■緊張のナゴルノカラバフ
世界の新型コロナウィルスCOVID-19死者数が100万に迫る中、旧ソ連の南コーカサス地方ナゴルノカラバフにおいて戦闘が発生しました。

アルバニアとアゼルバイジャンにおいて正規軍同士の武力衝突事案が発生しました。両国は旧ソ連構成国であり国境問題が生じていました。戦闘が発生したのはナゴルノカラバフ自治州で、戦車が攻撃を受ける状況や地対空ミサイル陣地などへの航空攻撃と思われる空撮映像等が確認されています。戦闘により非戦闘員含む17名が死亡しているとのこと。

領土問題が直接の原因です。アゼルバイジャン領土内にナゴルノカラバフ自治州があり、その帰属問題があり、アルメニアをロシアが、アゼルバイジャンをトルコが支援しています。アルメニア軍がアゼルバイジャン軍の戦車を攻撃する動画がアゼルバイジャンより公開されアルメニア軍が最初に攻撃を加えたとしています。ただ、情報は錯そうしている。

トルコはアゼルバイジャンを支援、これはアゼルバイジャンにイスラム教徒が多いための歴史的なつながりが背景にあります。ロシアはアルバニア双方に武器を輸出しており今回ロシアはアルメニアに基地を置きつつ、しかし双方の停戦を呼びかけています。ナゴルノカラバフは1994年に独立、その後の停戦までに非戦闘員含め三万名が死亡しています。

アルメニアは人口295万名で国内総生産は134億ドル、ノアの方舟伝説の残るアララト山麓を領域としており、第一次世界大戦ではトルコとロシアの最前線となり、第二次世界大戦後にソ連に併合、1991年に独立を回復します。国民の98%がキリスト教徒であるアルメニアではこの際に隣国となったアゼルバイジャンとナゴルノカラバフ戦争が勃発します。

アルメニア軍は現役5万4000名、国防費は6億3000万ドルでGDP比は5%を超え、ミリタリーバランスによればロシア製T-90主力戦車30両とT-72主力戦車140両、BMP-1/2装甲戦闘車200両等の機会か戦力を有し、防空軍としてSA-8等100基を装備、空軍は新しいSu-30戦闘機18機、Su-25攻撃機15機やMi-24攻撃ヘリコプター15機等を持つ。

ロシア軍がアルメニア領内に駐屯しています。ギュムリ基地にロシア軍第102基地隊が展開しており、MiG-29戦闘機18機、そして長射程の戦域防空システムであるS-300防空システムに加え短距離弾道弾部隊が展開しているとされ、また、アルメニア軍準軍事組織としてナゴルノカラバフ防衛軍があり、旧式戦力主体ですがかなりの重戦力を有するという。

アゼルバイジャンは首都が空母の名ともなったバクー、人口1027万名で人口の97%がイスラム教徒でありGDPは453億ドル。アゼルバイジャン軍は国防費が22億ドル、現役兵力6万6000名で予備役兵力は60万名に達します。主力は陸軍で5個師団隷下に22個自動車化狙撃旅団が置かれ、トルコ政府の支援下で装備体系はソ連製からNATO規格へ向かう。

アゼルバイジャン軍は戦車がT-90を100両とT-72戦車470両に旧式T-55が100両、BMP-3装甲戦闘車100両とBMP-1/2が80両、トルコとの防衛協力によりコブラ軽装甲機動車350両とアクプス軽装甲車300両、南ア製マンバ等の耐爆車両を200両程度ライセンス生産する。空軍はMiG-29戦闘機18機とMiG-21が若干数、Su-25が12機とMi-24が17機など。

天然ガスパイプラインが存在する。このアルバニアとアゼルバイジャンの軍事衝突問題を複雑なものとするのは、この南コーカサス地域にはロシアの天然ガスパイプラインが敷設されており、天然ガスパイプラインはこれ一本ではないのですがロシアから南欧地域への重要なパイプラインとなっており、この地域の政情不安定は思わぬ影響を生みます。

SCPX南コーカサスパイプラインは692km、このパイプラインはそのまま2019年に開通したTANAPトランスアナトリアパイプラインの1850kmを経てトルコからエーゲ海までを直通し、TAPトランスアドリアパイプラインの878kmを経て、ロシアからイタリアまでを直通しているのです。そして近年、天然ガスは欧州の重要な新エネルギーとなっている。

イタリアとロシアを結ぶパイプライン、天然ガスは近年世界で関心の高まる気候変動問題への切り札の一つとして注目されているのです。天然ガスの主成分はメタンガスやプロパン、要するに二酸化炭素よりも遙かに温室効果の高い気体となっており、これが大気中に自然放出されますと気候変動が劇的に進む懸念、するとどうするべきか、燃やせばよい。

脱石炭と脱石油として再生可能エネルギーに脚光だけはあつまっていますが、発電量で原子炉一基に相当する発電量を賄うには膨大な土地を切り開き太陽光パネルを敷き詰め風力発電塔を設置せねばなりません。砂漠地帯は別として森林を開拓する場合にはCO2排出権には森林面積の再生産量が含まれるため、太陽光パネルはCO2排出権に悪影響も及ぼす。

ここから生じる問題は、南欧地域が脱石炭と脱石油とともに再生可能エネルギーが補填できないエネルギーを原子力とともに新しい天然ガスに依存する枠組みが構築されつつある最中でのパイプラインへの影響です。そして紛争が長期化した場合は、トルコがギリシャと対立するエーゲ海天然ガス開発を促進する要素ともなり、別の紛争へ波及しかねません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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世界の新型コロナウィルスCOVID-19死者数が100万に迫る中、旧ソ連の南コーカサス地方ナゴルノカラバフにおいて戦闘が発生しました。

アルバニアとアゼルバイジャンにおいて正規軍同士の武力衝突事案が発生しました。両国は旧ソ連構成国であり国境問題が生じていました。戦闘が発生したのはナゴルノカラバフ自治州で、戦車が攻撃を受ける状況や地対空ミサイル陣地などへの航空攻撃と思われる空撮映像等が確認されています。戦闘により非戦闘員含む17名が死亡しているとのこと。

領土問題が直接の原因です。アゼルバイジャン領土内にナゴルノカラバフ自治州があり、その帰属問題があり、アルメニアをロシアが、アゼルバイジャンをトルコが支援しています。アルメニア軍がアゼルバイジャン軍の戦車を攻撃する動画がアゼルバイジャンより公開されアルメニア軍が最初に攻撃を加えたとしています。ただ、情報は錯そうしている。

トルコはアゼルバイジャンを支援、これはアゼルバイジャンにイスラム教徒が多いための歴史的なつながりが背景にあります。ロシアはアルバニア双方に武器を輸出しており今回ロシアはアルメニアに基地を置きつつ、しかし双方の停戦を呼びかけています。ナゴルノカラバフは1994年に独立、その後の停戦までに非戦闘員含め三万名が死亡しています。

アルメニアは人口295万名で国内総生産は134億ドル、ノアの方舟伝説の残るアララト山麓を領域としており、第一次世界大戦ではトルコとロシアの最前線となり、第二次世界大戦後にソ連に併合、1991年に独立を回復します。国民の98%がキリスト教徒であるアルメニアではこの際に隣国となったアゼルバイジャンとナゴルノカラバフ戦争が勃発します。

アルメニア軍は現役5万4000名、国防費は6億3000万ドルでGDP比は5%を超え、ミリタリーバランスによればロシア製T-90主力戦車30両とT-72主力戦車140両、BMP-1/2装甲戦闘車200両等の機会か戦力を有し、防空軍としてSA-8等100基を装備、空軍は新しいSu-30戦闘機18機、Su-25攻撃機15機やMi-24攻撃ヘリコプター15機等を持つ。

ロシア軍がアルメニア領内に駐屯しています。ギュムリ基地にロシア軍第102基地隊が展開しており、MiG-29戦闘機18機、そして長射程の戦域防空システムであるS-300防空システムに加え短距離弾道弾部隊が展開しているとされ、また、アルメニア軍準軍事組織としてナゴルノカラバフ防衛軍があり、旧式戦力主体ですがかなりの重戦力を有するという。

アゼルバイジャンは首都が空母の名ともなったバクー、人口1027万名で人口の97%がイスラム教徒でありGDPは453億ドル。アゼルバイジャン軍は国防費が22億ドル、現役兵力6万6000名で予備役兵力は60万名に達します。主力は陸軍で5個師団隷下に22個自動車化狙撃旅団が置かれ、トルコ政府の支援下で装備体系はソ連製からNATO規格へ向かう。

アゼルバイジャン軍は戦車がT-90を100両とT-72戦車470両に旧式T-55が100両、BMP-3装甲戦闘車100両とBMP-1/2が80両、トルコとの防衛協力によりコブラ軽装甲機動車350両とアクプス軽装甲車300両、南ア製マンバ等の耐爆車両を200両程度ライセンス生産する。空軍はMiG-29戦闘機18機とMiG-21が若干数、Su-25が12機とMi-24が17機など。

天然ガスパイプラインが存在する。このアルバニアとアゼルバイジャンの軍事衝突問題を複雑なものとするのは、この南コーカサス地域にはロシアの天然ガスパイプラインが敷設されており、天然ガスパイプラインはこれ一本ではないのですがロシアから南欧地域への重要なパイプラインとなっており、この地域の政情不安定は思わぬ影響を生みます。

SCPX南コーカサスパイプラインは692km、このパイプラインはそのまま2019年に開通したTANAPトランスアナトリアパイプラインの1850kmを経てトルコからエーゲ海までを直通し、TAPトランスアドリアパイプラインの878kmを経て、ロシアからイタリアまでを直通しているのです。そして近年、天然ガスは欧州の重要な新エネルギーとなっている。

イタリアとロシアを結ぶパイプライン、天然ガスは近年世界で関心の高まる気候変動問題への切り札の一つとして注目されているのです。天然ガスの主成分はメタンガスやプロパン、要するに二酸化炭素よりも遙かに温室効果の高い気体となっており、これが大気中に自然放出されますと気候変動が劇的に進む懸念、するとどうするべきか、燃やせばよい。

脱石炭と脱石油として再生可能エネルギーに脚光だけはあつまっていますが、発電量で原子炉一基に相当する発電量を賄うには膨大な土地を切り開き太陽光パネルを敷き詰め風力発電塔を設置せねばなりません。砂漠地帯は別として森林を開拓する場合にはCO2排出権には森林面積の再生産量が含まれるため、太陽光パネルはCO2排出権に悪影響も及ぼす。

ここから生じる問題は、南欧地域が脱石炭と脱石油とともに再生可能エネルギーが補填できないエネルギーを原子力とともに新しい天然ガスに依存する枠組みが構築されつつある最中でのパイプラインへの影響です。そして紛争が長期化した場合は、トルコがギリシャと対立するエーゲ海天然ガス開発を促進する要素ともなり、別の紛争へ波及しかねません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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