北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:航空自衛隊E-X,次期早期警戒機に関する幾つかの考察③

2014-11-01 22:29:46 | 防衛・安全保障

◆E-2DとE-737AEW,共に利点
 前回までにE-767導入までの経緯を紹介しました。E-767のレーダーシステムは米軍やNATO軍のE-3と同型のAPY-2であるため、当面は近代化改修が継続されます。
Himg_3087  このため可能ならばE-767の増備が望ましい、しかし、現状ではAPY-2の生産終了によりE-767の増備は不可能となりました。このため新早期警戒機の導入が求められることとなったわけです。有力案として、新型機であるノースロップグラマンE-2DとボーイングE-737AEW,ともにアメリカ製航空機であるこの二機種が候補として示されています。 
Onimg_321_2  E-2DはE-2Cの後継機として空母艦載用に開発されたもので、機体形状もE-2Cと非常によく似ています。ただ、E-2Cの近代化改修型であるホークアイ2000と比較し、レーダーが完全に新型となっており、探知能力や処理能力も高められているため能力が根本から違うという点が特色でしょう。 
Img_5075  AN/APS-145からAPY-9へ、レーダーの新型化により探知能力についてはE-2Cの380kmほどに対してE-2Dは550km以上に延伸しており、この能力向上は現在の沖縄周辺区域において行われているE-2Cの空中警戒任務が南西諸島南部か南西諸島中部かを警戒する際に当該空域へ進出する必要がありましたが、E-2Dの能力であれば、沖縄本島付近から全域を警戒可能です。 
Img_1697  この警戒能力は、具体的には沖縄本島より200km圏内において警戒を行う際、現状の防空識別圏内のみならず、台湾全域とその対岸、大陸沿岸部、九州南方海域を同時に警戒可能となるため、現在中国軍が我が国を想定し配備している1500発程度の巡航ミサイルが仮に発射された際、即座の感知と警報が可能となる。 
Img_1431f  更にE-2Dは共同交戦能力を重視し、イージスシステムとの連携を重視しています。米海軍用の装備であるため当然と言えば当然ですが、現在開発が進むイージス艦用の射程600kmに及ぶとされるRIM-174スタンダードERAM艦対空ミサイルと連接することで、中国軍が我が国へ巡航ミサイルによる飽和攻撃を行う可能性を抑止できる。 
Gimg_4419  600kmといえば鹿屋航空基地から那覇基地までの距離に匹敵、つまり九州錦江湾から那覇基地の防空を支援することが可能になります。海上自衛隊は共同交戦能力を米海軍と同程度を期して、データリンク能力整備に少なくない予算を投じてきました。米海軍とのデータリンクは相互性を企図して能力構築が為されており、既にE-2Cのシステムを航空自衛隊の要撃管制システムへも統合化しているため、米軍のデータと情報共有することで、数倍の脅威対象をも圧倒できるでしょう。 
Img_9047  併せて第603飛行隊が那覇基地に今年新編され、三沢基地より半数のE-2Cが那覇基地へ移転しました。元々は中国機の領空侵犯事案発生を受け警戒監視能力強化へ暫定措置として行われていたものが、対領空侵犯措置任務の激増に伴い恒常化を見据え行われた改編なのですが、これにより、E-2Cの運用基盤が那覇に配置されたことを意味します。 
Yimg_5733  E-2Dは空母艦載機であり、同じく空母艦載機であるE-2Cの後継機として導入された機体です。これは言い換えれば、そのまま流用は不可能としてもE-2Cの運用基盤をE-2Dに応用できることを意味します。整備器具はある程度、そして機体規模は同程度ですので格納庫を流用でき、初期費用を抑え早い任務対応能力がある、ということ。 
Himg_4015  E-737AEW,先日豪州空軍のE-7が浜松基地を親善訪問していますが、その期待がE-737AEWでした。これはE-3やE-767の導入を期したものの同機が生産中の時点では予算の限界などで取得できなかった空軍向けの機体で、ボーイング737を原型に新しいAESAレーダーによる警戒システムを搭載したものです。 
Himg_5149  E-737AEWはE-2Cと比較し、機体規模が大きい分航続距離と滞空時間が大きくなっているため長時間の警戒監視飛行が可能です。滞空時間は倍程度で、これは頻繁な後退を必要としないことを意味しますので、機数当たりの警戒範囲を増大させ、交代機の待機態勢という地上運用面での限界を補完します。つまり、長く飛べたほうが隙が無い、ということ。 
Gimg_9999  加えてボーイング737を原型とした機体ですので、E-2Cの電子機器と壁の隙間に乗員が押し込められ、お手洗いは設置されていても非常用のものであり、乗員は前部と後部の行き来が事実上できないほどに窮屈、だがそこが落ち着く、という話を聞いたことがありますが、疲労度が物凄い現状が、737であれば普通に行き来出来ます。この疲労度の問題は無視できません。 
Eimg_0066_1  更にE-737AEWは機体容積はE-2CやE-2Dに比べれば余裕があるため、窮屈な機体は乗員だけではなく機材の更新回収にも影響を与えるものですから余裕ある機体ならば、将来的に新型の情報処理装置や通信機器などの更新が容易に行え、E-767程ではありませんが有力な機体として長期間運用することが出来るでしょう。 

北大路機関:はるな

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コメント (7)
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