安倍晋三の所信表明「激動する世界をそのど真ん中でリードする日本を創り上げる」の大言壮語・誇大妄想のハッタリ

2018-10-29 11:27:53 | 政治
                                     

 沖縄タイムスの動画をgif動画に変換。音声なし

 玉城デニーは普天間の辺野古移設阻止で安倍政権を踊らすことができるのか、阻止できないままに自身が踊るだけで終わることになるのか。 

 2018年10月24日 第197回国会に於ける安倍晋三所信表明演説(首相官邸サイト)

一 はじめに

 まず冒頭、本庶佑(ほんじょ たすく)特別教授のノーベル生理学・医学賞受賞を心よりお慶び申し上げます。日本で生まれた研究成果が、世界中のがんで苦しむ人々に大きな希望の光をもたらしている。同じ日本人として、大きな誇りであります。

 「定説を覆すことで、新たな世界が広がる」

 この世界的な偉業をもたらしたのは、本庶先生の、これまでの「常識」にとらわれない、全く新しいアプローチでありました。

 世界は、今、かつてないスピードで、変化しています。

 この、わずか5年余りの間に、人工知能は急速な進歩を遂げ、様々な分野で人間の能力を凌駕(りょうが)しようとしています。膨大なデジタルデータが、世界を瞬時に駆け巡り、全く新しい価値を生み出す時代となりました。

 次の5年、いや3年もあれば、世界は、私たちが今想像もできない進化を遂げるに違いない。そうした時代にあって、私たちもまた、これまでの「常識」を打ち破らなければなりません。私たち自身の手で、今こそ、新しい日本の国創りをスタートする時であります。

 強い日本。それを創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です。

 激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の三年間、私はその先頭に立つ決意です。私たちの子や孫の世代のために、希望にあふれ、誇りある日本を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか」

 先ずノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑特別教授の「『常識』にとらわれない、全く新しいアプローチ」による研究成果を以って定説を覆して新たな世界を獲得する模範的な例として持ち上げている。

 しかし何事も"絶対"は存在しない。「日本で生まれた研究成果が、世界中のがんで苦しむ人々に大きな希望の光をもたらしている」としても、本庶佑特別教授の研究成果を基に開発された、「人が本来持つ免疫力を利用してがんを攻撃し退治する免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ)」(「コトバンク」から)が全てのガンに効くわけではない。

 いつの世に於いても、如何なる時代に於いても、人間世界に"絶対"は存在しないということは「常識」であって、この「常識」は覆すことはできない。人間は様々な進歩や進化もたらすが、決して万能というわけではない。

 《「オプジーボは万能ではない」患者団体が注意呼びかけ》朝日新聞デジタル/2018年10月5日16時24分なる記事に案内されて、文中に記されているページにアクセスしてみた。

 《免疫チェックポイント阻害剤を含む免疫療法に関する注意喚起》一般社団法人 全国がん患者団体連合会(全がん連)/2018年10月5日)

このたびの本庶佑先生のノーベル生理学・医学賞の受賞は、私たちがん患者や家族に大きな希望をもたらし得るものであり、がんの克服に向けた貴重な一歩となることが期待されています。一方で、その成果の一つである免疫チェックポイント阻害剤は現状では効果が期待できるがんの種類などは限られており、免疫チェックポイント阻害剤特有の副作用などもあることから、慎重に投与されることが必要な薬剤です。このことを踏まえ、免疫チェックポイント阻害剤を含む免疫療法に関して、ここに注意を喚起する声明を発表いたします。

    ・・・・・・・・

なお、免疫チェックポイント阻害剤では、致死的又は重篤な副作用、従来の治療薬ではみられなかった新しい副作用もあることがわかっています。その使用にあたっては、厚生労働省によるガイドラインに準拠した治療が行える一定の医療機関で治療を行うことが推奨されており、自費診療を行う一部のクリニックなどでは、科学的根拠が明らかでない免疫細胞療法との併用や、添付文書に記された投与量よりもはるかに少ない投与量での投与方法、重篤な副作用が出た場合などの緊急時に対応の出来ない体制であるなど、その有効性や安全性を担保できない危険な治療が行われている場合があり、注意が必要です。〉

 記事は適応ガンを例示しているが、治療に適応しているからと言って、全てに於いて完治する保証があるわけではないはずだ。

 にも関わらず、安倍晋三は"定説を覆すことで獲得した新たな世界"がさも"絶対"、あるいは"万能"であるかのように言うことで自身が"定説を覆して新たな世界を広げる旗手"であるかのような言辞を用いている。これをハッタリと言う。

 「強い日本。それを創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です」

 「強い日本」を創ることは結構毛だらけ、猫灰だらけだが、「激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の三年間、私はその先頭に立つ決意」はハッタリもハッタリ、誇大妄想のハッタリ、大言壮語のハッタリに過ぎない。

 なぜなら、国際社会は、特に経済に於いて各国共にグローバリズムに基づいた相互依存の力学下に置かれているゆえに一国の経済が世界の経済に多大に貢献することがあっても、単独で世界の経済をリードするという現象はあり得ないからだ。

 具体的には日本はアメリカや中国、その他の国があってこその日本であり、中国にしても、アメリカや日本、その他の国があってこその中国であり、アメリカも中国や日本やその他の国があってこそのアメリカなのだから、このような相互性を強いるグローバリズムの世界ではどこかの国が先頭に立って「リード」するという関係は生まれてこない。

 米中貿易戦争への懸念からの米国株の下落が日本株や中国株に影響を与えて下落を誘う現象も、米金利上昇からの世界同時株安も、それが一時的なものであっても、世界の経済が相互依存関係を核としたグローバリズムの影響下にあるからだろう。

 安倍晋三は2018年10月25日から27日までの中国訪問を前に人民日報など中国メディアの合同書面インタビューに応じている。「人民網日本語版」(2018年10月24日11:10)(一部抜粋)
 
 「改革開放40年で中国は世界の注目する発展の成果を得た。中国の発展は日本さらには全世界にとって多大なチャンスだ。日本と中国は共にこの地域及び世界の平和・繁栄に対して重大な責任を担っており、大局的観点から、友好協力関係を安定的に発展させるべきだ。

     ・・・・・・・・・・・・

 40年で中国は注目すべき多大な発展を遂げ、世界第2の経済大国となった。現在、日中貿易は総額約3000億ドルで、両国経済はすでに密接で分かちがたい関係になっている。中国の経済発展が日本さらには全世界にとって多大なチャンスであり、歓迎すべきであることにいささかも疑いはない」――

 ここに見る安倍晋三の発言からは「激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる」といった日本の勇ましい主体性、勢いは見えてこない。見えるのは中国経済の恩恵に与ろうとする依存関係のみである。いわば日本を中国の下に置いた日中「友好協力関係」で、「この地域及び世界の平和・繁栄に対して重大な責任を担って」いると従属性を匂わせている。

 「中国の発展は日本さらには全世界にとって多大なチャンスだ」にしても、「中国の経済発展が日本さらには全世界にとって多大なチャンスであり、歓迎すべきであることにいささかも疑いはない」にしても、日本と中国、さらには世界が相互依存関係にあることの言い替えではあるが、その相互依存関係に自ずと順位をつけている。

 これは当然と言えば当然のことであろう。今後米中貿易戦争で様相がどう変わるか見通すことはできないが、これまでは中国は2030年までに米国を抜いて世界第1位の経済大国になると予想されていたのである。日本は現在の3位から、7位へと後退すると予想されていると言う。

 この一点を取り上げただけでも、「激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の三年間、私はその先頭に立つ決意」は大言壮語・誇大妄想のハッタリとなる。

 安倍晋三は2014年11月18日に衆議院の解散を告げる記者会見で2015年10月に消費税8%から10%への増税予定を「アベノミクスの成功を確かなものとするため」という理由をつけて18カ月間、2018年4月まで延期することを表明した。

 ところが、この約束を反故にして2016年6月1日の「記者会見」で更に30カ月延期して2019年10月1日に増税の着地点を持っていくことになった。延期の理由を次のように述べている。

 安倍晋三「中国など新興国経済に『陰り』が見えることです。リーマンショックの時に匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落し、さらに、投資が落ち込んだことで、新興国や途上国の経済が大きく傷ついています。

これは、世界経済が『成長のエンジン』を失いかねないということであり、世界的な需要の低迷、成長の減速が懸念されます」――

ここに挙げた発言はグローバリズムという世界規模の経済一体性に制御された、それゆえに一体性に関係した影響は回避困難な相互依存関係にあることを認識している物言いとなっている。中国が不況に陥れば、アジア各国のみならず、日本も不況に見舞われかねないという相互依存関係である。

 但しここでは日本の経済を悪影響を受ける側に位置させているが、悪影響を与える側に位置しない保証はどこにもない。良くても悪くても相互依存の関係から抜け出すことはできない。

 当然、相互依存の関係は誰が「先頭に立つ」といった直線的な関係ではなく、お互いがお互いに手を繋ぎ合って円をなす関係にある。経済規模が大きい国は各国の経済活況に与える貢献度、全体としての世界経済の成長に与える貢献度は高くても、その経済規模の大きさが一歩不況に陥ると、悪影響の大きさとなって跳ね返ってくる。

 かくこのよう各国の経済はグローバリズムの宿命によって良くても悪くても相互依存関係にあり、そのことを認識しているはずの立場にありながら、あるいは日本の経済力から言って世界の経済に対する貢献度が中国やアメリカよりも小さいにも関わらず、「激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の三年間、私はその先頭に立つ決意だ」とグローバリズムが要求することになっている各国との相互依存関係を投げ捨てて、臆面もなく言うことができる。

 トランプの米国第一主義にカブレでもしたのだろうか。出来もしないことをできるかのように言うことを大言壮語・誇大妄想のハッタリ言う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする