北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第三三回):航空防衛力、航空団拠点基地の作戦基盤能力

2016-03-26 22:07:43 | 防衛・安全保障
■航空団拠点基地
 航空団基地、航空優勢確保に際しては長期的な防空作戦を展開する最大の拠点として機能します。

 大型の基地を維持する必要性については、大型の航空基地は周辺部に大都市や利用可能地域を確保することで、基地ではなく、基地周辺に事前集積品を備蓄する事が可能となるわけです。特に、有事の際には機動運用として多方面からの航空部隊増援を受けるため、その増援航空部隊を含めた事前集積品はどうしても膨大なものとなり周辺への備蓄が必要となるでしょう。

 集積品は第1種、第2種、第3種、第3種A、第4種、第4種A、第5種、第5種A、と多岐に及びますが混成集積する事により数か所を航空攻撃により集積品を亡失した際においても全般としての防空能力を維持できるようせねばなりません。すると、管理業務は複雑化しますし複数個所に集積する事は警備業務も大型化し、基地の数が多くなってはこれらを管理しきれなくなるでしょう。

 航空兵站任務は、事前集積品を備蓄できる消耗品に加え、過度に事前集積する事は防衛上難しい部品について補給処からの請求補給方式を採る必要がありますので、拠点航空基地として航空輸送体制を基地間輸送と末端輸送を連接させる必要が生じます。拠点航空基地の意義はもう一つ、損傷航空機の後送が困難となる為、基地での検査隊修理、その一段上の段階の整備についても必要となる事を示します。

 航空機は大きな損傷を受けた場合、修理可能かを含め検査隊だけではなく製造工場へ後送しメーカー修理を定期整備の延長としての重整備以上の段階として実施します。損傷は、空対空ミサイルの近接信管炸裂による損傷を含め、墜落に至らないものの重点的な修繕を行う必要が生じるものが有事の際には考えられ、一般的には後送します。

 しかし有事の際に後送の余裕は無く、結果的に第一線での検査隊と工作小隊にメーカー協力要員を受けての修理が必要となり、この為には施設の整った基地が必要となるのです。陸空協定として共通消耗品や共通物資については陸上自衛隊と航空自衛隊の相互融通などの取り決めが為されていますが、その上で航空輸送支援を陸上自衛隊輸送ヘリコプター部隊や物資の寸法によっては多用途ヘリコプターによる空輸支援を受ける事も可能でしょう。

 こういいますのも航空優勢確保への戦闘が展開されている段階では我が国航空基地が置かれる主要地域には着上陸戦闘が生起する以前の状態であるため、陸上自衛隊空中機動部隊の空輸支援協力は陸上防衛戦闘を必ずしも阻害するものではありません、ただ、重装備として戦車や火砲と装甲車両などは着上陸に備えた陣地構築と物資集積を併せて展開することとなります。

 ゆえに全てを航空自衛隊輸送に振り向けられるわけではありません。すると補給拠点もやはり角に分散する事は望ましくなく、また補給処からの物資を仕分ける作業には補給区画を広くとる必要が生じますので、基地機能が一定以上整った大型の航空基地について、その必要性はさらに高くなるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする