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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

レオパルド2とM-1エイブラムスのウクライナ供与決定,レオパルドショック?ロシアは何故レオパルドを恐れるか

2023-01-26 20:08:24 | 先端軍事テクノロジー
■T-14アルマータ開発遅延
 レオパルドショック、となるのか。日本の視点としては90式戦車も10式戦車も凄いと強調したいのですが生産数が十倍も違う為に使いやすさの点は比較になりません。

 ロシアはウクライナへのドイツからのレオパルド2供与に対して、極めて大きな警戒感があるようです。それには、ロシアにはT-90戦車やT-80U戦車といったレオパルド2戦車と同世代の戦車は開発されているものの、これらの性能がレオパルド2に対抗できるかが非常に怪しく、なによりロシアが新型戦車開発に難航する現実がある点が特に重大です。

 M-1エイブラムスの供与もアメリカのバイデン大統領が決断しました、当面は31両を供与する方針ですが、アメリカにはデポに保管されているM-1A2戦車が相当数あり、実際問題総生産数ではレオパルド2の倍以上のM-1戦車が量産されています。装甲防御力もシステム改良でもレオパルド2よりも進んでおり、唯一問題は燃費が世界一悪い点でしょうか。

 レオパルド2のドイツ政府供与表明は数量にしたならばそれ程多数ではありませんが、レオパルド2A7が最新型である一方、友好国に供与したレオパルド2A4のウクライナ供与についてもドイツ政府は了承する方針です。ポーランドなどは2010年代の新世代戦車である韓国のK-2戦車を導入する為に、レオパルド2については供与する余裕がでてきています。

 ティーガー戦車とパンター戦車が第二次大戦の戦場に出現する様なもの、若しくはM-26パットンとセンチュリオン戦車が突如戦場に展開する様なもの、戦車は象徴的な装備であり核兵器などの戦略的な兵器とは異なるとの反論があるのかもしれませんが、戦車砲弾が命中しても側面後半部や後部以外は貫徹できないという戦車が突如相手側に現れるのです。

T-14アルマータ戦車、ロシアも新世代戦車を開発しようと努力していまして、巨大な戦車砲を備えたチョーヌルイオリヨール/ブラックイーグル戦車やT-95戦車などを試作はしたのですが、技術不足と予算不足が重なり結局T-72戦車をT-72B3へ近代化歌集するなど、御茶を濁す程度に留まりました、漸くシリア内戦の経験を反映させT-14を開発している。

 2014年には完成しているT-14なのですが、無人砲塔を採用し人員は車内の装甲カプセルに乗車という、この時点で日本の10式戦車は旧式と一部で揶揄された程の新型戦車ですが、無人砲塔で周辺の状況を把握できるのかなど、技術的な懸念があり、パレード以外登場しません。実際試験が難航している、現場にはT-72戦車しかない、それがロシアの現状です。

 T-72戦車、ロシア軍のT-90戦車はT-72戦車の改良型ですが、このT-72戦車というものが1991年の湾岸戦争において西側の戦車に一方的に破壊され、損耗は1000両を越え、対してアメリカの戦車は数両が撃破されただけ、という能力差を突き付けられた、その後、レオパルド2などは改良が重ねられるもT-72の改良は限定的である、そんな現実がある。

 T-72戦車は冷戦時代のソ連により開発され、東ドイツやポーランドやチェコスロバキアなどに大量供与されました、実は1991年湾岸戦争においてイラクへ輸出されていた戦車がスペックダウンされていた廉価版である事が後に判明していますが、東ドイツ軍の車両はソ連軍と同水準のもので、性能を徹底検証した結果、その水準の限界が判明しているのです。

 戦車だけで戦争の趨勢が決まるという様な甘い話ではないのですが、レオパルド2に戦車戦で対抗できるロシア軍の戦車は、いまのところ負けないと云えるのがT-14戦車、それも実戦での性能が未知数である為に負けると断言できない、という水準のものですので、仮に戦場にレオパルド2が大量投入された場合、前線にて恐慌状態が懸念されるのですね。

 T-14アルマータ戦車、この新型戦車が例えば実戦投入され、一部で評価されるような性能を発揮できれば別ですが、ロシアの計画ではそろそろ300両揃っていると2010年代の発表では示されているものの全く出てきません。ただ、レオパルド2戦車に対するロシア側の評価は、過去にロシア軍自身が欲しがったという一点において説明できるところでしょう。

 恐慌状態、もちろんレオパルド2とて神様ではありませんので適切に部隊として運用する事に意味があります、そして戦車は近接戦闘に用いる装備、この為に例えば砲兵火力の集中運用や航空打撃を有効に展開する事で撃破する事は不可能ではないのですが、前線部隊の士気には影響が考えられます、それは半年前、HIMARSが供与された際の様に、です。

 HIMARS,このGPSにより精密誘導されるGMLRSロケット弾による80kmの彼方からの精密攻撃はロシア軍に恐慌状態を引き起し、BM-21のようなロケット弾攻撃でさえHIMARSの攻撃と誤認し潰走する状況もありました。ロシア軍のT-72戦車やT-90戦車でも主砲発射ミサイルや900m以下の射撃で撃破の可能性はありますが、なにか九七式中戦車でM-4と戦った方々の苦労を視るようです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシア海軍フリゲイトアドミラルゴルシコフ-ツイルコン極超音速兵器試験実施,ウクライナ支援のNATOへ牽制か

2023-01-26 07:00:57 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-ロシア軍動静
 ロシア軍艦が次に日本を親善訪問できるのは当面は無理であり相当先になるのでしょうね。

 ロシア海軍のフリゲイトアドミラルゴルシコフは大西洋上においてツイルコン極超音速兵器のシステムテストを実施した、ロシア国防省が発表しました。アドミラルゴルシコフといいますと、一般にはロシア海軍唯一の航空母艦を思い出される方も多いでしょうが、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦の後継として現在ロシアが量産を進めている艦型でもある。

 アドミラルゴルシコフのシステムテストは25日に発表されています、ただ今回はシステム試験であるとのことで、ツイルコンミサイル自体の発射試験についてはロシア国防省は言及していません。ミサイルの発射能力自体は2022年5月28日に同じアドミラルゴルシコフがバレンツ海において発射実験を実施し、1000km先の目標に命中したとされています。

 ドイツ政府がウクライナへのレオパルド2主力戦車の提供を決定した25日、同じくアメリカがドイツに先行してM-1エイブラムス主力戦車のウクライナ供与方針を示しており、純粋な第三世代戦車が初めてウクライナへ供与されるという状況に際して、敢えてロシア国防省がこうした実験の実施を発表した事は、ある種NATOへの牽制を含んだものでしょう。

 極超音速兵器ツイルコン、ロシアと中国は従来の弾道ミサイル防衛システムや戦域防空システムを突破する新しい装備として、超音速兵器以上の高い速度を持つ装備の開発を進めており、ツイルコンは射程900km程度、ただ、弾道ミサイルをおきかえうる極超音速滑空兵器のような次世代兵器ではなく、極超音速巡航能力を持つ巡航ミサイルとなっています。

 アドミラルゴルシコフ級フリゲイトは2018年より竣工が始まった最新型で、1991年のソ連崩壊以降の経済崩壊によりロシア海軍は長年新型艦の建造費を捻出できず、小型艦艇の整備に終始してきました。主力はいずれも1980年代のソブレメンヌイ級駆逐艦とウダロイ級駆逐艦、40年近く前の設計であり旧式化が否めない中での漸く実現した水上戦闘艦です。

 ソブレメンヌイ級の後継として射程200kmの3K96対空ミサイルを搭載、満載排水量は5400t、計画では8000t程度の水上戦闘艦を要望していましたがロシア経済力は天然ガス輸出により持ち直したものの限界があり、この中で現実的な誌上戦闘艦としてアドミラルゴルシコフ級は建造されました、現在8隻が建造されており最終的に15隻を建造するようです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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