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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナは何故レオパルド2を必要とするのか?冷戦時代ドイツが生んだロシアさえ欲しがった西側主力戦車

2023-01-21 20:23:58 | 防衛・安全保障
■ドイツ政府は供与否定的
 日本人ならば90式と10式が最強と信じるのですが、ドイツのラムシュタインにおいて行われたウクライナ支援国会合、ドイツ政府は期待されたレオパルド2の供与について否定的姿勢を崩しませんでした。

 レオパルド2主力戦車について、ウクライナが供与を切望する背景には使いやすさがあります、使いやすさというのはもちろん戦車そのものの性能諸元もあるのですけれども、性能に出てこない、初めて乗換える戦車兵でも乗れるのか、初めて整備する整備兵が扱えるのか、整備する際や弾薬を用いる場合に予備の備蓄は充分あるのか、が重要なのです。

 ルクレルク戦車のような自動装填装置とシステム化された砲塔システムは採用されていません、ドイツではレオパルド2の砲塔システム基本設計の古さから改良にも限界があるとして、EMBT欧州共通戦車構想にはレオパルド2の車体にルクレルク戦車砲塔を載せるモックアップが作られた、しかしルクレルクは量産数が少なくエンジン信頼性に難点がある。

 チャレンジャー2戦車のような砲塔部分の重厚な防御力はありません、しかしチャレンジャー戦車の車体部分は更に古いチーフテン戦車の設計を改良したものであり2004年には車体部分の複合装甲継ぎ目部分がRPGにより破壊されています、この点レオパルド2は現行型が全体的に高い防御力があり、チャレンジャーのような重装甲による機動力低下がない。

 アリエテ主力戦車ほど設計は新しくありません、しかし改修が何度も行われ、初期型の垂直形状の装甲からA5型の楔形装甲はミサイルへの防御力を高め、A6型からは砲身を延伸させ主砲の初速を向上させ、A7型では市街戦に対応させる防御力と索敵能力を強化しています、つまり全面的な改良により第一線での能力を維持しているのがレオパルド2という。

 エイブラムス戦車と比較した場合、劣化ウラン装甲と絶え間ない近代化改修を行うなど恐らく世界最強は改良型のエイブラムス戦車のA2-SEP3Aでしょう。しかし加速力に重点を置きガスタービンエンジンを採用したエイブラムスは1500ℓの燃料を数時間で使い果たすほど燃費が悪く、アメリカ軍の兵站支援があって初めて全力を発揮できるのが難点です。

 10式戦車、個人的にはこの機動力の高さを垣間見ると共に、こちらはシステム化された戦車でありシステムアップデートにより能力向上を断続的に行える戦車ですし、車体設計が根本から新しい戦車ですので、特にその高い性能を何度も見ていますと、これこそ最強と考える一方、肝心の数が揃っておらず、なにより日本からの供与は現実的ではありません。

 K-2戦車、レオパルド2に使いやすさの面で対抗できるのはこの戦車くらいでしょうか、特に輸出仕様のものは能力向上が進められており、何よりも採用国の兵站システムに適合するようエンジンや変速機を自由に選べる利点とライセンス生産を許可する姿勢からポーランドは大量採用を決定しましたし、ノルウェー次期戦車をレオパルド2と競っています。

 ただ、現実的に輸出が可能かといいますと現代ロテムの生産は現在限界となっていますし、ポーランドは導入を決定しライセンス生産を準備していますが生産開始はまだ先です。ただ、ポーランドが保有するレオパルド2をウクライナへ供与する方向で調整する背景には、K-2戦車を導入する事により現在のレオパルド2が余剰になる、こうした背景が存在する。

 レオパルド2戦車の重要な点は西ドイツが1970年代に設計したという点で、東西冷戦時代に徴兵制を施行していた西ドイツでは、レオパルド2戦車には徴兵された戦車兵が短時間で慣熟できる操作性と整備性を求めています、だからこそウクライナへ供与された場合でも短時間で慣熟できる、ウクライナには訓練された戦車兵が多数居り、乗換が容易なのだ。

 ウクライナの第一線では戦車の不足が深刻です、例えばエイブラムス戦車でなくとも旧式のM-60A3戦車でも、また稼働状態のものが有れば1960年代設計のレオパルト1戦車でも充分に役立つと考えるのですが、第三世代戦車として動かす事が出来るレオパルド2が供与されるならば、ロシアの保有するT-90戦車では対抗できるのかが非常に危ういのですね。

 T-90戦車はT-72戦車を改良したものです、元々はT-72の名で売られていたのですが1991年の湾岸戦争で西側の第三世代戦車に完敗し、T-72戦車が1000両以上撃破されるもエイブラムス戦車の破壊は数両に留まった、これほどの苦い歴史がある。乗り手が素人ならば玄人のT-90でも対抗出来ましょうが、ウクライナの戦車兵は歴戦の実力を備えています。

 ロシアさえも欲しがったレオパルド2主力戦車、実は過去ロシアも新型戦車の開発に失敗し続けた時代に中古のレオパルド2輸入を模索していました、それほどに有力な装備です。驚かれるかもしれませんが、2007年のNATOとの緊張増大が始まる前には、ロシアはレオパルド2中古車やイタリアからチェンタウロ装甲偵察車のライセンス生産を模索していました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌-名古屋,名駅と名古屋城の狭間に佇む"とんやき"の店内は広々としていた

2023-01-21 14:15:09 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 はるなさん自由気ままな散策の先で円頓寺商店街というと知っている街の知らない街並みに迷い込んでしまいました。

 名古屋に所用がありまして、少し時間が出来ましたので問屋町のあたりを散策していますと、ちょっと早い時間帯ですけれども、いやだからこそ混雑していない時間帯なのだ、と気づくところがありました。すると、名古屋のこんなところに商店街があったのか、と気づかされる。

 城郭の街、尾張名古屋は城で保つ、こう称されるのは江戸時代の話なのですけれども、いまでも名古屋城はそうだいな規模を有している、その名古屋城から名古屋駅の中間あたり、という場所といえば、わかりそうでしかしみなさん地下鉄で移動するからわかりにくいでしょうか。

 とん焼きのお店はそんなところに佇んでいた。そう名古屋といえば大阪に次ぐ日本第三の巨大都市、ですから街は広々とそして個性にあふれているのですね。京都などは大阪と神戸で三都物語ともいわれるところですが、名古屋岐阜津となると、名古屋が突き抜けて大都市です。

 上野屋、かっこいい響きのとん焼き屋さんですが、こういうお店は賑やかで混雑しているという印象からコロナの時代には敬遠していたのです、けれどもそれは時間帯というものなのでしょうね、感染リスクを受け入れてみんなと騒ぐのか、美味しいものが目的なのか、という。

 織田信長の清洲を江戸時代に引っ越させたことで誕生した巨大都市、その際に寺院社殿もかなりの数を引っ越させたといいますが、この商店街は昔の寺町といいますか、寺院の参道を継承したという。さすがに時間も時間ですので拝観は断念しましたが、その成り立ち興味深い。

 焼き鳥。そう、古くは帝政ローマ時代から継承される人類で最も古い店舗形式の商売の一つというのですが、暖簾をくぐり、まずはビール、トリアエズナマ、というのは、イーティーシーカードガソウニュウサレテイマセンと並ぶ日本初の世界語、後者は中古車とともに広まった。

 ひとけの無い店内、なにしろ日の落ちるのは早いですが、時間帯はまだ宵の口という頃合いですので、ビールを片手に、さてなにをいただこうかと熟考します、しかし時間はない、そういうのも焼き鳥というのは焼くのに案外またされますから、瞬間判断でまず第一陣をたのむ。

 G3Xで撮影しましたが、このカメラは蛍光灯とLEDの光が苦手だ、ホワイトバランスがどうしてもうまく行かない、ただ手元にあるカメラはG3Xだけでしたので、撮影します、実物はこの何倍も美味しそうなものなのですが、撮ってから食べると、なおのことこれは美味しい。

 焼き手の大将も手慣れたものでして、早く焼けるものとじっくり焼き上げるものを吟味して、五月雨式に皿に載せて湯気の熱々気分とともに並べてくれます、ふうふう熱さとともにかじってかんで食べた分だけ次を注文して行きますと、このまま晩酌は軌道に乗って行く。

 みそかつ、かあ。コロナ前は定期的に名古屋で頂いていました、みそかつ、食べようと思えば日本中で食べられるのですが、味噌に大根下ろしを混ぜているとんでもない店に田舎で遭遇しまして気分悪くなったこともあり、名古屋で食べるまで我慢しよう、と決心したものだ。

 八丁味噌は名古屋ではなくおなじ愛知県でも岡崎市が発祥の地なのですが、料理法は名古屋でも慣れたものです、甘みのある味噌、調味料でも味噌はしおからいというものではなく、このみそかつの味噌は甘みが豚肉の脂身とほどよく調和しているのですね、そしてよく絡む。

 串カツのみそかつ、カツのころもの部分はその通り、味噌をよくなじませるための料理法といえるものでして、これも悩むのですよ、何本にするか。無邪気な昔はもう数で圧していましたが、考えると何本も注文すると後の方は食べるときには冷めてしまう、それは興ざめだ。

 レモンサワー、きんきんに冷やした自家製というのが売りというのだから、これも頂くことにしましょう、すると、うまい、いや店の外に出ればきんきんの寒さなのですが、それでも真冬の寒いさなかに暖かい場所できんきんに冷やしたレモンサワー、これはたまりませんね。

 カウンターでひろびろとした店内、時間が良かったという背景もあるのですが混雑していません、するとゆっくりいただける、いやたしなめます。嗜むというのは、食べるとは別物、食べるという行為が生存に直結しているのに対して、こちらはこころの余裕なのだと思う。

 とんやき、このあたりではこのお店から始まったということですが、かなり大きなお店、混雑してきましたので、素早く切り上げることとします。聞けば名古屋駅はもうすぐ、タクシーを拾うまでもないという。晩酌にちょっと寄り道、こういう日常の香辛料は大切にしたい。

 上野屋さん、この響きで思い出すのは東京の上野駅かいわいだったりするのですが、あの賑やかな場所で友人知人とわいわいやるのはもう少し先になりそう、しかしそんな中で賑わい騒ぎよりも、落ち着きお酒と肴を楽しみ嗜む、こうした日常というのも、個人的には好きなのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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レオパルド2主力戦車ウクライナ供与は実現するか?ロシア軍撃退へドイツ製第三世代戦車が求められる背景

2023-01-21 07:00:07 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 レオパルド2主力戦車は90式戦車が登場した当時に砲塔が良く似ていると云われていましたので今回も代役で写真を載せます、ね。

 ウクライナへの防衛装備品援助について、現在最大の関心となっているのはドイツ製レオパルド2主力戦車の供与です。冷戦後は東欧のNATO加盟国にも供与され、欧州では広く運用されています。開発国ドイツでは生産数の一割以下しか稼働状態にはありませんが、欧州全体で幅広く運用基盤が有り、ウクライナへ供与されれば戦況を変え得る装備という。

 レオパルド2供与が何故ここまで争点となるのか、それはレオパルド2が“使いやすさ”に特化した“第三世代戦車”である点に収斂すると云えます。レオパルド2、試作車は1979年に完成していますので、基本設計はそれ程新しい戦車ではありません。しかし改良が積み重ねられていますし、何より大量生産され、運用基盤が整っている点が重要なのです。

 第三世代戦車、これは第二次世界大戦後の三世代目の戦車なのですが、特色は幾つかの技術革新が有ります、一つはセラミックと特殊金属を組み合わせた複合装甲技術の開発です、それまでは1960年代以降脅威となっていた対戦車ミサイルの直撃から防護するには鋼鈑換算1000mmの装甲が必要で、そんなものを採用すると重量が100tを超えてしまいました。

 複合装甲の採用により、鋼鈑換算1000mm相当の装甲厚を軽量に両立できるようになりまして、50tから60t程度の、まあ橋梁を通過するにも泥濘地を踏破するにも現実的な重さと出来た、一般論として1センチ平方1kgを超える設置圧では車体が地面にめり込んでしまいますので、地面に沈まないが命中に耐えられる重装甲というものを実現したのです。

 高出力ディーゼルエンジンの開発、第二世代の戦車までは攻撃力機動力防御力、この三要素の内の二つまでしか満たせませんでした、防御力を充分とれば機動力が下がり機動力を重視すると防御力が機関砲弾に耐える程度となる、これを複合装甲が防御力を高め、新開発の1500hpエンジンが戦車に搭載できる程度まで小型化され、世代交代が実現しました。

 戦車砲弾が命中しますと、T-72戦車や改良型のT-90戦車というソ連設計の、つまりロシア軍とウクライナ軍が現在戦場に投入している戦車は、運よく砲塔などに掠って直撃を免れた場合を除き爆発します、T-72戦車は砲弾の配置が誘爆しやすい位置に置かれている為に砲塔が吹き飛び全損する、しかし第三世代戦車は命中しても耐えうる装甲があるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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