週報:世界の防衛,最新10論点
今週は陸軍関連の10の論点を集めました。

スロベニア国防省は保有するT-55戦車の改造型であるM-55S戦車をウクライナへ提供します。スロベニア軍が保有するM-55S戦車は30両であり、今回その大半が提供される事となります。T-55戦車はその名の通り1950年代にソ連が開発した戦後第一世代の中戦車であり、主力戦車への転換期といえる戦車ですが徹底的な近代化改修を受けています。

M-55Sの改修には戦車の近代化改修で定評あるイスラエルのエルビット社が担当し、先ず主砲をソ連製100mm戦車砲からイギリスのL-7戦車砲、105mm口径へ換装、これにより新型砲弾が使用可能となり、相手がT-80主力戦車であっても正面装甲を貫徹可能となりました。また第一世代戦車であるT-55は鋳造方式の砲塔を採用していますが、改修される。

ラファエル社製スーパーブレイザー爆発反応装甲が砲塔正面から側面にかけてと車体部分に装着されT-55開発当時には無かった対戦車ミサイル多用の脅威下での運用能力を得ており、火器管制装置も新型のフォトナ火器管制装置に、重量は36tから40tに増大しましたがエンジン出力を520hpから600hpに強化していて、まさに別物といえる高性能です。
■ポーランド陸軍M-1導入準備
自衛隊の90式戦車もM-1A2-SEPv3戦車のように改修を重ねたいものですが大量生産故の改修のしやすさを考えますと先ずは数を揃える方が肝要だったか。

ポーランド陸軍はM-1エイブラムス戦車教育センターを開所しました、8月10日に開所されたポーランドビエドルスコのエイブラムス戦車教育センターの創立式典ではポーランドのマリウスバシュチャク国防相が駆け付け、訓示を行っています。ビエドルスコでは7月よりアメリカ陸軍によるポーランド軍戦車兵教育が行われていますが、その常設施設だ。

M-1A2-SEPv3戦車を導入するポーランド軍ですが、このSEPv3とは、システム強化プログラムバージョン3という意味を示し、単なる強力な戦車という水準には留まりません。ポーランド軍が導入するのは250両というまとまった数であり、最新型であるM-1A2-SEPv3は指揮統制とともに戦車戦だけを目的とせず戦域優位を獲得する装備です。

エイブラムス戦車はサウジアラビアやエジプトとクウェートなど中東地域に多数が有償供与された実績がありますが、最も過酷な戦場が予測されるのは高度な組織的戦闘能力を持つ相手を想定する欧州地域や北東アジア地域です、アメリカ陸軍計画局地上戦闘システム部はポーランドへ、戦車戦とともに敵戦闘基幹部隊と中枢を制圧する能力を教育します。
■SMASH2000L電子照準器
銃弾を無駄にしない為にはこうした照準装置により一発で数百m先の目標を確実に無力化するという選択肢がある。

アメリカ陸軍はスマートシューター社よりSMASH2000L小銃用電子照準器を取得します。スマートシューター社は電子照準器を開発するイスラエルの防衛企業で、世界の軍隊で最も普及している装備である小銃に装着することで、200m先の市販小型ドローンを、600m先の移動する敵歩兵を、狙撃手以外の小銃手が5.56mm弾で無力化できる装備です。

SMASH2000L小銃用電子照準器は四倍八倍切替照準眼鏡と火器管制装置を一体化したもので、照準すると人員や車両や陣地若しくは無人機等を自動識別すると共に目標までの距離を測距、最適な角度と未来位置を射手に伝えるもので、一般に撃墜が難しいとされる遠方の小型ドローンを小銃の3点射だけで撃墜する事が可能、費用は僅か990ドルという。
■ミサイルを混載する実験
一つの発射装置から様々なという発想はなにか海軍のMk.41-VLSを思い出すところです。

アメリカのレイセオンテクノロジーズ社はNASAMS地対空ミサイルシステムにAIM-9XとAMRAAM,AMRAAM-ERミサイルを混載する実験を行いました。AIM-9Xはサイドワインダーミサイルとして知られ赤外線誘導方式を採用する短射程ミサイルですがAMRAAM,AMRAAM-ERはアクティヴレーダー誘導方式の中射程ミサイルとなっている。

NASAMSの今回の実験は空軍研究所SDPE戦略開発研究実験室が協力して行われており、BC3バトルスペースコマンド&コントロールセンターというレイセオンが開発しアメリカ陸軍へ納入するシステムには、多種多様の射程を有するミサイルの統合運用が可能であるとされ、今回は三種類の射程を有するミサイルを脅威や射程に応じ複合運用した形です。

今回の試験では発射装置を共通化しています、これは戦闘機などでは発射架などは共通性を持つ事はある意味当然ですが、地対空ミサイルでは発射装置が統一でもコンテナの異なるペトリオットミサイルPAC-2とPAC-3など、共通化は果たされていません。こうした意味でも三種類のミサイルを一機種の発射装置に共通化できる事には意味があるのです。
■宇宙軍第1宇宙旅団
トランプ政権時代に肝いりで創設された宇宙軍ですが現実としてはまず手さぐりというところが続いているよう。

アメリカ宇宙軍第1宇宙旅団は陸軍からのペトリオットミサイル移管を更に加速させる検討を進めています。宇宙ミサイル防衛司令部のダニエルカーブラー中将が述べました。アメリカ宇宙軍はミサイル防衛関連の情報も包括する陸軍の衛星作戦旅団を隷下に管理替えしており、宇宙軍では衛星情報を陸軍のペトリオットミサイルに活用させる方針です。

統合防空ミサイル防衛に際して宇宙軍ではペトリオットミサイル大隊とともにエアバスが開発したゼファー高高度無人機にも関心を寄せており、これは高高度を滞空しつつ必要な動力を太陽光発電により得るという、人工衛星並みの滞空時間を有しています。これは即座の情報収集に寄与するものの、航空機とミサイルの運用に重複が生じる懸念もあります。
■MRIC迎撃システム
アイアンドームです。

アメリカ海兵隊はMRIC中距離迎撃能力システムの発射試験を実施しました。MRIC中距離迎撃能力システムはアメリカ海兵隊が進めるフォースデザイン2030将来改編への重要な一歩とされ、試験は2022 年6月30日にニューメキシコ州のホワイトサンズミサイル試験場において実施され、複数の巡航ミサイル型模擬目標に対して迎撃に成功したとのこと。

MRIC中距離迎撃能力システムはイスラエル製アイアンドームミサイル防衛システムとAN/TPS-80多機能レーダーを統合化したもので、レイセオンミサイル&ディフェンス社とイスラエルのラファエルアドヴァンスドディフェンスシステムズ社が共同開発したもので、従来アメリカが重視してきた巡航ミサイルを逆に相手が用いた場合に備える防空装備です。

フォースデザイン2030においてアメリカ海兵隊は、島嶼部における沿岸砲兵、これは水陸両用部隊に改編される前の1940年代における主任務ですが、この回帰により太平洋島嶼部での大陸からの脅威に対抗する編成への改編を目指しており、従来は海軍のイージス艦や空母航空団、空軍に依存していた制空権の確保をミサイルにより担う事を目指しています。
■ファルディエ全地形車
空挺団も落下傘から降着した後は徒歩のみという状況からはそろそろ脱却しなければなりません。

フランス陸軍は空挺部隊用UNACファルディエ軽全地形車輛180両の増強を決定しました。これは8月30日に発表された国防計画法修正により、現在調達中の300両に加えて増強されるもので、契約金額は4400万ユーロの規模となっていて、調達計画には車体そのものにくわえて10年間の維持整備契約やトレーラ装置100両等も含まれているとのこと。

ファルディエ軽全地形車輛はUNAC 社が製造、空虚重量1.89t、全長2.6mと全幅1.95mで全高は2.15mとなっていて、V-22オスプレイのキャビンは最大幅1.8mと全高1.83mであり、V-22には収容できないもののC-130輸送機やCH-47輸送ヘリコプターで空輸可能、また機内は入りませんがNH-90多用途ヘリコプターでの吊下げ空輸が可能となっています。

空挺部隊用であるファルディエ軽全地形車輛、キャタピラー社製60hpのディーゼルエンジンを搭載しており、車体は小型ながら900kgの積載能力と400kgのトレーラ牽引能力があり120mm迫撃砲を牽引可能です。極限まで切り詰められた車体には2名の座席があるのみですが、車体後部やトレーラ部分などに空挺兵を最大13名、詰め込む事も可能です。
■ムスタS自走榴弾砲
ロシアにまだ生産する事が出来たとはという話題ですが続報が無いのですよね。

ロシア軍は最新の2S19M1ムスタS自走榴弾砲を受領しました、これはウラルトランスマシュ社からの納入を9月に入り発表したもので、車両そのものの性能よりもウクライナ侵攻に伴う経済制裁下での最新の火砲を国内製造する能力が残っている事を誇示する目的と考えられます、ロシアは現在半導体輸出規制により新造も修理も停滞下にあるとされる。

2S19M1ムスタS自走榴弾砲はムスタシリーズの最新型で自動装填装置と共にASUNO自動射撃統制装置を搭載し、従来の手動による標定よりも射撃準備に要する時間を25%程度短縮できるとされています。搭載する152mm砲の最大射程は29km、これは欧米の標準的な39口径155mm榴弾砲に若干劣りますが、クラスノポール誘導砲弾も射撃が可能です。
■300kwレーザー砲
レーザー砲は有人航空機に使用する場合の特定通常兵器使用禁止条約に手食しないかと云うのはもう少し議論されるべきとおもう。

アメリカ国防総省OUSD-R&E次官補技術研究室はロッキードマーティン社より新型の300kwのレーザー砲を取得します。この300kwという出力はこれまでに製造されたIFPC-HEL高出力レーザーとしては最大の出力という。レーザー砲は従来の弾薬等と比較しエネルギーさえ確保するならば消耗無く照射できるゲームチェンジャー的な新技術です。

HELS高エネルギーレーザースケーリングイニシアチブ構想として進められる300kwIFPC-HEL高出力レーザーは、ロッキードマーティン社によれば車載機動式であり、オシュコシ社製10輪輸送車両に搭載する自己完結型の装備となる計画です。レーザー自体は40年前から対空用等が開発されていますが、この10年間は実用装備へと進んでいます。
■ボクサー装輪装甲車
ボクサー装輪装甲車はやはり高すぎるのでしょうかそれとも別の理由があるのでしょうか。

スロベニア国防省はボクサー装輪装甲車調達計画を中止する決定を下しました。スロベニア政府は2021年にドイツ製ボクサー装輪装甲車45両を3億4300万ドルにて調達する決定を示しており、この調達を撤回した上で別の装輪装甲車を調達するものとしています。スロベニア軍は2027年までに機械化大隊戦闘群を新編、2030年にもう一つを編成します。

ボクサー装輪装甲車調達計画を中止した背景には、NATO標準型の機械化大隊戦闘群を編成した場合、歩兵用に加えて火力支援用などの装甲車が必要となり、ボクサー装輪装甲車45両に加え更に支援用に24両を追加する必要が生じます、これはスロベニアの国防費では負担が大き過ぎ、より効率的な装輪装甲車を選定し、充分な数量だけ調達する方針です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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今週は陸軍関連の10の論点を集めました。

スロベニア国防省は保有するT-55戦車の改造型であるM-55S戦車をウクライナへ提供します。スロベニア軍が保有するM-55S戦車は30両であり、今回その大半が提供される事となります。T-55戦車はその名の通り1950年代にソ連が開発した戦後第一世代の中戦車であり、主力戦車への転換期といえる戦車ですが徹底的な近代化改修を受けています。

M-55Sの改修には戦車の近代化改修で定評あるイスラエルのエルビット社が担当し、先ず主砲をソ連製100mm戦車砲からイギリスのL-7戦車砲、105mm口径へ換装、これにより新型砲弾が使用可能となり、相手がT-80主力戦車であっても正面装甲を貫徹可能となりました。また第一世代戦車であるT-55は鋳造方式の砲塔を採用していますが、改修される。

ラファエル社製スーパーブレイザー爆発反応装甲が砲塔正面から側面にかけてと車体部分に装着されT-55開発当時には無かった対戦車ミサイル多用の脅威下での運用能力を得ており、火器管制装置も新型のフォトナ火器管制装置に、重量は36tから40tに増大しましたがエンジン出力を520hpから600hpに強化していて、まさに別物といえる高性能です。
■ポーランド陸軍M-1導入準備
自衛隊の90式戦車もM-1A2-SEPv3戦車のように改修を重ねたいものですが大量生産故の改修のしやすさを考えますと先ずは数を揃える方が肝要だったか。

ポーランド陸軍はM-1エイブラムス戦車教育センターを開所しました、8月10日に開所されたポーランドビエドルスコのエイブラムス戦車教育センターの創立式典ではポーランドのマリウスバシュチャク国防相が駆け付け、訓示を行っています。ビエドルスコでは7月よりアメリカ陸軍によるポーランド軍戦車兵教育が行われていますが、その常設施設だ。

M-1A2-SEPv3戦車を導入するポーランド軍ですが、このSEPv3とは、システム強化プログラムバージョン3という意味を示し、単なる強力な戦車という水準には留まりません。ポーランド軍が導入するのは250両というまとまった数であり、最新型であるM-1A2-SEPv3は指揮統制とともに戦車戦だけを目的とせず戦域優位を獲得する装備です。

エイブラムス戦車はサウジアラビアやエジプトとクウェートなど中東地域に多数が有償供与された実績がありますが、最も過酷な戦場が予測されるのは高度な組織的戦闘能力を持つ相手を想定する欧州地域や北東アジア地域です、アメリカ陸軍計画局地上戦闘システム部はポーランドへ、戦車戦とともに敵戦闘基幹部隊と中枢を制圧する能力を教育します。
■SMASH2000L電子照準器
銃弾を無駄にしない為にはこうした照準装置により一発で数百m先の目標を確実に無力化するという選択肢がある。

アメリカ陸軍はスマートシューター社よりSMASH2000L小銃用電子照準器を取得します。スマートシューター社は電子照準器を開発するイスラエルの防衛企業で、世界の軍隊で最も普及している装備である小銃に装着することで、200m先の市販小型ドローンを、600m先の移動する敵歩兵を、狙撃手以外の小銃手が5.56mm弾で無力化できる装備です。

SMASH2000L小銃用電子照準器は四倍八倍切替照準眼鏡と火器管制装置を一体化したもので、照準すると人員や車両や陣地若しくは無人機等を自動識別すると共に目標までの距離を測距、最適な角度と未来位置を射手に伝えるもので、一般に撃墜が難しいとされる遠方の小型ドローンを小銃の3点射だけで撃墜する事が可能、費用は僅か990ドルという。
■ミサイルを混載する実験
一つの発射装置から様々なという発想はなにか海軍のMk.41-VLSを思い出すところです。

アメリカのレイセオンテクノロジーズ社はNASAMS地対空ミサイルシステムにAIM-9XとAMRAAM,AMRAAM-ERミサイルを混載する実験を行いました。AIM-9Xはサイドワインダーミサイルとして知られ赤外線誘導方式を採用する短射程ミサイルですがAMRAAM,AMRAAM-ERはアクティヴレーダー誘導方式の中射程ミサイルとなっている。

NASAMSの今回の実験は空軍研究所SDPE戦略開発研究実験室が協力して行われており、BC3バトルスペースコマンド&コントロールセンターというレイセオンが開発しアメリカ陸軍へ納入するシステムには、多種多様の射程を有するミサイルの統合運用が可能であるとされ、今回は三種類の射程を有するミサイルを脅威や射程に応じ複合運用した形です。

今回の試験では発射装置を共通化しています、これは戦闘機などでは発射架などは共通性を持つ事はある意味当然ですが、地対空ミサイルでは発射装置が統一でもコンテナの異なるペトリオットミサイルPAC-2とPAC-3など、共通化は果たされていません。こうした意味でも三種類のミサイルを一機種の発射装置に共通化できる事には意味があるのです。
■宇宙軍第1宇宙旅団
トランプ政権時代に肝いりで創設された宇宙軍ですが現実としてはまず手さぐりというところが続いているよう。

アメリカ宇宙軍第1宇宙旅団は陸軍からのペトリオットミサイル移管を更に加速させる検討を進めています。宇宙ミサイル防衛司令部のダニエルカーブラー中将が述べました。アメリカ宇宙軍はミサイル防衛関連の情報も包括する陸軍の衛星作戦旅団を隷下に管理替えしており、宇宙軍では衛星情報を陸軍のペトリオットミサイルに活用させる方針です。

統合防空ミサイル防衛に際して宇宙軍ではペトリオットミサイル大隊とともにエアバスが開発したゼファー高高度無人機にも関心を寄せており、これは高高度を滞空しつつ必要な動力を太陽光発電により得るという、人工衛星並みの滞空時間を有しています。これは即座の情報収集に寄与するものの、航空機とミサイルの運用に重複が生じる懸念もあります。
■MRIC迎撃システム
アイアンドームです。

アメリカ海兵隊はMRIC中距離迎撃能力システムの発射試験を実施しました。MRIC中距離迎撃能力システムはアメリカ海兵隊が進めるフォースデザイン2030将来改編への重要な一歩とされ、試験は2022 年6月30日にニューメキシコ州のホワイトサンズミサイル試験場において実施され、複数の巡航ミサイル型模擬目標に対して迎撃に成功したとのこと。

MRIC中距離迎撃能力システムはイスラエル製アイアンドームミサイル防衛システムとAN/TPS-80多機能レーダーを統合化したもので、レイセオンミサイル&ディフェンス社とイスラエルのラファエルアドヴァンスドディフェンスシステムズ社が共同開発したもので、従来アメリカが重視してきた巡航ミサイルを逆に相手が用いた場合に備える防空装備です。

フォースデザイン2030においてアメリカ海兵隊は、島嶼部における沿岸砲兵、これは水陸両用部隊に改編される前の1940年代における主任務ですが、この回帰により太平洋島嶼部での大陸からの脅威に対抗する編成への改編を目指しており、従来は海軍のイージス艦や空母航空団、空軍に依存していた制空権の確保をミサイルにより担う事を目指しています。
■ファルディエ全地形車
空挺団も落下傘から降着した後は徒歩のみという状況からはそろそろ脱却しなければなりません。

フランス陸軍は空挺部隊用UNACファルディエ軽全地形車輛180両の増強を決定しました。これは8月30日に発表された国防計画法修正により、現在調達中の300両に加えて増強されるもので、契約金額は4400万ユーロの規模となっていて、調達計画には車体そのものにくわえて10年間の維持整備契約やトレーラ装置100両等も含まれているとのこと。

ファルディエ軽全地形車輛はUNAC 社が製造、空虚重量1.89t、全長2.6mと全幅1.95mで全高は2.15mとなっていて、V-22オスプレイのキャビンは最大幅1.8mと全高1.83mであり、V-22には収容できないもののC-130輸送機やCH-47輸送ヘリコプターで空輸可能、また機内は入りませんがNH-90多用途ヘリコプターでの吊下げ空輸が可能となっています。

空挺部隊用であるファルディエ軽全地形車輛、キャタピラー社製60hpのディーゼルエンジンを搭載しており、車体は小型ながら900kgの積載能力と400kgのトレーラ牽引能力があり120mm迫撃砲を牽引可能です。極限まで切り詰められた車体には2名の座席があるのみですが、車体後部やトレーラ部分などに空挺兵を最大13名、詰め込む事も可能です。
■ムスタS自走榴弾砲
ロシアにまだ生産する事が出来たとはという話題ですが続報が無いのですよね。

ロシア軍は最新の2S19M1ムスタS自走榴弾砲を受領しました、これはウラルトランスマシュ社からの納入を9月に入り発表したもので、車両そのものの性能よりもウクライナ侵攻に伴う経済制裁下での最新の火砲を国内製造する能力が残っている事を誇示する目的と考えられます、ロシアは現在半導体輸出規制により新造も修理も停滞下にあるとされる。

2S19M1ムスタS自走榴弾砲はムスタシリーズの最新型で自動装填装置と共にASUNO自動射撃統制装置を搭載し、従来の手動による標定よりも射撃準備に要する時間を25%程度短縮できるとされています。搭載する152mm砲の最大射程は29km、これは欧米の標準的な39口径155mm榴弾砲に若干劣りますが、クラスノポール誘導砲弾も射撃が可能です。
■300kwレーザー砲
レーザー砲は有人航空機に使用する場合の特定通常兵器使用禁止条約に手食しないかと云うのはもう少し議論されるべきとおもう。

アメリカ国防総省OUSD-R&E次官補技術研究室はロッキードマーティン社より新型の300kwのレーザー砲を取得します。この300kwという出力はこれまでに製造されたIFPC-HEL高出力レーザーとしては最大の出力という。レーザー砲は従来の弾薬等と比較しエネルギーさえ確保するならば消耗無く照射できるゲームチェンジャー的な新技術です。

HELS高エネルギーレーザースケーリングイニシアチブ構想として進められる300kwIFPC-HEL高出力レーザーは、ロッキードマーティン社によれば車載機動式であり、オシュコシ社製10輪輸送車両に搭載する自己完結型の装備となる計画です。レーザー自体は40年前から対空用等が開発されていますが、この10年間は実用装備へと進んでいます。
■ボクサー装輪装甲車
ボクサー装輪装甲車はやはり高すぎるのでしょうかそれとも別の理由があるのでしょうか。

スロベニア国防省はボクサー装輪装甲車調達計画を中止する決定を下しました。スロベニア政府は2021年にドイツ製ボクサー装輪装甲車45両を3億4300万ドルにて調達する決定を示しており、この調達を撤回した上で別の装輪装甲車を調達するものとしています。スロベニア軍は2027年までに機械化大隊戦闘群を新編、2030年にもう一つを編成します。

ボクサー装輪装甲車調達計画を中止した背景には、NATO標準型の機械化大隊戦闘群を編成した場合、歩兵用に加えて火力支援用などの装甲車が必要となり、ボクサー装輪装甲車45両に加え更に支援用に24両を追加する必要が生じます、これはスロベニアの国防費では負担が大き過ぎ、より効率的な装輪装甲車を選定し、充分な数量だけ調達する方針です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)