安倍晋三はプーチン提案を「平和条約が必要だという意欲が示されたことは間違いない」と言い換える国民騙しの詭弁はもうやめろ

2018-09-15 11:58:49 | 政治

 
 昨日(2018年9月14日)の当ブログでも、プーチン提案を「平和条約締結に対する意欲の表れ」とする認識は国民騙しの発言だと批判したが、昨日の9月14日に日本記者クラブで行われた自民総裁選立候補討論会でも同じような発言をしていることをマスコミ報道によって知ったから、具体的にどのような発言をしたのか、その詳報を伝えている以下の記事から、その箇所を取り上げてみた。安倍晋三らしい誤魔化しに満ちた詭弁そのものの発言となっている。

 「産経ニュース」

 記者「続いて外交について伺う。ロシアのプーチン大統領が無条件で平和条約を結ぼうとおっしゃったのには驚いた。要するに領土問題を確定して平和条約を結ぼうという日本政府の考え方を、プーチン氏は理解していなかったのかと…。22回お会いになって、2人きりで何時間もお会いになってっているのに共通認識すらなかったのかな、と大変驚きました。どうやって立て直していかれるおつもりか」

 安倍晋三「結構、専門家は違う考え方を持っている人が多いんですよ。日露関係をずっとやってこられた方はずっと見てきて、私もですね、日露交渉を始めるに当たって、1955年に松本(俊一元全権)さんが(旧ソ連のヤコブ・)マリク(元全権)と交渉を始めますね。その後、ずっと会談記録、秘密交渉の部門についても読んできた。これは殆ど表に出てきていません。その上でずっと会談を行ってきました。様々なことを話しています。

 そこでプーチン大統領が述べたことを、様々な言葉からサインを受け取らなければならないんだろうと思います。一つはとにかく平和条約ちゃんとやろうと言ったことは事実です。勿論、日本の立場は領土問題を解決をして平和条約を締結する。これはもうその立場ですし、それについては、あの発言の前も後もちゃんと私は述べていますし、プーチン大統領からの反応もあります。でもそれは今、私申し上げることはできません。交渉の最中ですから。

 私は、プーチン大統領の平和条約を結んでいくという真摯(しんし)な決意を、長門会談の後の記者会見で表明しています。つまり平和条約が必要だということについての意欲は示されたのは間違いないんだろうと思います。そこで申し上げることができるのは、今年の11月、12月の首脳会談、これは重要な首脳会談になっていくと思っています。

 記者「安倍首相は『自らの時代に何とかする』ということを言ってきていて、非常に期待を持たせている、国民に対して。それが非常に無責任に聞こえてしまう。あなたの期間中に何とかしないといけないという言い方があまりに前のめりではないかと思う」

 安倍晋三「それでは私の時代にはできませんと言った方がいいですか。それは、いわばこういう問題はどうするか。今までのあれを見てきました。例えば河野一郎(元農相)が乗り込んでいって、私の責任であると。鳩山(一郎元首相)さんも私の時代にやると言ったから前に進んでいくんですよ。

 私の時代ではなくて、代を継いでやっていきますよと言ったらできません。なぜかということを申し上げましょうか。それは今、北方四島は残念ながらロシア人しか住んでいない。実効的に、彼らがそこを支配をしているという状況があります。この状況を、彼らはこれを変えるというインセンティブを与えるのは相当難しい。ですから私が意欲を見せない限り動かないんですよ。今まで一ミリも動いていなかったじゃないですか。

 だから今回は長門会談によって共同経済活動を、スムーズにはいってませんが、ウニなどについて合意しました。あそこに日本人が、日本の法的立場を害さない形で行って作業する、(北方)四島で。初めてのことですよ。そして(北方)四島の元島民も今まで飛行機で行けなかった、墓参が。それが2年連続でできています。

 そういうところも出てきたというのは、私があなたとやろうということを示しているから、これは前に進んでるんであって、斜に構えて、そう簡単じゃないよと私は言い続けたんであれば、これは一ミリも進まないどころか、後退していくというのが、私がプーチン大統領とずっと会談してきた結果です。

 かつてソ連時代には私の父(安倍晋太郎氏)も外務大臣をやっていました。外相会談をやることすらとても難しかった。首脳会談だってできなかった。やっとこれだけ頻繁にですね、頻繁に首脳会談ができるようになったというのは、やはり今の時代になって、私とプーチン大統領が共に平和条約を私たちの手でやろうということを話しているからです。

 これは別に期待感を持たせる、高い期待感を上げていくというので、できなかったときは政治的にダメージが大きいですから、むしろなるべくそうではないことを言いたいんです。でもそれを言わなければ、これは進んでいかないから、私だってある種リスクを取ってですね、それを申し上げているわけであって、それをそういうふうに誤解されると私も大変つらいところがあるわけです」

 記者は「要するに領土問題を確定して平和条約を結ぼうという日本政府の考え方を、プーチン氏は理解していなかったのかと…」と尋ねているが、十分に理解していないはずはない。安倍晋三に対して領土返還に応じるつもりはない意思表示をかねがね見せているに関わらず(この意思表示はプーチンが2016年12月15、16日の長門と東京での安倍晋三との首脳会談後の共同記者会見で、日露和親条約から第2次世界大戦集結までの歴史を紐解き、1905年の日露戦争から「40年後の1945年の戦争の後にソ連はサハリンを取り戻しただけでなく、南クリル諸島も手に入れることができました」との物言いで北方四島は第2次大戦の結果ロシア領となったと示唆しているところに最も直接的且つ象徴的に現れている。)、安倍晋三が気づかずに平和条約締結への進展に繰返し言及するから、多分業を煮やしたのだろう、ロシアの国益に適う形で、「じゃあ、年内に先ず平和条約を結ぼうではないか」と提案したはずだ。
安倍晋三は記者の質問に対して「日露交渉を始めるに当たって、1955年に松本(俊一元全権)さんが(旧ソ連のヤコブ・)マリク(元全権)と交渉を始めますね。その後、ずっと会談記録、秘密交渉の部門についても読んできた。これは殆ど表に出てきていません。その上でずっと会談を行ってき」て、プーチンに「様々なことを話しています」と発言しているが、現状でのその結論が領土の帰属問題を解決して平和条約締結へと持っていくという日本側の国益に添う進展はゼロで、ロシアの国益を満たすだけのプーチンの領土問題先送り・年内平和条約締結の提案なのだから、自身の発言を体裁良く見せる、中味は何もない詭弁にも等しい戯言に過ぎない。

 安倍晋三は次いでプーチンが提案で述べた「様々な言葉からサインを受け取らなければならないんだろうと思います。一つはとにかく平和条約ちゃんとやろうと言ったことは事実です」と、平和条約締結を促す「サイン」――意思表示だったと自らの解釈を示している。

 続けて、「勿論、日本の立場は領土問題を解決をして平和条約を締結する」行程表に則っていることを改めて表明している。このような自らの国益とする日本側の行程表に対してプーチンは「今思いついた。まず平和条約を締結しよう。今すぐにとは言わないが、ことしの年末までに。いかなる前提条件も付けずに」との発言で年末という期限を切って領土問題抜きに平和条約締結を迫り、そのことを以ってロシア側の国益にしようとした。

 いわばプーチンは日ロ双方の国益に折り合いを付ける形ではなく、日本側が国益とする行程表とは真っ向から反するロシア側が国益とする行程表を一方的に提示することで国益の着地点が日本側とは異なるところに狙いをつけているのだから、お互いが成果とする「平和条約」自体も異なる姿を取るだけではなく、「一つはとにかく平和条約ちゃんとやろうと言ったことは事実です」の「ちゃんとやろう」と解釈した確実性にしても日ロ双方の思惑の違いを受けて異なる「ちゃんとやろう」ということになり、これらをごちゃ混ぜに「事実です」と言うこと自体、裏側にある双方が狙いをつけている国益の違いに対応した日ロ双方の利害が一致しない「事実」となる。

 にも関わらず、プーチンの提案を日ロ双方が一致する思惑に立った平和条約締結に向けた「サイン」――意思表示であるかのように「事実です」と言っているのだから、国民を欺く詭弁以外の何ものでもない。

 安倍晋三はプーチン提案を平和条約締結に向けた「サイン」――意思表示であるとする自らの解釈を更に補強する。「私は、プーチン大統領の平和条約を結んでいくという真摯(しんし)な決意を、長門会談の後の記者会見で表明しています。つまり平和条約が必要だということについての意欲は示されたのは間違いないんだろうと思います。そこで申し上げることができるのは、今年の11月、12月の首脳会談、これは重要な首脳会談になっていくと思っています」

 プーチンが2018年9月12日の東方経済フォーラム2018全体会合で平和条約に関する新たな提案を行った以上、2日前の9月10日のプーチンとの22回目となる首脳会談までの北方四島と平和条約に関係する議論は反故にされたも同然となるのだから、安倍晋三だろうとプーチンだろうと、「長門会談の後の記者会見」で「平和条約を結んでいくという真摯(しんし)な決意」をどう表明しようと、過去の話となって有効性を失うだけではなく、この記者会見でプーチンが歴史を紐解いて第2次世界大戦の結果、ロシア領となったといった趣旨の発言をしたことに対しても目をつぶって、日本側に都合のいい話だけをしていることも詭弁のうちに入る。

 当然、「平和条約が必要だということについての意欲は示されたのは間違いないんだろうと思います」にしても、着地点が異なるプーチンの平和条約締結への意欲であることを無視していることになって、日本側に都合いい詭弁の類いに加えなければならない。

 安倍晋三は誤魔化すという点では頭の回転が早く、事実を見ない、自分に都合がいいだけの言葉を次々と紡ぎ出す能力に長けているが、仔細に点検すると、詭弁で成り立たせた発言であることが見えてくる。

 記者の「安倍首相は『自らの時代に何とかする』ということを言ってきていて、非常に期待を持たせている、国民に対して。それが非常に無責任に聞こえてしまう。あなたの期間中に何とかしないといけないという言い方があまりに前のめりではないかと思う」との批判的な質問に安倍晋三は「それでは私の時代にはできませんと言った方がいいですか」と言い返し、さらに「私が意欲を見せない限り動かないんですよ。今まで一ミリも動いていなかったじゃないですか」と答えている。
「自らの時代に何とかする」は自らの責任を確約したことに当たり、そうである以上、確約を実現する重大な責任を負ったことになる。対して「私の時代にはできません」は国民から見たら誰もが認めることはできない責任放棄に当たり、何ら動かないことを指す。一国の首相の責任の履行という点で、後者の行動は選択肢を持たないことになる。にも関わらず、選択肢の一つに入れ、両者を比較させて後者の責任放棄を以って自身の前者の行動の正当化に使う。

 狡猾なまでの言いくるめの議論――詭弁そのものである。詭弁を駆使するにかくまでも頭の回転が早い。一国の首相が使う詭弁の対象となるのは最終的には国民であり、その用途は国民を騙すこと以外にない。国民を騙して、自身の外交能力がさも優秀であるかのように装う。そのための詭弁の駆使である。

 「私が意欲を見せない限り動かないんですよ。今まで一ミリも動いていなかったじゃないですか」との物言いで安倍晋三以前は「一ミリも動いていなかった」事態が自らの意欲によって「一ミリ」でも動いているかのように言っていることも、言いくるめの議論――詭弁に過ぎない。プーチンの提案によって、日本側が基本的立場としていた北方四島の帰属問題を解決して平和条約締結に持っていく肝心要の行程表が「一ミリも動いていなかった」ことになるからである。

 共同経済活動は平和条約締結に持っていくための手段としている側面をも抱えているのに対してロシア側は北方四島を自国領として譲らない姿勢のだから、共同経済活動が前進したからと言って、平和条約締結の側面援助の役を果たす保証はないし、プーチンの提案自体が日本の基本的立場をブチ壊す体裁を取っている以上、平和条約締結に関わりのない場所で共同経済活動だけが前進する可能性は否定できない。

 安倍晋三は「あそこに日本人が、日本の法的立場を害さない形で行って作業する、(北方)四島で。初めてのことですよ」と言っているが、「日本の法的立場を害さない形」はプーチンの提案自体が阻害要件となって立ちはだかることになり、その体裁が整わないままに共同経済活動だけが進展する可能性も否定できない。

 尤もそのような進展こそがプーチンが望む可能性であることは、これまでのロシア側の態度のみならず、プーチンの今回の提案そのものが証明することになる。

 どこからどう見ようと、誰かがああ言えば、巧妙にこう言う式で成り立たせたプーチンの提案に対する安倍晋三の詭弁の連発となっている。以上見てきたように平和条約の必要性が日ロとでは異なる以上、決して言い換えることはできないにも関わらず、「平和条約が必要だという意欲が示されたことは間違いない」と言い換える国民騙しの詭弁はもうやめるべきだろう。プーチンにとって平和条約締結は日本から贈られてくる経済的果実を確かなものにするための方便に過ぎない。

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安倍晋三のプーチン提案を「平和条約締結に対する意欲の表れ」とする認識は日ロ両国の国益の違いに蓋をする国民騙しの発言

2018-09-14 11:28:05 | 政治


 安倍晋三は2018年9月12日の東方経済フォーラム全体会合でプーチンに平和条約締結を呼びかける演説を行った。「首相官邸」 

 安倍晋三「日本とロシアには、他の二国間に滅多にない可能性があるというのに、その十二分な開花を阻む障害が依然として残存しています。それこそは皆さん、繰り返します、両国がいまだに平和条約締結に至っていないという事実にほかなりません。

  ・・・・・・・・・・・・・

 プーチン大統領、もう一度ここで、たくさんの聴衆を証人として、私たちの意思を確かめ合おうではありませんか」

 この全体会合の2日前の9月10日に同じロシアのウラジオストクで行われた22回目だとかの2時間35分に亘った日ロ首脳会談を行っている。その首脳会談で安倍晋三は同じような趣旨の言葉をプーチンに向かって発信していたはずだ。なぜか分からないが、大勢の聴衆が詰めかけ、中国国家主席の習近平や他国の首脳が列席している全体会合で大層な国家指導者だとの思い込みから自身の雄弁に酔っていたのかもしれないが、首脳会談で言うべき発言を得々と費やした。

 もし事実そのとおりだとすると、安倍晋三はプーチンにしっぺ返しを喰らったことになる。プーチンは次の発言を以って応えた。
 
 プーチン(戦後70年以上、日ロ間で北方領土問題が解決できずにいることに触れた上で)「今思いついた。先ず平和条約を締結しよう。今すぐにとは言わないが、ことしの年末までに。いかなる前提条件も付けずに。

 (会場から拍手)拍手をお願いしたわけではないが、支持してくれてありがとう。その後、この平和条約をもとに、友人として、すべての係争中の問題について話し合いを続けよう。そうすれば70年間、克服できていない、あらゆる問題の解決がたやすくなるだろう」(NHK NEWS WEB

 北方四島の帰属問題を抜きに平和条約を締結し、その締結後に帰属問題の話し合いを行おうという日本の基本的立場――日本のに反する提案となるからだ。

 対して9月13日午前の記者会で見せた官房長官菅義偉の反応。「NHK NEWS WEB」(2018年9月13日 12時21分)

 菅義偉「常日頃からロシアとの間では意思疎通を図ってきており、具体的なやり取りについて発言は控えたい。プーチン大統領の今回の発言は、平和条約を締結して日ロ関係の発展を加速したいとの強い気持の表れではなかったかなと思う」

 記者「プーチン大統領の提案は、北方領土問題の棚上げにつながると受け止めているか」

 菅義偉「我が国としては領土問題を解決して平和条約を締結するというのが基本的な立場であり、こうした我が国の立場はロシア側も承知していると思っている」――

 菅義偉は「プーチン大統領の今回の発言は、平和条約を締結して日ロ関係の発展を加速したいとの強い気持の表れだ」との認識を示している。

 これと同じような認識をウラジオストクから帰国し、公明党の山口代表と会談した中で指摘したと次の記事、「NHK NEWS WEB」2018年9月13日 18時56分)が伝えている。

 安倍晋三「(提案は)プーチン大統領の平和条約締結に対する意欲の表れだと捉えている。政府の方針としては、北方四島の帰属の問題を解決して、平和条約を締結するという基本に変わりはない」――

 安倍晋三と菅義偉の発言は日本の国益にも適っているプーチンの提案のように聞こえる。いわば日本政府が基本的立場としている北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する行程表がさも進展するかのような物言いに見える。

 プーチンの提案が「平和条約を締結して日ロ関係の発展を加速したいとの強い気持の表れ」であろうと、「平和条約締結に対する意欲の表れ」であろうと、それはロシアの国益に立った「強い気持」や「意欲」の表れであって、当たり前のことだが、日本の国益に適うどころか、そういった気持や意欲が強ければ強い程、日本の国益から乖離することになり、北方四島の帰属問題の解決を難しくしていく、あるいは解決の可能性をゼロにしていく現実が横たわることになる。

 当然、プーチンの提案をそこに内在させている”国益”という頑強な要素を排除して「強い気持の表れだ」とか、「意欲の表れ」で片付けるのは日ロ両国でそれぞれに異なる国益そのものを直視していない愚かしい認識の提示だと解釈されかねない。

 安倍晋三は今回のプーチンとの首脳会談で北方領土での共同経済活動の具体化に向けた今後の行程表を取り纏め、会談後の共同記者発表で、「四島の未来像を共に描く道筋が見えてきた。双方の法的立場を害さず、できることから実現する」(NHK NEWS WEB)と発言、日ロ関係の明るい先行きを確信させているが、現実にはロシア側が自国の法律に矛盾しないことという条件を譲らず、北方四島での共同経済活動のための双方の法的立場を害さない「特別な制度」を構築し得ないでいる。

 その原因はロシア側が日本の国益に歩み寄る気配すら見せず、自らの国益を譲る意思がないからで、安倍晋三が共同経済活動に関していくら「双方の法的立場を害さず、できることから実現する」と言っても、「特別な制度」がロシアの国益が障害となって創設できなければ、共同経済活動はロシアの法律に従って行われることになり、北方四島を即ロシア領と認めることになりかねない。

 いわば「特別な制度」の創設が先でありながら、後回しにして「双方の法的立場を害さず、できることから実現する」と言っていることは日ロ両国の国益の違いに蓋をして国民を騙す発言となる。

 もし日ロ双方の国益の違いが北方四島の帰属問題と平和条約締結問題進展の障害、さらに共同経済活動に於ける双方の法的立場を害さない「特別な制度」創設の障害となっていることを得視していながら、プーチン提案を菅義偉は「平和条約を締結して日ロ関係の発展を加速したいとの強い気持の表れだ」と解釈し、安倍晋三の方は「プーチン大統領の平和条約締結に対する意欲の表れだ」と認識しているとしたら、同じく日ロ両国の国益の違いに蓋をして国民を騙す発言何よりの発言となる。

 どちらにしても安倍晋三も菅義偉も、北方領土問題に関して何が問題となっているのかに蓋をして、さも平和条約締結に向かうかのような国民を騙す発言を繰返している。

 この国民騙しに河野太郎が加わる。「時事ドットコム」(2018/09/13-17:59)

 9月13日、訪問先のベトナム・ハノイで記者団に対して。

 河野太郎「(プーチン提案に対して)なるべく早く平和条約を締結したいという思いがよく分かった。向いている方向は(日ロ両国で)同じだと確認した」

 この男の頭の中はどうなっているのだろう。プーチン提案を受け入れて、平和条約を先に締結すれば、領土帰属問題は棚上げにされる可能性は高くなる。にも関わらず、「向いている方向は(日ロ両国で)同じだと確認した」と言うことができる。

 外国訪問回数のハッタリだけで持っている外務大臣で、ハッタリという点でそっくりの安倍晋三が任命しただけのことはある。
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プーチンは他国首脳も出席の東方経済フォーラム2018全体会合でなぜいきなり平和条約締結を言い出したのだろう

2018-09-13 11:12:12 | 政治

  
 《プーチン大統領 「年内に平和条約を」》NHK NEWS WEB/2018年9月12日 16時03分)

 2018年9月12日東方経済フォーラム2018全体会合。テーブルにプーチンを初め、中国の習近平、日本の安倍晋三、その他モンゴルなどの各国首脳が3名、合計6名が聴衆を前にテーブルに着いていた。プーチンや我が安倍晋三、習近平中国国家主席の演説後、プーチンが司会者に発言を求められた。プーチンの演説後だから、前以って示し合わせていた可能性は高い。

 プーチン(戦後70年以上、日ロ間で北方領土問題が解決できずにいることに触れた上で)「今思いついた。まず平和条約を締結しよう。今すぐにとは言わないが、ことしの年末までに。いかなる前提条件も付けずに。

 (会場から拍手)拍手をお願いしたわけではないが、支持してくれてありがとう。その後、この平和条約をもとに、友人として、すべての係争中の問題について話し合いを続けよう。そうすれば70年間、克服できていない、あらゆる問題の解決がたやすくなるだろう」――

 このプーチンの唐突な提案に対する9月12日午後の官房長官菅義偉の記者会見発言を記事は紹介している。

 菅義偉「プーチン大統領の発言については承知しているが、その意図についてコメントすることは控える。日ロ首脳会談ではきたんのない意見交換があったが、指摘されるようなプーチン大統領の発言はなかった。わが国の立場は、たびたび申し上げているように北方四島の帰属の問題を解決したうえで平和条約を締結する。これは全く変わりない」――

 首脳会談では「指摘されるようなプーチン大統領の発言はなかった」

 当然だろう。そのような発言があったなら、テレビ放映も含めたら、世界の目が集まっている衆人環視の場とも言える全体会合で同じ発言を繰返しはしないはずだ。

 記事は、〈プーチン大統領としては、困難な北方領土問題の解決を棚上げにして、平和条約を速やかに結びたい考えを示したものと見られます。〉と解説しているが、プーチンは日ロ2国間問題を2日前のロシアのウラジオストクで行われた22回目だとかの2時間35分に亘った日ロ首脳会談では提案せずに他国の首脳が4人も列席し、テレビカメラが入り、聴衆が目の前にいる中で外交上の慣例からしたら異例で、失礼に当たる方法で唐突に提案したのはなぜなのだろう。
 
 ロシア大統領が他国首脳も列席している中で安倍晋三に対して直接口にした提案である。ロシア外務省が日ロ間でこの提案をベースに議論していくことを既定路線とするかのような発言を自国メディアに示したのは当然の成り行きであるし、あるいはロシア政府の中で前以って既定路線とすることを打ち合わせていたのかもしれない。

 モルグロフ外務次官「この提案も含めて日本と協議を進めていく。我々は用意ができている。日本のパートナーがいつ準備ができるかにかかっている」

 「さあ、準備してください」と促している。
だが、菅義偉が言っているように日本としては受け入れるわけにはいかないはずだ。そのことは記事が、「平和条約をめぐる日本の立場」として解説していることからも頷くことができる。

〈ロシアとの平和条約交渉をめぐっては、日本政府は「北方四島の帰属の問題を解決して条約を締結する」という立場を一貫してとってきました。
仮に帰属の問題を解決しないまま平和条約を結べば、領土問題が存在しないことを日本側が認めたと国際社会に受け止められかねないという立場からです。〉

 当ブログにプーチンは北方四島を返還する気はなく、これらの島々を自国領土としたまま平和条約だけを結ぶ意思でいると何度か書いてきたが、その意思をいつもとは違う方法で今回は単刀直入且つ露骨に提示した。

 22回もの首脳会談を繰返していながら、ナメられたものである。上記NHK記事の動画を編集してプーチンの発言と発言に対する安倍晋三の反応をピックアップしてみたが、日本政府が受け入れ難いのはプーチンの提案に対して安倍晋三は最初は穏やかな表情で頷きながら聞いていたものの、思わずにだろう、プーチンとは反対の方向に顔を背けた様子からも窺うことができる。

 要するに安倍晋三はプーチンの顔と口にする言葉に最後まで目を向けていることができなかった。

 安倍晋三は9月10日午後、ウラジオストクに羽田空港を出発する際、記者団に対して「あらゆる分野で日ロ関係を進め、領土問題を解決して平和条約を締結する。その方向に向けてしっかり前進していきたい」と発言し、同日の首脳会談後の共同記者会見では日露平和条約が締結されていない状況について「異常な戦後がそのままになっている。私とプーチン大統領の間で終わらせる」(「毎日新聞」(2018年9月10日 23時30分)と、その可能性を確実に請け合うことができるかのように大層な言葉を使っている。

 つまりプーチンとの首脳会談で「領土問題を解決して平和条約を締結する」前向きの感触を得たことになる。得ていなければ、「異常な戦後」を「私とプーチン大統領の間で終わらせる」などと御大層に請け合うことはできない。

 プーチンが北方四島を元々返還する気がないのは「北方四島は第2次世界大戦の結果、ロシア領となった」というロシア側の立場を踏まえているからなのは断るまでもない。9月10日に日ロ首脳会談を控えているというのにロシア政府はたった8日前の9月2日、北方領土の国後島、択捉島、色丹島で日本に勝利したことを祝う式典を開いている。「ロシア領となった」ことの日本向けシグナルも含まれているはずだ。北方四島の軍備強化もロシア領であることのシグナルであろう。

 当然、ロシア側には領土問題の解決を前提とした平和条約締結のシナリオは存在しないことになる。にも関わらず、日ロ首脳会談後の共同記者発表で我が日本の安倍晋三は平和条約が締結されていない「異常な戦後がそのままになっている。私とプーチン大統領の間で終わらせる」と日本側のシナリオを前面に出した。

 プーチンは自身が首脳会談でロシア側のシナリオに添ったシグナルを発することはあっても、日本側のシナリオに添ったシグナルに呼応してはいないにも関わらず、安倍晋三が記者会見等でプーチンが日本側のシナリオに添ったシグナルに呼応しているかのような発言を繰返していることに業を煮やしたのではないだろうか。

 「いい加減にしろ、領土返還に応じるつもりはない」とばかりに。

そこで北方四島問題が重要な日ロ二国間問題であるにも関わらず、他国首脳が列席し、聴衆も存在する東方経済フォーラムの衆人環視に等しいとも言える全体会合の場でロシア側の国益に添わせる都合のいいシナリオとなる領土の帰属を前提としない平和条約締結の話を持ち出した。
 重要な二国間問題を首脳同士の合意がないままに首脳会談の外に出すこと自体が外交上は失礼に当たるプーチンのこのような態度は安倍晋三の発言に業を煮やしていなければ、見せることはないはずだ。

 要するに日ロ首脳会談でプーチンは「領土問題を解決して平和条約を締結する」前向きの感触を安倍晋三に与えていなかったし、安倍晋三もプーチンからそのような感触を得てもいなかった。にも関わらずそのような感触を得たかのように発言をしたのはプーチンとの間で平和条約締結に向けて議論が停滞している状況を日本国民に明らかにすることはできなかったからで、明らかにしたなら、自身の外交能力が優れていることを常々演出している手前、自ら創り上げたそのような偶像を自ら破壊するような真似はできなかった以外に理由は考えることはできない。

 アベノミクスにしても、日銀の異次元の金融緩和がなければ、今頃消滅していただろうから、ハッタリでアベノミクスを持たせているに過ぎない。ハッタリこそ、安倍晋三には似合う。

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安倍晋三自衛隊9条明記は国民の改正意思を見ない、自身が狙い通りの憲法改正に持っていく狡猾・巧妙な詐術

2018-09-11 11:42:43 | 政治


【お断り】AM9:15に題名を《安倍晋三の自衛隊明記「自衛隊の皆さんが誇りを持って任務を全うできる環境をつくっていきたい」は憲法改正の狡猾・巧妙な詐術》から変更しました。悪しからず。

 昨日9月10日(2018年)、自民党本部で安倍晋三と石破茂の両総裁選立候補者の共同記者会見が行われた。以下の記事から憲法についての議論のみを拾ってみる。

 「自民党総裁選・共同記者会見詳報」産経ニュース/2018.9.10 14:54)

安倍晋三「自衛隊、これは、存在というのは日本の安全保障の根本でありますから、自衛隊の皆さんが誇りを持って任務を全うできる環境をつくっていきたいと考えております。そのために、それは憲法に日本の平和と独立を守ること、そして『自衛隊』としっかりと明記をしていきたいと思っています」

 石破茂「憲法は緊急性のあるもの、国民の理解を得られるもの、そこから先にやってまいります。自衛隊を違憲だと思っている人は今、1割、『自衛隊、ありがとう』と言ってくれる人は9割。むしろ、やらなきゃいけないのは、国内法的には軍隊じゃないが、国際的には軍隊だとか、必要最小限だから戦力ではないとか、そういうようなことを廃止していかないと、自衛隊の献身に報いることはできない。私は、そう思っています」

   ・・・・・・・・・・・・・・・・

 安倍晋三「憲法改正というのは普通の法律と違うわけでありまして、普通の法律は衆院、参院で過半数を取れば成立します。憲法改正は衆院、参院、それぞれ3分の2の発議によって国民投票に付されるわけであり、本番は国民投票です。

 しかし今、憲法が制定されて以来、1回も国民投票がなされていないわけであります。つまり、国民の皆さんにとって、憲法を自ら権利を行使する場が今までなかったんだろう。賛成にしろ、反対にしろですね。その意味におきましては、まさに国会議員が国民の皆様の本来の権利を行使させないということになっているのであれば、それは無責任のそしりは免れないんだろうと思います。

そもそも、自由民主党は憲法改正、党の基本的な方針として掲げて60年以上経っているわけであります。そこで、スケジュールありきじゃないかという批判もあるのは承知をしているんですが、第一党の自由民主党が一番それは大きな責任を担っているんだろうなと思っています。その自由民主党の私は、総裁、党首として一定の目標を掲げなければいけない。でも、それは一定の目標であり、必ずそれをやらなければいけないという指示ではなくて、一つそういう目標で、みんな頑張ろうよと、こういうことを申し上げているわけであり、党において、しっかりと目標を達成することができるかどうかということについても議論していただければと思っております。

 では、いつの国会なんだ。次の国会は、秋の臨時国会を開催するということはまだ決めておりませんが、秋の臨時国会を与党とも相談して開催するということになれば、秋の臨時国会を目指して議論を進めていただきたい。拙速にやるということを全く言っているわけではございません。

そして条文。4項目の条文につきましては、条文イメージについて(憲法改正)推進本部で決定しました。そして、党大会でそれを示したわけでございます。たしかに、まだ総務会決定にはなっておりませんが、今、自公政権においては、ほとんどの法律についてですね、基本的に、公明党と協議をした後に、両党がそれぞれ最終的に検討するということになっておりますので、なるべく多くの公明党、与党はもちろんでございますが、なるべく多くの党の皆さんに賛成していただきたいということで、自民党でガチガチにしたわけではなくて、いわば条文改正のイメージにとどめているということであり、ぜひ、与党をはじめ多くの皆様のご理解をいただければと、こう思っております」

 石破茂「緊急性の高いものからやりたいと申し上げました。来年の参院選に合区の解消は間に合いませんでした。この合区の解消をやるために、わが党として参院が6年の任期が保証されているということ。そして、高い見識を持っているということ。それを最大限に生かす形で、地域の特性あるいは少数意見、この反映の院として、さらに大きな役割を果たすべきだということでなければ、合区の解消はできないことになっています。これ急がないと、4年先に次の参院選は来るわけです。また定数を増やしましょうみたいなことが国民の理解を得られるとは到底思えない。これはものすごく急ぐと私は思っています。それが第1。

 第2は、これも党で決めたことですが、災害対策基本法にある条文が本当にきちんと機能するかというと、いまだに一度も使われたことがない、緊急事態の布告もね。あるいは物資の統制もね。それは、憲法にそれをきちんと保証する条文がないから。個人的な基本的人権は最大限に尊重するということは徹底した上で、そういうものをやっていかないと、大災害に対応できない。

 じゃあ、9条どうなんだって話ですが、私、ずうっと長いこと国会で答弁に立ってきました。自衛隊違憲じゃないかって議論は一度もなかった。むしろ問われたのは、この船、必要最小限度なんですか。この行動は交戦権に当たるんですか。そういう議論は何度も何度もありました。必要最小限度だから戦力じゃないよとか。国内法的には軍隊じゃないけど国外的には軍隊だよって。そんなこと聞いて誰かわかりますか。なんのことだか分かりますか。私は自衛隊という名称はそのままでいい。国民にこれだけ定着しているんだから。きちんと書かなきゃいけないのは、国の独立を守る組織です。国際法にのっとって行動する組織です。このことをきちんと書くべきなのであって、今、違憲だって自衛隊思う人が1割です。自衛隊に良い印象を持っている人は9割です。

 自衛隊の子供たちが、君のお父さん自衛官なんだってね、誇りを持って胸を張る時代です。必要なことは何なのか、そこに向けて丁寧に、丁寧に、丁寧に説明をしていかなければなりません。理解ないまま、国民投票なんかかけちゃいけません。それが自民党のやるべきことだし、あわせて戦争を全く知らない世代だけで9条を改正していいと私は思わない。戦争の惨禍を経験された方がおられるうちにやりたい。誠実な努力を着実にやっていく上で、初めてそれが俎上に上るのだ、私はそう思います」

 石破茂は「憲法は緊急性のあるもの、国民の理解を得られるもの、そこから先にやっていく」と言い、それは憲法への自衛隊明記ではなく、参院選の合区解消や、これまでも主張してきた、災害対策基本法の機能向上を目的とした大規模災害への対処を規定する緊急事態条項の創設だと主張している。

 対して安倍晋三は自衛隊は「日本の安全保障の根本」だからという理由で憲法9条に「日本の平和と独立を守ること」と自衛隊を明記することで「自衛隊の皆さんが誇りを持って任務を全うできる環境をつくっていく」と言っているが、「日本の安全保障の根本」は政治と経済であり、政治と経済がつくり上げる国力である。確かに軍事に限れば、自衛隊が日本の安全保障の根本だとしても、そのプレゼンスや軍事行使に至る以前の問題として自衛隊と言えども、政治と経済とそれらによって構成される国力にコントロールされる。

 例えば自衛隊という軍事組織のみで政治や経済=国力が貧弱な国家に於いて国家の安全保障をより良くコントロールし得るだろうか。自衛隊という組織そのものの規模も装備にしても、国家の政治や経済=国力に負う。国力の規模に不釣り合いな巨大な軍隊を持った国はその軍隊によって支配されることになるだろう。

 要するに自衛隊を「日本の安全保障の根本」に置く発想自体が自衛隊を過大評価する誤った認識でしかない。その過大評価が自衛隊をして自らの力の過信に向かわせない保証はなく、安倍晋三の認識は自衛隊に対する危険な過大評価となりかねない。憲法に自衛隊を明記し、その役割を「日本の平和と独立を守ること」と規定したとしても、自らの力を過信した場合の軍隊が憲法をも踏みにじり、暴走するに至った弊害を日本の戦前に見てきた

 安倍晋三はまた憲法改正は国会が発議するものの、「本番は国民投票」だと言って、憲法改正の最終決定権は国民にあると当たり前のこと一方で口にしているものの、国民投票に持っていく理由を上記理由以外に「憲法が制定されて以来、1回も国民投票がなされていない」こと、憲法に関して「自ら権利を行使する場が今までなかった」ことを挙げ、これらの機会提供のために「国会議員が国民の皆様の本来の権利を行使させないということになっているのであれば、それは無責任のそしりは免れない」として、国会議員が国民本来の権利行使の機会提供を果たすべきだとトンチンカンな発言を弄している。

 憲法改正を政治家が意思したとしても、その意思を最大公約数(種々の意見の間にみられる共通点)として国民が受け入れるかどうかであり、国民の意思が立法府に反映された上での衆参3分の2の発議でなければ、最大公約数の意思が排除されることになって、国民投票で過半数の賛成を得る可能性は限りなく小さくなる。

 要するに国会議員が憲法に関わる国民本来の権利行使の機会をいくら提供したとしても、大多数の国民が憲法改正を望んでいなければ、議会の勢力に頼んで衆参で発議しても、国民投票で否決される可能性の方が大きい。

 当然、「憲法が制定されて以来、1回も国民投票がなされていない」といったことや憲法に関して「自ら権利を行使する場が今までなかった」こと、あるいは国会議員が国民本来の権利行使の機会提供を果たしてこなかったといったことは憲法改正の理由とはならない。安倍晋三が口にしていることは聞こえのいいことを言って国民を憲法改正の気にさせる体のいい詐術に過ぎない。

 例え政治家が憲法改正の必要性に迫られ、そのことを国民に訴えたとしても、国民がそれに応えるかどうかに憲法改正はかかっているのであり、国民が応えているかどうかを知るには世論に目を向ける以外に方法はない。

 NHKが2018年5月3日の憲法記念日を期して4月13日~15日に行った世論調査を見てみる。

 「今の憲法を改正する必要性」

 「改正する必要があると思う」29%
 「改正する必要はないと思う」27%
 「どちらともいえない」39%

 「9条への自衛隊明記」

 「賛成」31%
 「反対」23%
 「どちらともいえない」40%

 「憲法9条への評価」

 「非常に評価する」28%
 「ある程度評価する」42%
 「あまり評価しない」18%
 「まったく評価しない」7%

「憲法改正の議論を進めるべきか」

「憲法改正の議論を進めるべき」19%
「憲法以外の問題に優先して取り組むべき」68%

「9条への自衛隊明記」に関しては賛成が8ポイント上回っているが、「憲法9条への評価」は「非常に評価する」28%+「ある程度評価する」42%で合計70%で、「あまり評価しない」18%+
「まったく評価しない」7%で合計25%。逆に45ポイントも評価が上回っている。このことは憲法の平和主義への強い拘りしめすもので、「9条への自衛隊明記」に関して「どちらともいえない」
が大多数の40%も占めていることを加味すると、この世論調査に限った場合、自衛隊の9条への明記はそれほど強く望んでいないことがわかる。

このことは次の質問に対する回答に如実に現れている。

「憲法改正の優先順位」

「憲法改正の議論を進めるべき」19%
「憲法以外の問題に優先して取り組むべき」68%

憲法改正の優先順位がかくも低い。要するに安倍晋三の憲法改正9条自衛隊明記の意思だけが先走っている。例え国会の与党勢力を以ってして強行採決という名の実力行使を用いたとしても、
国民投票の段階で否定される確率は決して低くはない。

 この優先度はNHKが2018年8月3日から5日までに行った世論調査でも代わりはない。

「自民党総裁選挙で争点として最も議論してほしい政策」

 「経済・財政政策」27%
 「地方の活性化」20%
 「外交・安全保障」17%
 「防災対策」11%
 「政権運営のあり方」9%
 「憲法改正」6%

 「憲法改正」は最下位の6%である。他の世論調査も大勢は変わらず、いわば世論を見る限り、安倍晋三は国民の憲法改正への意思を見誤っていることと、憲法改正9条自衛隊明記の意思だけが先走っている状況とが浮かんでくる。

 にも関わらず、憲法が制定されて以来、1回も国民投票がなされていない」とか、憲法に関して「自ら権利を行使する場が今までなかった」、あるいは国会議員が国民本来の国民投票の権利行使の機会提供を果たすべきだといったトンチンカンなことを得々と喋っている。

 安倍晋三の自衛隊明記に関わるトンチンカンは他にもある。石破茂が9条改正の緊急性のない理由として「今、違憲だって自衛隊思う人が1割」であり、「自衛隊に良い印象を持っている人は9割」もいることを挙げているが、安倍晋三も2017年5月3日の憲法記念日に日本会議系の改憲集会にビデオメッセージを送り、この「9割」に触れて、その「9割」に対して自衛隊違憲の憲法学者や政党が存在することを理由に憲法への自衛隊明記の必要性を訴えている。

 「日経電子版」(2017/5/3 15:19)

 安倍晋三「例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。『自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ』というのは、あまりにも無責任です。

 私は少なくとも、私たちの世代のうちに自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます」――

 この発言も国民の憲法9条改正に関わる意思には見向きもしていない。

 以下のことはブログに一度取り上げたが、確かに安倍晋三が言うとおりに自衛隊に対する「国民の信頼は9割を超えている」だろう。だが、安倍晋三のこのビデオメッセージ送付前日の2017年5月2日付の朝日新聞世論調査(リンク切れ)が「国民の信頼9割超」の正体を教えることになる。

◆自衛隊が海外で活動してよいと思うことに、いくつでもマルをつけてください。
 災害にあった国の人を救助する92%
 危険な目にあっている日本人を移送する77%
 国連の平和維持活動に参加する62%
 重要な海上交通路で機雷を除去する39%
 国連職員や他国軍の兵士らが武装勢力に襲われた際、武器を使って助ける18%
 アメリカ軍に武器や燃料などを補給する15%
 アメリカ軍と一緒に前線で戦う4%(以上)

 〈災害にあった国の人を救助する92%〉は自国の災害救助への期待と同様の値と見ることができる。自衛隊の直接的な戦争活動への支持は僅か4%に過ぎない。安倍晋三が言っている「国民の信頼9割超」の正体はその9割の多くが災害救助活動の自衛隊に対する「信頼」であって、戦争する自衛隊に対する「信頼」ではないことが見えてくる。

 要するに日本国民が望んでいる自衛隊像は災害救助活動で活躍する自衛隊であって、戦争する自衛隊ではない。国民の多くがそう意思しているにも関わらず、日本憲法の戦争に関係する9条に自衛隊の明記を狙っている。

 国民がこのことに気づけば、自衛隊明記の世論は反対が多数を占める可能性は大きい。

  憲法に関して国民の多くがこのような憲法改正意思にあるにも関わらず、安倍晋三が「自衛隊の皆さんが誇りを持って任務を全うできる環境をつくっていきたい」などと言っている自衛隊9条明記の御託は国民の改正意思を見ずに自身の狙い通りに憲法改正に持っていこうとする憲法改正の狡猾・巧妙な詐術としかならない。

 
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麻生太郎の「G7で我々は唯一の有色人種」発言のベースは前近代的な日本優越民族思想、国会議員・閣僚の資格を失う

2018-09-10 09:56:02 | 政治


 《麻生氏「我々はG7唯一の有色人種」 安倍氏応援の会で》朝日デジタル/2018年9月5日20時58分)   

 麻生太郎副総理兼財務相は5日、盛岡市内で開かれた「安倍晋三自民党総裁を応援する会」で、「G7の国の中で、我々は唯一の有色人種であり、アジア人で出ているのは日本だけ」と述べた上で、「今日までその地位を確実にして、世界からの関心が日本に集まっている」と語った。日本以外のG7構成国にも様々な人種がおり、かつてはオバマ氏も米大統領としてG7サミットに参加していた。

 麻生氏は、リーマン・ショックの際も日本が国際通貨基金(IMF)に多大なお金を払って金融危機を乗り越えた、と主張し、日本が世界から注目されていると話した。そんな中、「問題はトランプの発言、行動。これに振り回されている」と述べる一方、トランプ米大統領の信頼を勝ち得たのが安倍氏だとして、総裁選での支持を訴えた。

 会合は岩手県選出の国会議員4人が開き、党員ら約1100人が集まった。(大西英正)

 文飾は当方。

 この発言に対して共産党委員長志位和夫と社民党投手又市征治が9月6日の記者会見で批判している。

 志位和夫「とんでもない認識違いだ。米国もイギリスもフランスもいろんな人種がいる。世界のことをご存じないのか」

 又市征治(麻生氏は失言や暴言が多いと指摘)「こんな人だから、森友問題などのけじめをつけられない」(毎日新聞

 カネに困ったことのないボンボン育ちゆえに何事も天下御免で、天下御免が行き過ぎて失言も多い麻生太郎の記事中の発言を纏めてみる。「G7の国の中で、我々は唯一の有色人種であり、アジア人で出ているのは日本だけ。今日までその地位を確実にして、世界からの関心が日本に集まっている」

 意味を取ると、白人種国家が多いG7にアジア人の中からメンバーとなっている「唯一の有色人種」国家は「日本だけ」で、世界的にも「その地位を確実」にして、「世界からの」注目度が高まっているということになる。

 このような発言が示すことになる麻生太郎の思想は日本はアジア各国の中で最も優秀な有色人種国家であり、有色人種ながらも、他のG7メンバーの優秀な白人種国家に対等に伍していると見ていることから、アジアに対しては絶対的日本民族優越主義、欧米に対しては相対的日本民族優越主義を形作っている。

 いわばアジア各国の中では、アフリカ各国に対しても同じでなければ矛盾することになるが、日本は最優秀の有色人種であり、欧米の白人種に対しても劣ることはないという優秀性を日本人に見ていることになる。

 この手の日本民族優越主義を相互に共存を図っている欧米各国内の有色人種に当てはめると、アジアの有色人種に対する絶対的日本民族優越主義が自ずと応用されることになって、彼ら有色人種を優秀でも何でもない取るに足らない存在と見ていることになる。見ていることによって、日本人が有色人種ながら、アジアやアフリカの有色人種に対して取っている絶対的日本民族優越主義は紛れもない正当性を帯びることになる。

 但しアジアやアフリカの有色人種に対しては絶対的日本民族優越主義を取りながら、欧米の白人種に対しては一歩引いた相対的日本民族優越主義しか取ることができない、人種を優劣で価値づける順位づけの精神構造は些か情けない。

 日本人の白人コンプレックスはこのような精神構造から出ているはずであるし、麻生太郎はこの類いの精神構造を代表している一人となる。

 人種を優劣で価値づける人間は人種や国籍に関係なしに誰もがそれぞれに持つ多様な可能性に価値を置かず、当然、個々人が備える何かしらの可能性の価値に目を向けることもない。ただ闇雲に人種でその人間の優劣を見る。そしてその不当性に少しも気づかない。

 麻生太郎のこの日本民族優越主義思想は根深く、小泉内閣下の総務大臣時代の2005年10月15日の福岡県太宰府市の九州国立博物館開館記念式典の来賓祝辞での発言でも飛び出すことになった。

 麻生太郎「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない。今は(世界各地で)人種、地域、宗教で色んな争いが起きている。日本は一国家、一文明、一文化圏で、そういう国はあまりない」(Wikipedia

 一概には優劣で価値づけることのできない文化・文明・民族・言語のそれぞれに価値を持った多様性を認めず、日本に於ける現実世界はそう単純ではないにも関わらず、日本の文化・文明・民族・言語が一つであることが原因で色んな争いが起きないことを以って暗に日本民族を優秀だと価値づけている。

 このような前近代的な日本民族優越主義思想を安倍晋三の盟友であり、自民党と安倍内閣のナンバー2を占めている麻生太郎は自らの精神に根づかせている。その精神性に於いて二人は似た者同士だが、「G7の国の中で、我々は唯一の有色人種であり、アジア人で出ているのは日本だけ」だと日本民族優越主義思想を口外することを憚らない人間は、日本国憲法第14条で「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とした規定に反する言論の流布に当たり、即刻、国会議員の資格ばかりか、閣僚の資格を失う。

 いや、日本国憲法を持ち出すまでもなく、人種平等の世界を目指すことを心掛けなければならない時代に心がける集団の先頭に立たなければならない政治家が日本民族優越主義思想に取り憑かれて人種を優劣で価値づけることは集団から離れた場所に位置していることになって、このことだけでも現在の時代の議員や閣僚の資格はない。 

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安倍晋三は今回の地震を国民の命を守るリーダー像の露出機会と捉え、総裁選にプラスと考えているはずだ

2018-09-09 11:40:40 | 政治
 

 北海道胆振東部地震と命名された地震は2018年9月6日3時頃、日本の北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源として発生。震度は7。震源地の胆振では2キロ以上の広範囲に亘って山崩れが発生、胆振総合振興局管内勇払郡厚真町では建物10棟が倒壊、多くが生き埋めとなり、9月8日22時34分発信の「NHK NEWS WEB」記事は、「35人死亡、2人心肺停止、3人安否不明」と伝えていたが、「北海道新聞」ネット記事によると、死者35人のうち厚真町の死者は31人にのぼると、被害が厚真町に集中している状況を伝えている。

「時事ドットコム」の首相動静を見ると、安倍政権は地震発生当日の9月6日、午前7時37分から同47分までの10分間、北海道胆振東部地震に関する関係閣僚会議を開いている。以下の冒頭発言は互選中の会議での発言である。

 「9月6日午前関係閣僚会議」(首相官邸)

安倍晋三「胆振地方中東部を震源とする最大震度6強の地震により、これまでに厚真町において家屋倒壊、土砂崩れの発生が多数確認されているほか、安否不明、建物倒壊、土砂崩
れなどに関する多数の110番、119番通報が寄せられています。

 また、札幌市を始め、北海道の全域で大規模な停電が発生しています。

 政府においては、被害状況の把握を進め、人命第一の方針の下、政府一体となって対応に当たっています。

 現地においては、自衛隊部隊が4,000名態勢で救助活動を既に開始しており、今後2万5,000人にまで増強する予定です。自衛隊、警察、消防、海上保安庁の部隊により、救命・救助活動に全力を尽くしてまいります。

 事態は一刻を争います。閣僚各位にあっては被害情報を迅速に把握するとともに、被災市町村等と緊密に連携して、被災者の救命・救助、住民の避難、ライフラインの復旧に全力で当たってください」――

 たった10分間の会議となると、安倍晋三が国土交通省やその外局である気象庁の地震情報と被害状況を纏めた原稿を読み上げる冒頭の挨拶と関係閣僚が行う短い報告のみで10分の殆どが費やされたはずである。

 このような会議の実態からすると、会議の外では防衛省や警察庁、消防庁等の指示の下、自衛隊や警察、消防が派遣の動きや到着後の現場でそれぞれに救助・救援等の動きを見せていて、その
ような活動の有効性自体が実質的には「人命第一」を担うのだから、このこと比較したら、会議自体はさして重要ではなく、一種の儀式と見ることさえできる。

 だが、安倍晋三が役人作成の原稿に書いてある短い挨拶を冒頭に読み上げる中で、「人命第一の方針の下、政府一体となって対応に当たっています」と発言したことがマス
コミによって取り上げられ、広範囲に報道されたことは一種の儀式であることを隠して国民の命を守るリーダー像を演出することに役立ったはずだ。

 「自衛隊部隊が4,000名態勢で救助活動を既に開始しており、今後2万5,000人にまで増強する予定です」も、国民の命を守るリーダー像を演出する発言となる。

 首相の立場としては「人命第一」は一見、当然のように見えるが、会議自体に一種の儀式としての性格を与えている以上、「人命第一」も、同じ儀式としての色合いを否応のなしに帯びることになる。

 この見方が間違っていないことを後で述べる。
  
 安倍晋三は9月6日午後も午後6時3分から同21分まで18分間、関係閣僚会議を開いている。「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震に関する関係閣僚会議」(首相官邸)

 安倍晋三「最大震度7の平成30年北海道胆振東部地震により、これまでに9名の方が亡くなられ、厚真町を中心に安否不明者が多数に上っているほか、多数の家屋倒壊や土砂崩れを確認しています。お亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 政府においては、自衛隊、警察、消防、海上保安庁の部隊が、道外からの応援を含め、2万1,000人、ヘリ51機、艦船12隻の態勢で、救命・救助活動に全力で取り組んでいます。救助部隊の態勢については、更に機動的に強化してまいります。また、2次災害防止のため、土砂災害の専門チームTEC-FORCEを派遣いたしました。引き続き、被災市町村等との緊密な連携の下、災害応急対策に全力で取り組んでまいります。

 北海道全域で発生していた停電については、水力発電所、火力発電所の再稼働を進めた結果、札幌市の一部など、30万戸への送電を再開しています。本日も夜を徹して作業を進め、明朝までに全体の3分の1に当たる、100万世帯を超える皆さんへの供給再開を目指します。1人でも多くの皆さんに電気をお届けするため、供給が再開したエリアでは節電をお願いします。
 
 他方で、全面復旧にはなお時間を要することから、病院、上下水道、通信基地局などの重要施設向けに、300台以上のタンクローリーにより、非常用電源に必要な燃料供給を行うと共に全国の電力会社から150台の電源車を確保しました。今夜中には35台が現地に入り、重要施設への電力供給に万全を期してまいります。
 
 各位にあっては、被災地の状況把握を進め、人命第一の方針の下、被災者の救命・救助に全力を尽くすとともに、食料や生活物資の確保、ライフラインの復旧にあらゆる手を尽くしてください。
 
 揺れの強かった地域の皆様におかれましては、引き続き、家屋の倒壊や土砂災害のおそれがありますので、今後の地震活動や天候の状況に十分注意し、命を守る行動を取ってください」――

 ここでも「人命第一の方針の下」との発言で「人命第一」を前面に出して訴えると同時に発言全体を「人命第一」の趣旨で成り立たせ、国民の命を守るリーダー像を演出している。

 安倍晋三は引き続いて9月7日も9月8日も、それぞれ午前中と午後にどれも20分程度の同じ関係閣僚会議を開いているが、9月6日以降の会議では「人命第一」という言葉は使っていない。但し発言の内容は「人命第一」の趣旨であることに変わりはない。だとしても、救助・救援等の活動の有効性自体はあくまでも関係省庁や自治体の指示と指示を受けて現場で活動する各実働部隊の動きにかかっている、その重要性を忘れてはならない。

 安倍晋三は9月7日午前中の関係閣僚会議での挨拶では、「今回の地震により、これまでに16人の方が亡くなられ、多数の重軽傷者、家屋倒壊や土砂崩れを確認しています。お亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げますと共に被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます」と発言している。だが、この「16人」を官房長官の菅義偉が同日午前の記者会見で訂正している。

 「NHK NEWS WEB」(2018年9月7日 16時45分))

 菅義偉「改めて確認をしたところ、政府においてもこれまで死者と心肺停止者数は分けて発表していたが、今回、事務的に集計する段階で両者をまとめて死者数として計上したものを午前の会見で申し上げた。

 厳密にいえば、死者9人、心肺停止者数7人とすべきだったとの報告を受けている。申し訳ないと思っている」  

 要するに菅義偉に伝えられた「死者16人」を関係閣僚会議でもそのまま使ったということなのだろう。例え心肺停止者が限りなく死者に近い状態にあるとしても、これまでの自然災害や大きな事故等でも死者と心肺停止者を分ける習慣になっていたし、マスコミも政府もその習慣に従って報道するなり、公表するなりしていた。特に医者が死亡を宣告して初めて死者の数に入れることができることから、医者が近くにいない現場で心肺停止の状態で発見された被害者は自然災害や大きな事故等で頻繁に存在することになる多くの例を見てきたはずである。

 にも関わらず、心肺停止者の人数への疑問を持つことなく、「これまでに16人の方が亡くなられた」と伝えられたとおりに機械的に反復する。この機会的な反復は安倍晋三が言う「人命第一」が本心から国民の命を思って使っている言葉ではなく、関係閣僚会議自体の儀式性を反映させた、その色合いからの発言であることの何よりの証拠となる。

 証拠は他にもある。9月7日のブログで取り上げたが、2014年8月20日の豪雨によって広島県広島市北部の安佐北区や安佐南区の住宅地等で発生し、関連死3名を含めて死者77を出した大規模な広島土砂災害時の朝、土石流や土砂崩れによる行方不明者の通報が相次いで寄せられ、既に死者が出ているにも関わらず、安倍晋三は首相官邸に直ちに駆けつけることはせずに「人命第一」を他処に置いて遠く離れた山梨県で2時間もゴルフを楽しみ、221人の死者を出した2018年7月6日の西日本豪雨の前日には気象庁が頻繁に発表している大雨警戒情報から、今年も含めて例年頻発している自然災害を例に万が一の被害規模を想定する危機管理意識を働かせることもできずに同じく「人命第一」を他処に置いて、東京・赤坂の衆院議員宿舎内で「赤坂自民亭」と名付けた懇親会名目の酒席で閣僚を含めた出席議員と酒を酌み交わしていた。

 このような心掛けと精神の持ち主である安倍晋三が現場の活動から見たら一種の儀式でしかない関係閣僚会議で「人命第一」を言う。「人命第一」を聞いて呆れない人間はどれ程いるだろうか。あるいはどれ程に信用できる「人命第一」だと見ることができるだろうか。
 
 いわば心にもない「人命第一」としか見えてこない。

 安倍晋三と石破茂が立候補した自民党総裁選は今回の地震で9月7日告示以降、3日間の選挙戦の自粛を決定した。その間に安倍晋三はマスコミに「人命第一」のキーワードで、あるいは「人命第一」を趣旨とした発言で国民の命を守るリーダー像をマスコミに露出させるに至った。

 このことは総裁選にプラスとなっているはずであるし、安倍晋三自身が狡猾なまでに選挙巧者である点を考えると、当然、今回の地震が総裁選にプラスになっていることを意識しているはずだ。

 元々信用できない類いの「人命第一」であり、その関連性から総裁選にプラスを意識した「人命第一」だと断言しても間違いはないはずである。

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自民党総裁選告示7日前日の北海道地震は言葉軽量ホープ安倍晋三の心掛けからして総裁選の出鼻を挫く落選の予兆か

2018-09-07 11:37:12 | 政治


 兎に角心掛けが悪い。言葉が軽い。

 今年2018年は今日までで8カ月と7日しか経っていないが、自然災害が日本列島各地を次々と襲っている。前日9月6日の北海道の震度7の地震発生までを「内閣府 防災情報ページ」

 2018年1月22日から23日明け方にかけて普段雪の少ない関東甲信地方や東北地方の平野部で雪を降らせた北陸豪雪は新潟県魚沼市で411センチ、以下北陸各地で400センチ以下の積雪を記録、東北、北陸で死者を5人を出し、各地で車を300台以上も立往生させた。

 豪雪は2018年2月3日から8日にかけても北日本から西日本の日本海側を中心に再び襲うことになり、石川県白山市谷峠では559センチの積雪、以下400センチ台で続き、北陸各地で死者15人を出すに至った。

 2018年4月11日の大分県中津市の土砂災害は雨量は6ミリ程度しか記録しなかったが、一級河川山国川右支川金吉川沿いで幅約200 メートル、長さ約240 メートルで土砂崩れを発生し、死者6名を出した。原因は強度が低下した基岩が自然な状態で維持する限界を迎えていたのだろう、少しの雨で崩落してしまったらしい。

 2018年6月18日には大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生、大阪府で4人の死者を出している。そのうちの1名は登校途中の9歳女児が自身が通う小学校のプール脇の、建築基準を満たしていなかったブロック塀が倒れ、その下敷きとなった痛ましい犠牲であった。

 2018年6月28日から7月8日にかけて台風7号と梅雨前線等の影響で四国地方で1800ミリ、東海地方で1200ミリを超えるなどの豪雨をもたらした西日本豪雨は広範囲に洪水や土砂災害、一部2階までの浸水等を発生させ、死者221人、行方不明者9人を出している。

 2018年9月4日12時頃、非常に強い勢力で徳島県に上陸した後、速度を上げながら近畿地方を縦断し、その後日本海を北上した台風第21号は高知県安芸郡田野町で時間雨量92ミリに達する豪雨をもたらしものの死者は出さなかったが、大阪府泉南郡田尻町関空島で秒速58.1mの強風をもたらし、関西国際空港を浸水させ、閉鎖を余儀なくされ、全便が欠航することになった。さらに走行中のコンテナトレーラーやその他のトラックが強風で横転する事故が多数起こり、駐車中の普通自動車が風に煽られてその場を移動して自動車同士がぶつかったりして変形、横倒しになったりする現象が発生、風台風の様相を呈した。

 そして昨日の2018年9月6日午前3時7分発生、北海道胆振地方中東部を震源とする震度7の地震。今朝のマスコミは国内での震度7は2016年4月の熊本地震以来で6回目、北海道で震度7は観測史上初めての地震だそうで、死者9人、行方不明28人と伝えている。

 昨年もかなりの死者を出す規模の大きい自然災害に見舞われたが、今年はそれが立て続けに続き、自民党総裁選告示7日に立候補届を済ましてから開票の9月20日前日まで総裁選に専念すべきときに告示前日に地震が発生、政府がその対応に追われる羽目に立たされたことはまさしく一種の総裁選の出鼻を挫く出来事であって、こういった現象の発生は往々にして人の心掛けや神経の程度が影響する場合がある。

 記事冒頭で、〈兎に角心掛けが悪い。言葉が軽い。〉と書いたが、2018年7月6日の西日本豪雨の際はその前日の7月5日に気象庁が記者会見で記録的な大雨と土砂災害や河川の氾濫への厳重な警戒を呼びかけていたことに対して安倍晋三は一国の指導者として毎年のように発生している多大な人命の犠牲を伴う豪雨災害と少なくとも同規模の自然災害を「国民の命と財産を守る」観点から想定、政府危機管理の先頭に立たなければならなかったが、5日の大雨で既に死者が出ているにも関わらず、同7月5日夜、防衛相小野寺五典、法相上川陽子、官房副長官西村康稔、自民総務会長竹下亘、同政調会長岸田文雄等々総勢40人超(とネットに出ているが)が東京・赤坂の衆院議員宿舎内で「赤坂自民亭」と名付けた懇親会名目の酒席を開いていた。

 安倍晋三は7月17日の参院内閣委員会でこのことを追及されて、「被害の拡大を想定して、政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全の態勢で対応に当たってきた」と非常災害対策本部を開いていたことを以って政府対応に不備はなかった体の答弁を行っているが、「基本的には私が陣頭指揮を取る」と発言している、その立場上、心掛けとしても首相官邸か公邸にとどまって豪雨やその被害の推移を見守り、陣頭指揮の気持を示さなければならなかったはずだが、そういった心掛けもなく、陣頭指揮から離れた場所で酒を酌み交わしていた。

 いわば陣頭指揮の心掛けからも離れていた。

 政府閣僚の先頭に立つべき首相が不在でも、他の閣僚によって万全の体制で臨んでいるから何も問題はないでは陣頭指揮の意味を失うし、決して済まされることではない。

 2014年8月20日の豪雨によって広島県広島市北部の安佐北区や安佐南区の住宅地等で発生し、関連死3名を含めて死者77を出した大規模な土砂災害は午前4時過ぎには広島市消防局に土砂崩れと住宅が埋まって行方不明者が出たという通報が相次いで寄せられ、午前5時15分頃には午前3時20分頃の土砂崩れで土砂に埋まった子ども2人のうち1人が心肺停止の状態で発見されたことがマスコミによって報じられているから、政府はその情報を広島市消防局なり、広島県庁なりから直接入手していなければならなかったはずだが、安倍晋三は夏休み中の山梨県の別荘から富士河口湖町のゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」に向かい、8月20日午前7時26分に到着、ゴルフを開始、自身が不在でも、付添いの秘書官が政府の災害対策本部と連絡を常時取り合い、他の閣僚に指示して万全の対応を取っていることを理由に死者が発生していてもなおゴルフを続け、午前9時19分になってやっとゴルフを中止した。

 国民が次々と土砂崩れや土石流の被害に遭い、土砂に埋まったり、土砂に流されたりして命を落としている間も、一国の首相が携帯電話で政府の災害対策本部と繋がっているからとゴルフをプレーしていられる神経と心掛けは凄い。次々と死者の数が増えていき、これではいくらなんでも続けることはできないと、約2時間後にやっと腰を上げたということなのだろう。

 安倍晋三はこういった心掛け・神経の持ち主である。なおかつ言葉が軽い言葉計量ホープときている。2018年9月6日午前3時7分発生、北海道胆振地方中東部の震度7の地震が自民党総裁選告示7日の前日であることから言葉軽量ホープ安倍晋三の心掛けからして総裁選の出鼻を挫き、総裁選落選の予兆に見えてくる。

 当たるも八卦、当たらないも八卦。願わくば当たって欲しい。

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人間が軽いからなのだろう、安倍晋三の否応もなしの言葉の軽さを北方四島発言から見る

2018-09-06 11:38:06 | 政治


 
 9月3日(2018年)総理大臣官邸で開催の政府与党連絡会議。「NHK NEWS WEB」(2018年9月3日 14時53分)

 この会議で安倍晋三は来週10日から13日までの日程でロシア極東のウラジオストク開催の国際経済フォーラムに出席に合わせて、プーチンとの日ロ首脳会談に臨み、北方領土での共同経済活動などについて議論、領土問題を含む平和条約交渉の前進を図る考えを示し、同フォーラム出席の習近平中国国家主席との日中首脳会談なども調整していることを明らかにしたと伝えている。

 記事にはプーチンとのこの首脳会談は通算で22回目になると書いてある。つまり、これまで21回も首脳会談を重ねてきた。
 安倍晋三「北方四島における共同経済活動や元島民の方々のための人道的措置等について胸襟を開いて議論を行い、平和条約締結を前進させていく決意だ。

 日ロ経済関係も、8項目の協力プランの具体化を含めさらなる進展を確認し、北朝鮮問題をはじめとする喫緊の国際情勢についてロシアとの連携を確認する」

 「北方四島における共同経済活動」は安倍晋三が2016年5月6日にロシアのソチを訪問、プーチンと首脳会談を行い、会談後の声明の中で北方四島の帰属交渉と平和条約締結交渉の進展に資する目的で「新たなアプローチ」として提案したことか発している。
そして約7カ月後の2016年12月15日、安倍晋三の地元山口県長門市でプーチンと1回目の首脳会談を開き、翌12月16日も首相官邸で2回目の会談を立て続けに行い、共同記者会見で次のように発言している。

 安倍晋三「この『新たなアプローチ』に基づき、今回、四島において共同経済活動を行うための『特別な制度』について、交渉を開始することで合意しました」

 「特別な制度」とは日ロ双方共に北方四島を自国領土とし、双方共に主権を主張している関係から領土と主権の二つの主張を双方共に降ろさないままにロシアの法律にも日本の法律にも依拠しない、いわば主権を脇に置いた制度の創設ということなのだろう。
1年8カ月も前に「共同経済活動を行うための『特別な制度』について、交渉を開始することで合意した」。

 ところが、この2回の首脳会談後から約3カ月後の2017年3月18日に東京都内で開催した北方領土での共同経済活動に関する初の日露次官級協議ではロシア側は「ロシアの法律に矛盾しないような条件に基づいて実現しなければならない」と主張、ロシア側は自国の主権に拘り、そして1年8カ月後の現在もなお、ロシア側のその姿勢に変わりはなく、「特別な制度」を創設するには至っていない。

 但し共同経済活動に関しては何を行うかの事業項目の選定は進んでいて、海産産物養殖、温室野菜栽培等5項目の事業が具体化されているという。要するに日露双方の主権を脇に置いた「特別な制度」に基づいてではなく、「特別な制度」を脇に置いた形で共同経済活動に関しての議論のみが進んでいることになる。
このような状況の下、次のようなことはあり得ないはずだが、「新たなアプローチ」としての「特別な制度」が用意できないままに共同経済活動が実施された場合、ロシアの法律のもとに行われることになり、その実施はロシアの北方四島に於ける主権を認め、日本の主権を引っ込める扱いとなって、少なくとも北方四島の帰属交渉は必要度の順位から外さなければならなくなる。

 このことを避けるためには日本政府が基本方針としている北方四島の帰属問題を解決して平和条約締結へと持っていく原則に忠実であろうとするなら、安倍晋三が「平和条約締結を前進させていく決意」を持ち、その手助けとして北方四島での日ロ共同経済活動を考えているなら、先ずは「特別な制度」の創設をプーチンに認めさせなければならない。
認めさせて初めて、北方四島の帰属交渉も平和条約締結交渉も前へと進むことになる。認めさせることができなければ、前へ進まない。

 となると、言うべきは「特別な制度」をプーチンに認めさせるための議論をどう進め、どう決着させるかであって、そのことを前提としなければならないにも関わらず、21回も首脳会談を行い、積み重ねてきた信頼関係をどう活かしたのか、認めさせることができないうちに前提を省いて「平和条約締結を前進させていく決意」を勇ましげに言う。

 ここに安倍晋三の言葉の軽さを否応もなしに見る。

 勿論、プーチンは北方四島を返還する気はないのだから、「特別な制度」を認めさせることも、帰属交渉も、これらの解決が前提となる平和条約締結交渉への取っ掛かりも難しいことは理解できる。

 これらの難しさはプーチンが2016年12月15、16日の長門での安倍晋三との首脳会談後の共同記者会見で、1855年2月7日に伊豆下田で締結された日露和親条約から第2次世界大戦集結までの歴史を紐解き、1905年の日露戦争から「40年後の1945年の戦争の後にソ連はサハリンを取り戻しただけでなく、南クリル諸島も手に入れることができました」との物言いで、このことが最終決着であるかのように発言しているところに現れている。
このプーチンの北方四島を返還する気はない難しさを踏まえるなら、平和条約締結交渉だけではなく、安倍晋三自身が締結の前提とした共同経済活動のための「特別な制度」に関わる議論も難しいことは当然であって、このような難しさを抜きにして、それとは反対の前進させることが可能であるかのように聞こえる言い方を用いたのである。
言葉が軽さは人間の軽さに対応する。相当に人間が軽く出来上がっているように見える。

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安倍晋三支持で細田派が派内議員に誓約書と自民党の新聞・通信各社への公平・公正報道要請に見る内心の自由の侵害

2018-09-04 11:55:17 | Weblog
 

 日本国憲法は第3章国民の権利及び義務 第19条で、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」ことを国民の権利として保障、国民に許される自由として国家権力による侵害を禁じている。これを内心の自由という。

 国家権力による国民に対する内心の自由の侵害は国家権力を絶対とし、国民を国家に従属した存在と看做す思い上がりに起因する。その絶対性が、戦前の国家権力、特に軍部に於いて見てきたように何ら縛られることのない、自らも規制することのない無限の権力を志向することになる。

 自民党最大派閥で安倍晋三出身母体、安倍晋三の自民党内最大支持基盤である細田派(94人)が9月の党総裁選で連続3選を目指す安倍晋三支持の誓約書に署名させることを決めたと、2018年9月1日付「YOMIURI ONLINE」が伝えていた。

 誓約書は、「全力を尽くして応援するとともに、必ず支持することを誓約する」などと書いてあると、その文面の一部を紹介、〈首相の出身派閥が所属議員から誓約書を取るのは極めて異例。〉と批判的に取り上げいるが、対して派内からは「うちの派で造反議員がいると思っているのか」(中堅)などと反発する声が上がっていると内情を明かしている。

 要するに造反議員がいるはずはないという予測を以って誓約書を用意することも、用意した誓約書へのサインも必要なしの論であって、支持・投票は自らの思想及び良心の自由に照らし合わせて行うもので、例え安倍晋三に投票するつもりでも、誓約書へのサインは他から強制されて行う形を取ることになって、内心の自由の侵害への抵触に相当するのではないのかとの疑義さえ浮かばなかったのか、その観点からの声は上がっていないようだ。

 記事は、〈誓約書に署名させることを決めた。〉と書いていて、9月3日発足の合同選挙対策本部に提出するとしていたが、実際に誓約書にサインさせて、合同選挙対策本部に提出したのかどうか、マスコミは伝えていない。マスコミ報道によって問題視されるのを避けるために見合わせたということもあるが、例え見合わせたとしても、そういう発想をすること自体が既に安倍晋三を候補者として絶対的な存在だと位置づけていて、その絶対性に署名という強制力で以って派閥所属議員を強制的に従わせようとする内心の自由への侵害を自らの精神に芽生えさせていたことに変わりはない。

 但し、〈首相支持の麻生派、二階派はすでに所属議員の署名付きの推薦状を作成していた。細田派幹部は「他派閥と足並みをそろえる必要がある」と説明している。〉と記事が書いていることからすると、細田派だけではなく、それぞれの派閥のボスによって内心の自由への侵害を厭わない強制力がそれぞれの派閥所属議員に向かって発動されていたことになるだけではなく、勢力のある一つ二つの派閥が始めると、他の派閥もそれに追随しやすい体質を抱えていることまで露わにしている。

 しかしこういった強制力が働くこと自体が安倍晋三を支持する派閥のボスたちをして安倍晋三を絶対的な存在だと位置づけることを安倍晋三自身が許しているからに他ならない。安倍晋三に正直さや公平さ、謙虚さがあったなら、公明正大な総裁選を求めて、自身を絶対的な存在だと位置づけることを決して許さないだろう。

だが、許している。その結果、安倍晋三支持の誓約書にサインさせようとする、あるいはサインさせる内心の自由への侵害に相当する動きが派閥単位で発
生することになった。

 内心の自由への侵害はこの件に関してのみではない。

 自民党が8月28日付、総裁選挙管理委員長野田毅衆院議員名で7日告示・20日投開票の総裁選に関して「総裁選挙に関する取材・記事掲載について」と題した、「公平・公正」な報道を求める内容の文書を新聞・通信各社に出したと、「朝日デジタル」(2018年9月3日19時45分)記事が伝えている。
  
 先ず自らの選管委が「すべての面において公平・公正が図れるよう全力を尽くしている」と前置きして、

 ①取材は規制しない
 ②インタビュー、取材記事、写真の掲載にあたっては、内容、掲載面積などで各候補者を平等、公平に扱う
 ③候補者によってインタビューなどの掲載日が異なる場合は掲載ごとに全ての候補者の氏名を記し、②の原則を守る

 「この3点を留意点として求める」と要請しているという。

 記事解説を見てみる。〈自民党側は、過去の総裁選でも同様の文書を出してきたと説明するが、安倍政権下では報道機関への「介入」と受け取れる事案が目立つ。2014年衆院選の際には、NHKや在京民放5局に選挙報道の「公平中立」を求める文書を送付。直前に安倍晋三首相が出演したTBSの番組でアベノミクスの効果が感じられないとの街頭インタビューに対し、「全然声が反映されていない。おかしいじゃないですか」と不快感を示したこともあり、「報道圧力」との批判を浴びた。今回の総裁選はそもそも、一政党の代表を選ぶもので、公正な選挙の実現を目的とする公職選挙法が適用されることもない。

 政治とメディアの関係に詳しい専修大の山田健太教授(言論法)は、自民党が今回出した文書について「強い公益性を有する政権政党が法的根拠もなく表現を規制することは決してやってはいけない。量的な公平を求めるのも、『公平』の解釈に問題がある」と指摘。「『公平・公正』を求めることは政権与党にとっての『偏向報道』を許さないということの裏返しであり、政権批判を許さないという姿勢に近い。結果として自由にものが言えなくなり、社会の分断を後押しすることにつながりかねない」と警鐘を鳴らす。

 一方、名古屋大大学院の日比嘉高准教授(日本近現代文化)は、真実や事実を軽視する「ポスト・トゥルース」(脱・真実)の傾向が強まる世界的風潮のなかで、「何が『公平・公正』であるか、社会的に共有できる軸が失われかけている」と指摘。そうした状況のなかで自民党が報道機関への要請を繰り返すことも、「公平・公正を判断する軸が手前勝手に作られないか注意深く見る必要がある」と話す。〉(文飾は当方)――

 日比嘉高准教授は今の時代の「公平・公正」の判断基準の不確実性を以って自民党が「公平・公正」な報道を求めたのは止むを得ないという姿勢だが、自民党が求めたのは自民党自身が考える、特に安倍晋三支持に身を委ねている自民党最大勢力が考える「公平・公正」であって、報道機関も含めて世間一般が考える、そうあろうとする「公平・公正」ではない。

 大体が、「何が『公平・公正』であるか、社会的に共有できる軸が失われかけている」と言っているが、では、軍部の独善行為が吹き荒れたが戦前の日本で、「公平・公正を判断する軸」は軍部側に大きく偏ることもなく、より中立な「公平・公正」を厳格に保っていたと断言できるのだろうか。

 いつの時代にも自分たちが考える「公平・公正」を押し通そうとする勢力が存在する。国家権力を握っている側がそういった勢力を形成して、国家権力を監視することを役目の一つとしている新聞・通信各社が考える「公平・公正」に任せることができずに自分たちが考える「公平・公正」を求めた場合、それが国家権力側の牽制であろうと、新聞・通信各社側の忖度をベースとした自主規制という名の受容であろうと、自ずとそこに国家権力側を絶対とする支配と従属の影が生じることになる。

 国家権力側が新聞・通信各社側に発動する支配と従属は、それがはっきりとは見えない影のようなものであっても、新聞・通信各社側に対する内心の自由への侵害に相当する。

 細田派が派閥所属議員のサインをした誓約書の提出を考え、あるいは提出した、麻生派と二階派が派閥所属議員のサインをした推薦状を作成して、多分提出したことと自民党が「総裁選挙に関する取材・記事掲載について」と題して、「公平・公正」な報道を求める内容の文書を新聞・通信各社に出したこととは内心の自由への侵害という点で同質の出来事として重なる。

 上記記事が、〈安倍政権下では報道機関への「介入」と受け取れる事案が目立つ。〉と書き、当ブログでも安倍晋三のそれとない姿勢での言論への介入を何度か取り上げてきたが、安倍晋三自身、自己愛性パーソナリティ障害から発している自己を絶対とする思い上がりが絶対としない報道機関を許せず、否応もなしに報道介入という形を取るのだろう。

 その精神の危険性に気づかなければならない。

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安倍晋三の「外国人旅行者呼び込み、地方創生の起爆剤」は勇ましいが、耳に聞こえのいいデタラメ

2018-09-03 12:22:30 | 政治


 安倍晋三の「外国人旅行者呼び込み、地方創生の起爆剤」は勇ましいが、耳に聞こえのいいデタラメ

 《首相 外国人旅行者呼び込み地方創生の起爆剤に》NHK NEWS WEB/2018年8月31日 18時38分)

 安倍晋三が8月31日(2018年)、横浜市で開かれた支援者の集会に出席して講演したという。

 安倍晋三「私たちは『三本の矢』という新たな経済政策で挑戦し、昨年はGDP=国内総生産が過去最高になった。正規雇用は78万人も増え、倒産
件数も3割減った結果、史上初めて正社員の有効求人倍率が1倍を超え、まっとうな経済を作り出すことができた。

 政権交代前に外国人観光客が800万人と頭打ちだったものが、昨年は3倍を超えて2800万人と3.5倍になった。大変大きなチャンスなので、これを地方創生のエンジンにしていきたい」

 記事はこの発言を増加傾向にある外国人旅行者をさらに呼び込み、地方創生の起爆剤にしたいという考えだと解説している。

 相変わらず勇ましく、耳に聞こえのいい、欠陥が何一つない言い振り――アベノミクスの自慢話となっている。外国人観光客が増加したのは日銀の異次元の金融緩和によって一気に円安に向かって、自国貨幣を日本円にしたときの割安感が日本旅行を惹きつける要因となっているはずで、この円安が産業や生活を動かす石油や鉄鉱石、生活用品等の輸入価格を上げて回り回って中流階級以下の生活者の生活を窮屈にしている、もしくは圧迫している現実には触れない。

外国人旅行者の更なる呼び込みは結構毛だらけ、猫灰だらけ。だが、増加率と並行してそれが地方に程よい均等な割合で分散しなければ、「地方創生の起爆剤」とはならない。このことに気づいていないとしたら、言葉を勇ましく、耳障りよく踊らせているに過ぎない。気づいていながら言っているとしたら、不都合な情報は隠す小狡さを内側に秘めた発言となる。

外国人観光客の訪問地域格差の大きさは以前から言われていた。少子高齢化で過疎化が進み、活気をなくしている地域には、これといった大衆的人気を博している観光スポットを抱えていなことも手伝っている過疎化でもあるのだから、多くの外国人観光客は訪れないためになくした活気を取り戻すキッカケにもならず、ジリ貧状態が続くことになる。

このような現状を無視して、外国人観光客を増やせば、即「地方創生の起爆剤」になるかのように言う。石破茂が総裁選キャッチフレーズに「公平・公正・正直」を掲げたくなるのも無理はない。安倍晋三の人格を反面教師とせざるを得なかったから、掲げることになったはずだ。

 外国人観光客の訪問地域格差がどの程度か、日本政府観光局のサイトにアクセスしてみたが、「Internet Explorerは動作を停止しました」と表示されて強制終了となり、閲覧ができなかったため、以下の記事を探し出して調べてみた。統計値は都道府県別の延宿泊数となっているために正確な訪問人数は出てこないが、同じ外国人が2泊も3泊もすれば、その地方の人気度を見ることができると同時に地方創生の要素ともなり得るから、宿泊数の方が却って好都合かもしれない。

 記事題名は訪日アメリカ人と付けられているが、訪日アメリカ人の延宿泊者数けではなく、訪日外国人全体の延宿泊者数も出している。「訪日外国人」とあるから、観光客だけではないだろうが、観光客が最も多人数と見て比較してみることにした。

 宿泊者数の単位は「人泊」で、調べてみると、「宿泊人数×宿泊数」のことだそうで、市場規模をより正確に把握することができるだそうだ。観光客の宿泊数が多ければ、その地域の人気度の反映でもあるだろうし、その人気は地域の活況の程度と相互対応することになる。
 
 ここでは上位10位までを転載、ついでに全体の宿泊数に対するパーセンテージ(四捨五入)を出しておいた。数字は読みやすいように漢数字単位を混じえた。

 
 「訪日アメリカ人のトレンド調査」アウンコンサルティング株式会社/2018年04月04日)

 都道府県別訪日外国人(全体)宿泊数上位10県(単位人泊)

 2016年延宿泊人数   6千406万6730人

 東京 1千645万7420人  25%
 大阪府 980万40人     15%
 北海道 616万5450人    10%
 京都府 414万9930人     6%
 沖縄県 352万4440人    6%
 千葉県 332万6710人    5%
 福岡県 250万6790人    4%
 愛知県 225万9730人    4%
 神奈川 208万1890人    3%
 静岡県 141万4890人    2%

 10地域合計 5千168万7290人   

 2016年延宿泊人数6千406万6730人から東京の数字を引くと、1千237万9440人となって、全体の81%も占めているだけではなく、東京が独り占めだから、京都以下の10位までが6%台以下の惨憺たる数字となっている。

 いわば日本の人口と同じで、外国人観光客にしても東京一極集中となっている。当然、安倍晋三が外国人観光客を更に誘致して「地方創生のエンジンにしていきたい」
といくら体裁のいい勇ましいことを言っても、素直には「地方創生のエンジン」にはならない。単に東京一極集中に手を貸すことになるだろう。

 何日か前にブログに書いたが、安倍晋三が政権を獲った2012年総選挙用のマニフェストで「地域コミュニティの再生」を目標に「地方における人口定住」を掲げた。「地方における人口定住」とは東京一極集中阻止の公約である。

 2014年年12月27日閣議決定の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」でも、東京一極集中是正策として、「地方への人材還流、地方での人材育成 、地方の雇用対策」を掲げた。

 だが、政権を獲ってから5年半以上の年月が経過しているが、東京一極集中の22年間連続更新中の記録を打ち破ることができないでいる。訪日外国人観光客の東京一極集中も打破できなければ、当たりまえのことだが、「地方創生の起爆剤」とはならない。

 当然、人口の東京一極集中の打破が先で、その打破がならないままに訪日外国人観光客を増やしても、人口の東京一極集中の状況に外国人観光客の東京集中が続くことになる。

 人口の東京一極集中の打破をベースとした「地方における人口定住」、このことと連動した地方創生を成し遂げれば、訪日外国人観光客も自ずと地方に分散することになって、「地方創生の起爆剤」の可能性は出てくる。

 地方創生がならないままに訪日外国人観光客を増やすといくら約束しても、観光客だけが増えて、「地方創生の起爆剤」は湿気た点火線に火をつけた爆薬とさして変わらない、期待外れの不発で終わるだろう。

 そしてあとに残るのは東京一極集中の加速といった成果のみのはずだ。

 こう見てくると、安倍晋三の言っていることは勇ましく、耳に聞こえがいいが、デタラメばかりである。


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