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【防衛情報】F-16戦闘機用MS-110空中偵察システムとSu-34&Su-35戦闘機巡る新情報

2021-05-25 20:20:41 | インポート
■週報:世界の防衛,最新12論点
 今回は空軍関係の話題を中心に12の最新情報を。

 航空自衛隊ではRF-4戦術偵察機の完全退役を受け偵察航空隊が廃止改編されましたがアメリカでの自衛隊向けRQ-4無人偵察機初飛行を受け新たに偵察航空隊が別組織として新編されました。しかし世界を視ますと監視航空機の様な低速の無人偵察機とは別にF-2のような戦闘機に偵察ポッドを搭載し用いる戦術偵察機は新開発、まだまだ必要なのですね。

 アメリカ空軍はF-16戦闘機用MS-110広領域空中偵察システムについてレイセオン-コリンズエアロスペース社との間で契約を締結しました。MS-110広領域空中偵察システムはポッド式偵察装置でF-16戦闘機胴体下部に装着するもの、増槽型のポッドは側面及び下部にセンサー窓を配置しており、F-16戦闘機の高い戦術機動下でも作動が確保されています。

 MS-110広領域空中偵察システムは、長距離目標に対する昼夜天候を問わないカラー映像及び識別用偽色着色映像をリアルタイムで収集且つ伝送可能で、平時の監視任務は勿論、有事の戦術偵察にも威力を発揮します。近年この種の任務はMQ-9,RQ-4といった無人偵察機が多用されている一方、生存性を考えた場合にアメリカ空軍の選択肢は興味深いでしょう。
■アメリカEA-18Gを近代化
 EA-18G,敵の防空網を無力化するEA-18G電子攻撃機の近代化改修が進められます。

 アメリカ海軍はEA-18G電子攻撃機の近代化改修について5年間の改修契約をボーイング社との間で締結しました。EA-18G電子攻撃機は海軍が運用する唯一の電子攻撃機でありアメリカ陸海空海兵宇宙の五軍で唯一の電子攻撃機となっています。この近代化改修は電子監視能力の強化、データリンク性能の強化、次世代妨害装置ポッドの搭載が主眼という。

 EA-18G電子攻撃機の近代化改修は既に3月中に初号機が納入されており海軍での評価試験から既存運用体系の適合化という段階まで進んでいるとの事で、問題が無ければ2021年6月にもフルレート生産により既存のEA-18G電子攻撃機の近代化改修が開始される予定で、海軍は今後五年間で保有するEA-18G電子攻撃機全ての改修を完了させる予定です。
■ロイヤルウイングマン初飛行
 ロイヤルウイングマン無人僚機が遂に初飛行を果たしたようです。第五世代戦闘機の不足を補う一つの選択肢となるか。

 オーストラリア軍が開発を進めるロイヤルウイングマン無人僚機は3月2日、初飛行を実現しました。ロイヤルウイングマンはボーイング社とともに開発を進めていた無人航空機で従来の大型無人機が速度と機動性を犠牲に滞空時間と進出距離を強化していたのに対し、ロイヤルウイングマンは有人戦闘機に連携し共に飛行する機動力を持つ無人機という。

 ロイヤルウイングマンは機体完成後、初飛行に向け地上でのデータリンク実験やナビゲーションシステムの試験などを経て高速滑走試験に移行、そして3月2日の初飛行に至った形です。無人僚機の任務はセンサーを搭載し索敵支援、若しくはミサイル等に追われた際の囮、また将来的には無人空中給油機等の用途が見込まれる新しい世代の無人航空機です。

 無人僚機は高い機動力を以て第五世代戦闘機と協同しますが、僚機は同型機という原則から外れている事は確かです。更に機首を交換する方式というセンサー部分の性能次第で取得費用が増大する可能性はあり、また果たして超音速巡航性能を有する第五世代戦闘機に随伴できるかは未知数の部分があります、今後の展開を慎重に観る必要があるでしょう。
■F-35B機関砲に問題
 F-35Bの機関砲ポッドシステム開発にトラブルです。

 アメリカ海兵隊が運用するF-35Bに機関砲のPGU-32/U-SAPHEI-T砲弾に不具合が発生したとの事です。アメリカ海兵隊は3月12日、ユマ試験場においてGAU-22/A25機関砲よりPGU-32/U-SAPHEI-T焼夷曳光機関砲弾発射試験を実施した際、砲弾が発射直後に爆発し、機体の一部が損傷する事故となりました。人員負傷や墜落事故には至っていません。

 PGU-32/U-SAPHEI-T砲弾の事故はクラスA事故と位置づけられました、これは250万ドル以上の物損か航空機全損若しくは死者が出た場合の事故となります。F-35BおよびF-35Cは機関砲をガンポッド方式で搭載しています。GAU-22/A25機関砲には220発の砲弾が内蔵されており、海兵隊では事故発生を受け、爆発事故の原因を調査しているとのこと。
■インドネシアSu-35導入停止
 インドネシアのSu-35導入計画が停止したもよう。やはりF-35が本命なのか韓国のKF-21はどうするのか。

 インドネシア政府はロシアとの間で2018年に契約されたSu-35戦闘機導入を一時停止した可能性があります。これは2月18日にインドネシア政府が発表した2024年までの国防調達計画にSu-35戦闘機が含まれていなかった点によるもので、正式な費用契約は早くとも2025年以降まで延期される事となります。この頃には仕様も変更されていましょう。

 Su-35戦闘機はロシア製の第4.5世代戦闘機で優れた空戦機動性に対し稼働率を抑える分、取得費用を抑えられる事でも知られます。しかしインドネシアはロシア経済制裁を理由としてSu-35戦闘機の費用支出への難色を示しており、一方でインドネシアからは韓国とのKF-X共同開発、ラファールやF-15仮契約、またF-35希望等様々な発表が流れていました。
■イスラエルはKC-46導入へ
 イスラエルが90億ドルの国防調達計画を発表しました。

 イスラエル政府は2月22日、KC-46空中給油機やF-35戦闘機導入に関する90億ドルの国防支出計画を閣議決定した。イスラエル政府はアメリカ政府との間でこれら装備品とともにV-22可動翼機及びCH-53K重輸送ヘリコプターの取得交渉を進めており、F-35増強計画を加えると全体で380億ドルに達する国防計画を推進中、内90億ドルが決定へ。

 KC-46空中給油輸送機はこの中でも、現在運用するKC-135空中給油機の老朽化が深刻であり、この代替が求められていた。今回の90億ドルに上る閣議決定にはKC-46空中給油輸送機2機の取得費用が含まれており、イスラエル航空宇宙軍では将来的にKC-46空中給油輸送機8機を2億4000万ドルで取得する計画だ。今後はアメリカ国務省の審査を受ける。
■サウジアラビアの兵器国産化点
 サウジアラビアはSu-35など自国内での国防生産基盤構築を進めています、いつまでも産油国としての恩恵だけに甘えるつもりは無い模様だ。

 サウジアラビア政府はロシア政府との間でSu-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステムの導入及び技術移転の交渉を本格化させました。これはロシアのロステック社セルゲイチェメゾフ最高経営責任者がロシアテレビとのインタビューに応じたものでサウジアラビア政府は2030年までに国軍が必要とする防衛装備50%の国産化を目指す計画の一環に。

 Su-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステム、この導入は2019年より交渉が開始され、サウジアラビア政府は国営防衛産業SAMIにこの二つの装備の国内生産化を目指しており、現在既にカラシニコフAK-103,TOS-1A広域熱圧焼却兵器等の生産移転交渉が進められています。ただ、アメリカの反発は必至でF-35等にアクセスできなくなる懸念があります。
■エジプトSu-35導入へ警鐘
 エジプトSu-35導入に警鐘をアメリカが鳴らしました。トルコのS-400導入問題とならびトランプ政権からバイデン政権となっても姿勢は堅持される。

 アメリカ政府アントニーブリンケン国務長官はエジプト政府が進めるロシア製Su-35戦闘機導入について懸念を表明した。エジプト政府はSu-35戦闘機の調達へ20億ドルのロシアとの契約を締結しているが、アメリカ政府はエジプト政府へ毎年10億ドルに上る国防援助や、今後エジプト軍が最新のアメリカ製兵器へアクセスできなくなる可能性を示唆した。

 Su-35戦闘機については導入する事によりエジプト軍の装備するF-16戦闘機などとデータリンクを形成する為、ネットワークの一体化が損なわれると共に技術情報が自動的に連接し漏洩する懸念が指摘されている。この点について、アメリカは常に厳しく、トランプ政権時代にトルコ軍がS-400ミサイルを導入した事でF-35戦闘機供与を停止したままである。
■自衛隊GQM-163A取得
 防空戦闘能力強化の一端として日本へGQM-163Aが供与されます。

 アメリカ海軍は日米両軍が運用するGQM-163Aコヨーテ超音速標的機18機について5550万ドルの契約をノースロップグラマン社との間で締結したと発表しました。18機のGQM-163Aは14機がアメリカ海軍に、3機がアメリカミサイル防衛局に、1機が海上自衛隊に納入されます。今回のGQM-163A生産は計画全体では第15次生産分となりました。

 GQM-163Aコヨーテ超音速標的機、これは直超音速目標への対処を訓練する為のドローンで巡航速度はマッハ2.5以上、海面上6mの低高度を飛翔した場合の飛翔距離は90kmに達するといい、全長5m、直径は30cmとなっています。このドローンは所謂シースキミング極超音速ミサイルを再現するもので、艦隊防空の基盤構築には重要な標的用無人機です。
■ヴェトナムがT-6A導入へ
 ヴェトナムがアメリカ製練習機を導入します。

 ヴェトナム空軍はアメリカ政府よりT-6AテキサンⅡ練習機3機導入の提案を受けたとのこと。これは現在ヴェトナム空軍の戦闘機要員養成の一部がアメリカ国内で実施されている為で、既にヴェトナム空軍には34名のアメリカ留学出身要員が操縦要員として任務に当っているとのこと。ここでT-6Aをヴェトナムが導入した場合、訓練の効率化が図れます。

 T-6AテキサンⅡ練習機はスイスのピラタス社製PC-9高等練習機のアメリカ仕様で、一見初等練習機の様なターボプロップ機ではありますが、強力なエンジンを搭載しておりジェット練習機を用いる中等練習課程の一部を担えるだけの性能を有しています。アメリカヴェトナム艦の地域安全保障協力支援戦略的プログラムの一環としての提案といえましょう。
■ハンガリーがロシア機生産
 NATO加盟国のハンガリーにてロシア製練習機の生産が開始されるという。

 ハンガリーのZrtアビエーションエンジニアリング社は3月17日、ロシアのイリューシンIl-103初等練習機のライセンス生産契約を締結したとのこと。ハンガリーはNATO加盟国で、ロシアからの兵器技術移転はクリミア併合を受けての対ロシア経済制裁へ影響する可能性がありますが、イリューシンIl-103初等練習機のハンガリー軍採用は行われません。

 イリューシンIl-103初等練習機は定員4名の初等練習機で単発式、初等練習機としての用途に加えて連絡飛行や後部座席をフラット化し急患輸送にも対応するとのこと。ロシア機らしさといいますか、格納庫以外での長期保管でも機体構造が劣化しない。イリューシンは本機を民間用と強調していますが、NATO加盟国を潜在的市場と考えているのでしょう。
■アルジェリアSu-34導入交渉
 アルジェリアはSu-34戦闘機取得へ前進した。

 アルジェリア空軍はロシアからSu-34戦闘爆撃機14機の導入について大きく前進したとロシア国内報道スプートニクニュースの報道がありました。アルジェリアは2020年にロシア製第五世代戦闘機Su-57戦闘機14機を20億ドルにて取得する契約を結んでおり、この延長線上に強力な打撃力を有するSu-34戦闘機の交渉も2021年内の締結を目指すという。

 Su-34戦闘爆撃機はSu-27戦闘機の余裕ある機体設計を原型とし、カモノハシの嘴やアヒル顔と称される独特の並列複座式の操縦席が外見上の大きな特色となっています。アルジェリア仕様の機体はSu-34MEとされ、ロシア空軍は中期計画に20機のSu-34を取得する計画ですが、この内の14機をSu-34MEへ改修する見込み、Su-34輸出は今回が初となる。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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