沖縄は自らの民意を安倍政権に再度突きつけた 再度無視するようなら、民主主義ではない

2018-10-02 11:17:09 | 政治
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 2018年9月30日投開票の沖縄知事選は野党各党支援の自由党衆議院議員だったデニー玉城(58歳)が与党自公と日本維新の会、希望の党の推薦を得て巨大な政治勢力をバックにすることになった対立候補の佐喜真淳(54歳)を破って得票率55.1%の39万6632票を獲得して初当選を果たした。

 官房長官の菅義偉を筆頭に自民党幹事長二階俊博、人気者の小泉進次郎等が相次いで沖縄入りし、佐喜真淳を応援したが、佐喜真淳は得票率43.9%、31万6458票にとどまった。いわばバックにした巨大な政治勢力を以ってしても沖縄県民の辺野古移設反対の意思を抑え込んで自分たちが望む意思に持っていき、当選可能な票数を形成することはできなかった。

 対してデニー玉城は任期途中で亡くなった翁長雄志(たけし)前沖縄県知事の遺志を受け継ぐとして米軍普天間基地の辺野古移設反対を真正面から掲げて当選に必要な沖縄県民の意思形成を果たすことができた。沖縄は翁長雄志前沖縄県知事が当選した選挙に続いて自らの民意を安倍政権に再び突きつけた。

 米軍普天間基地の辺野古移設反対の沖縄県民の民意は継続していると見なければならない。

 デニー玉城は当選から一夜明けた10月1日朝、沖縄市の自宅で記者団の取材に応じた。

 デニー玉城「翁長知事の生前の気持ちをムダにしてほしくないという県民の思いが票につながった。辺野古新基地建設の反対と普天間基地の一日も早い閉鎖返還を、日本政府やアメリカ政府に求めていきたい」(NHK NEWS WEB)

 政策を訴え、支持を得て形成されることになった大部分の民意を、それが望む形通りに実現していくのが民主主義であって、政治はそのような民主主義に基づいて実施されなければならないはずだ。実施されなければ、民主主義ではなくなる。
 ところが安倍政権は沖縄県知事選で示されることになった民意の実現を従来通りに拒む姿勢に出た。このことは民主主義実践の拒絶を意味する。

 「産経ニュース」(2018.10.1 12:57) 

 11月1日午前の記者会見。

 菅義偉「政府としては早期に辺野古移設と普天間飛行場返還を実現したい考え方に変わりはない。問題の原点は市街地に位置し、世界で一番危険といわれる普天間飛行場の危険除去と返還だ。移設が実現すれば安全は格段に向上し、騒音も大幅に軽減される」

 日本全体の面積に対して0.6%の面積しかない沖縄に日本全体のアメリカ軍専用施設の約70%が集中し、沖縄本島の約15%を占めている。この不公平・不平等に基づいて大部分の沖縄県民が県知事選で示すことになった民意は普天間基地は同じ沖縄県内の辺野古への移設ではなく、本土か国外への移設であって、単なる土地の取替えではない。

菅義偉は県知事選挙戦告示前も告示後の選挙戦中も沖縄に乗り込んで、辺野古移設反対の民意がデニー玉城当選という形で現実になるのを阻止すべく懸命に努めた。だが、その努力は破れた。単に自分たちが推薦した候補が落選したという意味ではなく、辺野古移設反対の民意に打ち勝つことができなかったという意味を含む。

 いわば辺野古移設賛成の民意を打ち立てることができなかった。

 尤も安倍政権が推す佐喜真淳は辺野古移設への賛否を明らかにせず、日本一危険だからと、普天間基地の返還のみを訴える争点隠しの戦術で沖縄県民の生活向上を主として訴え、辺野古移設反対の民意が当選の原動力となって力を得て、その力がデニー玉城の政策の力となることを防ごうとした。
 
 かくこのように沖縄県知事選は辺野古移設反対の民意が次期県知事の公の政策として罷り通らせることになるのか、そうはさせまいとする戦いであった。安倍政権が選挙で辺野古移設反対の民意を阻止できなかったことが明らかとなり、逆に県知事の政策として信任させることになった以上、民主主義の原則に則って沖縄県民が示すことになった民意を民意として認め、その実現に力を貸すべきだが、安倍政権はそれを無視し、「政府としては早期に辺野古移設と普天間飛行場返還を実現したい考え方に変わりはない」との態度を取る。

 民意の無視は民主主義の無視に他ならない。それを平気で行う。

 安倍晋三は選挙結果を受けて、いわば行き着いた民意を受けて、10月1日、首相官邸に入る際に記者団に対して「先ず改めて翁長知事のご冥福をお祈りしたい。選挙の結果は政府としては真摯に受け止め、今後、沖縄の振興、そして基地負担の軽減に努めていく」(NHK NEWS WEB)と述べたという。

 安倍晋三は辺野古移設反対の民意阻止の選挙として位置づけ、戦いながら、阻止できずに次期県知事の優先政策とすることになるその民意には一言も触れていない。阻止できなかった民意を潔く認めることはしないままに沖縄の振興と基地負担軽減の民意にすり替えようとしている。

 民意の無視は民主主義に反するばかりか、民主主義に則らないこと自体が卑怯な振舞いとなる。

 安倍晋三は2016年7月の都知事選では自公与党が推薦した増田寛也が小池百合子に破れ、同7月の参院選後の「改造内閣発足記者会見」の際、記者の質問に答えて次のように発言している。

 記者「東京新聞の関口と申します。先の東京都知事選についてお尋ねします。

 自民党と公明党推薦の候補を破って、第1次安倍政権で防衛大臣を務められた小池さんが都知事に就任されました。自民党が分裂した選挙結果をどう受けとめられ、小池都政とどう向き合うお考えでしょうか」

 安倍晋三「今回、都知事選挙で示された民意を私たちはしっかりと自民党においても当然かみしめていかなければならないと考えています」

 都知事選の結果は民意と認め、沖縄県知事選の結果は民意と認めない。この民主主義に反する狡猾なダブルスタンダードは如何ともし難い。

 /2016年6月1日の「消費税増税再延期記者会見」(首相官邸サイト)

 安倍晋三「この(2016年7月の参院)選挙でしっかりと、自民党、公明党、与党で『過半数』という国民の信任を得た上で、(消費税増税再延期の)関連法案を秋の臨時国会に提出し、アベノミクスを一層加速させていく。その決意であります」

 安倍晋三は自分たちの選挙に勝ち、それ相応の議席を獲得したなら、即、国民の信任を得た民意と認める。あるいは2014年12月14日投開票の衆議院選挙では解散自体を「アベノミクス解散」だと銘打ち、選挙戦ではアベノミクスの是非を争点の前面に押し立てたものの憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認や自衛隊海外派兵を含めた安全保障政策は争点の背後に置いて大勝するや、安全保障政策にしても国民の信任を得た民意に変え、2016年7月の参院選挙では改憲を可能とする3分の2を自民党のみでか、あるいは改憲勢力を合わせて獲得できるかが話題となったが、安倍晋三は「最大の争点は経済政策だ」と言って、衆院選と同じようにアベノミクスの是非を争点の前面に押し立て、改憲については争点化を避け、その争点隠しのもと、憲法改正に前向きなおおさか維新の会等を加えて3分の2を超える改憲勢力を築くことに成功するや、改憲をも国民の信任を得た民意の如くに取り扱って、改憲に向けた政策をおおっぴらに進めようとする。

 民意に於ける安倍晋三の拡大解釈は自己中心的で巧妙である。今回の沖縄県知事選でも、それが現れた。前回の翁長雄志当選の県知事選と同じだが、デニー玉城当選という形で現れた辺野古移設反対の民意を民主主義のルールを好きなように変えて民意として認める姿勢を示していない。民主主義の完全無視状態にある。 

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