◆ミサイル防衛の更なる進展
平成27年度防衛予算概算要求概要には弾道ミサイル防衛能力の整備も盛り込まれています。
弾道ミサイル脅威は北朝鮮からの繰り返されるミサイル実験が将来的に我が国を狙う弾道ミサイルとして運用される場合を想定していますが、同時に中国からの核攻撃に備える意味もあります。平成27年度防衛予算概算要求概要には“弾道ミサイル攻撃に対し、我が国全体を多層的かつ持続的に防護する体制を強化する。弾道ミサイル攻撃に併せ、同時並行的にゲリラ・特殊部隊による攻撃に対応する態勢を整備する。” としまして弾道ミサイル防衛関連経費2998億円が要求されました。
防衛省が提示した具体的施策は以下の通り。弾道ミサイル攻撃への対応として、イージスシステム搭載護衛艦DDGの建造、この計画は1隻の建造及び2隻目のイージスシステム等の調達が含まれます。イージスシステム搭載護衛艦の能力向上としまして、2隻分が156億円として要求されています。既にイージス艦あたご型の建造が終了して後一定期間を経ているため、新護衛艦は若干大型化する可能性が高く、あわせてイージスシステムの性能はもちろんのことステルス性などでも向上する可能性が考えられるところ。
平成24年度に着手した、あたご型護衛艦2隻のBMD艦化改修が引き続き実施され、加えてPAC-3部隊の市ヶ谷における展開基盤等の整備に30億円が過去のPACー3部隊の展開状況を踏まえ、防衛省本省庁舎の所在する市ヶ谷基地への展開基盤等の整備を引き続き実施として挙げられました。
PAC-3ミサイルの再保証へ100億円が要求、これは長期間の運用が想定される装備について、耐用命数を迎える部品、特にシーカー部を交換するとともに、ミサイル全体の点検を実施し、弾道ミサイル防衛に不可欠となる所要数量のPAC-3ミサイルを確保することが目指されています。
新装備開発関連となりますが、BMD用能力向上型迎撃ミサイルSM-3BlockⅡAの日米共同開発へ92億円が要求され、加えて弾道ミサイル対処能力を向上させるため、イージス・システム搭載護衛艦に搭載するBMD用能力向上型迎撃ミサイル(SM-3BlockⅡA)の日米共同開発を継続されることとなるもよう。
各個の政策についてイージス艦の増勢は、現在のミサイル護衛艦はたかぜ型を置き換える建造となります。ターターシステムは旧式化しており、Mk13発射装置などの補修整備等の負担が大きくなっており、新たにターターシステム艦を完全イージスシステム搭載艦に置き換えるべく要求されましたが、弾道ミサイル防衛に加わる事となる。
イージス艦の弾道ミサイル防衛能力付与は、海上自衛隊では1993年より4隻が就役したイージス艦こんごう型の、こんごう、きりしま、みょうこう、ちょうかい、にのみ当初は弾道ミサイル防衛能力を付与してきましたが、新たに弾道ミサイル脅威の拡大と共に4隻の体制では不十分となったための前中期防衛力整備計画からの事項です。ロッキード社等がミサイル防衛システムの説明を行う際、日本海側と東シナ海北部に書く一隻のイージス艦を弾道ミサイル防衛艦として充てる事で大陸側からの弾道ミサイルを防空できる、とのこと。
あたご型イージスシステム搭載ミサイル護衛艦、あたご、あしがら、の二隻には、こんごう型よりも新しいベースラインのイージスシステムが搭載されていますが、加えて新たに建造される2隻のイージス艦にも弾道ミサイル対処能力が付与されることとなりますので、海上自衛隊の弾道ミサイル防衛対応艦は8隻となるかたち。2隻でも対応できると記しましたが、艦艇は整備や補給と訓練や待機を分ける必要があり、8隻を整備することで2隻を即応態勢に置け、このなかから艦隊防空とミサイル防衛を分担することになりますのでやはり簡単ではありませんが。
これにより、現在護衛艦隊隷下の護衛隊群四個は各二個護衛隊を基幹として、弾道ミサイル防衛対応のイージス艦を装備する弾道ミサイル防衛対応護衛隊、ヘリコプター搭載護衛艦とイージスシステム艦乃至ターターシステム艦を持て対応する対潜掃討対応部隊という区分が、護衛隊群に所属するすべての護衛隊がミサイル防衛に対応することとなるのです。
他方で、ミサイル防衛は弾道ミサイルの発射から着弾までの時間的余裕が非常に少ないことから、自衛隊では人工衛星からの情報収集や米軍との情報相互伝達能力とその基盤構築等を進めており、イージス艦についても、その即応能力は情報優位に依拠するものであるため、イージス艦の改修や能力向上には情報伝送能力も含まれています。
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