安倍晋三:森友・加計疑惑を国民目線からの素朴な疑念で免罪、行政の公平を責務としているが如く言う鉄面皮

2018-08-14 11:45:34 | 政治
 

  【鉄面皮】「《鉄でできている面(つら) の皮の意》恥知らずで、厚かましいこと。また、その人や、そのさま。厚顔」「goo辞書」

 この「鉄面皮」という言葉にはウソつきの意味を含む。ウソつきでなければ、恥知らずで、厚かましい態度を取ることはできない。

 2018年8月13日付「毎日新聞」記事が安倍晋三の8月12日に行った山口県下関市の講演での発言を伝えている。

 安倍晋三「(自身の政治姿勢について)国家、国民のために何をなすべきか。その大義の下で行政を公平に司る(つかさど)。これは首相として当たり前の責務だ」

 要するに首相の当然の責務として「行政を公平に司」り、「国家、国民のために」尽くしてきたと誰憚ることなく、そして恥ずかしげもなく堂々と高言している。

  【高言】「偉そうに大きなことを言うこと。また、その言葉」「goo辞書」

 記事は、〈森友問題で妻昭恵氏の、加計問題で親友の加計孝太郎・加計学園理事長の関わりが問題視されたことについて〉次のように発言したと紹介している。

 安倍晋三「国民の目線に立てば、私の妻や長年の友人が関わっていたのであれば疑念の目が向けられることは当然で、意識が必ずしも十分ではなかった。慎重の上にも慎重に政権運営に当たらなければならない」

 いわば「私の妻や長年の友人が関わっていた」のだから、「国民の目線」から見れば、「疑念の目が向けられることは当然」だとの言い回しで、森友・加計疑惑を妻や友人が関わっていたことのみが原因した国民の一般的な感覚上生じた、それゆえに素朴な疑念に過ぎないとしていることになる。

 森友・加計疑惑が事実その通りの国民目線から発せられた素朴な疑念に過ぎないと片付けることができるなら、安倍晋三の発言は何の誤魔化しもなく、公平な行政を口にする資格は十二分に備えている。

 言っていることが事実でなかったなら、国民目線からの素朴な疑念で収めて、その程度のことに過ぎないと鉄面皮にも自らを免罪していることになる。

 記事はさらに「安倍1強」と言われる政治状況に関しての発言を伝えている。

 安倍晋三「ふるさとの皆さんが一番分かっている通り、私は極めて融和的な人間だ。強権的な遣り方なんて長続きしない」

 「私は極めて融和的な人間だ」と発言したとき、記事は笑いを誘ったと書いている。言っていることは、「自分は安倍1強に反して強権的な遣り方には無縁な極めて融和的な人間であって、だから5年8カ月近くも政権が続いた」という意味を取る。

 但し強権的であるゆえに長期政権となる例は世界に事欠かない。そもそもからして「安倍1強」という言葉からは「融和的な」な色彩を見つけ出すことはできない。何事も「融和的」であったなら、「安倍1強」と表現されることはない。

 その上、「極めて融和的な人間」であることを「一番分かっている」のは「ふるさとの皆さん」としていて、国民おしなべての理解だと自信を持って言い切っているわけではない。

 山口県下関市は安倍晋三の地元である。当然、そこでの講演となると、席を占めるのは敵情偵察が何人かはいるかも知れないが、殆どは安倍晋三支持者で占められる。支持者ともなると、贔屓の引き倒しの特別扱いをすることになって、人物像を優れた長所のみでつくり上げることになる。

 そういった支持者の特別誂えの色メガネに頼って、自身が「極めて融和的な人間」であることを証明した。逆説するなら、そういった支持者の特別誂えの色メガネに頼らなければ、自身が「極めて融和的な人間」であることを証明できなかったということになる。

 国民おしなべての理解でない以上、「ふるさとの皆さん」の理解に限った「極めて融和的な人間だ」とする自己評価は公平な判断とは決して認めることはできない。

 一国の首相でありながら、全国区ではなく、地元のみの地方区での評価をさも全国区での評価のように装う。その巧妙さは森友・加計疑惑を国民目線から発した素朴な疑念に過ぎないと自己免罪し、行政の公平を責務としているが如くに言う鉄面皮さと同様、信用出来ない如何わしさを抱えている。

 2017年7月と2018年4月の「朝日新聞世論調査」で、「どの程度首相を信用できるか」を聞いている。

 2017年7月調査

 「信用できる」(内閣支持層79%)

 「大いに」4%
 「ある程度」32%
 合計36%

 「信用できない」(内閣不支持層91%)

 「あまり」40%
 「まったく」21%
 合計61

 2018年4月調査
 
 「信用できる」

 「大いに」4%
 「ある程度」27%
 合計31%

 「信用できない」

 「あまり」37%
 「まったく」29%
 合計66%

 「長期政権の弊害を感じるか」

 「感じる」(自民支持層56%)
 「大いに」+「ある程度」59%

 「感じない」
 「あまり」+「まったく」37%

 「極めて融和的な人間だ」とする自己評価とは程遠い姿を描き出している。もし事実「融和的な人間」であったなら、余程の失政がない限り、支持率と不支持率の逆転現象を招くことは先ずあるまい。

 かくかように自己を公平・客観的に見る自己省察能力を全くと言っていい程に持ち合わせていない。このような政治家が「首相として当たり前の責務だ」との使命感をいくら掲げようと、「行政を公平に司る」ことなどできようはずはないし、「極めて融和的な人間」を演じることはできない。

 ことことは第1次安倍内閣でも数々演じてきたが。第2次安倍内閣に於いて特定秘密保護法の強行採決、TPP承認案と関連法案の強行採決、働き方関連法案の強行採決、安保関連法案、その他の頭数を力とした強行採決から窺うことができる強権性が証明することになる。

 森友・加計疑惑を国民目線から発した素朴な疑念に過ぎない、大したことはないと自己免罪して幕引きを図る。強権性を自らの政治姿勢としていながら、当然、「極めて融和的な人間」であるはずはないのに地元支持者の評価を以ってしてそのような人間だと自己規定する。

 鉄面皮なまでのウソつきだということである。次期総裁として安倍晋三を支持している7割の自民党国会議員とそのような国会議員に右へ倣えする地方党員はウソつきのウソに乗って安倍晋三に投票し、今後3年間ウソつきの首相の首を繋ぐことになる。
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石破茂の総裁選立候補発言「正直、公正」は安倍晋三人格への対義語 対義性を象徴するモリカケ問題を改めて振返る

2018-08-13 11:59:46 | Weblog
 

 自民党の元幹事長石破茂が2018年8月10日、国会内で記者会見し、9月の党総裁選への出馬を正式に表明した。各発言は「産経ニュース」(2018.8.10 19:26)記事から引用。

 「私は、正直で公正、そして、謙虚で丁寧。そういう政治を作りたいと思っております。しかし、なぜ今の時代、正直で公正、丁寧で謙虚、そのような政治が求められるのか。それはこれから先、わが日本国が直面する大きな課題に対応していくためには『日本の設計図』を書き換えていかなければいけないからであります」

 「政治が国民の皆さま方に対して、誠実で謙虚で正直に勇気を持って真実を語る。その姿勢が必要であります。そして国民の皆さま方、その政治の語りかけに対して納得と共感を寄せていただく、信頼を寄せていただく。そうでなければ設計図を書き換えることなどはできません」――

 石破茂は言っている。

 「正直で公正、そして、謙虚で丁寧。そういう政治を作りたい」

 「政治が国民の皆さま方に対して、誠実で謙虚で正直に勇気を持って真実を語る。その姿勢が必要であります」

 誰でもが気づくことだが、安倍晋三が「正直で公正、そして、謙虚で丁寧。そういう政治」をモットーとし、実践していたなら、石破茂はこのような政治姿勢の目標を掲げることはできない。異なる対抗軸を口にしなければならなかったはずだ。

 そして「日本国が直面する大きな課題に対応していくために」書き換えるべき「日本の設計図」について次のように発言している。

 少子高齢化、世代間格差、地域間格差、賃金格差等々の固定化の是正、あるいは「激変する安全保障環境、経済環境」への対応のために「私は設計図を書き換えたいと思っています。政治の信頼が必要だというのは、まさしくそのような状況にわれわれが直面しているからであります」

 いわば各政策遂行の基本はあくまでも国民の側からの「政治の信頼」であり、そのためには政治を行う側が「正直で公正、そして、謙虚で丁寧」でなければならないと、それらの必要性を訴えているが、必要性は現状での不足性を裏打ちとして成り立つ。

 そして必要とする具体例を一つ挙げている。「官邸の信頼回復、官邸において、どのような意思決定がなされるか。内閣人事局のあり方はあくまで国民に奉仕する、そのような観点から、見直していきたいと思っております」

 「官邸の信頼回復」は「内閣人事局のあり方」と重なる。内閣人事局は第2次安倍政権下の2014年5月30日に内閣官房に設置された内部部局の一つで、各省庁の幹部人事を担うが、内閣官房の長は総理大臣たる安倍晋三である。

 そして内閣人事局の初代局長は安倍晋三の腰巾着である自由民主党総裁特別補佐、一億総活躍担当大臣、拉致問題担当大臣の加藤勝信、2代目が同じく安倍晋三の腰巾着自由民主党総裁特別補佐、自由民主党幹事長代行の萩生田光一、3代目が元警察官僚で内閣官房副長官を兼任している杉田和博であって、要するに各省庁の次官や局長クラスの幹部人事は官房長官の菅義偉を通して安倍晋三の意向が働く組織構成となっているゆえに国民の官邸への信頼があくまでも基本であって、それがなければ、これらの人事への信頼も失うことになるから、石破茂は「官邸の信頼回復」と併行させて「内閣人事局のあり方」として国民への奉仕を挙げた。

 現実問題としても、森友国有地格安売却に対する疑惑で国会で質問の矢面に立った財務省理財局長の佐川宣寿が2017年7月に国税庁長官に突然栄転した人事は疑惑隠蔽の働きと口止め料を合わせた論功行賞ではないかと多くの国民の不信を招いた。

 要するに「官邸の信頼回復」は「内閣人事局のあり方」にもかかっているが、安倍内閣はその信頼性を確立し得ていないとの警告であろう。

 冒頭発言後の記者との質疑で石破茂は信頼性喪失の例を暗に示唆している。

 「国民の皆さま方が色んな事象について『本当なんだろうか』という思いを持っておられることは事実であります。現政権がどうのこうのということではなくて、私自身、正直でありたい。公正でありたい。心がけてまいりました。国民の皆さま方に『今の政権は公正だね、正直だね』というような思いを持ってもらわなければ、政治はその役割を果たすことができないと思っております」

 「本当に人間は無謬ではありません。私ももちろんですが、間違えることはあります。失敗することも多くあります。それを謙虚に認めて、間違いは間違いと認めて、おわびをするという姿勢は、私は必要なものだと思っております。なんにも間違っていない。責任は自分にはない。少なくともそれは私のやり方ではございません」

 「総理秘書官をはじめとする官邸スタッフはどういう人に会ってどういう人に会わないのかということがよくわからない、ということであってはなりません。秘書官をはじめとする総理の周りのスタッフは、ある意味超多忙な総理大臣の分身でもございます。どういう人に会い、どういう人に会わないのか、どういうような会話がなされ、それが政策決定にどのような影響を及ぼしたか。それは私が国務大臣を務めておりましたときも、秘書官たちにはそのことをよく申しておりました。それがきちんと評価をされるようでなければなりません。そのような官邸の信頼回復が必要だと考えています」

 これらの発言は主としてモリカケ問題を念頭に置いた発言であろう。モリカケ問題に対する安倍晋三の国会答弁に国民の多くが「本当なんだろうか」という不信感を抱かざるを得ないから、世論調査でモリカケ問題は「決着していない」が80%近くを占めることになっている。

 このような数値は官邸への信頼度に対応する。要するに「謙虚に認めて、間違いは間違いと認め」るのとは正反対に正直に事実を述べていないと見ていることからの信頼性の欠如であろう。
 
 「総理秘書官をはじめとする官邸スタッフはどういう人に会ってどういう人に会わないのかということがよくわからない、ということであってはなりません」と言っていることは、勿論、加計学園獣医学部認可に関わる安倍晋三の発言を指している。

 その一例である2018年5月14日の衆院予算委の発言を見てみる。

 安倍晋三「そもそも秘書官が私に案件を報告してくるのは、私が何らか判断する必要があるときが基本でありまして、国家の重大事でもない限り、途中段階で説明を受けることは、これは殆どないと言ってもいいと思います」

 首相秘書官は総理大臣の意向・指示に従って動く。にも関わらず、途中経過や成果に関しての報告は首相秘書官自身が主体的に適宜判断して行うのではなく、「私が何らか判断する必要があるときが基本」だとしていることは、安倍晋三は首相秘書官に対して自分の意志・判断で行動する主体性を制限した存在に貶めていることを示す。

 主体性を制限されて喜ぶ有能な官僚とは倒錯そのもので、果たしてそのような従属性に満足するだろうか。

 首相秘書官が例え総理の意向・指示に従って動こうとも、全ての行為に亘って自らが適宜判断して行う主体性を確保していてこそ、物事は適確に進行し、当該人物を首相秘書官に任命した意味が出てくる。

 要するに安倍晋三は柳瀬唯夫首相秘書官から獣医学部認可に向けた報告を適宜受けていたが、それを認めた場合、国会答弁との不一致が出てくるから、ウソをついた。

 結果、首相官邸への信頼度を低めることになっていると見て、石破茂は総裁選立候補に際して安倍晋三の正直、公正とは言えない態度を反面教師とするに至った。

 その一つの方法として首相秘書官が「どういう人に会い、どういう人に会わないのか、どういうような会話がなされ、それが政策決定にどのような影響を及ぼしたか」、全てガラス張りにするということであろう。

 安倍晋三の国民に対する姿勢からはどこをどう見ても、ガラス張りは見えてこない。見えてくるのは石破茂が言っている「誠実で謙虚で正直」のカケラさえも見えない隠し事の存在のみである。

 当然のこと、「誠実で謙虚で正直」は安倍晋三の人格への対義語そのものであって、既にブログに何度も書いているが、ここから対義性を象徴するモリカケ問題を改めて振返ってみる。

 安倍晋三は愛媛県今治市に指定した国家戦略特区利用の新設獣医学部の事業主体が加計学園であることを最初に知ったのは「第27回国家戦略特別区域諮問会議」でそのことを認めた2017年1月20日当日であると国会答弁してきた。ところが愛媛県が2018年5月21日に参議院に提出した文書には2015年2月25日に安倍晋三と加計学園理事長加計孝太郎が15分程度の面会を行い、獣医学部について話し合ったことが記載されていた。

 安倍晋三自身は勿論、加計学園もこの面会を否定した。

 加計学園は5日後の5月26日に〈構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば、活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、(愛媛)県と(今治)市に誤った情報を与えてしまった〉といったコメントを発表した。

 要するに獣医学部新設と認可の「活路」を見い出すために安倍晋三と加計孝太郎のありもしないニセの面会情報を愛媛県と今治市に与えてしまった。

 加計学園理事長加計孝太郎が2018年6月19日に記者会見を行い、ニセの面会情報だったとする同じ趣旨の発言を行っている。

 加計孝太郎「先程申し上げましたように本人が事を前に進めるために申し上げたということでございます」

 加計孝太郎「まあ、前に進めるためにやったという事実しか伺っておりませんので、ま、虚偽の発言と言えば虚偽の発言になんだろうと思いますけれども、前に進めるためにあくまでもやったというふに聞いております。申し訳なかったと思っています」――

 獣医学部新設・認可の「活路」を見い出すために、あるいは「事を前に進めるために」ニセの面会情報をデッチ上げ、利用するについては獣医学部新設・認可の権限を握っている関係省庁、あるいはそのような関係省庁に影響力を行使し得る有力政治家にデッチ上げたニセの面会情報を吹き込み、信じ込ませて動かすところまで持っていなかければ、ニセの面会情報をデッチ上げた意味を失う。

 森友学園の当時の籠池泰典理事長が2015年4月25日に安倍昭恵を校舎建設の国有地に案内したとき、昭恵から「『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」と財務省の役人に伝えたのは安倍昭恵の背後に安倍晋三の意向が働いていることを臭わせ、その意向を忖度させる 少なくとも配慮させるための計算があったからだろう。

 この計算は役人たちが国有地売却の権限を握っているからこそ働くのであって、安倍晋三は国会答弁で「妻は言っていない」と否定しているが、言った・言わないは問題ではなく、役人たちに言ったと信じ込ませることが目的だったはずだ。

 ところが、加計学園がそのニセの面会情報を吹き込み、信じ込ませたのは獣医学部新設・認可に何の権限も持たない、加計学園と同じく新設・認可をお願いする側の愛媛県と今治市にとどまっていて、何の意味も出てこないし、ニセの面会情報としての利用の目的も果たしていない。

 安倍晋三と加計孝太郎の面会が事実だからであって、関係省庁に影響力を行使し得る安倍晋三との面会自体が加計学園獣医学部新設と認可への利用目的となっている。その結果、愛媛県文書が記しているとおりに「首相案件」としての特別の取り計らいを与えられた加計学園獣医学部新設であり認可だったからこそ、愛媛県文書の公表に対して窮余の策として面会をニセとする情報を仕立てなければならなかった。

 だからこそ、権限を握っている関係省庁にまで吹き込むことはなかった尻切れトンボで終わることになった。

 石破茂が総裁選立候補の記者会見で、「正直で公正、そして、謙虚で丁寧」云々と、安倍晋三の人格への対義語となる政治姿勢を掲げ、「官邸の信頼回復」を訴えるのも無理はない安倍晋三の疑惑まみれの姿となっている。
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橋脚に引掛って水を堰き止め、氾濫・洪水を引き起こす前に流木を処理するちょっと突飛な方法

2018-08-10 11:17:42 | Weblog
 

 2018年7月初旬の西日本豪雨では山崩れや土石流の発生によって大量に倒木した樹木が土石や水と共に平野部にまで到達、その多くが川に集積することになって下流に流され、橋脚に引掛って壁を成して水を堰き止め、氾濫を引き起こして洪水の誘因となった。

 これは大型の台風や記録的な豪雨の際に繰返されている災害シーンとなっている。昨年、2017年7月の九州北部豪雨では河川に流れ込んだ流木の総量は約20万トン、36万立方メートルにのぼると推定されていると「Wikipedia」には紹介されている。川の流れをせき止めて氾濫させただけではなく、住宅地にも押し寄せて様々な被害をもたらした。

 大分県日田市の花月川に架かっていたJRの鉄橋はその橋脚に流木が引掛って上流側を氾濫させ、洪水を引き起こしただけではなく、流木と増していく水の圧力に耐えきれずに鉄橋ごと流されることになった。

 こういったことが教訓となったのだろう、国土交通省は「砂防えん堤」の設置を全国で進める方針を決め、都道府県などに通知しという。その「砂防えん堤」は中央に数本の鉄の柱を建てて水を流すが、流木のみを食い止める「透過型」だという。

 だとしても、常に絶対は存在しない。設置した場所に限って山崩れや倒木が発生するという保証はないからだ。日本に存在する山という山の裾近くに「砂防えん堤」を設置する予算は持ち合わせていない。

 2013年1月31日放送の《NHKクローズアップ現代 問われる“維持管理” ~笹子トンネル事故の波紋~》は日本の橋やトンネル、道路等のインフラが老朽化し、「今あるものを、単純に更新していくという費用が一番分かりやすいんですけれども、数年前に私が計算したところでは、現状あるものを現状の規模で更新をするだけでも、年間8.1兆円。これ50年間続けないといけない」と根本祐二東洋大学教授が話していた。

 政府も自治体も借金を重ねながら、老朽化した多くのインフラを誤魔化し誤魔化し維持している。

 透過型の砂防えん堤にしても、鉄柱を建てて水だけを流して流木は流さないようにするというアイディはいいが、流木が橋の橋脚を塞いで川の上流を一種のダム化している例からすると、鉄柱で堰き止められた流木が一定量に達して、その隙間を山土が目地材の役目をして塞いだ場合、ダムのように水まで堰き止めることになって、流木と水の重みで鉄柱を建てた地面が緩んでその部分を崩落させない保証はない。

 それを見込んで頑丈な鉄柱を建てたとしても、カネがかかる分、全国に普及する時間もかかって、災害が待ってくれないということも起こり得る。

 透過型砂防えん堤が普及し、効果を十二分に発揮して、今までのような流木被害を食い止めることができたとしても、そうなることを願っているが、当面の間は台風や豪雨際に流木が橋の橋脚に引掛って水を堰き止め、氾濫や洪水を引き起こす現象はなくならない。

 例え流木が発生しても、橋脚のない橋へと造り変えれば流木は下流に流されていき、ダム化を誘って氾濫や洪水を引き起こす確率を限りなく小さくすることになるが、これも予算の問題に行き着く。

 となると、橋脚で流木が滞らない状況を作り出し、海に流してから片付けるようにすればいいことになる。

 橋という橋に監視カメラをつけるか、できなければ、台風や豪雨の際には監視要員を自治体ごとに配置し、受持ち区域の各橋を巡回させて、流木が横になったり、斜めになったりして1本でも橋脚に引っかかったなら、待機させておいた自衛隊に連絡、自衛隊は兵士個人が携帯し、肩に担いで使用する小火器、肩撃ち式ロケットランチャーの射撃手を急遽派遣、橋脚や橋桁を傷つけないように流木が縦になって流れていく状態になる位置を狙ってロケット弾を発射、それを成功させることを繰返せば、流木は橋脚に遮られて次から次へとその本数を増やしていくことはなくなる。

 破壊能力が高過ぎて橋脚や橋桁を破壊する恐れがあるなら、破壊能力を下げた流木専用のロケットランチャーを開発すればいい。流木が流れるくらいだから、川は濁流となっていて、川にボートを浮かべ、流木に近づくことなどはできない。近づかずに離れた場所から流木を操作するとなったら、他に手はあるのだろうか。

 それともこれまでのように流木が橋脚のある位置で川を塞いでいくのを手をこまねいて眺めるだけということなのだろうか。

 ちょっと突飛な方法だが、非現実過ぎて、試す価値もないだろうか。
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巨大災害時代の記録的大雨に対する一般木造家屋浸水被害防止は建物の完全防水仕様が唯一の方法

2018-08-09 11:55:10 | 政治
 
 
 平成最悪の被害を招いた6月28日から7月8日にかけての記録的大雨による西日本豪雨災害は官房長官の菅義偉が8月6日の記者会見で死者225人、行方不明者11人と発表した。記録的大雨によって洪水や土砂災害、浸水を西日本各地で引き起こした結果の甚大な被害規模となっている。

 災害から1カ月以上経過して、行方不明者が1人少なくなれば、死者数が1人増える関係式を成り立たせることになった。

 大雨が山腹の土砂を樹木と共に崩落させて山裾にまで押し流し、それが川にまで達して流木となった樹木が土砂と共に川を下って橋桁に遮られて巨大な壁を成し、水を堰き止めて水位を川の堤防より高くして、溢れた水を低地に誘導し、そこでも洪水を引き起こす豪雨災害でお馴染みの光景が今回は特に目に余る凄さであちこちで現出することになったようだ。

 気象庁は「これまでに経験したことのないような大雨になっている」と警告、適切な避難行動を求め、「外出が危険な場合には少しでも命が助かる可能性が高い行動として家の中でも2階以上や崖の反対側などのより安全な場所に退避するよう」呼びかけた。

 これまでは出水後の夜中などは外が暗くて危険なために避難よりも家の2階への退避を呼びかけていたが、今回は2階以上とさらに一段高い場所への退避を促すことになった。

 実際にも岡山県倉敷市真備町地区では浸水の深さは最大で約5.4メートルに達したそうで、2階の襖や扉の上に取り付ける鴨居程の高さにまで水は到達したことになるから、2階建ての場合、2階に逃げただけでは無事ということにはならない。

 2階以上となると、一般的な木造住宅では望むべくもない高さということになるだけではなく、どのくらいの洪水になるか前以って分かるわけではないから、今後前例のない規模の豪雨の発生を想定した場合、屋内避難の選択肢は2階建て以上ある建物に限定され、平屋建て、あるいは2階建てに対してはその選択肢はないことになる。

 また河川の本流と支流に挟まれた地区などでは双方の川の堤防が決壊して短時間の急激な洪水を引き起こし、多くの高齢者が2階以上に避難する「垂直避難」すらできず、犠牲になった例もあるということだから、敏捷な行動ができにくくなっている高齢者が2階建て以上ある建物に住んでいたとしても、1階を住まいとしていた場合、屋内避難の選択肢はないことになる。

 このような高齢者の場合、豪雨災害の予測不可能性をクリアするためには最初から2階以上に住まわせなければならないことになるが、3階の木造住宅はザラに存在するわけではないし、3階の住宅を建てる資金に余裕ある人もザラには存在しないはずだ。

 2018年7月13日付の「朝日デジタル」記事は冒頭、〈西日本を中心に大きな被害が出た豪雨災害で、判明している死者のうち、朝日新聞の7月12日時点のまとめで年齢や死亡した状況が明らかになっている141人について調べたところ、60歳以上が100人で7割を超えた。「災害弱者」とされる高齢者が多く犠牲になっている実態が浮き彫りになった。〉と伝え、土砂崩れ遭遇、川の氾濫遭遇、水路転落、状況不明等々、要因を挙げている。

 そして記事末尾で、〈岡山県の12日午後2時時点のまとめでは、年齢確認中という16人を含む58人が亡くなった。このうち、川の氾濫で市街地の約3割が浸水した倉敷市真備(まび)町が50人を占め、ほとんどが溺死(できし)とみられる。真備町で亡くなった人のうち、年齢が判明している37人をみると、33人が60代以上だった。〉と、犠牲が高齢者に集中している被害状況を伝えている。

 この記事からでは高齢者が屋内で何人亡くなったのかは不明だが、「年齢や死亡した状況が明らかになっている141人について調べたところ、60歳以上が100人で7割を超え」ている点、「真備町で亡くなった人のうち、年齢が判明している37人をみると、33人が60代以上だった」という点からして、敏捷な行動ができにくくなっている避難状況、あるいは身体状況を窺うことができる。

 つまり2階建て以上の建物に恵まれていなくて避難にたっぷりとした時間をかける余裕がない高齢者の多くは逃げ場がないことになる。

 となると、土石流に直撃されて建物が崩壊し、土石流と共に崩壊した建物の中に閉じ込められて身動きできなくなって命を落とす例を除いて、2階建て以下の建物に住んでいても、屋内避難をせずに住まい自体を逃げ場とするためには建物そのものを浸水から守る完全防水仕様が唯一の方法となる。

 つまり完全防水仕様となっていないから、建物自体は無事だが、浸水して被害者が出たり、家財道具や家電製品が泥だらけになって使えなくなったりした例が多く見られた。

 完全に水が引いてから、1階を、中には2階まで、畳や床板を剥がして床下に溜まった土を取り除いて清掃に務めなければならなかった。

 玄関のドア部分やアルミサッシ窓部分から水が侵入する。先ず玄関のドアだが、ドア枠にパッキン等を張り巡らしてあって完全に気密性が保たれているなら問題はない。

 だが、西日本豪雨後の台風12号が東海地方に上陸後西側に進むという特異な方向を取って近畿、中国地方に大雨をもたらすと予想されたとき、豪雨災害受けた家々が玄関前に土嚢を積んで玄関ドアからの浸水を防ぐ手立てをしていたことは気密性が保たれている玄関ドアだけとは限らないことを証明している。

 ドアを受け止めるドア枠の外側四方にゴムスポンジ防水パッキング等を張り巡らして、画像として掲げたような密閉用ハンドルを取り付ける位置のみを平にして取り付けると、ドアを手前に引いて締めることになって、完全に気密性を保つことができ、浸水を防ぐことができる。

 アルミサッシ窓の場合は窓枠にはめるとき、上に持ち上げて鴨居に収めてから、敷居のレールに収める方法を取ることになっているから、外が湖みたいに水で満たされて、その水が掃出し窓よりも上に達した場合、その水圧でガラス窓自体に浮力が働いて持ち上げられ、ガラス窓の下端とレールとの間に1ミリか2ミリ程度の隙間が出て、その程度の隙間であっても、外の水圧を受けた水がそこから部屋の中に向かって流れ込み、部屋を水で徐々に満たしていくことになる。
 
 雨が降り続いて外の水位が上がれは、水圧も増すことになって、部屋に流れ込む水の勢いも量も格段に増していくことになる。ましてや真備町地区の約5.4メートルの水位となると、1階は勿論、2階の全ての窓から水が入り込むことになる。稚拙な絵で済まないが、雨戸と窓サッシの間に締め切った雨戸分と同じ幅の、外側表面四方にゴムスポンジ防水パッキング等を貼り付けた木枠か金属枠を取り付けて、さらに雨戸同士の片方に同じようにゴムスポンジ防水パッキング等を縦に貼って、雨戸と木枠か金属枠(AとB)を、さらに雨戸同士を画像にあるようなセーフティーロック付きの締め金具を要所要所に取り付けてそれぞれをロックすれば、水が侵入できないだけの気密性を保つことができる。

 画像は「スガツネ工業」からの借り物で、正式名は「ステンレス鋼製超強力プロラッチ」、1個4~5千円で、同じものでなくても、似た原理(トランクの締め金具も同じ原理)の製品なら、使うことができる。

 この締め金具を締めるのは気象庁が台風や大雨警戒情報を流し、その情報の地域に済んでいる場合に限られるから、年中締めなければならないというわけではないことは断るまでもない。

 取り付けは雨戸に取り付けるパッキンの枚数分、雨戸を狭めて、サッシ窓の外側に木枠か金属枠をはめ込んで固定するだけだから、それ程の金額はかからないはずだ。

 問題は建物内が気密になって外界四方が湖のように水が満たされた場合、建物自体に浮力が働いて浮き上がる恐れが出てくる。浮力が働いても建物が浮き上がらないだけの頑丈なコンクリート土台を備えていることが必要条件となることと、山崩れが起きやすいような谷間のある山裾近くの住宅は起きた場合の土石流には無力と見なければならないこと、コンクリート土台に風穴と呼ばれる換気口を設けてある場合は、大雨のときは閉じて浸水を防ぐことができるようにしておかなければならない。

 建物自体は無事だが、浸水によって人が、特に敏捷な動きができにくくなっている高齢者が亡くなったり、家財道具や家電製品に損害を受ける場合はこの建物の完全防水仕様はどうだろうか。

 技術的には不可能ではないはずだし、もっと素晴らしい気密性の方法があるかも知れない。全てを不可抗力とするのではないアイディアをそろそろ考え出さなければならないように思えるが。

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安倍晋三内閣支持率40%程度は国民の感覚 次期総裁選7割支持は自民党国会議員の感覚

2018-08-07 10:03:56 | 教育


「YOMIURI ONLINE」(/2018年08月06日 07時17分)

 〈9月の自民党総裁選で、連続3選を目指す安倍晋三首相(党総裁)が国会議員票(405票)の7割超を獲得する勢いだ。読売新聞社が調べた結果、細田派など4派閥に加え、態度未定の竹下、石原両派と無派閥でも首相支持が45人に上り、計290票に達した。出馬に意欲を示す石破茂・元幹事長は25票、野田聖子総務相は2票だった。〉・・・・・・

 安倍晋三支持表明済みは党内7派閥のうち最大勢力の細田派(94人)と麻生派(59人)、岸田派(48人)、二階派(44人)。

8月6日夜7時からのNHKニュースが安倍内閣支持率41%、不支持率同じ41%と伝えていた。その記事、 
「NHK NEWS WEB」(2018年8月6日 19時21分)

 8月3日から8月5日までの固定電話と携帯電話に掛けるRDD方式の世論調査 調査の対象となったのは2162人。回答56%の1205人。

 安倍内閣
 「支持する」41%(前月調査マイナス3ポイント)
 「支持しない」41%(前月調査プラス2ポイント)

 支持する理由
 「他の内閣より良さそうだから」50%
 「実行力があるから」17%
 「支持する政党の内閣だから」12%

 支持しない理由
 「人柄が信頼できないから」42%
 「政策に期待が持てないから」28%
 「他の内閣の方が良さそうだから」10%

 安倍内閣支持者は自民党支持者とその多くが重なっているはずだ。にも関わらず、「実行力があるから」の積極的支持はたったの17%。不支持者の多くがが非自民・反自民であったとしても、「人柄が信頼できないから」42%と「政策に期待が持てないから」28%は支持者の間でもかなり共通している評価と見ることができる。

 第2次安倍内閣は2012年12月26日に発足した。当初は60%を超えていた内閣支持率は一本調子で下がるのではなく、乱高下しながら、全体的には低下曲線を描いてきた。乱高下からは期待しては裏切られるというパターンを読み取ることができる。

 選挙が近づくと消費税増税の延期、あるいは消費税増税によって得る税収を財政健全化を視野に入れた国の借金返済分を減らして、高等教育の無償化や幼児教育の無償化を打ち出して国民の歓心を買い、支持率を上げて選挙に勝つが、打ち上げた歓心程には直近の政策や行動が追いつかずに期待外れを与えて支持率を下げて、自らのパイを自ら食い潰していく形の内閣支持率の低下傾向ということなのだろう。

 毎日新聞の7月28、29両日の全国世論調査。

 安倍内閣
 支持率37%(6月調査プラス1ポイント)
 不支持率44%(6月調査プラス4ポイント)

 7月14,15日実施の朝日新聞世論調査

 安倍内閣
 支持する 38%(前回調査プラスマイナス0)
 支持しない 43%(前回調査マイナス2ポイント)

 安倍晋三シンパの産経新聞の2018年7月21、22日の世論調査でも支持率よりも不支持率が上回っている。

 安倍晋三内閣を
 支持する42.1%(44.6%) 
 支持しない47.3%(前回45.6%)

 次の問いが象徴的である。

 第2次内閣が発足した平成24年12月以降の安倍首相の政権運営について
 「評価する」44・6%
 「評価しない」45・0%

 第2次安倍政権が発足してから6年7カ月。衆参5回の国政選挙に1回も負けなしの全勝を、それも大差の勝利を記録していながら、「評価する」と
 「評価しない」が44・6%と45・0%で拮抗状態ではあるが、僅かに「評価しない」が上回っている。選挙のテクニックによって維持している歴代3位の長期政権といった姿しか浮かんでこない。

 産経新聞は同じ世論調査で9月の自民党総裁選に向けて誰が総裁にふさわしいかについても尋ねている。

 小泉進次郎筆頭副幹事長26・8%
 石破茂元幹事長25・3%
 安倍首相23・6%
 岸田文雄政調会長4・4%
 野田聖子総務相3・7%

 この順位からも安倍内閣に対する国民の積極的な評価を見て取ることはできないし、国民から見た場合の安倍内閣が置かれている状況を象徴的に感じ取ることができる。

 かくこのように国民の評価が内閣支持率で40%程度の安倍晋三に9月の総裁選では自民党国会議員の7割が支持に向かう圧倒的状況にある。国民の感覚と自民党国会議員の感覚がかくも違っている。

 国民が望む人物ではなく、自民党国会議員が望む人物が首相を続けるという体裁を取ることになる。
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河野太郎の北外相と「日本の基本的な立場について様々な遣り取りをした」は安倍晋三そっくりな自己有能性粉飾

2018-08-06 11:51:53 | 政治
 

 ASEAN外相会議が8月2日(2018年)シンガポールで開幕、8月4日閉幕した。大国日本の外相河野太郎は自身が求めている外相専用機に乗って各国を巡るが如くASEAN各国外相の間を目まぐるしく動き回って会談を重ね、様々な成果を挙げ、外相としての自己有能性を証明したようだ。

 自己有能性を自覚しているからこそ、外相専用機をおねだりできる。だが、自民党内からも安倍政権内からもそのおねだりに応えようという声が上がらないのは有能性への妬みからなのか、専用機購入に見合う有能性を認めていないからなのか、はたまた他の理由からなのだろうか。

 8月4日、朝のNHKニュースで河野太郎が8月3日夜に訪問先のシンガポールで北朝鮮のリ・ヨンホ外相と立ち話による短時間の会談を行ったというニュースに触れた。会談に関しての河野太郎の発言も伝えていたが、河野太郎は「日本側の考え方や基本的な立場を申し上げた」といったことのみを述べ、対して北朝鮮外相がどのような発言で応じたのかについては何も述べていなかった。

 ニュースアナウンサーは「日本側の考え方や基本的な立場」とは拉致・核・ミサイルの問題の包括的な解決、日朝ピョンヤン宣言に基づいた国交正常化推進を指すと解説していた。

 会談についての詳しい事実を知るために8月4日の朝のNHKニュースを聞いた午後、NHKサイトにアクセスして、同ニュースの記事を採取してみた。「NHK NEWS WEB」(2018年2018年8月4日 4時56分)

 記事は河野太郎がASEAN外相会議出席の8月3日夜、北朝鮮のリ・ヨンホ外相と立ち話の形で短時間意見交換したことを伝えてから、〈河野大臣は、このあと記者団に対し、「リ外相には、日本側の考え方や基本的な立場を申し上げ、さまざまなやり取りをした」と述べましたが、詳しいやり取りや、リ外相の発言は明らかにしませんでした。〉と説明している。

 試しに記事に付属の動画から河野太郎の発言を拾ってみた。

 河野太郎「日本側からこちらの考え方、基本的な立場を述べ、それらについて様々な遣り取りを致しました。この件についてはこれ以上申し上げることはございません」

 自分だけの情報を伝え、相手の情報は伝えない一方に偏った情報公開となっている。問題はこのことに正当性があるかである。

 「日本側の考え方や基本的な立場を申し上げた」場合、相手がそれを理解して、「申し上げた」ことに添って問題解決に営為努力しますと反応したのか、あるいは「申し上げた」ことに対抗して「北朝鮮側の考え方や基本的な立場を申し上げ」るのが一般的な反応であることから、そういった反応をしたのか、北朝鮮外相のいずれかの発言を伝えるべきを何も伝えていないのは、都合のいい情報は積極的に発信するだろうから、先ずは都合の悪い情報は隠す情報隠蔽に当たると見なければならない。

 当然のこと、情報隠蔽からは北朝鮮外相の反応が前者でないことは明らかとなる。前者であるなら、自己有能性の誇示という点でも、得々と情報の公開で応じるはずである。

 北朝鮮外相が河野太郎の発言に対抗して「北朝鮮側の考え方や基本的な立場を申し上げた」としたら、その情報を隠蔽することは自身に関わる情報だけを流すことで自分だけの活躍を見せる自己有能性の粉飾となる。

 例えば拉致に関しての北朝鮮側の考え方や基本的な立場は現在のところ、「拉致問題は解決済み」ということであり、核・ミサイルの問題については一方的非核化の拒否・段階的非核化の主張であって、日米の包括的解決とはかなり隔たりがある。

 もしも北朝鮮外相がこういった発言で応じていて、応じるのが自然な成り行きであるが、河野太郎がその情報までを正直に明らかにしたら、相互の言い分を伝え合うだけの会談であったことが明らかになって、河野太郎が北朝鮮外相に発した主張は相殺されるだけではなく、会談の評価自体をも下げて、自己有能性の粉飾は叶わぬ努力となる。

 ところが、北朝鮮外相に関わる情報は何も伝えず、自分だけの情報を伝え、自己有能性の粉飾に成功している。

 と言うことは、河野太郎が「この件についてはこれ以上申し上げることはございません」と言っていること自体が自身にとっの不都合な情報の隠蔽を目的としていた疑いが出てくる。

 河野太郎は8月3日夜の北朝鮮外相との会談の翌日、日本時間の4日午後(シンガポールと東京の時差は+1時間とのこと)、ポンペイオ国務長官と20分間会談したと、8月4日18時16分発信の「NHK NEWS WEB」が伝えている。

 河野太郎はポンペオとの会談の中で北朝鮮外相との会談と拉致・核・ミサイル問題の包括的な解決を求める日本の立場、さらに、〈拉致問題については北朝鮮と直接協議することも含め、あらゆる手段で解決を目指す政府の方針〉を伝えたとを説明、対してポンペイオは日本の立場に理解を示し、両外相は緊密に連携していくことを確認したと会談内容を紹介している。

 河野太郎はここでも北朝鮮外相の反応を伝えなかったはずだ。日本と北朝鮮の基本的立場が180度異なる以上、日本側のそれを受け入れるはずはなく、受け入れなかったことを伝えたとしたら、北朝鮮外相との会談後のように自己有能性の粉飾はできなくなって、日本の立場を伝える単なるメッセンジャーボーイに成り下がることになるからだ。

 河野太郎と北朝鮮外相とのこの短時間会談だが、2018年8月4日付「朝日デジタル」記事は、〈北朝鮮代表団関係者は4日、朝日新聞の取材に対し、李容浩(リヨンホ)外相が前日行った外相会談の相手国として、日本を含めていないとの認識を示し〉、「日本と南朝鮮(韓国)とは接触しただけだ」と接触扱いとしていることを伝えている。

 河野太郎が北朝鮮外相との短時間会談で拉致・核・ミサイルの問題に関わる「日本側の考え方や基本的な立場」を事実伝えていたとしても、そのことのみに偏った情報発信で、いわば北朝鮮側の情報は何も伝えない一種の情報隠蔽で自己有能性の粉飾を謀ったことへの反発からの会談から接触への格下げということも考えられる。

 「北朝鮮側の考え方や基本的な立場」を伝えず無効状態にして日本側のそれだけを伝えて自己有能性の粉飾を謀るなら、会談ではなく、単なる接触に過ぎないのだから、日本側の主張も無効だと知らしめ、河野太郎の自己有能性の粉飾をも粉々にする意図への可能性を窺うことができる。

 この可能性は北朝鮮側の短時間会談から接触への格下げに対する河野太郎の反応が信憑性を与えることになる。「朝日デジタル」(2018年8月4日21時12分)

 8月4日。

 河野太郎「我々も二国間会談の数に含めていない」

 要するに接触と言っても、単なる立ち話程度であったことを認めたことになる。

 であるなら、「日本側からこちらの考え方、基本的な立場を述べ、それらについて様々な遣り取りを致しました」とした当初の発言が示している、日本側と北朝鮮側の相互の反応・遣り取りに必要とする時間的経過を自ら否定しただけではなく、このような否定を通して自身が述べたとしている事実そのものをも、なかったことにしていることになる。
 
 いわば自分が記者団に発言したことは全部ウソですよと告白したも同然となる。ただ単に自己有能性の粉飾を謀ったに過ぎないことを明らかにしたも同然となる。
 河野太郎は自身が述べたことが事実なら、「北朝鮮側が短時間会談を単なる接触に格下げしたとしても、拉致・核・ミサイルの問題に関わる日本側の考え方や基本的な立場を相手に伝えたことに何ら変わりはない」と発言すべきだった。

 勿論、このように発言するためには接触の際の北朝鮮外相の反応・発言をも正直に明らかにしなければならない。

 明らかにすることによって、単なる接触なのか、会談の部類に入る顔合わせなのかをはっきりとさせることができる。

 ところが、河野太郎にはそのようにする機転はなく、北朝鮮側の挑発なのか、短時間会談から接触への格下げにいともたやすく乗っかったか、両者の接触後の河野太郎の対記者団発言が全部ウソか、いずれかになる。

 「それらについて様々な遣り取りを致しました」との発言が事実であるなら、その発言が証明することになる、そこに存在するはずの北朝鮮外相の反応・発言をそもそもからして情報隠蔽扱いとし、河野太郎の発言だけを記者団に明らかにしたのは、自身に都合のよい情報のみの発信という手を使った自己有能性の粉飾以外の何ものでもない。

 安倍晋三もロシア大統領のプーチンが北方四島を返還する気がないのに両者の信頼関係や共同経済活動の進展によって返還の機運が兆しているかのように国民に思わせるているのも、自己有能性の粉飾に他ならない。
  
 河野太郎と北朝鮮外相との接触に格下げされる前の短時間会談後、マスコミの一部は河野太郎が日朝首脳会談の開催を提起したと伝えたが、8月4日夜、これを誤報だと否定した。「共同47NEWS」(2018/8/4 21:59)
 
 記事、〈日本人拉致問題の解決に資するものでない限り、安倍晋三首相と金正恩朝鮮労働党委員長の会談は行わないとの日本政府の立場を改めて強調したとみられる。〉――

 日朝首脳会談開催提起が誤報であろうとなかろうと、拉致問題の包括的な解決を呼びかけなければ顔合わせの意味を失う以上、北朝鮮外相が当面は当然の態度とする「拉致問題は解決済み」の情報を隠蔽したことは、どう贔屓目に見ようと、都合の悪い情報は隠して都合のよい情報のみを明らかにする自己有能性の粉飾だと批判されても仕方はあるまい。

 日本側が求めている拉致問題の包括的解決と対北朝鮮圧力政策は北朝鮮側はセットとして扱っている。前者の解決を望むなら、後者の政策を捨てなければならない。後者の政策を維持するなら、前者の解決には応じないという戦術を取っている。

 こういった戦術用のカードが「拉致問題は解決済み」であるはずだ。このような戦術を破る日本側のカードを見つけない限り、北朝鮮側の「拉致問題は解決済み」のカードは有効性を保つことになり、結果的に不都合な情報は隠して自己有能性の粉飾に走る繰返しを続けることになる。
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安倍晋三の杉田水脈のLGBTに関わる思想・人間性を承知していながら自民党国会議員とした責任はどうする

2018-08-04 11:33:56 | 政治
 

 自民党衆院議員杉田水脈(みお―51歳)が7月18日発売の月刊「新潮45」に「『LGBT』支援の度が過ぎる」と題した一文を寄稿、〈「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」と行政による支援を疑問視〉、〈「『常識』や『普通であること』を見失っていく社会は『秩序』がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません」などと主張した。〉と、2018年7月23日付「朝日デジタル」記事が伝えていた。

 杉田水脈はLGBTを「子供を作らない、つまり『生産性』がない」ことを理由に「常識」や「普通」に反する存在と看做した。そのような存在を社会的に認知し、「税金を投入する」ことは社会の「秩序」を失い、「いずれ崩壊していく」と警告を発した。

 つまり杉田水脈はLGBTを人間として認めていない。あるいは国民として認めていない。

 表現にはその人の思想が宿る。杉田水脈の以上の見解はLGBTに関わる思想そのものということになる。

 杉田水脈のこの思想は「人権意識欠如だ」とか、「優生思想だ」、「LGBTに対する理解不足だ」といった批判を各方面から浴びた。対して自民党は8月2日に杉田水脈に今後注意するよう指導し、性的指向・性自認に関わる党見解をホームページに掲載したという。

 この8月2日は月刊「新潮45」発売の7月18日から2週間経過している。この即座の対応に反する遅過ぎる対応は安倍政権及び自民党が当初は放置し、批判の自然消滅を狙っていたからだろう。でなければ、もっと早くに指導していたはずだ。

 ただ当初の思惑が外れて、批判は自然消滅することなく、何ら対応しない自民党に対するそれへと飛び火することととなり、そのことからの2週間遅れの反応ということに違いない。

 いわば火の粉が自らに降り掛かってきた。杉田水脈の思想をこのまま放置したら、安倍政権及び自民党がその思想を容認している、いわば思想的に同質と解釈されかねない恐れから、方針転換を図ったはずだし、特に杉田水脈が安倍チルドレンであるという点から、安倍自民党総裁三選にも影響しかねないことを恐れたはずだ。

 だから、《性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方》と題したPDF 記事を自民党サイトに載せて、自民党の見解と杉田水脈の見解が異なることを知らせしめることになったのだろう。

 そこには、〈古来、わが国で性的指向・性自認の多様なあり方が受容されてきた〉が、〈明治維新以降、西洋化の流れの中で同性愛がタブー視され、違法とされた時期もあっ〉て、〈現在、性的指向・性自認の多様なあり方について、社会の理解が進んでいるとは必ずしも言えず、性同一性障害特例法等の制度的な対応が行われたものの、未だにいじめや差別などの対象とされやすい現実〉がある。

 そこで、〈安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の旗のもと、性的指向・性自認について悩みを抱える当事者の方が自分らしい生き方を貫ける社会を実現するため、必要な措置を検討する〉ことになった。

 そして、〈目指す方向性〉として、〈カムアウトできる社会ではなくカムアウトする必要のない、互いに自然に受け入れられる社会の実現を図ること〉、〈性的指向や性自認によるいじめも含め、〉、〈いじめや差別を許さない適切な生徒指導・人権教育をさらに推進すること。〉、就職に於いて〈当事者が不当な取り扱いを受けることを防止する〉ために、〈公正な採用選考についての事業主に対する啓発・指導〉を行うこと等々を挙げ、LGBT等の保護に関わる相談窓口やホットライン等を紹介している。

 こういったことを以って杉田水脈のLGBTに関わる思想と自民党の性的指向・性自認に関わる基本的な考え方とは異なることを公表、一自民党議員として杉田水脈はこのような基本的な考え方に従うべきだと指導を行ったということなのだろう。

 対して杉田水脈は「党性的指向・性自認に関する特命委員会 古屋圭司委員長からご指導をいただきました。真摯に受け止め、今後研鑽につとめて参りたいと存じます」とのコメントを発したと2018年8月2日付「産経ニュース」記事が伝えている。

 安倍晋三も8月2日の宮城県東松島市訪問の際、自民党が公にしているしそうと杉田水脈の思想が異なることを発言している。「朝日デジタル」(2018年8月2日15時26分)

 安倍晋三「人権が尊重され、多様性が尊重される社会をつくっていく、目指していくことは当然のことであろうと思う。これは政府与党の方針でもある」

 かくして杉田水脈はLGBTに関わる自らの思想を内心奥深くに隠して、表面的に口を噤むことになる。

 但しこれで一件落着と見ることはできない。杉田水脈が沈黙することになったとしても、表現にはその人の思想が宿ると同時にその人の人間性を表す。LGBTに非寛容な思想・人間性の持ち主が沈黙したまま国会議員の席に居座ることに変わりはない。

 いや、LGBTに非寛容なだけではない。「Wikipedia」「杉田水脈」の項目には彼女の思想=人間性が次のように活写されている

 2017衆院選 候補者アンケート(朝日・東大谷口研究室共同調査)で、幼稚園や保育所から大学までの教育無償化について「反対」と回答、「ゼロ歳児に社会性なんてあり得ません!」と主張、「保育所は子供を家庭から引き離し、洗脳教育を施す施設である」とし、学童保育についても「共産党の陰謀である」とし、保育所と学童保育について普及に反対であり、両者ともコミンテルンや共産党が日本を弱体化させるための施設と主張。

 保育所の少なさへの不満の噴出や増設の要望は、「旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンが息を吹き返しつつあり、そのターゲットが日本になっている」などとし、日本を貶める勢力による陰謀、工作活動、「世論操作」であると主張、保育所について「子供を家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳教育をする。旧ソ連が共産主義体制の中で取り組み、失敗したモデルを21世紀の日本で実践しようとしている」と主張、保育所を「誰もが利用できるのが当たり前」、「利用する権利がある」と考えるのは「大きな間違い」であると主張。

 「『保育園落ちた』ということは『あなたよりも必要度の高い人がいた』というだけのこと。言い換えれば『あなたは必要度が低いので自分で何とかしなさい』ということ」と主張、「学童保育所は鍵っ子が可哀想だということで、共産党が主導してつくったサービス」であるとし、「”学童保育"は共産党用語であり、自治体では用いません」と主張等々、極度に偏って偏狭なまでのその思想=人間性を紹介している。

 かくこのようにLGBTに関わる思想・人間性のみならず各政策で見せている思想・人間性に関しても自民党とは異なりながら、みんなの党や日本維新の会、次世代の党、日本のこころと党籍を変えてきた杉田水脈を安倍晋三は自民党から立候補させるべく白羽の矢を立て、比例代表の公認候補として担ぎ出して当選させ、安倍チルドレンの一人とした。

 いわば杉田水脈の人を見ての安倍晋三の努力と成果なのだろから、杉田水脈の思想・人間性がどのようなものかは知らなかったと口が裂けても言うことはできない。

 党公認を与える第一番の責任者としても、杉田水脈の思想・人間性を承知していなかっとすることはできない。

 承知していながら、安倍晋三は国会議員として相応しい一人とすることのできない思想・人間性の杉田水脈を国会議員に仕立てたという逆説を、国民が気づかないことをいいことに演じたことになる。

 となると、宮城県東松島市訪問の際に「人権が尊重され、多様性が尊重される社会をつくっていく、目指していくことは当然のことであろうと思う。これは政府与党の方針でもある」と発言しただけでは済まないことになる。

 断るまでもなく、この発言は杉田水脈に自民党公認を与え、国会議員にした安倍晋三自身の責任については何ら触れていないからだ。

 杉田水脈が国会議員に相応しい人物ではないという一点から見ても、そのLGBTに関わる思想・人間性が性的指向・性自認に関わる自民党の基本的な考え方とは異なるゆえに指導を行ったというのも単なるゴマカシとなる。

 杉田水脈を自民党から除名、議員辞職勧告決議をするなりして辞職を迫った上で安倍晋三はかくこのような思想・人間性の持ち主を国会議員とした自らの不明・不見識とその責任の欠如を国民に謝罪すべきだろう。
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安倍晋三はテロ集団人質安田純平氏にも身代金を払う交渉はせずに“人命第一”を言う矛盾を演ずるに違いない

2018-08-02 11:22:56 | 政治
 

 2015年6月にシリアで行方不明となり、国際テロ組織アルカイダ系の武装組織に拘束されたと見られていたフリージャーナリストの安田純平氏(44)の動画が2018年7月31日にネット上に公開された。

 安田純平氏の動画での発言を「FNN PRIME」(2018年8月1日 水曜 午後5:30 )記事が伝えている。

 「私の名前はウマルです。韓国人です。今日の日付は2018年7月25日、とてもひどい環境にいます。今すぐ助けてください」

 韓国人と韓国名を名乗っていたから、本人かどうか、真偽不明の声が寄せられていたが、官房長官の菅義偉が2018年8月1日午前の記者会見で本人であることを認めたと2018年2018年8月1日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 記者「映像の男性は安田さん本人と見ているか」

 菅義偉「そのように思っている。政府としては、邦人の安全確保は最大の責務で、こうした認識の下に、引き続きさまざま情報網を駆使して全力で対応に努めている」

 「邦人の安全確保は最大の責務」と言っていることは“人命第一”を意味する。何を措いても人命の救出を最優先すると言うことになる。

 上記「FNNPRIME」記事は、安田純平氏の映像が公開されたのは、ここ1カ月で3回だと伝えている。1度目は半年以上前に撮影した動画を用いた7月初旬、2度目は6月12日撮影の動画を用いた7月中旬、3度目が7月25日撮影の動画で、7月31日に公開。

 さらに動画を公開し、武装勢力との仲介役を務めているシリア人活動家は武装勢力は150万ドルの身代金を要求していたが、自身の交渉によって50万ドルにまで値下げさせることができると述べたといった趣旨のことを伝えている。

 仲介役とは名前ばかりで、武装勢力の一員かも知れないが、1カ月に3回も動画を公開し、身代金の値下げを臭わしているということは身代金を手に入れようとかなり焦っている可能性を見て取れる。

 但しいずれの動画でも身代金の要求は伝えていない。日本メディアがシリア人活動家と接触して、その人物の話として身代金について知らされる形を取っている。

 このことの理由は後で述べる。

 安田純平氏が2015年6月にシリアで行方不明となり、その映像が2016年3月16日にシリア反政府活動家のフェイスブック上に公開された際、翌3月17日午前の記者会見。

 菅義偉「本事案については、これまでも安倍総理大臣の指示を受けて体制をしっかり整えて対応してきているが、今般の映像の公開を受けて、改めて、安倍総理大臣からは『引き続き、邦人の安全確保を最優先で対応するように』という指示があった。内閣危機管理監のもとで必要な体制をとり、さまざまな情報収集をして、対応に全力で取り組んでいく」

 記者「政府や家族に身代金の要求があったのか。また、拘束している集団と接触はしているのか」

 菅義偉「身代金の要求は承知していない。接触については事柄の性質上控えたい」(NHK NEWS WEB

 「本事案については、これまでも安倍総理大臣の指示を受けて体制をしっかり整えて対応してきている」と言っていることは、2015年6月に安田純平氏の行方不明が伝えられてからのことを言っているはずだ。そして「改めて、安倍総理大臣からは『引き続き、邦人の安全確保を最優先で対応するように』という指示があった」と言っていることは、安倍晋三から“人命第一”の指示があったことを示す。

 但し「身代金の要求は承知していない」としていることは疑わしい。武装勢力にとって自分たちの戦闘そのものに直接関係のない外国人誘拐が身代金要求目的でないとしたら、何を目的の誘拐だというのだろうか。何を目的に動画をわざわざ公開するのだろうか。

 マスコミが把握している身代金の要求の情報を政府が把握していないとしたら、政府の情報収集能力の程度が知れて、笑われることになる。 

 安田純平氏の動画が身代金の要求を伝えていないのは次の理由からだろう。過激派武装集団「イスラム国」が湯川遥菜氏を204年8月に拘束、続いて2014年10月25日にフリージャーナリストの後藤健二氏が共に行動したことのある湯川遥菜氏の救出を目的にシリアに入って消息を絶ち、共に身代金要求の人質とされて、最終的に72時間以内に2億ドル(約230億円)の身代金の支払いがないと両者を殺害すると予告する動画が2015年1月20日に公開された。

 そして日本政府の身代金の支払いがないままに2015年1月24日、後藤健二氏の写真が映った静止動画が公開され、湯川遥菜氏を殺害したというメッセージが表示され、続いて後藤健二氏も2015年1月30日に殺害されたと見られている。

 このように日本政府が身代金の支払いに応じなかったのは2013年6月17日、18日にイギリスの北アイルランド・ロック・アーン開催のG8サミット(主要8カ国首脳会議)の首脳宣言に安倍晋三が忠実に従った結果であろう。

 「G8サミット首脳宣言」(外務省/2013年年6月18日)

 〈前文 6

 我々は,我々の国民を守るとともにテロリスト・グループがその繁栄を可能とする資金を得る機会を減少させることにコミットしている。我々は,テロリストに対する身代金の支払を全面的に拒否し,世界中の国及び企業に対し,我々の後に続き,テロリストにとり格好の他の収入源と同様に身代金を根絶させるよう求める。我々は,ベストプラクティスを事前に共有するとともに,人質事件発生時には必要に応じて専門知識を提供することにより,事件の解決に向けて互いに協力し合う。〉

 安田純平氏を人質とした武装勢力は後藤健二氏と湯川遥菜氏を誘拐した「イスラム国」が動画で身代金要求を公にしたために安倍晋三が2013年G8サミットの首脳宣言に縛られて身代金を支払うことができなかったと考え、身代金の要求は裏の取引で交渉する目的で動画では直接要求しなかったのではないだろうか。

 「イスラム国」が身代金として要求した2億ドルは安倍晋三が2015年1月16日にエジプト・カイロ入りして、翌1月17日にカイロで行った中東スピーチで「イスラム国」を名指し、「ISILと戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」に対して報復の意味を持たせた同じ金額ということであるはずだ。

 後藤健二氏と湯川遥菜氏が後ろ手に拘束され、72時間以内に身代金の支払いがないと二人を殺害するとの動画がインターネットに公開された同じ日の2015年1月20日に安倍晋三は訪問先イスラエルで内外記者会見を開いている。

 ベイカー・エルサレム・ロイター通信支局長「過去にこうした状況で第3国がこの地域で身代金を支払うといったことがあった。そうしたやり方は今回の問題を解決する上で検討され得るか」

 安倍晋三「先ず、今回の事案については、我々人命第一に考え、各国の協力も得ながら情報収集に当たっております。今後も、人命を確保する上において、全力で取り組んでいく考えであります。いずれにせよ、国際社会は決してテロには屈してはならない、とこう考えております」――

 安倍晋三は2つの相反することを言っている。「我々人命第一に考える」、そして「国際社会は決してテロには屈してはならない」

 これまでも武装勢力による邦人人質事件では「人命第一」を繰返し言ってきたのだから、もし“人命第一”を絶対とするなら、身代金の支払いも解放条件に含まれていることになる。

 だが、「国際社会は決してテロには屈してはならない」と言っていることは、2013年「G8サミット首脳宣言」で決めたとおりに身代金支払いの拒否を含意していることになる。支払いに応じたら、テロに屈することになって、「屈してはならない」の宣言自体を自分から壊すことになる。

 そして後藤健二氏と湯川遥菜氏の邦人拘束事件では身代金の支払いを拒否して、テロに屈しないことを有言実行してみせた。

 と言うことは、今回の安田純平氏の身代金要求の人質事件でも安田純平氏を拘束している武装勢力とは身代金の支払いを拒否するために、あるいはテロに屈しない姿勢を見せるために直接交渉を回避、その一方で邦人拘束が発生するたびに行ってきた関係国やその情報機関、宗教関係者、部族長等々のルートを活用して救出を策す間接的な方法を採用するはずだ。

 例え後者のいすれかの組織が武装勢力にカネを支払うことになり、そのカネを日本政府が後から補填することになっても、補填したことの情報隠蔽は十分に謀ることができるし、補填の情報が洩れたとしても、日本政府は武装勢力と身代金の支払いを直接交渉したわけではない、単なる謝礼だと言い逃れることができる。

 だとしても、この方法は後藤健二氏と湯川遥菜氏の例を参考にせざるを得ないように“人命第一”を絶対的に保証はしない。それを承知で前例通りに日本政府は安倍晋三の指示に従って身代金要求の情報は極力隠しつつ、尚且つ武装勢力に対しては身代金の支払いを直接的には拒否する、自ずと矛盾を描き出すことになる「邦人の安全確保を最優先」、“人命第一”という名の交渉を国民に見せることになるはずだ。

 後藤健二氏と湯川遥菜氏の人質事件のときのように安倍晋三がテロに屈しない強い指導者の演出に再度成功したとしても、厳格な意味で言っている「邦人の安全確保を最優先」、“人命第一”ではないことを認識していなければならない。
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アホな稲田朋美、アホを通り越して日本国憲法を有害な新興宗教の教義に貶めた

2018-08-01 08:49:05 | 政治


 元防衛相稲田朋美の2018年7月29日の自身のツイッターへの投稿文が「国会議員の憲法擁護義務違反だ」、「憲法否定だ」とか批判に曝されている。

 このツイートは既に削除されているということで、ネットで探してみると、画像で見つけることができたから、テキストにしてみた。

 〈日本会議中野支部で『安倍総理を勝手に応援する草の根の会』が開催され、私も応援弁士として参加しました。支部長は大先輩の内野経一郎弁護士。法曹界にありながら、憲法教という新興宗教に毒されず安倍総理を応援してくださっていることに感謝!〉

 国会議員の憲法擁護義務違反の指摘は、「日本国憲法 第10章最高法規 第99条」に 「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」に対するものとなる。

 2018年7月30日付「毎日新聞」記事は稲田朋美のツイッター投稿ネタが7月29日に保守系団体「日本会議」の東京都中野支部の集会に参加した際のものであることを紹介している。

 同記事は毎日新聞が取材した稲田朋美の言い分を伝えている。

 「ツイッターに書くにはあまりにも誤解を招きやすい(表現だった)なと思う。憲法を否定するつもりは全くない。憲法を変えさえしなければ日本は平和であるというのもまた違う」

 憲法否定ではない、日本の平和を維持するために単に憲法改正の意思を持っているだけだと釈明している。

 但し平和を守る手段には主として軍事力に頼る方法と軍事力はあくまでも備えであって、非軍事力を主体とし、外交の創造性に頼る方法とがある。日本の過去の戦争が前者が絶対ではないことを教え、それを教訓として後者の立場を取る日本人が多いことも事実である。

 勿論、後者も絶対ではないが、人類の叡智を言うからには、その叡智を力として軍事力で威嚇し合ったり、軍事力で決着をつける世界から戦争のない世界を創造、そういった世界にそろそろ到達しても良さそうである。

 安倍晋三は軍事力に全面的に頼って平和維持の手段としている。過去に一度経験している決して絶対ではないにも関わらず絶対を装って軍事力のスムーズな活動のために憲法9条の改正を狙っている。

 稲田朋美が、「法曹界にありながら、憲法教という新興宗教に毒されず安倍総理を応援してくださっている」と曰(のたま)っている意味は誰が読んでも、法曹界の護憲派を念頭に置いた皮肉と分かる。

 「憲法教という新興宗教に毒されず」とは、日本国憲法を平和憲法と位置づけて、その死守を主張する集団を有害と価値付けた上でそのような集団を新興宗教紛いの「憲法教」程度に擬えたということであって、そういった有害な「憲法教」に弁護士内野経一郎は「毒されず」という意味を取る。

 但し平和憲法絶対死守を主張する集団の主張を有害な新興宗教紛いの「憲法教」だと軽んじることは主張の対象としている憲法の条文自体を新興宗教の教義程度に見下し、貶めていることになる。

 絶対死守の主張の対象が憲法9条であって、稲田朋美が同調する立場にあったなら、その文言は稲田朋美に対しても常に輝きを放ち、集団の主張を有害な「憲法教」だと擬えることはないし、9条という条文自体も、新興宗教の教義どころの話ではなくなる。

 9条一つ取っても現憲法のれっきとした規定であって、それが改正されない以上、何人であろうと、勿論、稲田朋美であろうと、軽視することも見下すこともできないはずだが、稲田朋美は「憲法を否定するつもりは全くない」と言いつつも、見下しや軽視という心構え自体が自身の釈明に反して憲法否定の要素を抱えている。

 それだけではない。憲法改正反対は日本国憲法が保障している「思想及び良心の自由」、「言論の自由」に基づいた主張であって、それを有害な「憲法教という新興宗教」だと見下すことは、この点に関しても憲法否定の要素が現れている。

 こういった点に気づかないのは稲田朋美がアホで、そのアホを通り越して、憲法改正反対集団を有害な新興宗教紛いの憲法教に擬え、その主張を新興宗教の教義程度だと見下し、特に憲法9条自体を結果的に新興宗教の教義程度に貶める価値づけを行うことになったはずだ。

 そのアホを安倍晋三は 内閣府特命担当大臣や防衛大臣、自民党政務調査会長に任命した。
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