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沖縄県知事選2018:玉城デニー新知事,普天間辺野古移設問題明確化で佐喜眞候補に勝利

2018-10-01 20:14:01 | 国際・政治
■辺野古以外の施策を考える
 伊勢湾台風以来の規模と進路の台風24号が本州を蹂躙する中、沖縄県知事選が執り行われ、玉城デニー氏が辺野古移設問題明確化で佐喜眞候補に勝利し、新知事となりました。

 普天間飛行場移設ではなく名護市新飛行場建設反対という論点が勝った構図、具体的には名護市辺野古移設反対を明確に示した玉城氏が勝利したという構図です。重要なのは普天間飛行場廃止がそれほど正面に出されていなかった点で、実のところここに妥協の余地はあるのかもしれません。実際問題、沿岸部に新飛行場を建設する以外選択肢はないのか。

 辺野古埋立反対を明確に示した玉城氏は、県民が求める辺野古問題への回答に明確な方針を示したわけですが、佐喜眞氏は辺野古問題を敢えて触れずに県内経済活性や子育て支援等を強調した事で、所謂白紙答案で県民に問うた構図です。辺野古問題は選挙最大の論点であり、ここに白紙回答を提示して勝てる程に県知事選は甘くなかった、当然といえます。

 アメリカ海兵隊は我が国を防衛するべく駐留していますが、決して中国軍の大群を沖縄本島の海岸線で自衛隊と共に迎え撃ち、沖縄戦を勝利するために駐屯しているのではありません、アメリカ海兵隊はM-1A1戦車を装備していますが、沖縄駐留部隊には戦車は無く第3海兵師団にも戦車大隊はありません、LAV-25装備の海兵軽装甲偵察中隊が置かれるのみ。

 岩国基地に司令部を置く海兵航空団、普天間飛行場の部隊はこの回転翼航空部隊と支援部隊が置かれています。岩国基地には海兵攻撃飛行隊が展開しており、航空打撃を担う。そして普天間飛行場の海兵回転翼航空部隊は海兵隊の水陸両用作戦に不可欠な空中機動任務を担う部隊で、在沖米海兵隊の地上戦闘部隊とは不可分の航空部隊、故に沖縄本島に居る。

 MV-22可動翼機であれば、台湾海峡有事や朝鮮半島有事に際し、10機程度の編隊で海兵中隊を緊急展開可能です。もちろん一個中隊で可能なことは限られていますが、初動で在留米国人救出や米公館防護支援等、貴志を鮮明に示し実力を堅持する事で危機拡大へ、当該地域での不安定化をアメリカは軍事力を以てでも許さない、との姿勢を示す事が可能です。

 海兵隊撤退を公約として示している訳ではなかった今回の県知事選、だからこそもう少し辺野古論点について、例えば普天間飛行場維持を含めた柔軟な姿勢を政府は選択する事もできるのではないか、こう考えます。過去にも繰り返し紹介しましたが、普天間飛行場は云われる程危険性はありません、京都周辺の飛行場は基本的に普天間より住宅街に近い。

 岐阜基地、小牧基地、小松基地、浜松基地、八尾駐屯地、明野駐屯地、伊丹空港、基本的に普天間飛行場と比較しますと、普天間のような緑地帯が無い飛行場もありますので、住宅街には近い。京都の舞鶴航空基地は住宅街から遠いではないか、という指摘があるかもしれませんが、舞鶴航空基地は舞鶴基地沿岸部を埋め立てた飛行場、辺野古と同じもの。

 関西国際空港や中部国際空港に神戸空港、共に住宅街から離れていますが、ご承知の通り沖合を埋め立てた空港、住宅街から距離を置くにはこうした埋立を行うでもなければ不可能です。沖縄の人に一度普天間を見てほしいと云われ行ってみた普天間、その感想は沖縄の人には一度岐阜でも浜松でも八尾でもいい、京都観光ついでに本州の基地を見てほしい。

 普天間維持という選択肢、これを辺野古移転断念の同義として選ぶ余地は無いのか、ここまで反対を受ける辺野古移設はかつての成田空港闘争のような一地域の問題ではなく、都道府県の一つの県民が知事選において立場を明確にするほど反対している現状、次善策として普天間飛行場維持、つまり現状維持ですね、こうした選択肢は検討余地があると思う。

 嘉手納統合案は嘉手納基地の有事の際の容量、朝鮮半島有事や台湾海峡有事が我が国へ影響を及ぼすことの無いよう拡大阻止を行うには嘉手納基地は平時の収容能力以上の有事の拡張性が重視されます。また普天間飛行場についても、米本土からの海兵遠征軍増援受入れという視点からは、小規模な施設では受入れが不能、民主党政権時代に検証されました。

 読谷補助飛行場再接収、嘉手納基地近傍の1800m滑走路を有する飛行場跡地で現在は滑走路跡地を利用したツーリング施設として一般に開放されている施設を再利用するなど、有事の際に不足する施設を補てんする施策、勿論平時に補助飛行場を使うのではなく有事のために維持するという程度、こうした代案は必要になるでしょう。これはこれで難しい。

 名護市への移設を政府が強く勧める背景には、普天間飛行場とその周辺の在日米軍施設を最終的に全面返還し、嘉手納飛行場以南の米軍施設を全て廃止させる、という長期的な展望があります。沖縄県には大型貨物船やタンカーを多数接岸できる港湾施設が那覇軍港等米軍施設に限られ、この現状が沖縄工業化という観光業以外の産業開発を阻害しています。

 米軍基地比率としての在沖米軍施設縮小を例えば一つの政策成果に繋げたい、という視点もあるにはあるでしょう。実際、嘉手納以南完全返還が実現したならば、那覇空港から自動車で一時間ほど進まなければ米軍基地を見る事はありません、現状の那覇空港に隣接する那覇軍港等の米軍施設返還ならば大きな前進といえる、が、恐らくそれだけではない。

 沖縄経済の活性化に観光業以外の産業を探しますと、オリオンビールやオキハムなど製造業はあるにはありますが、重工業は無く、どうしても観光業の比重が高くなります。沖縄県の都道府県内の賃金格差や産業構成比率の視点からどうしても普天間返還で嘉手納以南の那覇市に広大な産業用地を確保し、活性化を実現するという長期展望があるのでしょう。

 ただ、言い換えれば辺野古飛行場埋立反対を掲げつつ米海兵隊撤退を公約としないあたり、敢えて難しい大規模な米軍施設返還による再開発、再開発を行うには大量の投資を必要とすると共に需要供給の見極めが甘ければ更地が増えて地域不活性化となる、こうした懸念と共に難しい再開発の変化に挑むより、現状の基地と観光業という保守的選択もあり得る。

 基地負担という視点から見ました沖縄ですが、安倍政権に入り実現した沖縄北部訓練場大規模返還の実現で沖縄県に占める米軍基地施設面積の全国比率は一応目に見える形で低下しています。嘉手納基地よりも遥かに広い、沖縄本島北部にある広大な7000ヘクタール規模の演習場の半分近くが返還されたのですから、この意味の大きさは理解できるでしょう。

 普天間飛行場維持を念頭に在日米軍との調整を行うことは出来ないのか、これは同時に1990年代より本格化した嘉手納以南全面返還という施策の放棄を意味するのですが、無理に辺野古への飛行場建設を行うよりは、現状維持、という選択肢をそろそろ検討するべきなのかもしれません。無理に基地集約を行ったうえでの新たな産業開発を行うよりも、と。

 ハワイ方式の観光地として沖縄経済活性化を図る。安倍政権では観光立国を目指し、観光ビザ省略など外国人観光客増大を積極的に推し進めてきました、考え方によっては沖縄県に産業開発を行うよりも観光開発を行う事で活性化を図れましょう。基地があれば兵站線の道路網とインフラが必要、その応用でハワイは観光地化しました、沖縄もこれを目指す、政府はこうした視点から沖縄の民意に譲歩するという選択肢を考えるべきです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (4)
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