北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】国際航空宇宙展2024,三菱重工CCA無人戦闘機構想とGCAP次期戦闘機,Fixed-Wing-VTOL-UAV

2024-12-03 20:11:00 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は少し間が開きましたが2024国際航空宇宙展の続報について。

 イギリスと日本及びイタリアが開発中のGCAP次期戦闘機について、2024国際航空宇宙展にその十分の一規模の模型が公開されました。GCAPグローバル航空戦闘プログラムは航空自衛隊のF-2戦闘機後継機を模索するとともに、イギリスとイタリアのユーロファイター2000タイフーン戦闘機の後継機を開発するものです。

 GCAP次期戦闘機について、三菱重工とBAEシステムズ社およびレオナルド社が参加していますが、今回公開されたものは十分の一水準の模型であり、実物大モックアップを展示できる状況ではない事が一つの象徴的出来事であるのかもしれません。事実、2024年7月にはイギリスのスターマー新政権が計画参加を見直す可能性を示唆しました。

 モックアップは、実際、イギリスは独自開発を模索していた時代、テンペスト戦闘機の実物大モックアップを早々に公開しています。イギリスはサウジアラビアの開発参加を示唆している一方、第三国輸出に消極的な日本の方針があり、具体的な機体形状をモックアップで示すことができないという現状を示唆しているのかもしれません。■

 三菱重工はCCA無人戦闘機構想を発表しました。これは東京ビッグサイトで開催されました国際航空宇宙展において模型とともにその運用の方向性を示すCG画像が公開されたもの。機体形状はいわゆる滞空型無人機ではなくステルス性に配慮したもので、ボーイングオーストラリアが開発したロイヤルウィングマン無人僚機をおもわせるもの。

 CCA無人戦闘機の運用として、有人戦闘機からの指示を受けミサイルを発射する、という運用が示されていました。これはステルス戦闘機がミサイルを発射する際、ウェポンベイを解放した瞬間にRCSレーダー反射面積が顕著に増大し敵対勢力に発見される懸念があったものを、管制は有人戦闘機、危険な発射は無人機、と任務を分けた構図といえる。

 CCAは一種の無人僚機として運用されるようですが、三菱重工が展示した模型ではエンジン部分に推力偏向用のコンダイノズルが設置されている様子が確認されることから、一直線に飛行するのでは無くある程度有人戦闘機に随伴することを想定した機動力が付与されることが前提とされ、日本版MQ-28ゴーストバットを目指す機体といえるでしょう。■

 日本飛行機は自衛隊V-BAT無人機導入を支援するもよう。東京ビッグサイトにおいて行われました国際航空宇宙展2024では航空機部品製造や航空機定期整備を担当する日本飛行機が、アメリカのシールドAI社が開発したV-BAT垂直離着陸型無人機の運用支援、予備部品製造やシステム維持と教育支援などの面で自衛隊に役務を提供出来ることを示した。

 V-BATはテイルシッター型VTOL無人機といわれ、全幅の大きな主翼を有するもののロケットのように発着は垂直に倒立して行うといい、これによりVTOL型無人機の課題であった滞空時間の短さを主翼により大きく解消するとともに、カタパルトのような発着装置を必要とせず、20分程度で発進準備が可能となる利点、自衛隊では艦上試験も行われている。

 V-BATの性能は巡航速度98.2km/hで滞空時間は10時間、全備重量は56.7kgで11.3kgまでの各種センサー搭載能力があり、テリリウム社製赤外線センサーやホダッチ社製複合光学装置、IMSAR社製NSP-3合成開口レーダ装置、またシールドAI社が開発中のAIシステムを搭載することで自律飛行などが可能になるもよう。■

 三菱重工は二機種のFixed-Wing-VTOL-UAVを発表しました。東京ビッグサイトにて開催された国際航空宇宙展2024の会場においてモックアップを公開、大型機と小型機を発表しています。興味深いのは大型機も小型機も航続距離と巡航速度が同じという点で、航続距離1000km、巡航速度100km/hにより移動することが可能となっています。

 機体形状は胴体後部に推進装置を搭載し逆V型尾翼構造を採用、一見バイラクタルTB-2の後部形状を彷彿とさせるものですが、この逆V型尾翼構造の桁部分に垂直離着陸用の補助ローターを設置しており、狭隘地域での発着が可能という。小型VTOL-UAVについては既に名鉄海上観光船を利用した後部特設甲板への発着試験に成功しています。

 名鉄海上観光船への発着は、発着地にQRコードを描いた発着パッドを無人機が認識して自動着陸するというもの。なお、航続距離も巡航速度も同じ大型機と小型機ですが、相違点はペイロードで、小型機にはペイロード5kg、大型機のペイロードは20kgとなっています、これは輸送能力の多寡というよりも搭載センサーというべきなのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-ロシア軍はH15号線を西進,ドニプロペトロウシク州最南東部への進出をはかる可能性

2024-12-03 07:00:25 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ウクライナ情勢について情勢が厳しくなりつつあります。

 ロシア軍はドニプロペトロウシク州最南東部への進出をきす可能性が高い、ISWアメリカ戦争研究所11月24日付ウクライナ戦況報告によれば、ロシア軍は9月以降、ウクライナ南東部のポクロフスクとクラホフとヴフレダール及びヴェリカノヴォシルカへの進出を強化、クラホフでは包囲機動を展開しており、1103平方kmの占領地を拡大している。

 ウクライナ南東部でのロシア軍行動はドネツク州全土を占領するという目的を達成する前段階としてドニプロペトロウシク州の占領を進めているとISWは分析していて、今後の行動は幾つかが推測できるという。一つはロシア軍がこのままヴェリカーノヴォシルカ南地域において迂回機動をとり集落を包囲する、兆候としてはこれが第一だ。

 今後の行動としては、ロシア軍が南からクラホフ西方のアンドリイフカへ進出しクラホフ近郊に展開するウクライナ軍部隊を包囲し前線を安定化させる。もう一つの可能性はロシア軍がセリドブからアンドリイフカ方面へ西に接近経路を確保することでクラホフ北側のウクライナ軍連絡路に圧力をかけ主導権を握る、というものです。■

 ロシア軍はクラホフ東部H15道路沿いに進出を強化している、ISWアメリカ戦争研究所11月25日付ウクライナ戦況報告によれば、ロシア軍はヴェリカーノヴォシルカを包囲するとともにドニプロペトロウシク州東部とザポリツィア州を結ぶ主要道路H15号線沿いの前進をつづけているとのこと。またその進出速度も高まっているという。

 H15号線はこのままロシア軍が西進した場合、ダチュネとアンドリブカに達する。ただ、ウクライナ軍の戦線崩壊を意味するものではなく、その根拠としてロシア軍は現在、戦場において機動戦を展開するだけの機械化装備を回復していない事が挙げられるとのこと。一方でロシア軍はクピャンスク北方においても前進を続けている報告がある。

 クピャンスク北方での浸透は、ロシア軍がオスキル川の渡河に成功したと発表したためです、ただ、ISWアメリカ戦争研究所はオスキル川渡河を確認していないとしていますが。この点について、ウクライナ軍部隊指揮官の話として、この地域ではロシア軍に対しウクライナ軍は1:5の割合で損耗を強いているとしつつ、後退を認めています。

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