北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空打撃戦、空爆という任務 イギリスがISIL攻撃へキプロス島アクロティリ空軍基地へ戦闘機12機を展開

2015-12-06 21:21:31 | 防衛・安全保障
■作戦機8機
 一国への空爆、と言いますと太平洋戦争の空襲しか身近に知る人のいない我が国では戦略爆撃機数百機での絨毯爆撃を毎日反復、という印象が強いのですが、意外と小規模でも可能です。

 連載記事としまして“航空防衛作戦部隊論”にて、戦闘機を8機単位で有事の際に分散運用する、という提案を行いました際に、知人から果たして8機単位の分散運用で一拠点当たりの作戦部隊規模として適正なのか、という指摘を頂きました。また、別の方から、仮に我が国本土にてISILによる大規模テロがあったとして、策源地攻撃をおこなう必要性が生じた際に自衛隊で対応できるのか、というお話がありました。

 しかし、8機、という規模、そして空爆作戦というものは、例えば湾岸戦争の開戦第一撃のような大規模航空作戦は航空自衛隊が元々想定していませんので不可能ですが、8機という数字が持つ作戦能力には一行の余地があるようです、何故ならば、イギリス空軍がイラク全域のISIL空爆へキプロス島アクロティリ空軍基地に準備していた航空機が、トーネード攻撃機8機、という規模であった為です。イギリスは、1日にシリアへのISIL空爆が議会で承認される事となり増派されましたが、増派規模はBBCによればタイフーン戦闘機2機とトーネード攻撃機2機、支援機4機、というもので戦闘機と攻撃機は増派を含めても12機でしかありません。

 分散運用、という観点からイギリスの事例を見てみますと、更に少ない規模の分遣隊を派遣する事例があります、それはフォークランド諸島への分遣隊派遣の事例で、これは実際の空爆任務ではなく緊急発進に備えて戦闘機を前方展開させる、というものだったのですが、フォークランド諸島分遣隊派遣の際には2機から3機のタイフーン戦闘機を展開させる事で対応した事もありました。もちろん、”航空防衛作戦部隊論”に提示する分散運用は、大規模な航空戦闘を継続する航空優勢確保への航空撃滅戦への対応というものですので、一概に比較はできません。

 即ち、ISIL対処やポテンシャルのための前方展開というものとは意味合いが異なりますが、分散、しかし派遣するというだけでも意味を持つ事例がある、という事が読み取れるでしょう。ISIL空爆の場合は、ISILは戦闘機を運用する基盤を持ちませんので空対空戦闘は、ロシア機等との偶発戦闘等を例外とすれば想定しなくてよいのですし、高射火器もレーダー警戒網と連動する組織防空能力や高高度目標を迎撃できる短距離地対空ミサイル以上の防空装備を持ちませんので、低空親友や防空制圧戦は不要、極端に言えばP-3Cのような機体でも誘導爆弾JDAMの運用機として使用可能です。

 もちろん、これはテロが起きる前に報復作戦の準備を、という意味では全くなく、南西諸島防衛における航空機の分散運用という視点に主軸を置き、分散運用航空機、という観点から8機という部隊規模のポテンシャルを見たものなのですが、この8機という作戦機でも一定水準の航空作戦を展開可能であり、興味深い事例としてみる事が出来るでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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