■第四世代戦闘ヘリ
明野駐屯地において現在試験中のAH-64D戦闘ヘリコプターであるが、初年度の二機144億円という調達価格の高さからその導入数は伸び悩むのではないかとの危惧が当初から識者の間ではささやかれていた。
AH-64Dは、武装を施した戦闘ヘリコプターでは第四世代に含まれる機体であり、第三世代に求められた対戦車攻撃を有しつつ高度な自衛能力を有するものに加え、情報収集の拠点として情報RMA型の地上戦闘を担保する航空機であり、単なる火力拠点として以上のものを有することに狙いがある。その為には、ローター部分上部のロングボウレーダーを駆使し、目標の把握と協同部隊が有する特科火力への目標誘導、通信中継、脅威排除という任務を受け持つものである。時には指揮官の目として、索敵、偵察任務にあたり、時には火力を発揮して脅威の排除にあたり、場合によっては早期警戒機のような用途にも用いうる場合も想定される。
当初、AH-64Aが米陸軍において運用を開始した時点では、敵味方の識別限界が2000㍍程度であり、最大射程が8000㍍に達するヘルファイア対戦車ミサイルを運用する上では、観測ヘリコプターの支援が不可欠であり、米陸軍ではOH-58が索敵やレーザー照射などの支援を行った。陸上自衛隊でも現行のOH-1観測ヘリコプターをAH-64Dの支援に充当する計画であったが、ロングボウレーダーの方が索敵能力が高いということもあり、また、デジタルデータの常時送受信機能が限られているOH-1では、発見した目標情報を即座にデータリンクする能力が限られているとの問題があった。
その為、現在、川崎重工を中心としてOH-1に対するレーダー運用能力の付与に関する試験が展開中であるという。これにより、少なくとも観測ヘリよりも戦闘ヘリの砲が索敵能力に優れているという状況をある程度脱却できるのではないかといわれている。現在、スタブウイングに搭載されているレーダーであるが、将来的には別の場所に移される可能性もあり、例えばローター上部に搭載することで、ローター基部に既に標準装備されている光学機器と併せ、より高度な索敵能力をOH-1が獲得する可能性も期待できる。特に、ミリ波レーダーで得た目標情報を介して、更に光学情報などにより精度を高めることは、近年の陸上戦闘においてその発生度合いが高まる誤爆の防止にも寄与するものであろう。
さて、二機144億円であったが、他の年度では1機で103億円など、価格の計算が合わないものがあり、初度装備品や整備器具の価格を含めても相当な開きがあることから、ロングボウレーダー搭載型、非搭載型では少なからず価格に開きがあることを意味しているように考える。この場合、無論、ロングボウレーダーを搭載した型の方が生存性は高く、任務遂行能力も高く維持できるといえるのだが、後日装備も可能なロングボウレーダーの担う能力を応急的にOH-1に充当させ、まず第一に充分な数を揃えることで5.5個対戦車ヘリ隊の5.5個戦闘ヘリ隊への移行に重点を置く必要性を挙げたい。その事由としては、各方面隊に同様に航空攻撃能力が無ければ陸上防衛能力に地域的差異生じる為である。
米軍に倣えば一個飛行隊12機で編成される戦闘ヘリ隊は、5.5個の所要機数が60機である、しかし、中央即応集団所要分や場合によってはこの他にも所要分があるかもしれない。これには、その用途の特殊性からロングボウレーダーの搭載が望ましいものの集中配備という方式があり、他方で従来の対戦車戦闘に重点を置く方面隊隷下の戦闘ヘリ隊には、仮にOH-1が高度なレーダー索敵能力を有することが出来るならば、AH-64Dは質よりも第一に数的充実を図るという選択肢もありうるのではなかろうか。
HARUNA
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