安倍晋三自衛隊観閲式訓示:その憲法改正意思は自衛隊への国民の評価・信頼を捻じ曲げ、巧妙に利用している

2018-10-15 11:58:51 | 政治
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 玉城デニーは普天間の辺野古移設阻止で安倍政権を踊らすことができるのか、阻止できないままに自身が踊るだけで終わることになるのか。

 安倍晋三が10月14日(2018年)、自衛隊記念日観閲式に出席、「訓示」している。

 安倍晋三「民家が土砂に押し潰されている。土砂崩れの一報に、隊員たちは、倒木を乗り越え、ぬかるみに足をとられながらも、休むことなく歩き続けました。体力の限界が近づく中、立ち尽くす御家族を前に、最後の気力を振り絞り、全員を救出した。

 さすが自衛隊。被災者の方々にそう言っていただける能力、そして、何よりも、その志の高さを、改めて証明してくれました。

 自衛隊の災害派遣実績は、実に4万回を超えています」――

 そして、「自衛隊の最高指揮官として、諸君と共に、国民の命と平和な暮らしを守り抜き、次の世代に引き継いでいく」と断固宣言している。

 よく言うよ。確かに自衛隊の各種災害活動には目を見張るものがある。だが、自衛隊と共に「国民の命と平和な暮らしを守り抜く」と言っている安倍晋三本人が2014年8月20日の70人以上の死者を出した広島土砂災害時には午前3時過ぎ頃から発生した土砂崩れが住宅を襲い、行方不明者続出の通報が相次いでいて、午前3時20分頃の土砂崩れで土砂に埋まった子ども2人のうち1人が午前5時15分頃心肺停止の状態で発見され、その死が確認されたにも関わらず、安倍晋三は同じ8月20日、夏休み中の山梨県の別荘から富士河口湖町のゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」に向かい、午前7時26分に到着、ゴルフを開始し、死者が発生してもなおゴルフを続け、午前9時19分になってやっとゴルフを中止した行為からは自衛隊同様に「国民の命と平和な暮らし」と共にある「最高指揮官」の姿は見えてこない。

 2018年6月28日から7月8日にかけて西日本を中心に北海道や中部地方など全国的に広い範囲で記録された台風7号と梅雨前線等の影響による集中豪雨で西日本を中心に大きな被害が発生、死者200人を超えた「西日本豪雨」の際、気象庁が7月5日に記者会見で記録的な大雨と土砂災害や河川の氾濫への厳重な警戒をひっきりなしに呼びかけていたことが毎年のように発生している多大な人命の犠牲を伴う豪雨災害と同規模の自然災害に対する危機管理への呼びかけと見ないまま、さらに基本的には政府対策の陣頭指揮を取る立場にありながら、7月5日夜に数人の閣僚と自民党国会議員を交えて東京・赤坂の議員宿舎で行った、「赤坂自民亭」と名付けた酒席に出席していた危機管理なき態度からは自衛隊同様に「国民の命と平和な暮らし」と共にある「最高指揮官」の姿はやはり見えてこない。

 相変わらずの口先だけの綺麗事を垂れ流すのみとなっている。

 安倍晋三「今や、国民の9割は、敬意をもって、自衛隊を認めています。60年を超える歩みの中で、自衛隊の存在は、かつては、厳しい目で見られた時もありました。それでも、歯を食いしばり、ただひたすらに、その職務を全うしてきた。

 正に、諸君自身の手で、信頼を勝ち得たのであります。

 次は、政治がその役割をしっかり果たしていかなければならない。

 全ての自衛隊員が、強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える。これは、今を生きる政治家の責任であります。私はその責任をしっかり果たしていく決意です」――

「全ての自衛隊員が、強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える」と言い、「次は、政治がその役割をしっかり果たしていかなければならない」と言っていることは日本国憲法9条の1項2項はそのままに3項目を付け加えて、そこに自衛隊の根拠規定を明記する憲法改正への言及である。

 読売新聞社の2018年8月24~26日の全国世論調査によると、憲法9条に自衛隊の根拠規定を追加する自民党案に賛成は45%、反対は38%となっていて、他の世論調査でも賛成が40%半ば以上を示している。

 だが、「今や、国民の9割は、敬意をもって、自衛隊を認めています」と言っている「9割」の多くは、あるいは2017年5月3日に都内開催の「公開憲法フォーラム」に送ったビデオメッセージで、「今日、災害救助を含め、命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています」と言っている「9割」の多くは各種災害活動に対しての評価・信頼であって、戦争する自衛隊を想定した評価・信頼ではない。

 このような評価・信頼から憲法9条改正を見なければならない。

 自衛隊に対する評価・信頼が戦争する自衛隊ではなく、各種災害活動に邁進する自衛隊であることは2017年3月15日に調査票を郵送して4月24日までに届いた返送総数2077通・有効回答2020通となった2017年5月2日付の「朝日新聞世論調査」(既にリンク切れ)にも現れている。

「憲法第9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがよいと思いますか」
 変えるほうがよい29%
 変えないほうがよい63%

「自衛隊が海外で活動してよいと思うことに、いくつでもマルをつけてください」
 災害にあった国の人を救助する92%
 危険な目にあっている日本人を移送する77%
 国連の平和維持活動に参加する62%
 重要な海上交通路で機雷を除去する39%
 国連職員や他国軍の兵士らが武装勢力に襲われた際、武器を使って助ける18%
 アメリカ軍に武器や燃料などを補給する15%
 アメリカ軍と一緒に前線で戦う4%(以上)

  憲法第9条改正については賛成29%に対して反対63%と反対が34%も上回り、尚且つ戦争する自衛隊への支持は僅か4%に過ぎない。対して「災害にあった国の人を救助する」92%は国内の災害活動についても当てはめることができる数値であろう。

 この世論調査を1年半以上も古いものと扱ってはならない。

 NHKが2018年10月6日から10月8日まで行った世論調査のうち、憲法改正に関わる国民の姿勢を見てみる。

 「内閣が最も力を入れるべきこと」
 「社会保障」28%
 「経済政策」20%
 「地方活性化」14%
 「外交・安全保障」11%
 「防災対策」11%
 「憲法改正」6%

 「自民憲法改正案の臨時国会提出の是非」
 「提出すべき」17%
 「提出する必要はない」36%
 「どちらともいえない」38%

 「自衛隊の存在明記の是非」
 「賛成」30%
 「反対」19%
 「どちらともいえない」40%

 安倍晋三は国民の「9割」が自衛隊を評価・信頼していると言い、日本国憲法が戦争に関わる制約を国家権力に規定している9条に自衛隊の根拠規定を明記する憲法改正と、その線に添った自民党の憲法改正案を臨時国会に提出することを強く熱意している。

 ところが、国民の「9割」もが自衛隊に対して評価・信頼していながら、「内閣が最も力を入れるべきこと」として「憲法改正」はたったの最下位6%のみで、安倍晋三の憲法改正の熱意は国民に全然届いていない状況を示している。

 当然、「自民憲法改正案の臨時国会提出の是非」についての質問で最も多くを占めた「どちらともいえない」40%は提出に関しては消極的意思表示の現れと見なければならないし、この40%の消極的意思表示と、「提出すべき」の17%を19%も上回る「提出する必要はない」36%の提出反対意思表示と合わせた76%は安倍晋三の憲法改正の熱意に反する国民の意思表示となっていて、このような意思表示こそが安倍晋三が言っている自衛隊に対しての国民の「9割」の評価・信頼が戦争する自衛隊に対してではなく、各種災害活動に邁進する自衛隊に対するものであることの現れでなくてはならない。

 戦争する自衛隊に対しての国民の「9割」もの評価・信頼であるなら、安倍晋三の憲法改正の熱意に応えて「内閣が最も力を入れるべきこと」として憲法改正を第1位につけるか、あるいは上位につけるはずであるし、当然、臨時国会ヘの提出を後押しするだろうし、自衛隊の存在明記を積極的に支持することになるはずだ。
 だが、そうはなっていない。要するにNHKの2018年10月の世論調査には1年半以上も前の2017年3月15日から4月24日にかけて行った朝日新聞の世論調査に現れている憲法改正に関わる国民の意思が反映されていて、後者の意思表示が現在も生きていることの証明となっている。

 このように自衛隊に対する国民の評価・信頼の多くが戦争する自衛隊に対してではなく、各種災害活動に邁進する自衛隊に対するものでありながら、「自衛隊の最高指揮官」の名のもとに自衛隊観閲式で戦争に関わる国家権力の行使を制約している憲法9条に自衛隊の根拠規定を明記する憲法改正を訴えている。

 訴えた場所と言い、国民に憲法改正条文を提示しないままに行っている国家権力が戦争に関係することになる条項の改正意思と言い、自衛隊に対する国民の評価・信頼の多くを戦争する自衛隊に対するものだと捻じ曲げた、その巧妙な利用に他ならないし、自衛隊をも利用していることになる。

 安倍晋三の舌先三寸に乗ってはならない。

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