を政治姿勢とし得るかどうかは政策以前の問題であって、石破茂がこれらの徳目を安倍晋三の最大ウイークポイントと見て、その政治姿勢に対するアンチテーゼに据えたからといって、吉田博美が個人攻撃だと嫌悪する理由とはならない。

 ホンネは安倍晋三支持であるのに対して青木幹雄の外からの干渉に止むを得ず従った形式的な石破支持とは言え、支持の代償に「正直・公正・謙虚で丁寧」の徳目を欠くことになっている政治姿勢を安倍晋三の最大のウイークポイントとされることに間尺の合わなさを感じ、その精神安定剤に個人攻撃だと嫌悪し、石破キャッチフレーズの修正を謀ろうと意図することになったのだろう。

 但し「正直・公正・謙虚で丁寧」を安倍晋三に対する個人攻撃と見ること自体、吉田博美自らがそのような徳目を安倍晋三自身が欠いていることを証明することになる。

 対して石破茂は8月25日のネット番組で、「(キャッチフレーズは総裁選が)スタートする時は変わるかもしれない。道徳の標語っぽいものがメインスローガンかというと違うかもしれない」と発言、番組後記者団に「人を批判するつもりはないが、そう捉える方もあるなら、変えることはある」と述べ、「正直、公正」等のキャッチフレーズを封印する可能性を示したと2018年8月25日付「朝日デジタル」記事が伝えている。

 ただでも少ない国会議員票をこれ以上減らして惨敗への道を歩む危険性の浮上を恐れたのかも知れない。だが、「正直・公正・謙虚で丁寧」を政治姿勢とし得るかどうかは政策以前の問題であって、そういった徳目を問い質すこともなく知らん振りをする総裁選は、ある意味恐ろしい。

 そのような徳目を欠いた安倍晋三をのさばらせることになる。
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