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ロシア軍ウクライナ侵攻十三日目,進まぬキエフ包囲とハリコフ転進部隊西進-広がる人道危機

2022-03-08 07:00:22 | 防衛・安全保障
■臨時防衛情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ情勢は日本防衛にも大きな影響を及ぼすものとして注視してきました、間もなく二週間を迎える最中に所感を纏め且つ最新の状況を纏めてみました。

 ロシア軍の侵攻は日本時間2月24日の開戦から13日目を迎えます。12日NHK報道によれば、ウクライナ侵攻へロシアウクライナ国境とウクライナベラルーシ国境に集結したロシア軍の95%が投入されたとのことです。これにより17万名の兵力が展開したこととなりますが、当初二日で陥落するとされた首都キエフはまだ外縁が包囲されつつある段階だ。

 ロシア軍侵攻、不思議なのは衛星写真などを確認した場合、それが全て開示されている訳ではないという認識の上でも不思議なのは、ウクライナ領内にロシア軍が補給拠点をどう確保しているかは謎だという点、勿論分散され航空攻撃を警戒、航空優勢確保を発表しているのに不自然ですが、こうした可能性はある。しかし謎が残る、どう渋滞を超えるのか。

 17万の兵力は単純計算で毎日51万食の給食が必要となりますしロシア軍の弾薬基数は122mm砲弾でも数十発でしかなく、数日に一度は補給が必要で、仮にもう一基数増加携行したとしても13日間も持続するのかという素朴な疑問符が残るのですあまり長期戦を想定せず、停滞しているのではないか。一方で東部ハリコフから転進した部隊は前進中である。

 不思議な点は幾つもあり、そもそもハリコフから転進した部隊は順調に進んでいるように見えるのですが、この部隊は戦車部隊を中心とした第一親衛戦車軍であり、そもそもハリコフからキエフまで高速道路E40,M03経由で480km、実際は側道を使っているといいますが東海道新幹線が東京新大阪間515kmですのでほぼ同距離なのですが、ここまで迂回して燃料はどう軍に補給するのでしょうか。

 キエフ北方で渋滞したままのロシア軍部隊ですが、渋滞5kmの第一報が示されたのは先月27日、多少動いてはいるようですが依然として滞留は続いており、現代軍隊が九日間も漫然と道路上に渋滞しているのは、大群で圧力というよりは攻撃軸と攻撃経路を無視した児戯のような稚拙さを曝しているとしかいえません、これがロシア軍動向の率直な印象です。

 たくさん軍隊を集めて並べればびっくりして降参するんじゃないかな、的計画とは考えないのですが、17万の兵力が広大なウクライナに展開、しかも欧米の補給でジャベリンにパンツァーファウスト3にNLAWにAT-4とM-72,携帯対戦車火器の見本市という状態にロシア軍が曝される。そもそも指揮官は自軍補給は勿論損耗を把握しているのか、疑問です。

 マリウポリ人道危機、アゾフ海沿岸のウクライナ東部マリウポリではロシア軍による住民退避の為の停戦が三日間連続で実現していません、これは都市部での戦闘による民間人犠牲者を回避するべく、市街地の外へ住民を強制退去させるためのウクライナとロシアとの間で第二回停戦協議において合意した内容なのですがロシア側が不履行としているのです。

 マリウポリ一時停戦、その履行が為されない状況と云うのは、マリウポリを包囲したロシア軍が砲兵による砲撃を続けており、市民が地下室から路上に出る事が出来ない為とのこと。なお、これと関連した発言ではありませんが、プーチン大統領はウクライナが全面降伏に当る非武装化を約束するならば停戦は可能であると発言しており、被害が懸念される。

 ロシア国防省は日本時間7日、キエフとハリコフ及びマリウポリとスムイについて人道回廊設置の為の一時停戦を発表しました。人道回廊とは、市街地から非戦闘員が退去するための安全地域を一時的に確保するものです。ロシア国防省がこうした発表をする背景には、前述のマリウポリ一時停戦が実現しておらず改めて列記した事に現れている構図でしょう。

 ロシア国防省は人道回廊について、市民を陸路で市街から退避させた後で空路により脱出させるとしています。ロシア軍はこれを無人機等により監視するとしていますが、ウクライナのゼレンスキー大統領は空港が完全に破壊されている点を指摘しています。日本時間7日1600時に設置される人道回廊ですが、同時にロシア軍へ補給の猶予を与える事にもなる。

 人道回廊について、難しいのは過去にシリアで設置された名目上の人道回廊です、シリアではダマスカス近郊において人道回廊を数時間のみ設置し、その後に市街地を大規模砲撃により制圧しました。数時間では退去は勿論周知も出来ない短時間ですが、ロシア軍は人道上配慮したと強弁した背景があります、今回も市民は大量殺戮の危機が迫っています。

 核施設へのロシア軍攻撃が再度行われました、今回狙われたのはハリコフに在るウクライナ国立物理技術研究所で、原子核物理学研究や核融合発電基礎研究にあたるプラズマ物理学の研究、および核燃料サイクル研究などが行われています。ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻開始後、当初の主張を捨ててウクライナは核開発をしていると主張する。

 核施設へのロシア軍攻撃は複数の原子力発電所がロシア軍に占領されるなどしていますが、一説にはロシア軍はウクライナへ電力供給を絶つために占拠しているという分析もあるようです。しかし、発電所を包囲しているのだから電力供給を絶つには送電線を切断するか鉄塔を倒せばよいわけで、この点ロシア軍の原発物理占拠について、説得力はありません。

 核施設へのロシア軍攻撃、問題はロシア軍がウクライナ国内の通信網遮断を開始しており、ウクライナ非常事態省によれば開戦劈頭に占領されたチェルノブイリ原発では周辺部の放射線モニタリングポストが機能していない、放射線情報の伝送が出来ない状況となっています。過去ソ連は1986年にチェルノブイリ原発事故発生の際、事故を公表しませんでした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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