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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】イージス艦最前線,日本ミサイル防衛専用艦と豪州ハーフのイージス艦ハンター級

2022-04-11 20:14:45 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回の防衛情報はイージス艦を巡る幾つかの話題を紹介しましょう。

 日本の自衛隊ミサイル防衛専用艦用のSPY-7-V1レーダーについてロッキードマーティン社はシステム適合実証を発表しました。ロッキードマーティン社はアラスカに設置された長距離識別用SPY-7により日本向けの実証実験を実施したとし、このシステムは陸上に設置されているが、海上においても海面影響を局限化する必要な処理を達成したとのこと。

 陸上配備イージスシステムイージスアショア用イージスシステムとして日本は富士通製部品が採用されている点と、実用化はされていないが完成した場合は探知距離が長いとしてSPY-7を選定していますが、海上自衛隊が長らく運用実績のあるSPY-1アンテナ、イージス艦にはその改良型としてアメリカ海軍ではSPY-6を既に量産艦へ搭載を開始しています。

 SPY-7-V1レーダーは元々陸上設置用として要求された為、海上の振動に適合するのか、まや型護衛艦など既存の護衛艦設計に応用できるのかは未知数ですが、ASEVイージスシステム装備船用として既にロッキードマーティン社はニュージャージー州ムーアズタウンにも試験設備を増設しており、ミサイル防衛力整備へ今後も試験が行われるとのことでした。
■ハンター級フリゲイト
 イージス艦の亜種といいますかハーフイージス艦という新しい区分です。

 オーストラリア海軍が計画するハンター級フリゲイトについて建造を担うイギリスのBAE社は原型となる26型フリゲイトとのシステム及び設計適合化の技術報告を実施しました。26型フリゲイトはイギリス海軍がグローバルコンバットシップとして建造していますが、オーストラリアは本型を原型に大幅な設計と仕様を変更して実用化させる構想です。

 ハンター級フリゲイトはオーストラリア海軍が老朽化するアンザック級フリゲイトの後継に建造する大型水上戦闘艦、満載排水量は8800t、9隻の建造が計画され1番艦は2031年に就役予定です。この艦は非常に無理をした野心的な設計が特色で、オーストラリア独自開発のCEAFAR2フェーズドアレイレーダーとアメリカのイージスシステムを採用します。

 BAE社はBAEシステムズオーストラリア社として現地法人を設立させ、オーストラリアのオズボーンにて建造します。防空用にMk41VLSを32セル搭載し各種ミサイルを運用可能ですが、後日要求の増大から満載排水量は10000tに達する可能性があり、また26型と全く異なる設計から1番艦竣工が当初の2028年予定を2031年に延期した経緯があります。
■ノルウェーイージス艦延命
 フリチョフナンセン級をノルウェーは今後も活用するようですが後知恵の視点でみれば過度な小型は課題が在ったように思う。

 ノルウェー国防省はフリチョフナンセン級イージスフリゲイトについて延命改修及び近代化改修をナバンティア社へ要請しました。ナバンティア社はフリチョフナンセン級5隻を全て建造しており、2011年までに建造を完了していますが、2013年にナバンティア社と10年間の長期整備支援契約を結んでおり、満期がみえたためにこれを延長したかたちです。

 フリチョフナンセン級イージスフリゲイトはスペインのアルバロデバサン級フリゲイトを原型として小型化したイージス艦です。イージス艦ですが基準排水量は4681tと小型で満載排水量も5121t、ミサイルも長射程のスタンダードミサイルは搭載せずVLSも8セルのみとなっていますが、ESSM発展型シースパローを搭載し相応に強力な水上戦闘艦です。

 ナバンティア社ではフリチョフナンセン級の現役艦4隻について、船体構成調査により老朽化部分の調査と特定消耗部品に関する交換などを実施します。ノルウェー海軍の重要な水上戦闘艦ですが、4番艦のヘルゲイングスタッドが2018年に事故により大破沈没しており、イージス艦としては初の沈没艦となりました。延命改修は残る4隻に行われる予定だ。
■SPS-62イルミネータ改良
 ひゅうが型護衛艦、あきづき型護衛艦などはESSM終末誘導イルミネータを独自型としていますがイージス艦はやはりSPG-62を活用しています。

 アメリカのジェネラルダイナミクス社はイージス艦用Mk82ミサイル誘導装置とMk200誘導統制装置についてアメリカ国防総省と契約を結びました。これはSPG-62改型でジェネラルダイナミクス社子会社でありバーモント州ウィスリントンに本社を置くGDOTSジェネラルダイナミクスオーディナンスアンドタクティカルシステムズが開発しているもの。

 Mk82ミサイル誘導装置は後継型ではなく改良型であり、SPG-62イルミネータを元に新しくAS-34444アンテナアッセンブリを追加したもので、動力改良と直流永久磁石式高速パワードライブを装備し従来のイルミネータよりも素早くレーダービーム照準が可能になるとのこと。ジェネラルダイナミクス社は2025年11月までに改良開発を完了させる方針です。

 Mk99-GMFCSとして現在のイージス艦はスタンダードSM-2やセミアクティヴ誘導時のSM-6ミサイル及びESSMの終末誘導をターターシステムと同じSPG-62イルミネータにより実施しています。一時はAESAレーダー方式の新型イルミネータが開発されていましたが、終末段階の数秒のみ照射するにはSPG-62でも充分と判断され、改良が続いている。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ戦争-ロシア軍苦戦の背景はロシア軍怠慢とウクライナ軍の精強化相乗効果,危機は組織を変える

2022-04-11 07:02:49 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシア軍が弱いというよりもウクライナ軍の変革が上回っていたという視点が必要であり、ロシア軍脅威無しと日本が判断するのは早計、今回はこの視点です。

 ウクライナ軍が強いという部分もロシアによるウクライナ侵攻が手痛いしキエフ正面からは叩き返されたという現状と無関係ではありません。そして付け加えれば、2014年にロシアがウクライナよりクリミアを併合し東部二州への浸透攻撃を実施した時代は確かにウクライナ軍は弱かった、しかし危機がウクライナ軍を変えたのですね。軍は生まれ変わった。

 軍隊ってそう簡単に強化できるものなのか、こう思われるかもしれませんが日本がこのように主張しますと逆に世界には驚かれるのかもしれません、日露戦争までの数年間の日本の軍事力近代化は目を見張るものでしたし、ワシントン海軍軍縮条約後の日本の航空戦力強化はアメリカ太平洋艦隊を以前より脅かす水準となりました。危機感は組織を変えます。

 日本陸軍と比べるならば敗戦から僅か五年を経て創設された警察予備隊にしても、例えば兵站能力軽視からは大きな転換となり、しかも馬匹輸送はトラック輸送へ、小口径の対戦車砲は機械化された無反動砲となり、少し後に対戦車ミサイルへ転換、海空では戦闘機もジェット機が基本となり水上戦闘艦もレーダーは標準装備となりました。これも変化です。

 もっとも、変革を続けなければ苦労し国産開発した61式戦車の末裔など、また志はあっても実現しなかった機械化混成団の問題や、予算はない中でも努力して再整備した戦闘機などの防衛産業も、先人の努力を当事者、これは政治家も含むものですが、今ある立場は当たり前なのだと勘違いしていますと、気づけば瓦解しかねないと付け加えておきましょう。

 さてウクライナ軍、2014年の段階では今より帳簿上の戦車は多かった、それは旧ソ連軍が放置してゆきましたT-64戦車はもとよりT-55戦車など旧式装備がそのまま帳簿に掲載されていたためです、1991年を最後に整備を行っていない装備も多く、実質駆動系とエンジンと砲塔と動力系を、つまり完全な廃車で解体して新車にしなければ動かないものが多い。

 ウクライナ軍は先ず、どのように行えば限られた資材を防衛力に転換できるかを検証しました、東部二州では戦闘が継続されていましたので、OJTオンザジョブトレーニング方式で、再開した徴兵の兵士を短期間でも東部二州に派遣し、ものすごい数の"実戦を経験した予備役兵士"を育てています。旧式装備も少なくない数を排し動く少数の装備へ絞りました。

 作戦運用体系についてはゼロから再構築した、特にウクライナ軍は戦車を集中運用した場合には10kmあたり10門という、ロシア軍砲兵に無力化されることを学び、フィンランドのモッティ戦術のように分散運用を強化し、下士官を育て、将校を鍛えることで分散しているが攻勢など必要な際には迅速に集合するという、C4I化されている現代的軍隊とした。

 アメリカへは開戦前から訓練要員を派遣していて、いままさにスイッチブレード無人機の教育訓練を行っているとCNNなどが報じていますが、作戦立案や訓練管理などの手法を旧ソ連方式から相当改めている。また特殊部隊による遊撃戦も多用し、キエフ北方でのロシア軍車列100kmなどはまさに遊撃戦により輸送が途絶した結果という背景があるのです。

 それでは、これで勝てるのか、といいますと実際にはウクライナの予算と人口では、負けない軍隊、これが精一杯であり、勝てる軍隊、つまり機動打撃や航空優勢確保の能力までは実現しなかった、こう分析できるでしょう。いまウクライナ政府は勝つ為に、NATOはじめ各国へ防衛装備品の提供を呼びかけている、その背景には最後の一手の為なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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