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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

5月27日は海軍記念日(1905年5月27日の日本海海戦に因む)

2010-05-27 23:09:17 | 北大路機関特別企画

◆海上防衛力が最重要と考えるのですが・・・

 本日は海軍記念日ということで、いつも掲載しているよりももう少しマクロな話を記載するという前置きで、毎回お馴染みの内容を思いつくままに掲載していきます。思いつくままに記載した文章はだいたい非公開なのですが、今回は掲載です。

Img_0138_1  日本海海戦は、制海権の確保が戦争の趨勢を左右するとしたマハンの理論といやいや地上軍の決戦が無ければいかなる場合でも、と記したコーベットの理論で、マハンが正しい事を示したのですが、その後海軍力を整備し、世界を相手に挑んだ日本が敗戦に追い込まれたのも海上護衛戦を完遂できずに物資が欠乏、戦争継続能力を喪失したことによるものが大きいでしょう。こうした中で戦後から今日、将来にわたるまで日本は諸外国との交易による利益によって国家を運営してゆくという方針が変わらない限り、海洋の自由を維持するという任務が日本の死活的利益に繋がるのだろう、と考えます。この点で海上自衛隊の重要性は大きいのですけれども、一方で、イギリスがリデルハートの言葉を持ち出すまでも無く、海洋国家が対岸に脅威を確認してからの備えでは遅い、という概念があるのですけれども、台湾軍、朝鮮軍、関東軍を大陸に駐留させていた当時とは異なり、今日では日本に敵対的、非友好的、不明瞭等何れか政策を執る国を対岸にもっていますので、陸上自衛隊の重要性も大きい訳です。また、かつての大戦では沖縄を始め島嶼部以外での非戦闘員への被害は航空爆撃によるものが多数を占めていましたから防空は死活的に重要で、航空自衛隊の能力も高ければならない訳です。

Img_5889  この点を踏まえて何処に重要性を見出すか、となると、やはりどれも同じ重要性を持っている訳なのですよね。一方で他国領土を自国の領海法に組み入れることで制海権というものを自国固有のものとしようとする試みの国があるのですけれども、そうした国の挑戦に対しては海洋の自由こそが自由な交易と諸国民の利益に資する、と考える国と同盟関係を結び、日本は対応している訳です。この点で日本は憲法9条の精神を尊重し、他国領土への介入を行わず、海洋の自由を希求することで国家の安定を図る防衛政策を堅持するべきでは、と考えます。と言いますのも領土的や陸上での活動を考えれば日本に対して負の印象を持つ国が今なお諸外国に考えられるからです。考えすぎかと思われるやもしれませんが、必ずしもそうではありません。欧州安全保障に関する研究を進めていますと、強大な地上軍と核兵器を運用し、広い緩衝地帯に地上軍を張り付けていたソ連が独ソ戦の厳しい教訓からドイツの再軍備と東西統合後のドイツが再びソ連の重大な脅威となることを過度に警戒していた、という実態が政策や政策決定者の言葉から読み取れるのです。この点は主観的なものですから事実関係の羅列や政策の提示だけで説得できるものではないのかもしれません。

Img_6710  しかしながら、脅威を与えない、という点は重要なのでしょうけれども日本が国家として成り立たない程度に諸外国から圧力を受けることがあってはならない訳で、特にこの点に留意して本Weblogでは“八八艦隊構想”として全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦8隻と弾道ミサイル防衛対応型ミサイル護衛艦8隻を基幹として護衛艦隊を強化し、護衛艦から運用できる固定翼航空機を運用し洋上防空や対艦攻撃に用いることのできる体制が必要、と過去に提案しました。また、太平洋側からの脅威に対抗するために那覇基地の第83航空隊を第9航空団に格上げし、浜松基地・徳島航空基地・硫黄島航空基地等に一個飛行隊を基幹とする航空隊を置くべき、という提案も過去に記載しました。いわば自国の防衛に徹するために支援戦闘機の飛行隊を造成することや航空自衛隊の規模そのものを拡大して、将来増えるであろう脅威に何とか日本の主体的な外交政策を展開する方法を防衛面から考えてみたのですけれども、その為には防衛大綱の水準で防衛能力の規模を強化する明記が必要ですし、定員や予算措置についても広い面から議論を行う必要があります。しかし、防衛力増強という提案は選挙公約では支持を得られないばかりか、防衛費削減による福祉の向上が支持を得られるという現状がある訳でして、こちらも民主党が一石投じてくれる事を期待、つまり子供手当を筆頭としたばら撒き型福祉は必ずしも支持される訳ではないという事の証明が得られるのではという意味なのですが、一方で防衛費を削減したうえで頭上を弾道ミサイルが通過すれば騒ぎ、隣国が地下核実験を行えば喚き、そして日本防衛力はこれで大丈夫なのか、という議論が巻き起こるのですけれどもやはり選挙では防衛費削減を支持するという状況、この矛盾性に不安を感じてしまう訳です。これは、突発的な事態に際して、いきなり論理が飛躍して暴走してしまうのではないか、と。

Img_7893  安全保障問題について議論する中で那覇市を軍事力に依拠する防衛の問題に移っただけで憲法問題という最初の障壁に視野狭窄となってしまうという難点は過去に幾度か記載しましたが、これについては過去のイラク派遣に際して、当時の小泉首相は憲法の前文を引用することで憲法九条を乗り越えようとしました。いわば、憲法の平和主義の精神は尊重しつつも、平和主義の中で行い得る防衛力の役割について述べられたのですが、その後も現在与党に入られた当時の野党の方々は憲法を持ち出し、防衛力に関する独自の視点を展開しています。しかし、考えれば平和主義は手段であって目的ではなく、日本国憲法についても条文は平和主義以外にも多種多様な進歩的人権の保障を謳っている訳でして、諸外国からの実力により憲法に認められた人権ごと憲法を停止に追いやられるような状態から守るのも防衛力の役割ですし、憲法そのものが自衛の為の機能を有している、と考えれば憲法九条の問題と現実の安全保障上の問題は必ずしも矛盾しない、という論理にはなるはずな訳でして、差し迫った脅威を前に違憲か合憲か改憲か護憲かという話題そのものがナンセンスなように感じる訳です。特に南西諸島から小笠原諸島にかけての中国海軍による演習、韓国艦撃沈事件に端を発して急速に緊張の度合いを高めている朝鮮半島情勢、普天間問題に伴う海兵隊抑止力の変動を見越した台湾海峡の緊張、これらは現実に差し迫っているのですからね。

Img_7981  こうしたうえで、日本が主権を貫くうえで必要な防衛力というものはどういうものなのか、どういった脅威を将来想定し日本はどのような外交政策を展開するのか、日本の死活的利益とは何か、周辺国とどのように信頼を醸成し友好関係を結ぶのか、どういった状況で有事に至る危険性があるのか、予防外交に対して主体的に関与する方法とは何か、日本が必要とする地域的枠組みや国際機構のあり方はどういうものか、ということについて広い意見があってもいいと思うのですが、対外関係についてやはり憲法上の問題、集団的自衛権の問題を含め横たわり、それよりも議論が奥に深められない、という状況を生んでいます。個別具体的な政策に対して合憲か違憲かを判断するのは司法権か行政権であるわけで、視野狭窄に陥ることなく闊達な議論こそが必要、と思うのですけれども、そうしたマクロな視点にはいかず、朝鮮半島情勢については首相の発言は空転、安全保障上の最大の課題はいつの間にかミクロな視点である普天間問題で固定され、普天間問題が解決すれば日本の安全保障上の全ての問題が解決されると錯覚させる状況が醸成されています。とまあ、海軍記念日なのですが、内容が毎度のところに収斂したところで本日の記事の締めくくりと致します。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (6)
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