北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

五月三日憲法記念日 今日だからこそ考えたい憲法の問題

2010-05-03 18:56:09 | 国際・政治

■本日は憲法記念日

 本日は憲法記念日、日本国憲法が制定された日です。そこで憲法について少し北大路機関でも言及してみましょう。

Apkoimg_9912  日本国憲法とWeblog北大路機関が扱う内容と言えば、どうしても九条問題を避けて通れないという命題があります。自衛権は国連憲章で認められている中で軍事力の保持を憲法で禁じているということは主権国家として無防備なのではないかという点、現在日本の領域と周辺地域、それに国際秩序の安定に寄与している自衛隊の規模と能力を考えれば現在の憲法が禁じている戦力に自衛隊を含まないと政府解釈に定めることは逆にほかの憲法に定めた基本的人権や社会権、幸福追求件などをないがしろにすることへとつながるのではないかという懸念、自衛権を禁止している中で違憲合憲と不安定な立場の中で既に災害派遣、訓練中の事故などで千人以上の殉職者を出すなか黙々と任務完遂へと進む自衛官全員に失礼ではないかという一点、戦力の放棄を国内革新勢力が高く評価する中で革新勢力自身が一時暴力闘争を進めていたという矛盾や革新勢力が提唱するような諸外国からの評価は少なくとも日本国憲法の理念に基づく形での同様に憲法を改めて追随する国が皆無である、など、現行憲法を改正したj方がいいのではないか、という議論は制定当時から今日まで無数といっていいほど挙げられています。

Img_4302  しかし、改憲というと、もっとも現在の連立与党では不可能なのでしょうが、果たして妥当なのか、という話も残ります。憲法を改正するのならば憲法すべてを明治憲法にまで戻してしまおう、という話から、九条を全面改正して自衛軍か国防軍か防衛軍か陸海空三軍を持つという改正案、九条二項のみを改正することで自衛隊を合憲化しようという案、九条を改正するとともにアクセス権や環境権を盛り込んで人権を充実させようという話。他には九条はそのままで天皇制を廃止しようという自称護憲の方の話も聞いたことがあります、憲法改正と一口にいっても同床異夢の状態なのですよね。しかし、現行憲法は男女同権を盛り込んだ世界唯一の憲法ですし、社会権などにもそのまますべて改めるには惜しい部分があります、改憲改憲といわれても、その中身はよく練られていないようで、改憲という言葉だけが独り歩きしているような印象さえ受けます。また、自衛隊法が憲法九条に対して違憲の疑い、といわれるのですが、そんな事を言えば憲法違反の疑いは民法、刑法、刑事訴訟法から公職選挙法、などなど憲法判例集を紐解けば無数にあるわけでして、無数の判例を前に諸外国の事例、法源、立法理念から政治上の問題であることを示す統治行為論まで日々多くの研究がなされているわけで、自衛隊法も憲法が国民に保障している人権、社会権、幸福追求権、果ては平和的に生存する権利や、憲法の機能そのものに対して実力をもって破壊を試みる勢力に対処するための機能を有しているともいえるわけでして、自衛隊法と憲法を簡単に並べて議論するのにはかなりの無理があります。

Img_8408  そして、憲法を改めて改正するか再構築するにしても、憲法制定勢力の主体をどのように選出し、議論を重ねるかについては議論の空白がありますし、憲法制定勢力は国会が担うのか、その場合憲法調査会など既存の枠組みが一国の憲法を改める上で充分な議論を重ねることはできるのか、という素朴な疑問がわいてこないでもありません。なによりも現行の憲法が改正が非常に難しく、衆参両院の議会での手続きに加えて国民投票を必要とすることは、一時の権力が暴走することで朝令暮改のような憲法改正を防ぐための機能であるわけで、これを踏まえれば死活的な不利益が生じていない限り、改正は避けるべきなのかな、と考えます次第です。憲法制定勢力についてはもう少し真剣に考えられるべきでして、現時点での与党が友愛友愛と新憲法に盛り込めば今以上に物すごいことになるでしょう。憲法九条の問題について、最高裁は憲法九条の問題については統治行為論という言葉を多用します。統治行為論というと難しいのですが、統治行為論という概念は諸外国の判例にも多く出てきます。これは英訳すると非常にわかりやすいのですよね、統治行為論は英語ではPolitical Question、つまり政治問題というニュアンスなのだったりします。Political Question、統治行為論につき最高裁は判断を避ける、というのはPolitical Questionという言葉を交えて簡単に置き換えれば、これは政治の問題なので判断するのは裁判所ではなくて政府なんだよ、と。そして内閣法制局は自衛権も行使できるし、集団的自衛権についても保持している、という統一見解を過去に出しています。以上を含めて考えれば、そこまで会見を焦る必要もないのでは、と考える次第。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする