北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

C-17輸送機生産終了へ 画期的輸送機、ボーイング社271号機を製造後ロングビーチ工場を閉鎖

2015-12-05 20:22:35 | 先端軍事テクノロジー
■戦域間輸送機C-17
 C-17輸送機、いよいよ生産が終了します、ボーイング社は現在製造中のカタール空軍向けの機体を最後にC-17の製造ラインを閉じる事を発表しました。

 この輸送機は2007年に終了計画が提示されましたが、その後、アメリカ空軍と友好国同盟国への輸出が継続され、遂に2015年に製造修了となったかたち、一機当たり米空軍向け費用で1億8000万ドルと高価であり、豪州空軍への輸出費用は初度調達相違を加え邦貨換算で一機400億円を超えたともいわれました。

 高価な輸送機ですが、60t級の第三世代戦車を含む陸軍大半の装備を輸送出来、しかも短距離離着陸性能が高かった為、短い未整備の前線飛行場へ米本土から直接装備を空輸できました、従来は大型だがその分舗装された長大な滑走路を必要とする戦略輸送機が前線から離れた拠点へ輸送し、其処からは小型の戦術輸送機が前線へ運ぶという輸送方式が立てられていましたが、C-17は戦域間輸送機という新しい区分を誕生させています。

 C-17の生産終了によりボーイング社はカリフォルニア州のロングビーチ工場を閉鎖します、C-17は米空軍に223機と同盟国友好国へ48機供給され、航空自衛隊も1990年代半ばに、海外派遣の増大を背景にC-17輸送機の導入が検討された、とも言われ、当時のC-130H輸送機よりも非常に大きな輸送能力が期待されましたが、当時は現在ほど海外派遣が増大するとは考えられず採用は見送られました、しかしボーイング社により多くの売り込みが行われていました。

 またアメリカ空軍は当初120機程度で生産を修了する冷戦後の調達削減計画が立てられていましたが、9.11同時多発テロ以降、戦域間輸送機の重要性が再び高まり、実に223機もの多数が装備されるに至りました、NATOとイギリス空軍にカナダ空軍とオーストラリア空軍、アラブ首長国連邦空軍、クウェート空軍、カタール空軍、インド空軍に輸出され、高価ですが導入した諸国は、愛称”グローブマスターズクラブ”とよばれています。

 国際安全保障上や人道上の危機が生じた場合にはグローブマスターズクラブへ輸送支援要請が出されます、個の輸送機でなければ運べない重装備などを空輸する必要が生じた際のもので、グローブマスターズクラブの出動は2013年のマリ危機におけるフランス軍空輸支援、2011年の東日本大震災に伴う対日緊急支援任務などがありました。


北大路機関:はるな くらま
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