北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要?・・・弾道ミサイル脅威への対応Ⅲ

2014-11-19 23:05:54 | 防衛・安全保障

◆現行装備の長期運用と運用基盤強化 
 OCNブログでの特集記事は今回が最後、今週末から来週にかけ北大路機関は移転します。弾道ミサイル防衛、既存の装備体系の運用基盤強化も行われます。
 Mimg_6289 PAC-3ミサイルの再保証はその最たるもので100億円が要求されます。航空自衛隊は全国にペトリオットミサイルを運用する高射群を展開させており、ペトリオットミサイルは射程100kmの対航空機用ミサイルシステムですが、このシステムを利用し弾道ミサイルへ備えるPAC-3が装備されています。
 Diimg_2838 平成27年度防衛予算概算要求概要ではその能力維持と機動運用に関する予算が要求されました。即ち減災導入されたミサイルシステムの維持と、機動運用により必要な地域への展開を行うことで能力を最大限活用するというものです。機動運用は引き抜く形となるので、引き抜かれた地域の防空は今後の課題となりますので、これは留意点というべきでしょう。
Mimg_7093  PAC-3は各高射群の高射中隊に航空機へ備えるPAC-2とともに混成配備されており、PAC-2は長射程を活かし広域防空に当たると共に航空機近くまで極超音速にて誘導されると近接信管を作動させ爆発、その破片に敵航空機を巻き込み確実に撃墜するというものですが、これは弾道ミサイルに対し使えません。
Img_8379  弾道ミサイルは大気圏外を含め弾道を描いて降ってくるものなのですから、仮に近接信管を用いて爆発に巻き込んだとしても、降ってくるものは不適ます。撃墜仕様が落下しようが結果は同じなのですから、弾道部分を確実に破壊しない限りその破壊力を阻止することは出来ず、結果目標に直撃し無力化するPAC-3が開発されたのでした。
Mdimg_9649_1  耐用命数を迎える部品として目標を補足し追尾するミサイルの目に当たる部分、シーカー部を新造する部品へ交換するとともに、ミサイル全体の点検を実施して所要のPAC-3ミサイルを確保するとしています。自衛隊のミサイル備蓄数は誤解されていますが、全力で投射した場合の一定期間を想定していますので、整備によりかなりの数を確保できるのです。
Img_7404  PAC-3ミサイルの再保証には、想定される将来にわたりミサイル備品を安定確保するための生産基盤の構築も含まれているため、現在予算面で潤沢とは言い難い、正確には予算がひっ迫している防衛費ですが、この時点で生産基盤を確保し更新体制を確保しなければシステムそのものが遠くない将来破綻し、使用不能となるため必要な施策の一つ。
Himg_9403  PAC-3部隊の市ヶ谷における展開基盤等の整備について。30億円の要求です。市ヶ谷基地は新宿区、PAC-3の射程は直撃を念頭としたものであるため弾道ミサイルに対し有効に投射できるものですがペトリオットミサイルの速力などの面と弾頭威力の関係で弾道弾へ対抗する関係上、射程は30kmと非常に短い。
Fimg_4936  特に弾道弾に対する有効迎撃能力は15km程度、落達高度によっては此処まで射程が制限されるため、首都圏の防空を担う入間の第1高射群は隷下の第1高射隊が習志野分屯基地に、第2高射隊が武山分屯基地、第3高射隊は霞ヶ浦分屯基地へ、第4高射隊は入間基地にそれぞれ展開していますが、首都圏中枢部が射程外となっていました。
Gimg_4334  PAC-3ではなくPAC-2の射程ならば充分都心を防空圏内に含むことが出来るため重層的な防空を達成できるのですが、PAC-3ではそうはいきません。そこで有事、特に北朝鮮によるミサイル実験が実施されるたびに防衛省本省が所在する市ヶ谷基地へ緊急展開する形を採ってきました。
Hbimg_1256  市ヶ谷基地の防衛省本省や新宿御苑へのPAC-3ミサイル展開の様子は、我が国へのミサイル危機が顕在化するたびに機動展開しており、その様子は報道などで繰り返し伝えられたところですが、市ヶ谷基地への展開基盤等の整備を実施し、恒久的な配備には至らないものの対応できる基盤を創る、というもの。
Img_5652  市ヶ谷基地への恒久的なペトリオットミサイル部隊配置が実現しない背景には、市ヶ谷基地では部隊訓練がままならない地域的制限があり、防空訓練を実施しようにも都心を訓練場へ移動する事さえ交通状況から難しく、射撃指揮装置の索敵などの訓練も首都圏は電波過密状態にあり、簡単ではありません。
Img_659_2  ただ、今回の基盤構築を実施しておくのならば、第1高射群隷下部隊の高射中隊、場合によっては他の高射群も含めローテーションにより訓練以外の時期に待機態勢を順番にとることで練度の維持と首都圏中枢部の弾道ミサイルに対する防空を併せて実施ること言うことが成り立ちます。前年度から継続実施とのことですが、このようにして年々弾道ミサイル防空体制は構築されています。

北大路機関:はるな

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