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平和国家の武器輸出-永世中立国スイスの武器輸出政策とウクライナ戦争下の第三国転売管理制度にみる中立政策

2023-03-09 07:00:00 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 日本はスイスの永世中立政策と武器輸出の両立というものをもう少し学ぶべきなのかもしれません。

 スイス政府は改めてドイツなど周辺国からのウクライナへの弾薬提供要請や輸出装備のウクライナ提供を拒否しました。輸出装備の提供拒否というのは、スイスがドイツやスペインへ輸出した装備をウクライナへ供与する事の拒否であり、改めて永世中立国の特異性を示したものです。しかし同時に、輸出された装備品の輸出管理を示した事となります。

 エリコンやシグ、モワクなどスイスには多数の防衛産業が存在します。そしてBAEやジェネラルダイナミクスなど多国籍企業に再編され、例えばエリコン社などはドイツのラインメタル傘下となっていますが、エリコン社が製造した35mm機関砲弾薬などはウクライナ提供を拒否し、これが少なくない水準でスイスの中立という意志が尊重されているのです。

 永世中立国であるスイス、もちろんこうした施策は、輸出した装備に対して金銭を支払った国の意思が尊重されないという視点から今後スイス製装備へのマイナス要素となるのかもしれませんが、それ以上に、仮に兵器を輸出した場合でも兵器の運用をかなりの部分で輸出国が統制できる、という点が重要であり、日本の防衛装備品輸出の参考となるのです。

 武器輸出と平和政策は両立しない、これが日本の少なくない支持を集める視点です。一方で“永世中立”という響きのよさから少なくとも1990年代までスイスのような平和政策を推す声が日本には在りました、もっとも、完全国民皆兵制や核開発研究と武器輸出政策や傭兵などのスイスの実態が日本で知られるようになりますと、支持する声は薄れましたが。

 日本が仮に戦車や潜水艦、哨戒機や輸送機とミサイルや火砲について、積極的に輸出した場合、地域紛争を拡大させる懸念があるという反論がありました、実際には影響が及ぶほどに市場での地位を獲得できるかは、そんなに甘い話ではないし平和主義者が思うほど日本の装備は市場を独占できない、と考えるものの、スイスを見れば輸出先を統制は出来る。

 輸出管理は、日本での視点として、輸出するかしないかは、輸出した場合は無制限無尽蔵に輸出する、という極論のほかに輸出した場合の転用管理という視座を欠いていたのではないか、と考えるのですね。簡単ではありませんが、これから日本の防衛装備品輸出を考える際に、スイスの様に厳格に管理し大量に輸出する事例を学ぶ必要があるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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