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玉城デニーは普天間の辺野古移設阻止で安倍政権を踊らすことができるのか、阻止できないままに自身が踊るだけで終わることになるのか。
安倍晋三は2018年10月15日午後の臨時閣議で消費税を法律で定められた通りに引き上げる予定だと発言したという。あくまでも予定である。消費税引き上げの前の夏に参院選がある。安倍晋三のことだから、選挙勝利のために三度目の延期を利用しないとも限らない。
「時事ドットコム」/2018/10/15-18:41)
安倍晋三首相が15日の臨時閣議で発言した内容は次の通り。
消費税率については法律で定められた通り、2019年10月1日に現行の8%から10%に2%引き上げる予定だ。
5年半に及ぶアベノミクスの推進により、生産年齢人口が450万人減少する中においても、経済は12.2%成長した。雇用は250万人増え、正規雇用も78万人増えた。
今こそ、少子高齢化という国難に正面から取り組まなければならない。お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換し、同時に財政健全化も確実に進めていく。
今回の引き上げ幅は2%だが、前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する。
第一に、消費税率引き上げ分の使い道を変更し、2%の引き上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元する。来年10月1日から認可・無認可、併せて幼児教育を無償化する。
第二に、軽減税率を導入し、家計消費の4分の1を占める飲食料品については、消費税を8%のまま据え置く。軽減税率の実施に向けて、準備に遺漏がないようお願いする。
第三に、引き上げ前後の消費を平準化するための十分な支援策を講じる。消費税引き上げ後の一定期間に限り、中小小売業に対し、ポイント還元といった新たな手法による支援を行う。さらに、商店街の活性化のための対策もしっかりと講じる。
また、消費税の引き上げ前後で消費者の皆さんに安心して購買いただくために、消費税引き上げ前後に柔軟に価格付けができるよう、ガイドラインを整備する。もちろん、同時に、中小企業が取引先に対して、消費税を円滑に転嫁できるよう、対策を講じる。
第四に、消費税負担が大きく感じられる大型耐久消費財について、来年10月1日以降の購入にメリットが出るように、税制・予算措置を講じる。
自動車については、来年10月1日以降に購入する自動車の保有にかかる税負担の軽減について検討を行い、今年末までに結論を出していただけるよう、(与)党に審議をお願いする。住宅についても、来年10月1日以降の購入などについて、メリットが出るよう施策を準備する。
こうした対策に加え、国民的な関心事となっている防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための緊急対策をさらにしっかりと講じていく。
来年度、再来年度予算において、消費税対応で臨時・特別の措置を講じていく。消費税率引き上げによる経済的影響を確実に平準化できる規模の予算を編成していく。
相変わらずご都合主義な内容となっている。「今こそ、少子高齢化という国難に正面から取り組まなければならない」と言っているが、少子高齢化は1970年代半ば(昭和50年代初め)頃から始まり、2005年(平成17年)には出生数と死亡数の差は2万1266人のマイナスに転じて、長期の人口減少過程に入り、今日に至っている。「今」に始まったわけでもないにも関わらず、それを「今こそ」と言う。
第2次安倍政権の「5年半」をも含めた過去約40年間の無策を隠して安倍政権最後の3年間に希望を与えようとする詭弁に過ぎない。
全世代型の社会保障制度への転換と同時に財政健全化の確実な推進を約束しているが、自身も何度も「財政健全化」を唱えながら、実効性を与えることができずに年々の国家予算を赤字国債発行に頼って国債残高を累増、いわば返済が借金に追いつかない借金漬けの状況を改善もできていないままに財政健全化の確実な推進を言う、殆どペテンに近い。
財務省の「公債残高の累増」案内のページには、〈平成30年度末公債残高は約883兆円の見込みで、勤労者世帯の平均年間可処分所得約514万円に対して国民1人当たり約700万円、4人家族で約2798万円の借金〉となり、これで帳消しとならずに年々増えていき、〈平成30年度一般会計税収予算額約59兆円から計算すると、一般会計税収の約15年分に相当〉の公債残高であることが書いてある。
当然、「全世代型の社会保障制度」にしても消費税に頼る部分があっても、借金の影響を受けないわけはなく、既に方針として示され、一部分実施されている社会保障給付費の減額、特に中低所得層の更なる自己負担増となって跳ね返ることになる局面か、消費税の尚一層の増税に直面する可能性は否定できない。
となると、「消費税率引き上げ分の使い道を変更し、2%の引き上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元」も一時的な効果で終わるカラ約束とならない保証はない。
いわば都合のいいことだけを国民に説明し、都合の悪いことは隠す言葉のマジックがここにはある。
「5年半に及ぶアベノミクスの推進により、生産年齢人口が450万人減少する中においても、経済は12.2%成長した。雇用は250万人増え、正規雇用も78万人増えた」にしても、額面通りの経済状況とすることはできないことになる。額面通りではないことを知っているからこそ、人口の最も多数を占める中低所得層の収入が消費に向かわずに貯蓄に回ることになっている。
何よりもインチキは「今回の引き上げ幅は2%だが、前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する」と言っていることである。
安倍晋三は2014年11月18日に衆議院の解散を告げる「記者会見」(首相官邸)を開いている。
安倍晋三「デフレから脱却し、経済を成長させる、アベノミクスの成功を確かなものとするため、本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました。
しかし、ここで皆様に申し上げておきたいことは、3本の矢の経済政策は確実に成果を上げつつあります。経済政策において最も重要な指標、それはいかなる国においても雇用であり、賃金であります。政権発足以来、雇用は100万人以上増えました。今や有効求人倍率は22年ぶりの高水準です。この春、平均2%以上給料がアップしました。過去15年間で最高です。企業の収益が増え、雇用が拡大し、賃金が上昇し、そして消費が拡大していく、そして景気が回復していくという経済の好循環がまさに生まれようとしています。
・・・・・・・・
成長戦略をさらに力強く実施することで、来年の春、再来年の春、そして、そのまた翌年の春、所得が着実に上がっていく状況をつくり上げてまいります。国民全体の所得をしっかりと押し上げ、地方経済にも景気回復の効果を十分に波及させていく、そうすれば消費税率引き上げに向けた環境を整えることができると考えます。
・・・・・・・・
来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」(文飾は当方)――
そして増税の18カ月延期の判断を国民に仰ぐための解散だと告げた。延期によって喜ばない国民はごく少数派に過ぎないだろう。
「経済の好循環がまさに生まれようとしている」が「アベノミクスの成功を確かなものとするため」には消費税増税を「18カ月延期」し、そのような景気減速の影響を排除した環境下でのアベノミクス「成長戦略の力強い実施」によって国民所得の確実な上昇と地方経済への景気回復の波及を図ることができ、「消費税率引き上げに向けた環境を整えることができる」、あるいは増税できる「経済状況をつくり出すことができる」と約束、更に「平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」と力強く宣言している。
但し消費税率を5%から8%に上げたのは2014年4月1日であり、2012年12月26日発足の第2次安倍政権は1年3カ月後のその日の増税に向けて景気政策を打ってきたはずだが、2014年11月になって18カ月も延期を迫られたのは増税に打ち勝つだけの力強さをアベノミクスは獲得するに至っていなかった、いわば力不足だったことになる。
譬えるなら、1000メートル走る体力を養ったつもりが500メートルしか走る体力しか蓄えることができなかった。だから、あと500メートル走る体力を養うために消費税増税を1年6カ月延期する。要するにアベノミクスによる雇用や賃上げ、企業収益の成果は消費税率8%から10%への増税によって打ち砕かれる恐れがあった。
ところが、2017年4月までに増税ができる経済状況の構築、あるいは増税に向けた環境の整備を首相としての約束(?)、男としての約束(?)を2014年11月18日の記者会見で披露しておきながら、2016年6月1日の「記者会見」で約束を見事反故にし、更に30カ月延期して2019年10月1日に増税の着地点を持っていくことになった。
増税延期の理由を「中国など新興国経済に『陰り』が見える」ことに置いていたが、実質的にはアベノミクスによって増税可能な経済環境を構築できなかったに過ぎない。結果的に2014年11月18日の記者会見で「確実に実施いたします」などと口にした約束の全てはカラ約束だったことが明らかになった。
確実に言えることは最初の増税延期が利して衆院選大勝に役立ち、再度の増税延期に関しては、「アベノミクスをもっと加速するのか、それとも後戻りするのか。これが来る参議院選挙の最大の争点であります」(2016年6月1日記者会見発言)と巧妙にアベノミクスの是非を争点と見せかけているが、実質的には増税再延期が利して参院選大勝に役立ったということである。
このように過去の増税延期の際の発言がカラ約束で成り立たせていることからすると、2018年10月15日午後の臨時閣議で発言した、「今回の引き上げ幅は2%だが、前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する」云々が如何にインチキに満ちているか明らかとなる。
第2次安倍政権の2012年12月26日発足から消費税率の5%から8%への増税がスケジュール表に載っていた2014年4月1日に向けて数々の手を打ったアベノミクス景気対策が増税に役立たなかったばかりか、二度も増税を延期せざるを得なかったのだから、「3%引き上げの経験」にしても活かすことができなかったことになるにも関わらず、その経験を如何にも役立たせることができるかのように言葉を繕うマヤカシは安倍晋三ならではであろう。
官房長官の菅義偉が10月19日朝、都内のホテルで開かれた経団連の中西会長らとの懇談会に出席し、引き上げに伴う消費の冷え込みなどを抑えるため一層の賃上げに協力を求めたと2018年10月19日付「NHK NEWS WEB」が伝えている。
菅義偉「皆さんの企業収益は過去最高で、ことしの春闘では多くの企業で5年連続賃上げを行っていただいた。経団連の調査でも4分の3以上の企業が年収ベースで3%以上の賃上げを実現したという報告を受けている。
来年の消費税率の引き上げを踏まえて、皆さんには一層の努力を期待したい。これからの3年でデフレを脱却し、経済の好循環を確かなものにしたい」――
安倍政権はアベノミクスの好循環を軌道に乗せるために経済界に「5年連続」の賃上げを要請する官製賃上げに頼らざるを得なかった。この一つを取っても、アベノミクスが1000メートル走行を予定していながら、500m程度しか走ることができなかったことが理解できる。
そして2019年10月1日の10%増税まで1年を切っているこの場に来て増税による景気の腰折れを前以って予防するために賃上げを要請せざるを得ないあり得ないドタバタは増税の「経済状況をつくり出すことができる」と言い、あるいは「消費税率引き上げに向けた環境を整えることができる」と約束していたことを反故としたことの裏返しであろう。
この点からも、「前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する」の言葉の中身の無さは明らかであり、中身が無いからこそのこの場に来ての賃上げ要請というあり得ないドタバタであるはずだ。
要するに他力本願がメインとなっているアベノミクスの好循環に過ぎない。
記事は懇談会後の経団連の中西会長の対記者団発言を伝えている。
中西会長「私は以前から、日本の賃金はずいぶん低く抑えられ続けてきたと思っている。来年、消費税率を引き上げる中で消費がぐっと縮むようなことは避けたいというのは経済界も同じ思いだ」
この発言を以って記事は「賃上げに前向きな姿勢」だと解説している。
ところが、来年の賃上げは必ずしも芳しい環境にあるとは言えない。トランプが10月18日に自らのツイッターに日本との間の貿易の不均衡を是正するためにアメリカへの更なる投資を求める姿勢を示したと「NHK NEWS WEB」記事が伝えていたし、パーデュー米農務長官がワシントンで記者団に対して来年1月にも始まる日米通商交渉で日本側に求める農産品の関税引き下げ幅について「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)と同等か、それを超える水準を期待している」と述べたと「毎日新聞」が伝えている。
日本企業の新たな対米投資にかかる経費にしても、日本側の農産品の関税引き下げによって農家のみならず、農産品を扱う企業にも負担が生じることになる経費にしても、賃上げの余地を狭める要因となりかねない。
いわばトランプの米国一国主義によって日本の経済は先行き不透明な状況に立たされないとも限らない。その影響を受けて来年の賃上げが安倍政権にとって想定外な小幅な金額か、全体的に行き渡らない無残な有様だったなら、夏には控えている参院選に勝利するためにも、2度も延期した前科があるのだと開き直って、三度目の延期へ持っていかない保証はない。
こういった諸々の状況が想定されること、あるいは消費税増税に向けた約束を反故にしてきた影響が2019年10月1日の消費税増税に向けたこの場に来てのあり得ないドタバタとなって現れているということでもあるのだろう。
玉城デニーは普天間の辺野古移設阻止で安倍政権を踊らすことができるのか、阻止できないままに自身が踊るだけで終わることになるのか。
安倍晋三は2018年10月15日午後の臨時閣議で消費税を法律で定められた通りに引き上げる予定だと発言したという。あくまでも予定である。消費税引き上げの前の夏に参院選がある。安倍晋三のことだから、選挙勝利のために三度目の延期を利用しないとも限らない。
「時事ドットコム」/2018/10/15-18:41)
安倍晋三首相が15日の臨時閣議で発言した内容は次の通り。
消費税率については法律で定められた通り、2019年10月1日に現行の8%から10%に2%引き上げる予定だ。
5年半に及ぶアベノミクスの推進により、生産年齢人口が450万人減少する中においても、経済は12.2%成長した。雇用は250万人増え、正規雇用も78万人増えた。
今こそ、少子高齢化という国難に正面から取り組まなければならない。お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換し、同時に財政健全化も確実に進めていく。
今回の引き上げ幅は2%だが、前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する。
第一に、消費税率引き上げ分の使い道を変更し、2%の引き上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元する。来年10月1日から認可・無認可、併せて幼児教育を無償化する。
第二に、軽減税率を導入し、家計消費の4分の1を占める飲食料品については、消費税を8%のまま据え置く。軽減税率の実施に向けて、準備に遺漏がないようお願いする。
第三に、引き上げ前後の消費を平準化するための十分な支援策を講じる。消費税引き上げ後の一定期間に限り、中小小売業に対し、ポイント還元といった新たな手法による支援を行う。さらに、商店街の活性化のための対策もしっかりと講じる。
また、消費税の引き上げ前後で消費者の皆さんに安心して購買いただくために、消費税引き上げ前後に柔軟に価格付けができるよう、ガイドラインを整備する。もちろん、同時に、中小企業が取引先に対して、消費税を円滑に転嫁できるよう、対策を講じる。
第四に、消費税負担が大きく感じられる大型耐久消費財について、来年10月1日以降の購入にメリットが出るように、税制・予算措置を講じる。
自動車については、来年10月1日以降に購入する自動車の保有にかかる税負担の軽減について検討を行い、今年末までに結論を出していただけるよう、(与)党に審議をお願いする。住宅についても、来年10月1日以降の購入などについて、メリットが出るよう施策を準備する。
こうした対策に加え、国民的な関心事となっている防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための緊急対策をさらにしっかりと講じていく。
来年度、再来年度予算において、消費税対応で臨時・特別の措置を講じていく。消費税率引き上げによる経済的影響を確実に平準化できる規模の予算を編成していく。
相変わらずご都合主義な内容となっている。「今こそ、少子高齢化という国難に正面から取り組まなければならない」と言っているが、少子高齢化は1970年代半ば(昭和50年代初め)頃から始まり、2005年(平成17年)には出生数と死亡数の差は2万1266人のマイナスに転じて、長期の人口減少過程に入り、今日に至っている。「今」に始まったわけでもないにも関わらず、それを「今こそ」と言う。
第2次安倍政権の「5年半」をも含めた過去約40年間の無策を隠して安倍政権最後の3年間に希望を与えようとする詭弁に過ぎない。
全世代型の社会保障制度への転換と同時に財政健全化の確実な推進を約束しているが、自身も何度も「財政健全化」を唱えながら、実効性を与えることができずに年々の国家予算を赤字国債発行に頼って国債残高を累増、いわば返済が借金に追いつかない借金漬けの状況を改善もできていないままに財政健全化の確実な推進を言う、殆どペテンに近い。
財務省の「公債残高の累増」案内のページには、〈平成30年度末公債残高は約883兆円の見込みで、勤労者世帯の平均年間可処分所得約514万円に対して国民1人当たり約700万円、4人家族で約2798万円の借金〉となり、これで帳消しとならずに年々増えていき、〈平成30年度一般会計税収予算額約59兆円から計算すると、一般会計税収の約15年分に相当〉の公債残高であることが書いてある。
当然、「全世代型の社会保障制度」にしても消費税に頼る部分があっても、借金の影響を受けないわけはなく、既に方針として示され、一部分実施されている社会保障給付費の減額、特に中低所得層の更なる自己負担増となって跳ね返ることになる局面か、消費税の尚一層の増税に直面する可能性は否定できない。
となると、「消費税率引き上げ分の使い道を変更し、2%の引き上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元」も一時的な効果で終わるカラ約束とならない保証はない。
いわば都合のいいことだけを国民に説明し、都合の悪いことは隠す言葉のマジックがここにはある。
「5年半に及ぶアベノミクスの推進により、生産年齢人口が450万人減少する中においても、経済は12.2%成長した。雇用は250万人増え、正規雇用も78万人増えた」にしても、額面通りの経済状況とすることはできないことになる。額面通りではないことを知っているからこそ、人口の最も多数を占める中低所得層の収入が消費に向かわずに貯蓄に回ることになっている。
何よりもインチキは「今回の引き上げ幅は2%だが、前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する」と言っていることである。
安倍晋三は2014年11月18日に衆議院の解散を告げる「記者会見」(首相官邸)を開いている。
安倍晋三「デフレから脱却し、経済を成長させる、アベノミクスの成功を確かなものとするため、本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました。
しかし、ここで皆様に申し上げておきたいことは、3本の矢の経済政策は確実に成果を上げつつあります。経済政策において最も重要な指標、それはいかなる国においても雇用であり、賃金であります。政権発足以来、雇用は100万人以上増えました。今や有効求人倍率は22年ぶりの高水準です。この春、平均2%以上給料がアップしました。過去15年間で最高です。企業の収益が増え、雇用が拡大し、賃金が上昇し、そして消費が拡大していく、そして景気が回復していくという経済の好循環がまさに生まれようとしています。
・・・・・・・・
成長戦略をさらに力強く実施することで、来年の春、再来年の春、そして、そのまた翌年の春、所得が着実に上がっていく状況をつくり上げてまいります。国民全体の所得をしっかりと押し上げ、地方経済にも景気回復の効果を十分に波及させていく、そうすれば消費税率引き上げに向けた環境を整えることができると考えます。
・・・・・・・・
来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」(文飾は当方)――
そして増税の18カ月延期の判断を国民に仰ぐための解散だと告げた。延期によって喜ばない国民はごく少数派に過ぎないだろう。
「経済の好循環がまさに生まれようとしている」が「アベノミクスの成功を確かなものとするため」には消費税増税を「18カ月延期」し、そのような景気減速の影響を排除した環境下でのアベノミクス「成長戦略の力強い実施」によって国民所得の確実な上昇と地方経済への景気回復の波及を図ることができ、「消費税率引き上げに向けた環境を整えることができる」、あるいは増税できる「経済状況をつくり出すことができる」と約束、更に「平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」と力強く宣言している。
但し消費税率を5%から8%に上げたのは2014年4月1日であり、2012年12月26日発足の第2次安倍政権は1年3カ月後のその日の増税に向けて景気政策を打ってきたはずだが、2014年11月になって18カ月も延期を迫られたのは増税に打ち勝つだけの力強さをアベノミクスは獲得するに至っていなかった、いわば力不足だったことになる。
譬えるなら、1000メートル走る体力を養ったつもりが500メートルしか走る体力しか蓄えることができなかった。だから、あと500メートル走る体力を養うために消費税増税を1年6カ月延期する。要するにアベノミクスによる雇用や賃上げ、企業収益の成果は消費税率8%から10%への増税によって打ち砕かれる恐れがあった。
ところが、2017年4月までに増税ができる経済状況の構築、あるいは増税に向けた環境の整備を首相としての約束(?)、男としての約束(?)を2014年11月18日の記者会見で披露しておきながら、2016年6月1日の「記者会見」で約束を見事反故にし、更に30カ月延期して2019年10月1日に増税の着地点を持っていくことになった。
増税延期の理由を「中国など新興国経済に『陰り』が見える」ことに置いていたが、実質的にはアベノミクスによって増税可能な経済環境を構築できなかったに過ぎない。結果的に2014年11月18日の記者会見で「確実に実施いたします」などと口にした約束の全てはカラ約束だったことが明らかになった。
確実に言えることは最初の増税延期が利して衆院選大勝に役立ち、再度の増税延期に関しては、「アベノミクスをもっと加速するのか、それとも後戻りするのか。これが来る参議院選挙の最大の争点であります」(2016年6月1日記者会見発言)と巧妙にアベノミクスの是非を争点と見せかけているが、実質的には増税再延期が利して参院選大勝に役立ったということである。
このように過去の増税延期の際の発言がカラ約束で成り立たせていることからすると、2018年10月15日午後の臨時閣議で発言した、「今回の引き上げ幅は2%だが、前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する」云々が如何にインチキに満ちているか明らかとなる。
第2次安倍政権の2012年12月26日発足から消費税率の5%から8%への増税がスケジュール表に載っていた2014年4月1日に向けて数々の手を打ったアベノミクス景気対策が増税に役立たなかったばかりか、二度も増税を延期せざるを得なかったのだから、「3%引き上げの経験」にしても活かすことができなかったことになるにも関わらず、その経験を如何にも役立たせることができるかのように言葉を繕うマヤカシは安倍晋三ならではであろう。
官房長官の菅義偉が10月19日朝、都内のホテルで開かれた経団連の中西会長らとの懇談会に出席し、引き上げに伴う消費の冷え込みなどを抑えるため一層の賃上げに協力を求めたと2018年10月19日付「NHK NEWS WEB」が伝えている。
菅義偉「皆さんの企業収益は過去最高で、ことしの春闘では多くの企業で5年連続賃上げを行っていただいた。経団連の調査でも4分の3以上の企業が年収ベースで3%以上の賃上げを実現したという報告を受けている。
来年の消費税率の引き上げを踏まえて、皆さんには一層の努力を期待したい。これからの3年でデフレを脱却し、経済の好循環を確かなものにしたい」――
安倍政権はアベノミクスの好循環を軌道に乗せるために経済界に「5年連続」の賃上げを要請する官製賃上げに頼らざるを得なかった。この一つを取っても、アベノミクスが1000メートル走行を予定していながら、500m程度しか走ることができなかったことが理解できる。
そして2019年10月1日の10%増税まで1年を切っているこの場に来て増税による景気の腰折れを前以って予防するために賃上げを要請せざるを得ないあり得ないドタバタは増税の「経済状況をつくり出すことができる」と言い、あるいは「消費税率引き上げに向けた環境を整えることができる」と約束していたことを反故としたことの裏返しであろう。
この点からも、「前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する」の言葉の中身の無さは明らかであり、中身が無いからこそのこの場に来ての賃上げ要請というあり得ないドタバタであるはずだ。
要するに他力本願がメインとなっているアベノミクスの好循環に過ぎない。
記事は懇談会後の経団連の中西会長の対記者団発言を伝えている。
中西会長「私は以前から、日本の賃金はずいぶん低く抑えられ続けてきたと思っている。来年、消費税率を引き上げる中で消費がぐっと縮むようなことは避けたいというのは経済界も同じ思いだ」
この発言を以って記事は「賃上げに前向きな姿勢」だと解説している。
ところが、来年の賃上げは必ずしも芳しい環境にあるとは言えない。トランプが10月18日に自らのツイッターに日本との間の貿易の不均衡を是正するためにアメリカへの更なる投資を求める姿勢を示したと「NHK NEWS WEB」記事が伝えていたし、パーデュー米農務長官がワシントンで記者団に対して来年1月にも始まる日米通商交渉で日本側に求める農産品の関税引き下げ幅について「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)と同等か、それを超える水準を期待している」と述べたと「毎日新聞」が伝えている。
日本企業の新たな対米投資にかかる経費にしても、日本側の農産品の関税引き下げによって農家のみならず、農産品を扱う企業にも負担が生じることになる経費にしても、賃上げの余地を狭める要因となりかねない。
いわばトランプの米国一国主義によって日本の経済は先行き不透明な状況に立たされないとも限らない。その影響を受けて来年の賃上げが安倍政権にとって想定外な小幅な金額か、全体的に行き渡らない無残な有様だったなら、夏には控えている参院選に勝利するためにも、2度も延期した前科があるのだと開き直って、三度目の延期へ持っていかない保証はない。
こういった諸々の状況が想定されること、あるいは消費税増税に向けた約束を反故にしてきた影響が2019年10月1日の消費税増税に向けたこの場に来てのあり得ないドタバタとなって現れているということでもあるのだろう。