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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南沙諸島問題緊迫!中国南シナ海行動の考察【6】 中国西沙YJ-62SSM配備と中古装備供与

2016-03-30 22:40:00 | 国際・政治
■中国西沙諸島にYJ-62SSM配備
 南沙諸島問題へ、日本へ対応可能な施策、軍事インフラ輸出と防衛装備品供与や教育訓練支援を我が国が執り得る具体的施策として提示しました。

 南シナ海、さて、情勢は動いています。西沙諸島のウッディー島に対艦巡航ミサイル鷹撃62を展開と報道がありました、鷹撃62はNATOコード名YJ-62、C-602とも呼称されているミサイルで、052C型防空駆逐艦空搭載が開始された新鋭ミサイルです。円筒形発射筒から投射されるこの対艦ミサイルは慣性航法システムと終末アクティブレーダー誘導方式を併用し、ロシアの衛星位置測定システムGLONASSより支援を受け正確に投射されるもの、最大射程は最大400km程度とされるものです。

 それでは前回の防衛インフラ輸出に続く話題です、防衛装備供与について。防衛装備品供与は、フィリピンとヴェトナムが海上自衛隊から退役するP-3C哨戒機の供与を求めているほか、はつゆき型護衛艦など除籍護衛艦の供与要請、ヴェトナム政府については一部報道において74式戦車の除籍車両供与を要望しているともされ、もちろん、P-3C哨戒機を供与した場合、維持する能力があるのか、先端電子装備の整備と運用面の問題があります、はつゆき型についても同様で、74式戦車については情報が不確かで、本当なのかという部分、それを差し引いても用途があるのかという素朴な疑問も捨てきれません。

 実際問題、自衛隊装備は潤沢ではありませんので供与できる装備品の全体の数は多くはありませんが、3t半トラックや1t半トラック等の輸送用装備として耐用年数を超えた装備品は供与可能でしょう。全国の補給処には107mm迫撃砲や106mm無反動砲が保管されてはいるようですが、実のところ第二次大戦中から朝鮮戦争中の装備は東南アジアの場合、ヴェトナム戦争期に備蓄されたものが多数ある為、日本が数十門を供与したとして、政治的な意味以上のものは考えられないでしょう。

 戦車の供与については、現実的ではありません。例えば10式戦車を量産し、海外仕様として輸出する事は可能でしょうが、74式戦車については予備部品が枯渇しているほか、自衛隊の運用体系からは将来的に機動戦闘車への置き換えにより運用終了となる為、整備支援から教育支援まで全くする事が出来ません。90式戦車は10式戦車の量産が進めば遠からず除籍車両が出てきますが、予備部品の備蓄の限界は当然運用支援に影響します、戦車は整備なしに長期間運用できるほど単純な装備ではないのです。

 他方で、汎用車両の供与、これは自衛隊の南スーダンPKO等で施設機材などの汎用品を現地へ供与する指針を示していますが、継戦能力に関わる後方支援機材は戦闘資材を重視すればどうしても調達が戦車や火砲等に集中するため後回しとなりがちですが、我が国が余剰車両を供与するならば、供給を受けた国は正面装備の調達へ特化する事も可能となるやもしれません。もっとも、陸上自衛隊の規模から余剰車両は決して多くなく、やはり日本がこの方面へ参加するという姿勢を誇示する政治的姿勢の明示になるだけ、ともいえるもの。

 防衛装備品供与で最も考えられるのは、海上保安庁用の巡視船です、くにがみ型巡視船強化型を新造し、供給する事は可能でしょう。1000t型巡視船として海上保安庁は尖閣諸島警備標準型巡視船というべき大型巡視船は現在18番船まで建造が続いています。 RFS射撃指揮装置と管制式機関砲を採用していますが、量産により建造費を抑える事に成功しており、海洋法執行機関向けの船舶であることから供与への障壁は比較的低いものと考えられます。

 はるしお型潜水艦、はつゆき型護衛艦、東南アジア諸国から見たならばこの種の装備が除籍され解体されもしくは標的艦となっている現状は非常にもったいないと感じるものでしょう、しかし無理に供与したとしてもこの装備を使いこなすことができるか、整備支援を要請された場合対応できるのか、という問題は解決できないのです。そこで、この他の装備は実効性が低くとも、政治的に日本が東南アジア諸国を支援するという姿勢を誇示するだけでも、その政治的な意義は大きいといえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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