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F-2後継機にASM多数搭載能力は必須か?射程延伸続く対艦ミサイルと宙に浮くT-4後継機

2021-12-02 20:20:36 | 防衛・安全保障
■スタンドオフミサイルとFS-X
 F-2後継機国産開発よりも優先すべきは機数が必要なT-4後継機、中でも高等練習機国産開発であり、一部を支援戦闘機に転用する選択肢はないのでしょうか。

 次期戦闘機の要求仕様を検討する上で、地対艦ミサイルの射程が充分に延伸するならば専守防衛を念頭とした空対艦ミサイルの搭載能力は、F-2戦闘機ほど重視せず済むのではないか、との視点も必要となるのかもしれません。これは現在のF-2戦闘機後継機が第六世代戦闘機として、機体規模の要求を左右しかなり高価となる規定方針を望見し指摘する点だ。

 地対艦ミサイルの射程は。現在の12式地対艦誘導弾システムは、射程こそ発表されていませんが、88式地対艦誘導弾の射程百数十kmを大きく超えるものではないとされています。しかし、対艦ミサイルの世界規模での射程延伸は続き、欧州の標準的な対艦ミサイルとなりつつあるノルウェーのNSMは350kmとなっており、改良型の延伸も見込まれます。

 島嶼部防衛用高速滑空弾、現在の防衛計画の大綱では離島を本土から防衛する新型誘導弾が開発されています、この高速滑空弾は成層圏以上まで上昇し極超音速で滑空する装備を目指しており、その射程は短く考えても500km以上に到達することでしょう。また、計画は停滞していますが、航空自衛隊へもスタンドオフミサイルの導入計画があるのですね。

 スタンドオフミサイルの射程は空対地ミサイルで960kmと実に1000km近いものが存在します、すると敢えて空対艦ミサイルとせずとも、陸上自衛隊が九州や西日本の演習場から射撃したとしても南西諸島まで到達しますので、専守防衛の枠内で考えるならば、F-2が開発された当時のFS-X,支援戦闘機、という概念はもはや必要がなくなっているという構図に。

 1000kmを超えるミサイルを搭載するならば、もう一つ、発射母機は戦闘機である必要はなく、有事の際に最前線までの運用が難しくなるC-2輸送機を母機に転用する選択肢もありますし、航空自衛隊のほか海上自衛隊のP-1哨戒機を運用しても良い、かりに相手が超長射程の空対空ミサイルで反撃したとしても1000km離れていれば回避に十数分余裕がある。

 ASM-3やその後継ミサイルを搭載する必要性、ASM-3は射程延伸型が開発されますので、F-2が現役である時代に対応させる範疇であるのか、ASM-Xとして次のミサイルまでを見込むのかと議論の余地はありますが、巨大なASM-3とその後継者を搭載する前提かどうか、という視点は機体規模を大きく左右させ、コストにも影響するものである事も事実です。

 F-35との区分、問題となるのはASMの多数搭載による飽和攻撃を行うか行わないかで、なにしろF-35もJSMミサイルを搭載し対艦戦闘の一翼を担う機種ですので、F-2後継機か、F-35戦闘機を増強し、F-35を予備機含め300機程度運用するのか、と、区分しなければなりません。特に高コスト化するならば既に実績あるF-35増強論に反論が難しくなる。

 F-2後継機、たとえばF-35戦闘機は戦闘行動半径がF-15よりも小さくなっていますので、F-35よりも大きな戦闘行動半径の機体が必要だ、こう考えるので在れば、F-35Aよりも戦闘行動半径の大きい空母艦載機用のF-35Cの導入を求める選択肢も出てきますし、使い慣れたF-15を例えば三菱重工にてF-15EXをライセンス生産するという選択肢も出てきます。

 80億円程度で量産でき、整備を自動化し操縦も可能な限り自動化することで訓練飛行の頻度を下げられる、例えば国産戦闘機に活路があるとすれば低コストを強調できる場合です。ただ、メーカーに過酷労働を強いる、出費を促す、場合をのぞけば、なにしろ現在戦闘機を生産せず、ホンダジェット以外旅客機も製造しない日本だという現実も見るべきです。

 F-1支援戦闘機がT-2練習機と共通化させコスト削減に比較的な部分で成功したように、考えられるのは航空産業がF-2戦闘機が開発された1980年代から1990年代にかけての時代と比較し、大きく後退している現状をふまえますと、T-4練習機の後継機、これを一機種だけで担うのではなく、低コスト機同士を組み合わせるという選択肢もあるべきと考えます。

 T-7Aレッドトーク練習機とJAS-39グリペン戦闘機、の並びではありませんが、航空自衛隊が中等練習機の基本課程を高出力のターボプロップ高等練習機と超音速の高等練習機に二分させ、その上で超音速練習機の派生型に支援戦闘機を開発するならば、練習機と支援戦闘機を合計して200機以上の所要が生まれ、量産効果が現実化できます。するとASMだ。

 支援戦闘機。近接航空支援を担うという定義が示されていますが、初の支援戦闘機F-86はF-4戦闘機時代にあっては、あくまで支援的な用途であれば対応できるという二線級と同義でした、F-1支援戦闘機も優れた機体ですが、同時期のF-15戦闘機と比較するならば、全ての面で性能は限定的でした。ただ、F-1は運用面でF-15を補完したのもまた事実です。

 F-2後継機は、F-35戦闘機では運用費用から対領空侵犯措置任務緊急発進に毎日飛行させるには見合わない、こう考えることもできるでしょう。すると、X-2実験機程度のステルス性を有し、ウェポンベイ方式で対領空侵犯措置任務に必要な短射程空対空ミサイルと機関砲を、必要に応じて機外に中射程ミサイルを搭載できる程度ならば、安価と出来ないか。

 割り切った性能と手ごろな価格、こうした戦闘機と高等練習機ならば現実的です。その一方で、世界の戦闘機市場を見ますと手頃な戦闘機というものが存在しないのですよね、安価と思われたF-16は現在のF-16VがF-2戦闘機よりも遙かに高価になっていますし、F-35よりも安価と思われたF/A-18Eもコスト面では大同小異となっている。現在選択肢が無い。

 F/A-50戦闘機やJC-17戦闘機、韓国と中国の戦闘機が、コスト面では管理に成功しています。逆に考えるならば戦闘機で、国産よりも安価な戦闘機がある、という認識は難しくなっており、敢えて性能を絞る、しかしAMRAAMやJSMという一通りの装備を運用し多用途性を確保する、こうした市場にない機体は自前で国産するほかないのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1 コメント

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面白い案です (ドナルド)
2021-12-04 00:43:47
F-3の大型戦闘機としてのあり方について、色々と無理があるのは私も思います。技術力の地力が違う。F-3は決してF35の総合性能を超えることはない(ある面で優れることはあるでしょうが)でしょうし、F35より安くなることもないでしょう(なんだかんだ言って圧倒的な大量生産の利点がF35にはある)。それでも国産が必要、という考え方はあり得ます。戦力的な増強よりも、技術的独立性の方が重要で、2050年代の未来のための投資であるという考え方とか。(しかしそうであれば、むしろT-4後継などを地道に開発し、地力を磨いてゆくべきでしょうね)。悩ましいところです。

その中で、「F3を小型とし、T-4後継の半分を兼ねて200機建造」というのは、いろいろと検討することはあるにせよ、検討の価値のある案だと思います。

一つだけ気にすべきは、F35やF16V、あるいはF15EXがほぼ同じくらい高価なのは何故か、ということです。答えは、アビオニクスがほぼ同レベルだからではないでしょうか? F3をどのような機体にするにせよ、そのアビオニクスをどう設計するかがコストにダイレクトに反映されると思います。

F35, F16V, F15EX全て多彩な対地攻撃能力を誇ります。そのためにシステムもソフトウェアも大変複雑になっているでしょう。その意味で、F-3から対艦攻撃任務も対地任務も外してしまう(ターゲティング機能だけとする)のは、コストダウンに良いかもしれません。
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