■我が国と南シナ海安全保障
日本はどのように南沙諸島問題へ向かい合うべきなのでしょうか。南沙諸島問題における我が国安全保障上の影響について、議論しましょう。

本特集を開始して以降、幾つかの動きがありましたが、先ず海上自衛隊のTC-90練習機、双発練習機をフィリピンへ供与する事が決定し、フィリピンでは海洋哨戒機として運輸するとのこと。更に自衛隊は護衛艦と潜水艦をフィリピン及びヴェトナムへ親善訪問させる事となり、これは単に間もなく開始される外洋練習航海の寄港先に過ぎないような気がしますが、潜水艦が随伴するという点は外洋練習航海としては特殊です。

万一南沙諸島が中国により制圧された場合どうなるか。南沙諸島問題における我が国安全保障上の影響ですが、国際航空航路への影響、東南アジア地域からの海上輸送が途絶する可能性、石油輸送海上航路が豪州南部を迂回し延伸する、長期的にも環太平洋地域における東南アジア地域でのアメリカ発言力が低下し中国の勢力圏下に置かれる点を除けば短期的に危険はありません。しかし、これを我が国が看過できるかと問われるならば難しく、この海域での紛争が終息すれば全勢力が東シナ海地域へ転進しますので、安全保障リスクは間違いなく高まる。

国際航空航路への影響ですが、中国が我が国南西諸島上空へ防空識別圏を設定した当時は、その防空識別圏内を警戒監視する能力に欠け、更にその上空を国際航空航路が余り飛行していないことから、無視する事が可能でした。しかし、西沙諸島から南沙諸島に掛けての広大な空域を防空識別圏として設定した場合、特にこの海域が東南アジアの中央部に位置する南シナ海の中央部に位置する事から国際航空航路への影響は無視できるような規模ではありません。

防空識別圏設定は、我が国南西諸島へ強行された際には黙殺し、日米は強い姿勢を以て臨むことが出来ましたし、中国空軍と海軍航空隊の示威行動は全て航空自衛隊により阻止され、領空侵犯事案は海上法執行機関の低速航空機が一度低空から実施したのみ、自衛隊は早期警戒機を那覇に常駐させ、新飛行隊を創設する事で低高度侵入へ対処する事が出来、平時に手の内を見せた中国への対処能力が整備されました。

しかし、南シナ海では中国空軍が西沙諸島へ戦闘機部隊を配置した場合、東南アジア諸国の空軍力は対抗し得るのでしょうか、行動半径の大きな戦闘機はシンガポール空軍がF-15E/SGを装備し、Su-27戦闘機をヴェトナムやインドネシアにマレーシア等が運用していますが、そもそも南沙諸島全域にレーダーサイトを配置している国は、中国のみとなっています。

そして中国空軍がこの空域を占有し空軍力による恒常的な周辺国領空侵犯を強行した場合、戦闘行動半径や空母の有無、早期警戒機など警戒管制体制の関係から緊急発進で中国空軍を要撃する能力はどの国にもありません。そして中国政府が圧力をかけた場合、南沙諸島上空の飛行情報開示へ圧力に屈し応じる東南アジア諸国も皆無ではない可能性があり、既成事実化される可能性も捨てきれません。

このあたりには我が国シーレーンが通りますが、平時には航行の自由を直接潜水艦により妨害する事は無いでしょう、が、係争地域であり海空軍力が混在し緊迫している海域は、我が国へ向かう商船が航行を忌避する可能性があります。イランイラク戦争期のタンカー攻撃等の事態と同様な状況へ発展する事は当面ないでしょうが、友好国や既成事実確立への当該地域の中国主権を認める国以外へは航行を妨害する可能性は、充分考えるべきです。

東南アジア地域からの海上輸送が武力紛争へ展開した場合に、途絶する可能性ですが、中国がシーレーンを排除する可能性も挙げられるのですが、中国海軍による機雷敷設の可能性、東南アジア諸国海軍が劣勢の海軍力を補うために機雷戦を展開する可能性があるためです。重要航路に機雷は敷設されないでしょうが、係維機雷の浮流機雷化や、海軍艦艇の航路と通商路が重複する際にはその航路も途絶される可能性があります。機雷は中国海軍が重視する兵器の一つで、新型機雷と敷設手段の多極化という現状があるのです。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
日本はどのように南沙諸島問題へ向かい合うべきなのでしょうか。南沙諸島問題における我が国安全保障上の影響について、議論しましょう。

本特集を開始して以降、幾つかの動きがありましたが、先ず海上自衛隊のTC-90練習機、双発練習機をフィリピンへ供与する事が決定し、フィリピンでは海洋哨戒機として運輸するとのこと。更に自衛隊は護衛艦と潜水艦をフィリピン及びヴェトナムへ親善訪問させる事となり、これは単に間もなく開始される外洋練習航海の寄港先に過ぎないような気がしますが、潜水艦が随伴するという点は外洋練習航海としては特殊です。

万一南沙諸島が中国により制圧された場合どうなるか。南沙諸島問題における我が国安全保障上の影響ですが、国際航空航路への影響、東南アジア地域からの海上輸送が途絶する可能性、石油輸送海上航路が豪州南部を迂回し延伸する、長期的にも環太平洋地域における東南アジア地域でのアメリカ発言力が低下し中国の勢力圏下に置かれる点を除けば短期的に危険はありません。しかし、これを我が国が看過できるかと問われるならば難しく、この海域での紛争が終息すれば全勢力が東シナ海地域へ転進しますので、安全保障リスクは間違いなく高まる。

国際航空航路への影響ですが、中国が我が国南西諸島上空へ防空識別圏を設定した当時は、その防空識別圏内を警戒監視する能力に欠け、更にその上空を国際航空航路が余り飛行していないことから、無視する事が可能でした。しかし、西沙諸島から南沙諸島に掛けての広大な空域を防空識別圏として設定した場合、特にこの海域が東南アジアの中央部に位置する南シナ海の中央部に位置する事から国際航空航路への影響は無視できるような規模ではありません。

防空識別圏設定は、我が国南西諸島へ強行された際には黙殺し、日米は強い姿勢を以て臨むことが出来ましたし、中国空軍と海軍航空隊の示威行動は全て航空自衛隊により阻止され、領空侵犯事案は海上法執行機関の低速航空機が一度低空から実施したのみ、自衛隊は早期警戒機を那覇に常駐させ、新飛行隊を創設する事で低高度侵入へ対処する事が出来、平時に手の内を見せた中国への対処能力が整備されました。

しかし、南シナ海では中国空軍が西沙諸島へ戦闘機部隊を配置した場合、東南アジア諸国の空軍力は対抗し得るのでしょうか、行動半径の大きな戦闘機はシンガポール空軍がF-15E/SGを装備し、Su-27戦闘機をヴェトナムやインドネシアにマレーシア等が運用していますが、そもそも南沙諸島全域にレーダーサイトを配置している国は、中国のみとなっています。

そして中国空軍がこの空域を占有し空軍力による恒常的な周辺国領空侵犯を強行した場合、戦闘行動半径や空母の有無、早期警戒機など警戒管制体制の関係から緊急発進で中国空軍を要撃する能力はどの国にもありません。そして中国政府が圧力をかけた場合、南沙諸島上空の飛行情報開示へ圧力に屈し応じる東南アジア諸国も皆無ではない可能性があり、既成事実化される可能性も捨てきれません。

このあたりには我が国シーレーンが通りますが、平時には航行の自由を直接潜水艦により妨害する事は無いでしょう、が、係争地域であり海空軍力が混在し緊迫している海域は、我が国へ向かう商船が航行を忌避する可能性があります。イランイラク戦争期のタンカー攻撃等の事態と同様な状況へ発展する事は当面ないでしょうが、友好国や既成事実確立への当該地域の中国主権を認める国以外へは航行を妨害する可能性は、充分考えるべきです。

東南アジア地域からの海上輸送が武力紛争へ展開した場合に、途絶する可能性ですが、中国がシーレーンを排除する可能性も挙げられるのですが、中国海軍による機雷敷設の可能性、東南アジア諸国海軍が劣勢の海軍力を補うために機雷戦を展開する可能性があるためです。重要航路に機雷は敷設されないでしょうが、係維機雷の浮流機雷化や、海軍艦艇の航路と通商路が重複する際にはその航路も途絶される可能性があります。機雷は中国海軍が重視する兵器の一つで、新型機雷と敷設手段の多極化という現状があるのです。
北大路機関:はるな くらま
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