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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】カナダ海軍CSC計画インフレ影響とヴァージニア級攻撃型原潜へ極超音速兵器搭載計画

2023-01-30 20:00:06 | インポート
週報:世界の防衛,最新11論点
 日本の護衛艦建造もどう影響が及ぶのかわからないインフレです。

 カナダ海軍は次期水上戦闘艦のインフレ影響に苦慮しているとのこと。これはカナダ政府が次期水上戦闘艦建造調達見積もりを上方修正したことにおるもので、費用は15隻の建造費用だけで845億カナダドル、米貨換算で623億ドルを要するとし9%のコスト増大となりました。コスト面の制御、2017年見積もりでは620億カナダドルとなっていました。

 CSC計画として進められています次期水上戦闘艦はロッキードマーティン社が建造を担当していまして、退役も2081年までの長期間にわたる運用を見込んでいますが、同時に資材調達などの面で建造開始は昨年の計画から1年の遅延が発生しています。一番艦竣工は2031年から2032年の間、そして最終艦竣工は2049年まで遅れるものとなっています。

 インフレの建造費への影響はある程度までは想定され、建造計画へ反映されるものなのですが、今回の2022年インフレはアメリカのコロナ対策給付金の手厚い保護から労働市場へ労働力を回帰させるための賃金上昇を引き金に、ロシア軍ウクライナ侵攻に伴う国際資源価格高騰が追い打ちをかけた構図で、年率にして1970年代の深刻なインフレとなりました。
マレーシア軍ATR-72MP
 対潜哨戒機の一つスペックダウンした多機能航空機です。

 マレーシア軍は海洋哨戒機としてATR-72MPを選定しました。マレーシアは南シナ海の広大な多島海域を継続的に監視可能とする航空機を必要としていましたが、この計画を発表した2020年8月、マレーシアはCOVID-19新型コロナウィルス感染症による危機的な景気後退下にあり、その計画費用はP-8Aなど先進的な航空機を導入するには不十分でした。

 ATR-72MPはイタリアのレオナルド社が開発したものでイタリアフランス合弁企業であるATR製ATR 72-600旅客機を原型として各種センサーを搭載したもので、捜索救難や海上監視と密輸対策に加え、ソノブイ運用能力とMAD磁気検知装置を搭載しており、短魚雷2発を搭載、対潜哨戒が可能だ。マレーシア軍はATR-72MP海洋哨戒機2機を導入予定です。
フランチェスコモロシーニ
 哨戒艦というわりにはかなり大きい。

 イタリア海軍はタオンディレベル級哨戒艦2番艦であるフランチェスコモロシーニを受領しました、タオンディレベル級哨戒艦はステルス性に配慮した哨戒艦で満載排水量は6270t、外見からはフリゲイトを思わせるものがありますが、実際にフリゲイト型が建造されており、こちらはアスター対空ミサイルや対潜魚雷や対艦ミサイルを搭載しています。

 フランチェスコモロシーニはフリゲイト型となっていまして、OTOメララ/ガリレオ社製127mm艦砲と対空用の76mm単装砲、KBA25mm遠隔操作機銃2門、シルヴァーA70型VLS16セルと三連装対潜魚雷発射装置2基にオトマートMk2E対艦ミサイル8発を搭載、AW-101哨戒ヘリコプター1機を搭載しています。艦砲は長射程ブルカノ砲弾対応型だ。

 フィンカンティエリ社において設計されていますタオンディレベル級は非常に先進的なステルス形状が外見を引くものですが、建造費用は39億ユーロに抑えられています。なお、当初計画では今年3月に竣工予定でしたが、COVID-19新型コロナウィルス感染症拡大などで造船所が閉鎖、建造が遅れたため、10月21日竣工と半年以上遅れることとなりました。
オーストラリアMH60改修
 オーストラリアは陸軍がNH-90系統を導入したのですが海軍はS-70系統のままなのですね。

 オーストラリア海軍は既存のシーホークヘリコプターをMH-60R仕様へ近代化改修します。ロッキードマーティンはこの改修プログラムへ4900万ドルの契約を結んでいます。オーストラリア海軍はヘリコプター運用能力をもつ艦船の増強にあわせてシーホークを増強していますが、新造機に加えてこの度既存航空機の改修を加え機数をそろえたかたちです。

 MH-60Rシーホークへの改修により、最新型のMk54魚雷の運用能力とヘルファイアミサイルの発射能力を有することとなります。オーストラリア軍に配備されているシーホークは2022年時点で23機、これとはべつに新造のMH-60Rシーホークの12機追加契約は既に締結されています。従来の対潜哨戒にくわえて一定程度水上打撃力を有する航空機です。
新造艦ブリヤの公試
 まだまだ建造能力がある。

 ロシア海軍はカラクルト級コルベットの新造艦ブリヤの公試を開始しました。ブリヤはバルチック艦隊用コルベットとしてバルト海沿岸のペラ造船所で建造されていたもので、長射程のカリブル巡航ミサイルを発射可能である、打撃力に特化したコルベットです。これはブーヤン級コルベットよりも大型、アドミラルグリゴロビッチ級より安価というもの。

 カラクルト級コルベットそのものは艦砲にAK-100/100mm砲を積むミサイル艇の大型版というものですが、ロシア海軍ではコルベットへのカリブル巡航ミサイル搭載を精力的に行ており、カリブル巡航ミサイルの射程は2700km、バルト海沿岸諸国にとり深刻な脅威となります。また厳しいウクライナ侵攻後経済制裁下で新造艦を建造した点は注目に値します。
攻撃型原潜へ極超音速兵器
 極超音速兵器の話をきくたびに中止されたファーストホークミサイルの話を思い出すのです。

 アメリカ海軍は2030年にもヴァージニア級攻撃型原潜へ極超音速兵器を搭載する計画である、アメリカ海軍戦略兵器開発プログラム推進室のジョニーウルフ中将が会見で述べています。極超音速兵器は現在、アメリカ空軍やアメリカ陸軍がともに開発を進めている次世代の装備です。海軍は1990年代にその開発を検討はしていましたが実現はしていない。

 ファストホーク超音速巡航ミサイルとして1990年代まで海軍はトマホーク巡航ミサイルの後継を開発していましたが2000年代初頭に中止となっています、しかし、潜水艦はアメリカ海軍にとり重要な戦力投射能力であり、亜音速のトマホークミサイルを置き換える装備開発は急務とされていましたが、開発は現段階では技術的障壁があるともされています。

 極超音速兵器については、2025年までに海軍のズムウォルト級駆逐艦への搭載が計画されています、こちらの搭載は実用性に問題が指摘されている155mmAGS先進艦砲に換えて艦砲を撤去し前部に搭載するもので、当初はこの区画にレールガンを搭載する計画であったものを水上打撃力強化へ転換、海軍がこの兵器の重要性を高く認識している証左です。
SAAR-S80型コルベット
 イスラエル海軍の艦艇は連続航行能力という点でどの程度の水準にあるのか興味がわきますね。

 イスラエル海軍はSAAR-S80型多目的コルベットをイスラエル造船所から提示されています。イスラエル海軍はこのところサールシリーズ 防空コルベットをドイツより導入したばかりですが、今後はイスラエル国内での海洋防衛産業を強化したい方針であり、今回提示されたSAAR-80コルベットは全長を延伸し哨戒艦などにも転用可能な設計とのこと。

 SAAR-S80型多目的コルベットは全長80m、艦砲とVLSを搭載するほか、アイアンドーム短距離ミサイル防衛システムと20連装発射装置2基を上部構造物後部に配置委、飛行甲板には5tクラスまでのヘリコプター発着可能とする強度を有します。イスラエル造船所によれば計画が実現すればこれらはイスラエル海軍旗艦として運用に耐えると発表しています。
ガーディアン級哨戒艇
 日本では掃海艇が哨戒艦の代わりを担っている状況ですがオーストラリアの事例は安上がりな民間船構造だけれども平時には実用的という。

 オーストラリア海軍はガーディアン級哨戒艇を増強すべくオースタルリミテッド社へ1隻の発注を行いました。ガーディアン級哨戒艇は21隻の建造が進められており、今回の増強により22隻が建造されることとなります。この建造費は1520万オーストラリアドル、2016年に提唱された太平洋哨戒艇交換計画に基づいて友好国に供与される哨戒艇です。

 ガーディアン級哨戒艇の特色は建造費を抑えるために民間マリンクルーザーの設計を応用している点で、全長は39.5mと最高速力は20ノット、23名の乗員により運用可能です。オーストラリア政府から友好国に供与される時点では哨戒艇は非武装となっていますが、オースタル社によれば30mm機関砲までの搭載が可能という設計となっているようです。
MSV-L軽機動支援船
 陸上自衛隊も同様の艦船を導入するのでしょうが母港はどこになるのでしょう。

 アメリカ陸軍はMSV-L軽機動支援船を受領しました。これは10月10日にカナダのバンクーバーにて引き渡し式典が行われています。陸軍は港湾などで兵站支援用の輸送船を複数保有していますが、その総数は中堅国海軍の水陸両用作戦能力を凌駕する規模で、今回のMSV-Lも船首部分に乗降揚陸扉を有する揚陸艇と同等の設計を採用しているものだ。

 MSV-L軽機動支援船は全長39mでM-1戦車を含む82tまでの装備品を輸送可能で、JLTV統合軽量戦術車両ならば4両を同時に輸送する容積を有しています。特筆すべきはその速力で満載状態での速力は21ノット、空荷の状態での速力は30ノットを発揮、運用には陸軍船舶兵8名が対応します、陸軍は当面13隻、最終的に36隻の調達を希望しています。
ドイツ海軍RAM増強
 RAMは海上自衛隊も護衛艦いずも型等に搭載しているところ。

 ドイツ海軍は新たにRAM艦載簡易防空システム用ミサイル600発を取得します。RAM艦載簡易防空システムは機関砲による近接防空火器が機関砲の射程の限界から超音速t来館ミサイルを撃墜した場合でも破片が艦船に深刻な被害を及ぼしうるとの視点から開発されたミサイルで、ローリングエアフレームミサイルの略称からRAMと称されているもの。

 RIM-116-RAMという正式名称のミサイルはその名の通りミサイル本体が回転し限られたアンテナが円錐状のアンテナ機能を果たすものですが、今回調達されるのはRAM-2Bという最新型で同時多数を射撃した場合に相互に干渉しないプログラムが加えられる。なおRAMシステムズ社との間で契約では2024年にもミサイル納入が開始されるとのこと。
インドネシアマーリン40
 近年のインドネシア海軍近代化はなかなか驚かされる水準にあるといえる。

 インドネシア海軍はイタリアのレオナルド社製マーリン40RWSを採用しました。これは40mm機関砲を用いた遠隔操作銃塔であり、電動砲塔に機関砲本体と複合電子照準装置を搭載、照準にはIR赤外線画像と光学画像及びレーザー測距装置を搭載し最適角に補正、これとは別に広範囲の水上目標を索敵する広角型のパノラマサイトなども搭載しています。

 マーリン40RWSは更に二系統の弾薬を選択可能で、これらは遠隔操作コンソールから切り替える。このRWSについて、インドネシア海軍では建造中のPC60哨戒艇2隻及び今後建造する戦車揚陸艦2隻に搭載することとしているようです。PC60哨戒艇は全長60mの哨戒艇であり、船体はステルス性能に配慮した構造、艦首部分にRWSを搭載します。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ政府がF-16戦闘機供与を切望する背景,現代戦に必要な航空戦力と使いやすいアメリカ製戦闘機

2023-01-30 07:00:59 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 当初供与に否定的であったHIMARSが供与されペトリオットも供与され続いてレオパルド2とM-1A2戦車が供与される、すると次は。

 ウクライナ政府は実に321両もの戦車供与を各国が表明してくれている事に謝意を示しつつ、しかし戦争を決定的に反撃に転じるには空軍力が必要であるとして、戦闘機供与を切実に呼びかけています。ウクライナ政府は具体的には、第四世代戦闘機の傑作機であるF-16戦闘機の供与です。現在戦闘機が枯渇しているウクライナ軍に空からの掩護はありません。

 F-16戦闘機でなくとも、もちろん、ウクライナ政府としてはフランスのミラージュ2000戦闘機でもスウェーデンのJAS-39グリペン戦闘機、東欧各国が冷戦時代にソ連から導入したMiG-29戦闘機でも、いっそ日本のF-2戦闘機でも充分にあればよいのでしょう。しかし、そこがウクライナがミラージュ2000ではなくF-16戦闘機を求める背景といえます。

 F-2戦闘機の場合は、総生産数が二桁台であり、四桁が量産されたF-16のように余剰がありません、いや自衛隊には墜落した場合に飛行隊を維持できるように平時には使わない在場予備機という機体が存在します、これは例えばT-4練習機が練習飛行隊と戦闘機部隊の司令部所用よりも多くが生産している点の説明が分りやすいのですが、損失を埋める為です。

 飛行隊を編成するぎりぎりの数しか生産しなかった場合、事故などで一機でも墜落すると定数割れになります、それならば再生産すれば良いと思われるでしょうが、カメラを視れば分かる、素晴らしい長く使い続けたカメラでも故障して新品が欲しい場合にメーカーに再生産を依頼したとしても、採算が合う膨大な数の見込みがない限り再生産があり得ない。

 F-2戦闘機の在場予備機、墜落事故も起きていますがウクライナへ若干数、数機程度ならば供給しても在庫に問題は無いのかもしれません、しかし、数機だけでは稼働機を一機確保させるにも苦労しますし、折角F-2の操縦士を養成しても、これが破損した場合に補填が利かないのであれば戦力として成り立たなくなり、導入の苦労だけが巨大という事になる。

 F-16戦闘機は数千機が生産されていますので、こうした問題はありません。いや、日本のF-2戦闘機が600機くらい生産され世界中に輸出されているならば、こうした課題も出なかったのでしょうが現実はこの通りです。ただ、F-16の訓練は簡単ではありません、供与するにも事前訓練は戦闘機操縦士の経験者が機種転換するとして半年単位の時間が必要です。

 しかしながら、訓練に時間がかかるのだから供与しなくてよい、という訳ではありません。21世紀の戦争が、百年前の第一次世界大戦でさえ航空支援が行われていますので、現在のように殆ど空軍力が関与せず遠方からミサイルで都市部に適当な爆弾をばら撒くだけ、というロシア軍の運用のような戦いこそあり得ないもので、ウクライナには空軍が要る。

 アルファジェット練習機の攻撃機運用のような、比較的操縦が容易な航空機を供与するという選択肢もあるには在りますが、Su-27戦闘機が警戒しS-300地対空ミサイルが待ち受ける厳しい戦場においてこうした軽攻撃機が活躍できるかは難しい点がある、すると、まさか義勇兵が操縦する訳にもいかず、まず機種転換訓練だけでも開始すべきと思います。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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