北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ペトリオットPAC-3那覇第5高射群配備完了、弾道ミサイル全国警戒態勢整備

2013-04-20 23:35:18 | 防衛・安全保障

◆第17高射隊・第18高射隊へ配備

 防衛省によれば4月18日、那覇基地の第5高射群に対しペトリオットミサイルPAC-3の配備が完了した、とのこと。

Simg_8181 PAC-3は那覇基地第5高射群隷下の那覇基地第17高射隊と沖縄本島の知念分屯基地第18高射隊へ配備されました。首都圏の第1高射群や中京京阪神地区の第4高射群、九州の第2高射群に続き第5高射群へ配備となり、東日本及び北日本の第3高射群配備を以て全国のPAC-3配備が完了します。

Img_2645h 那覇基地の第5高射群は、航空自衛隊において最後までナイキ地対空ミサイルが配備されていた基地で、最後にペトリオットミサイルPAC-2が配備された基地ですので、これは自動的にPAC-3への換装は最後となるはずでしたが、今回は先にPAC-3の配備を迎える事となりました。

Gimg_5290 これまで、ミサイル危機に際しては沖縄の防空へ本土からPAC-3部隊を海上自衛隊の輸送艦などにより展開していましたが、この頻度が高くなっているため、今回の予定を早めてのPAC-3配備には過去のミサイル破壊措置命令に伴う沖縄救援隊派遣の実任務が反映されているのでしょう。

Img_8956 ただ、これまで平時の沖縄が弾道ミサイルに対し無防備であったかと言われますとそうではありません。米軍は陸軍防空砲兵よりPAC-3一個大隊を嘉手納基地へ前方展開させており、これは嘉手納基地の付近車道からも待機態勢についているミサイル部隊を見ることが出来ていました。

Gimg_8935 防空砲兵一個大隊は一個高射群に匹敵するものですので、一つの基地へ一個大隊という防空密度はかなり密度と言えました。こういう意味から沖縄は弾道ミサイルに対し無防備ではなかったのですが、今回の航空自衛隊の高射群へのPAC-3配備より、これが更に万全へ近づいたこととなる、こういうこと。

Gimg_4334 これまで、ミサイル破壊措置命令として命令が発令された際に、中京京阪神地区よりミサイルを引き抜き沖縄に派遣していましたが、言い換えれば中京京阪神地区の防空に間隙を生みつつ、派遣していた、という事。今回の配備によりこれが払拭されたといえるでしょう。

Img_2642 表面化している脅威への防空と、特に我が国の大都市を防空する体制は一定のめどが付いた、今回の配備でこういうことが出来るでしょう。今後は東日本及び北日本、特に米空軍の打撃力である三沢基地や航空自衛隊の防盾というべき千歳基地を含めた防空体制へ、PAC-3の配備が急がれることとなります。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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米予算均衡法、歳出強制削減により空軍全航空団の作戦機三分の一が飛行停止へ

2013-04-19 23:10:07 | 防衛・安全保障

◆アフガン作戦維持と技量維持図るも即応性は低下

 米予算均衡法に基づく政府支出強制歳出削減は空軍訓練体系に重大な影響を与えました。

Gimg_7407 報道の際には少々耳を疑いましたが、空軍全航空団の三分の一が飛行停止となり、これを以て予算縮減を達成しようというものです。この報道を見る場合、戦略軍の爆撃機を除く核運用基盤や警戒態勢に本土弾道ミサイル防衛体制構築などは大きく縮小されることはないのでしょうが、逆に言えば縮小の皺寄せがほかの部隊に行く、ということ。

Bimg_3076 横田基地日米友好祭と岩国航空基地フレンドシップデイの中止が検討されていましたが、このうち5月5日の岩国については正式に中止が発表されました。しかし、米軍全体からの訓練体系への影響を見た場合、この行事中止というものもほんの僅かな表面化、というべきなのかもしれません。

Img_2673 国防総省は米本土及び欧州と太平洋地域に展開する空軍部隊に対し、全航空団の戦闘機及び爆撃機と早期警戒管制機について、三分の一を飛行停止とする決定を行ったわけです。飛行中止はCNNの報道ではA-10攻撃機とB-2爆撃機にF-16戦闘攻撃機とF-22戦闘機、など。

Himg_4209 歳出強制削減は本会計年度では米政府全支出のなかで850億ドル、邦貨換算で8兆3300億円に達するのですが、米国防費はGDP換算で4%を超えているため連邦支出への比率も大きく、強制削減の支出中で半分を求められています。半分とは言いますが、我が国の防衛費に匹敵するもの。

Img_2861 この訓練停止は陸海空軍全てに同程度の影響が及ぶのですが、空軍では三分の一の飛行訓練中止を決定しつつ、飛行時間の縮減にあって、三分の一の航空団をそのまま単純に訓練停止するのではなく、シュミュレータの活用と飛行停止の期間をローテーションすることで飛行技量維持へ必要な最小限の飛行時間は確保するもよう。

Img_0770 ローテーション方式を行うのは、飛行資格を維持するために必要な飛行時間が厳格に規定されており、この時間を満たさなければ飛行資格が失効してしまうためで、これを一から再取得しようとした場合には、予算の執行が国防権限法に基づく水準に戻された際、逆にコストが増大してしまうからです。

Img_8706 この飛行時間の縮小ですが、三分の一の縮小という部分から考えますと、全空軍の訓練体系を空軍州兵規模に抑え、技能維持と運用体制を両立させる規模、という事になるのでしょう。予備役の空軍部隊と言いますと、日本では馴染みがりませんが米軍では空軍予備役軍団という組織があり三個軍、うち第10空軍などは戦闘機を運用している実戦部隊というもの。

Img_2848 空軍予備軍団隷下の航空団では即応体制は採られていないものの戦闘に対応する戦闘飛行隊が維持されていますし、このほか州兵空軍のような組織もあります。ですから、空軍が将来に渡り影響を受けるような運用体系への打撃とはならないのかもしれません。
Yimg_9061 ただ、即応体制という意味では影響はあるようです。空軍戦闘航空団の司令官は緊急事態が発生した場合に対応できなくなる可能性が示唆されました。緊急事態と言いますと、朝鮮半島や台湾海峡への抑止力低下というものが筆頭に上がりますが、このほかの地域でも湯時の際に即応対処が出来なければ初動に後れを取り、これが結果対応の長期化を招くのですから。

Gimg_2570 このほか、アフガニスタンでの任務遂行に必要な予算支出は維持されるとのことで、ローテーションが行われる背景にはこうしたものもあるようです。アフガニスタン派遣部隊で歳出削減措置を採った場合に戦況が悪化するというリスクを回避するというもくてきから、これは当然の措置でしょう。

Img_8874 この歳出削減ですが、アメリカの国防費はGDP比率で4%以上の水準を推移し、テロとの戦いは2001年以降延々と継続、アフガニスタン派遣などはアメリカ建国以来最長の派遣ともいわれています。以上を鑑みますと、多少致し方ないのではないか、と思いつつ、安全保障情勢の緊迫化が進む我が国としては複雑と言わざるを得ません。

Img_3847f 安全保障状況に影響が出た際、実際には出つつあることが我が国周辺への国籍不明機接近の増加などで表面化しているのですが、アメリアの安全保障への依存度、例えば東日本大震災が世界の経済と先端産業の日本への依存度を痛感した事例と同じこととなるのでしょうか。

Img_4160 また併せて、今後もアメリカの歳入が改善される抜本的可能性が無ければ、日本への防衛負担増大の要求が強くなるほか、自由貿易協定の推進面を含めたアメリカの経済活性化の道筋に関する枠組み作りに反映されることとなるため、我が国も外交防衛政策を慎重に見極めてゆかねばなりません。

Img_1781 最後にもう一つ、この規模の削減が海軍航空隊に対しても行われた場合、空母航空団の技量維持に影響が出ないのか、安全面で関心事が出てくるでしょう。空母発着艦の必要な技量は大きく、これは事故の有無に直結しているのですから、ね。併せて抑止力の低下が我が国安全保障へどうした影響があるのかを冷静に見極め、対応を考えてゆくことが必要でしょう。

北大路機関:はるな

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平成二十五年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.04.20・21)

2013-04-18 22:47:57 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 宮城と三宅島で地震が連続し、ミサイル破壊措置命令継続中のなか、今週末は久々の冬の寒さが戻ってくるという話を半袖で聞く当方ですが、皆様は如何お過ごしでしょうか。

Kimg_9131 今週末は陸上自衛隊関連行事が一挙に多数行われます。師団行事では、第8師団創設記念行事、北熊本駐屯地祭が行われます。北熊本駐屯地は熊本市内にあり、第8師団は九州南部の防衛警備及び災害派遣を担当する西部方面隊の師団で、本年は師団創設51周年を迎えます。

Img_9034 普通科部隊行事は、土曜日に第13普通科連隊の松本駐屯地祭、日曜日に第39普通科連隊の弘前駐屯地や第2普通科連隊の新潟は高田駐屯地、同じく日曜日に第34普通科連隊の御殿場市は板妻駐屯地、そしてもう一つ、第33普通科連隊が駐屯する三重県の久居駐屯地祭が行われるとのこと。

Img_0070 普通科部隊行事は、青森県に新潟県に長野県と静岡県に三重県で行われるのですが、高田駐屯地祭は、日曜日に駐屯地が一般公開され観閲行進や訓練展示が行われるのですが、その前日の土曜日は午後に上越市内にて市内パレードが行われます。高田駐屯地は有名なあの高田城跡にある駐屯地です。

Img_6381 特科部隊駐屯地記念行事としては郡山駐屯地祭、FH-70榴弾砲を運用する第6特科連隊や81式短距離地対空誘導弾に93式近距離地対空誘導弾を運用する第6高射特科大隊が駐屯しています。FH-70榴弾砲の空包射撃は迫力の一言で発砲焔も比較的大きく、撮りやすい。

Bimg_8692 航空部隊駐屯地記念行事では仙台市の霞目駐屯地祭が行われます。毎年秋に行われているのは方面隊記念行事で、今週末に行われるのは霞目駐屯地に駐屯する東北方面航空隊のヘリコプター部隊、編隊飛行などの行事内容で、昨年の東北方面隊創設記念行事は仙台駐屯地で行われましたので、久々の一般公開、そういう意味でお勧めと言えるやも。

Kimg_7922 海上自衛隊基地一般公開は、佐世保基地一般公開が土曜日に多用途支援艦あまくさ一般公開予定と日曜日が中止、舞鶴基地が北吸桟橋が土曜日と日曜日共に今週末は中止で舞鶴航空基地が一般公開予定、舞鶴基地は今月から公開時間が変更されているのでご注意ください。

Img_6275 呉基地の今週末一般公開、こちらが少々流動的でして21日の一般公開は現在調整中になっています、中止と明示されていないのですが、足を運ばれる方は注意が必要やもしれません。大湊基地は土曜日と日曜日に護衛艦おおよど一般公開予定、ただこちらも変更があり得るとのことですから足を運ばれる方は電話などでご確認を。

Eimg_30920 航空自衛隊関連行事では、実は本日、府中基地にて観桜会の一般公開が行われる予定だったとのことですが、諸般の事情により中止となったとのことです。参考までに現在、北朝鮮ミサイル実験へ備え、ミサイル破壊措置命令が発令中、この行事中止と関係はあるのでしょうか。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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舞鶴地方隊舞鶴展示訓練2011詳報⑨ 艦隊行動と艦隊陣形の洋上展示

2013-04-17 23:28:22 | 海上自衛隊 催事

◆そつなくこなす船乗りと水上戦の意外と難しい基本

 海軍に徴兵されていた留学生の話、何故海上自衛隊は艦隊陣形をしっかりととれるのか。

Mimg_6908 海軍機構にとり、艦隊行動を行うにも水上戦を実施するにも艦隊陣形は基本であるのですけれども、意外と難しいものらしく、同じく基本であるべき出入港も近年躍進目覚ましい海軍の艦艇が何度も接岸やり直しを行ったという話を聞けば、日本やアメリカと違い海軍初心者なのか、と思ってしまうもの。

Mimg_6902 舞鶴展示訓練では展示訓練の最後に行われる展示として艦隊陣形の行動展示が行われました。もっとも、お気づきの方もいるでしょうが前回の艦艇が横一列に並んだ様子の写真は単横陣という接近しての対水上戦闘に際しての一斉会敵に有利な陣形なのですけれども。

Mimg_7165 単縦陣、艦隊行動の最も基本的な陣形で旗艦、もしくはその一隻前の先導艦を中心に一列に続く陣です。観艦式などで単縦陣で進む艦隊を先頭近くの艦から眺めますと、延々と水平線へ向かい延びる艦隊の威容に圧倒されます。複数の艦艇が参加する際には先頭近くから見てみたい陣形のひとつ。

Mimg_7168 基本である単縦陣を元に様々な陣形、例えば旗艦を中心に攻撃に移る際の梯形陣や、現代では艦隊陣形以外は離隔距離を大きく採るため意義は薄れていますが逆V字に展開し防御を張る弓型陣へ、それぞれ転換することが出来、現代の対水上戦でも誘導弾発射等に際し、陣形の転換能力は比較的重要だったりする。

Mimg_7173 ちなみに、展示訓練観閲式の後に一列が順次大きく回頭した艦隊運動は逐次回頭で航行序列を維持したまま艦隊を転換することが可能だ。一斉回頭として艦隊の航行序列を逆として一挙に方向転換を図る方策もあるのだけれども、写真の、あたご、が陣形変換へ増速を始めた。艦艇の速力さや波浪影響があり、これは意外と難しい。

Mimg_6916_1 北大路機関が幾度も使用するイージス艦二隻の並んだ様子はこの瞬間に撮影、乗艦しているのは、イージス艦こんごう型四番艦ちょうかい、追い抜こうとしているのがイージス艦あたご型一番艦あたご。イージス艦二隻を一枚に収めるべく、甲板上をお急ぎで駆け回ったのもいい思い出です。

Mimg_6920_1 ちょうかい、を陣形転換へ洋上で追い抜く、あたご。陣形転換は、別の陣形へ各艦が移動する距離と変針の時機がそれぞれ異なるので、艦長を目指すには海象と艦特性と連携を同時に全て条件を呑みこみ理解し、適切な行動をとれなければならない。そして基準艦に指名された時に基準艦が時機を誤れば全艦隊に影響するので、責任は重大だ。

Mimg_6954_1 護衛艦ちくま、が追い抜く。艦隊陣形や艦隊行動は、現代ではヘリコプターの洋上戦への応用が基本となっているため、その発着に必要な艦の航行方式も併せて求められることとなり、海洋は広大だけれども、陣形が大きく乱れたならば防空や索敵の隙を生むので、意外と繊細な行動が求められるという。

Mimg_6955_1 艦隊行動は中枢艦や船団護衛を行う際の数kmの距離を採って輪陣形を組むことがもう一つの基本なのだけれども、併せて対水上戦では誘導弾を同時着弾させるため、迅速に陣形を攻撃位置へ転換させなければならない。ただ、ここで隙を生むと近傍に潜水艦が展開していた場合攻撃を受けてしまう、艦隊行動の需要性はこういう側面も含む。

Mimg_6937_1 護衛艦あまぎり、が追い抜いてゆく。後9栄冠が迫るとどうしてもその護衛艦だけをズームしてしまうのだけれども、甲板上がそれほど混雑していなかったので、乗艦している艦の艦橋を思い切って広角でフレームに入れてみると、こういう写真になる、ということ。これは今回の試み。

Mimg_6964_1 それにしてもいい天気だ、前日まではかなり曇っていたので、艦橋は此処まで軍艦色が際立たなかったし、青空でもなかった。曇れば逆光のリスクが少なくなるのだけれども、順光の理想的な写真に仕上がらない、というもろ刃の剣となる。上空を日本海より北方へ飛行してゆく飛行機雲も雰囲気を高めてくれる。

Mimg_7178 展示訓練参加部隊は、こうして陣形を続いて解き、それぞれ出港した港へ戻る。舞鶴基地の舞鶴展示訓練なのだけれど、舞鶴警備管区から多くの観覧者を招いているので、舞鶴基地へはもちろん、敦賀港や西舞鶴港などへわかれてゆかなければならないのだ。

Mimg_6943_1 舞鶴展示訓練の展示は此処までなのですけれども、舞鶴基地はまだまだ遠く、実はここから小さな催しなども行われる。舞鶴基地へ戻るまで、もう少し舞鶴展示訓練の青空を背景とした写真特集は続きます。これらの様子は、また機会を改めて次回に紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

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第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑥ 戦車大隊・飛行隊・音楽隊

2013-04-16 23:14:20 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆観閲行進の最後を飾る師団の花形 

 福岡駐屯地祭、観閲行進もいよいよ大詰めとなってきました、地響きとともに師団の花形が見えてきます。

Fimg_5946 74式戦車、第4戦車大隊長前島政樹2佐以下、師団の機動打撃部隊の中枢を担う第4戦車大隊の74式戦車が堂々の行進、戦車が進む、38tの鋼鉄が720馬力のディーゼルエンジンを吹かして連なり進む、実際に地面が振動を伝え音が空気を震わせてこちらへ響く、戦車の行進は一味違う。

Fimg_5960 第4戦車大隊は大分県の玖珠駐屯地に駐屯、観閲行進では第一中隊、第二中隊、第三中隊と大隊本部車両の74式戦車が敬礼し、会場を進んでゆきます。砲塔には第4戦車大隊のマークが掲げられ、一列になり堂々と進み、会場すべての注目を一手に引き付ける。

Fimg_5980 74式戦車は、国産第二世代の戦車として従来の61式戦車の後継を担うべく開発されたもので、鋳造式の避弾性を重視した砲塔と105mm戦車砲を搭載しています。第二次大戦中の戦車の区分で中戦車を洗練させた戦後第一世代戦車に対し、世界の戦車趨勢は対戦車ミサイル時代の到来を前に装甲防御力の限界を見定め、鈍重さを排するべく機動力と打撃力に重点を置く第二世代戦車を開発しました。

Fimg_5986 この趨勢に応えるべく、第二世代戦車として必要な能力を盛り込むと共に、打撃力の根幹である主砲命中精度を向上させる観点から、搭載するL-7系105mmとともにアナログ式弾道コンピュータ及びレーザー測遠機を搭載、L-7系のライフル砲が有する現代でも第一線級の飛距離を最大限有効射程とする方式を採用しています。

Fimg_5996 専守防衛を国是とする自衛隊の74式戦車は873両が生産、併せて戦車の行動を阻害する地皺に富んだ狭隘地形という我が国土を逆に味方とするべく、車体前後を200mmづつ傾斜させる油気圧懸架装置を採用、これにより地形に車体を適合させ、敵に対する車体の暴露面積を最小限とする戦闘や、俯角仰角の制約を取り払った運用を可能とする構造です。

Fimg_6004 三菱重工が完成させたこの戦車は、登場当時に我が国の経済力が躍進を続け世界第二位の水準となったことと併せ大きな注目を浴び、この技術的基盤に依拠し、第二世代戦車が断念した防御力の飛躍的向上を目指す第三世代戦車として90式戦車を国産開発、続いて戦車の機動力を戦術戦略面から大きく高めた10式戦車の国産開発へ進んだのは御存じの通り。

Fimg_6011 この74式戦車ですが、油気圧懸架装置の整備に導入当初苦労を強いられ、今日では流石に来年で制式化40年を迎えることから旧式化し、特に暗視装置は旧式の赤外線投射型であるため近年の熱線暗視装置と比べ敵に暴露し易く、防御力も対戦車火器の普及度合いが制式化当時と比較できないほど高まっているため、古いことは否めません。

Fimg_6022 ただ、105mm砲の威力はAPFSDS弾である91式徹甲弾の制式化により今なお世界最新の戦車に対し脅威を与える水準を維持しており、地形を利用するという運用に徹する限り、まだまだ我が国への侵略の野心に対し立ちはだかる性能を有しています。もっとも、普通科隊員が戦闘防弾チョッキを身につけるように砲塔周囲に中空装甲の追加防御を施し、普通科隊員が鉄帽に暗視装置を取り付けるように砲手照準器前に暗視装置を取り付けられれば、よかったのですが。

Fimg_6027 戦車の威力は、打撃力と機動力に防御力という装備の三要素を全て高く維持している点で、打撃力はミサイルと異なり最低射程が無い直接照準方式、機動力は森林などの木々を押し倒し河川を乗り越えるもので、防御力も陸上装備体系では最も上のもの、地形を選ばず機動でき、必要な火力と投射する戦車は国土防衛に不可欠で、こちらに戦車があれば相手も戦車か相応の打撃力を用意せざるを得ません。

Fimg_6031 一部の軍事への理解が乏しい方は、日本は縦深が小さく戦車が上陸するようではすでに負け、と持論を振りまき、軍縮論者や平和愛好家に利用されるのですが、それでは戦車が貨物船などで奇襲上陸しただけで呆気なく敗北という笑える結論に至ってしまいます。日本国土は広く、高山部もあります、この国土を防衛するには戦車が必要であり、如何に海空の防衛が充実しようとも、これは不変の原理と言えるでしょう。

Fimg_6040 第4飛行隊の観閲飛行、佐賀県目達原駐屯地からの参加です。飛行隊は隊本部と飛行班に整備班より成り、観測ヘリコプターと多用途ヘリコプターを数機づつ運用しています。かつては観測ヘリコプターのみ10機程度を運用していましたが、90年代より各師団への多用途ヘリコプター配備が開始され、4機程度が装備され、観測ヘリコプターとともに飛行隊を編成しています。

Fimg_6042 OH-6D観測ヘリコプター、野戦特科部隊の榴弾砲が長距離射撃を行う際、その着弾観測を行い精度を高めると共に、指揮官連絡や軽輸送、索敵任務や災害派遣時の情報収集に活躍する機体です。着弾観測任務や情報収集任務などは、カメラの性能向上、例えば福島第一原発事故に際してはNHK報道機が30km以上離れた地域から原発への放水実施を空中撮影に成功していますが、多用途ヘリへ高度な観測器材を搭載し、遠距離からの観測や情報収集に充て、補完として無人機を併せて運用してもいいのではないか、と思うところ。

Fimg_6046 UH-1J多用途ヘリコプター、11名の完全武装要員を空中機動させ、重機関銃の搭載による地域制圧や、砲弾に斥候車両などの空輸、救急搬送に情報伝送や映像撮影など、様々な任務に対応するヘリコプターです。11名の空中機動、これを飛行隊の数機で実施するというのは心細く感じられるやもしれませんが、言い換えればレンジャー隊員を小隊規模で投入できるという意味でもあり、意義は小さくはありません。

Fimg_6061 祝賀飛行はこのように行われました。師団行事などでは編隊を組んで一挙に式典会場上空を航過飛行してしまうのですが、福岡駐屯地ではマンションの前をやや高度を下げ、一機一機式典会場を飛行してゆく、なかなか他では見られない飛行を行ってくれました。

Fimg_6086 観閲行進を第4音楽隊の隊員が会場を進み、幕を下ろしてゆきます。徒歩行進にあわせて演奏された抜刀隊と車両観閲行進のテンポと共に演奏された祝典ギャロップ、写真特集にあるように設営するにも何度も分けて掲載する行進の最中、寸秒も滞ることなく音楽演奏を続けた第4音楽隊の隊員です。

Fimg_6099 音楽隊の隊員は師団の部隊行事や師団管区内の民間行事などでの演奏を行うため、特に日曜日などは式典があれば必ず展開、もしかしたらば陸上自衛隊にあってもっとも日曜日から縁が遠い任務なのかもしれません。そして音楽を職業としているだけあり、その実力はかなりのもの。

Fimg_6109 観閲行進の修了と共に、観閲部隊指揮官である副師団長が乗車した82式指揮通信車とともに会場を後にします。そして式典会場の中央にて撮影を行っていた地元を中心とする報道陣も観閲行進の撮影を完了し、撤収を開始します。こういいますのも、観閲行進の完了と共に次の行事が始まりますから、ね。

Fimg_6113 国旗退場。式典に先立ち式典会場に掲げられた日章旗が、観閲台にあって記念式典と観閲行進を見守ったのち、この観閲行進の完了とともに観閲台より旗手とともに車両へ、そして式典会場を退場してゆき、来場者は国旗入場の時と同じく、起立して会場を後にする国旗を見送ります。

Fimg_6119 そして会場では訓練展示に向け、模擬戦の準備が開始されました。福岡駐屯地は見ての通り、マンションに囲まれており、模擬戦となれば砲声も凄いこととなるのでしょうが、先ほどの祝賀飛行の低空に降りて行った通り、周辺の方々の理解と支援があるのでしょう、災害派遣展示ではなく野戦の訓練展示が為されているのがわかる。

Fimg_6124 訓練展示準備には時間が掛かります、何故なら先ほどまで記念式典と観閲行進が行われていた場所ですからね。この時間を隊員の喇叭演奏などで有効活用します。当方は移動せずこの場所で訓練展示を撮影することとしました、訓練展示の様子は次回紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

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淡路島M6.3地震(2013.04.13.0533)の発生と自衛隊機緊急発進状況

2013-04-15 23:04:08 | 防災・災害派遣

◆震度六弱、情報収集へ航空機15機が緊急発進

 4月13日0533時、兵庫県淡路島付近においてマグニチュード6.3の地震が発生、震度六弱の揺れが観測されました。

Qimg_9151 地震の震度は震央付近の兵庫県淡路市で震度六弱、南あわじ市で震度五強、大阪府岬町、兵庫県洲本市、徳島県鳴門市、香川県東かがわ市などで震度五弱を観測、負傷者26名を出すとともに家屋の一部損壊や地割れ被害など2300軒の被害が発生しました。今回の地震について、防衛省自体隊の対応を見てみましょう。

Qimg_4287 0533時の地震発生とともに、三分後の0536時に防衛省は運用企画長を指揮官とする災害対策本部を設置、13分後の0546時には小松基地第六航空団のF-15戦闘機2機が緊急発進、続いて0558時には震央の近い小松島航空基地より第24航空隊のSH-60J1機が緊急発進しました。

Qimg_9381 0603時には海上自衛隊徳島航空基地第72航空隊分遣隊のUH-60J1機が、0604時には八尾駐屯地の中部方面航空隊よりUH-1が1機、0605時には同じく八尾駐屯地より第三飛行隊のUH-1が1機、離陸し、0620時には徳島航空基地より第202教育航空隊TC-90練習機1機が発進しています。

Qimg_9990 防衛省によれば、0622時に八尾駐屯地よりさらに中部方面航空隊のOH-1が1機と、0625時に第三飛行隊のOH-1が1機、それぞれ離陸。0638時には四国の北徳島駐屯地より第14飛行隊のUH-1が1機離陸、0655時に小松基地より小松救難隊のU-1251機が離陸しました。

Qimg_0590 0709時に第14飛行隊より更にOH-6が1機、その後後退の航空機として0900時に中部方面航空隊のUH-1が1機と1003時に同じく中部方面航空隊よりOH-1が1機離陸、航空機による情報収取は1048時まで継続され、上空からの被害は確認されなかったため、上記15機の派遣を以て任務を完了しています。

Qimg_4864 今回の地震は、淡路島の確認されていない活断層の活動とする意見や、1995年の阪神大震災を引き起こした兵庫県南部地震の余震とする説、更に南海トラフ地震の前兆現象とする意見があり、何れも確定した情報ではありませんが、今後の動静に注目が必要と考えられます。

北大路機関:はるな

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第一師団創設51周年・練馬駐屯地創設62周年記念行事PowerShotG-12撮影速報

2013-04-14 23:18:46 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆東京都民へ最新鋭10式戦車初登場

 本日、練馬駐屯地へ行ってまいりました。EOS-7Dの写真はまだ整理していませんが、G-12の写真を取り急ぎ。

Nimg_1791 練馬駐屯地第1師団創設記念行事、本日行われた練馬駐屯地祭が実戦部隊として最初の配備となった第1戦車大隊の精鋭10式戦車の初登場となり、東京都民へその威容を示しました。朝方から東武東上線が大変なことになっていましたが、式典会場は満員御礼、猪瀬都知事も式典に参加しました。

Nimg_1531 本年の練馬駐屯地祭は、10式戦車の初登場という事で注目を集めていたわけですが、2000年まで61式戦車が残っていた戦車大隊に最新鋭戦車というのは、驚きである一方、普通科部隊の行進が徒歩行進のみとなっていたのは、少々印象に残ったところ。

Nimg_1544 普通科部隊は徒歩行進に続いて、第一師団は高機動車の車列、軽装甲機動車の普通科部隊配備の後からは、観閲行進の車列が、という流れだったのですが、今年は徒歩行進のみ、第十師団も一時期そうした時期があったようにも記憶しますが、昨年は高機動車が車列で参加していました。

Nimg_1567 本年の行事は、昨年が例年よりも一週間あやかったことで満開の桜を背景に観閲行進を見ることが出来たのですが葉桜、今年は少々速かったのか、標高が高い相馬原の桜並木も散っているところでした。しかし、青々とした若葉は春の息吹を感じさせ、これはこれで素晴らしい。

Nimg_1604 本年の記念行事では例年であれば観閲行進に続いて訓練展示模擬戦が行われるところのはずなのですが、本年はもともと模擬戦が計画されていなかったとのことで、昨日の第12旅団記念行事も模擬戦は無し、実任務の忙しさというよりは改編の忙しさか、はたまた中央観閲式支援の準備なのでしょうか。

Nimg_1609 偵察隊の軽装甲機動車、軽装甲機動車が第1師団へ配備されたのもほんの数年前で、空挺団よりも軽装甲機動車の配備は後回しにされていました。第1師団と同じ東部方面隊の第12旅団への軽装甲機動車配備開始は昨年から、本年はかなり広く配備され、これも印象的というべきか。

Nimg_1625 戦車だけが新しい装備になっただけで此処まで部隊の印象がからりと変わるのか、というものでしたので、特科部隊のFH-70後継装備となる火力戦闘車や、高射特科部隊に向け開発が進む近接戦闘車、普通科部隊へ将来装備される中距離多目的誘導弾の配備成れば、また違う印象となるのでしょう。

Nimg_1628 火力戦闘車にしてもなんにしても、全て現有装備を置き換えるのにどれだけの時間を要するのか、その前に現状の定数で部隊規模をどう維持できるのか、など考えるとだんだん不安にもなってきますが、それはそれ、ということで新装備を開発とともに見守ってゆきたいですね。

Nimg_1650 迫力の観閲行進ですが、本日は風がかなり強かったため、来賓席を中心に終日砂塵が纏わりつき、気を利かせての観閲行進に先立つ除染車の経路砂塵予防散水も飛沫が来賓席に舞うばかりで、さりとて砂塵の策源地は経路ではなく式典会場のグラウンド、飛沫に砂塵の重ねで、少々苦労があったやもしれません。

Nimg_1690 この強い風は関東一円の出来事のようで、京王線や京急線も風で飛ばされた障害物が架線に引っ掛かり、運転に影響が出ていました。また帰路に利用した東急線でも風が強いので持ち物が飛ばされないようご注意くださいという放送が繰り返されていましたし。

Nimg_1676 また、本年は猪瀬東京都知事が都知事就任後初めて練馬駐屯地祭へ祝辞を述べられた行事なのですが、緊張していたのか、休めの号令を言い忘れるなど、先代の石原都知事とは違う印象ではあるものの、指揮官巡閲に同行し、その存在感を示していました。実務に長けたという評判なので貫録は後付、実績を期待したいですね。

Nimg_1712 訓練展示が行われなかった練馬駐屯地祭ですが、レンジャー体験など昨年に続く試みが行われており、装備品展示では10式戦車が注目を集めていたほか、生物偵察車のような式典に参加しなかった装備も展示されていました。他方、昨年まで注目の的だった74式戦車は10式戦車に押され、体験試乗のみに参加、これは少々寂しい。

Nimg_1731 戦車体験試乗は正午から整理券配布方式で行われていたのですが、これが凄い長蛇の列、式典前から並んでいました。式典が行事の目玉だと考える当方としては、式典終了後に装備品展示のスタンプラリーでも開始して、制覇記念に戦車搭乗、という方式であっても、全部楽しめていいのではないかな、とも考えたところ。

Nimg_1747 ともあれ、繰り返しますが会場は盛況、第1師団への都民の関心の高さが分かります。首都直下地震、首都テロ、弾道ミサイル、脅威は多々あり幾つかは過去に実際に起き、いくつかはいつ起きるかと真剣に討議されている中、非常時を専管とする組織への注目が高いことは良く分かる。

Nimg_1778 ここまで関心が高いところを見ますと、石原都知事時代に提言されつつも交通規制の難しさから実現しなかった市街パレードを思い切ってやってはどうかな、とも思います。駐屯地は都道311号環状八号線と国道254号線に面してそれぞれ門がありますので、駐屯地外周の一部を走るパレードというものをやってみてもいいのではないかな、と。

Nimg_1825 新戦車が練馬に来る、世の中替わるものだ、此処まで変わったのならば市街パレードも再検討する時期なのではないかな、そんなことを考えつつ、帰路に就いたのですが、・・・、行事と関係なくて申し訳ないのだけれども、いま平和台駅からそのまま東横線に乗り入れているのですね、うとうとして気が付いたら地下鉄から東横線に入っていて、車窓を見ると西武電車が走ってる、世の中替わるものだ、改めて考えた次第です。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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第12旅団創設12周年・相馬原駐屯地創設54周年記念行事PowerShotG-12撮影速報

2013-04-13 23:02:48 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■相馬原駐屯地へ行ってきました

 今朝の淡路島の地震、皆様大丈夫だったでしょうか。現在出先ですので手短に、本日、相馬原駐屯地へ行ってまいりました。

Img_0950 第12旅団は群馬県榛東村に司令部を置き、北関東信越地方を防衛警備管区とする陸上自衛隊の旅団で、従来装備であった第12師団から旅団改編を受ける際に、防衛警備管区が高山部を多く有することからヘリコプターによる空中機動を重視した旅団として知られています。

Img_0944 旅団は近代化改編を受けたばかりで、ほんの二年前まで、空中機動に対応するべく装甲車両は化学防護車のみであった旅団ですが、昨年から始まった軽装甲機動車の配備が順調に進み、最新装備である07式機動支援橋の受領と施設中隊の施設隊への改編、通信中隊の通信隊への改編が行われ、本日創設の部隊もあったほど。

Img_0952 加えて装甲車両として、かつて装備されていた87式偵察警戒車や82式指揮通信車が再度編成に戻され装備が充実した一方、第48普通科連隊が旅団から東部方面混成団へ移管、少々祭詞句もなってしまった行事ですが、改編を受けたばかりで、訓練展示が限定的にしか行えなかったのが少々さびしい。

Img_0946このほか、行事とは関係ないのですが駐屯地までの乏しい交通網が、高崎駅からのアクセスが悪化してしまい、前橋駅からのバスにて展開することとなりました。時間が始発でも厳しいため、来年からは群馬総社駅からタクシーの利用も考えています。取り急ぎ、速報までに。

北大路機関:はるな

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平成二十五年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.04.13・14)

2013-04-12 19:56:24 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 北朝鮮ミサイルが日本国内に照準しているという明確な恫喝の中、我が国は挑発に乗ることなく務めて冷静に備えを固めている中、皆様如何お過ごしでしょうか。

Gimg_6739 今週末の自衛隊関連行事ですが、東部方面隊管区では第1師団と第12旅団の創設記念行事が行われます。特に第1師団へは最新鋭10式戦車の配備が成った最初の師団祭ということで、注目なのですが北朝鮮ミサイル事案の影響があるのか、恫喝ではなく武力攻撃に出た場合戦後初の防衛出動も考えられるため、毅然と粛々と行うのか、中止か。

Gimg_3596_5 第1師団創設51周年記念、練馬駐屯地創設62周年記念行事、本年は10式戦車が参加するとのことで、桜の時期とは少々外れてしまいましたが注目の行事です。他方、訓練展示模擬戦は行われないとのこと。東武東上線練馬駅から徒歩で五分ほどの場所です。

Gimg_4065 第12旅団創設記念行事は練馬駐屯地祭の前日、明日行われます。第12旅団創設12周年、相馬原駐屯地創設54周年の記念行事で、空中機動旅団として知られるヘリコプター部隊の展示などが期待されます。期待、というのも昨年は悪天候のため飛行不能となってしまいましたので、今年度は、と。

Gimg_1716 相馬原駐屯地祭へ足を運ばれる方へご注意、高崎駅発の群馬バス榛東温泉方面バス路線が時刻表変更となっており、行事に間に合う始発バスが土日祝日運休になっています。このため、前橋駅発の日本中央交通路線始発を利用するのがいいでしょう、ご確認ください。

Gimg_6698 滝ヶ原駐屯地祭、御殿場市の駐屯地で、富士教導団普通科教導連隊の駐屯地で、89式装甲戦闘車の中隊や96式装輪装甲車の中隊が置かれているほか、FTC評価支援隊第一機械化大隊などが駐屯していまして、毎年練馬と重なります。訓練展示の実施と併せ、迫力はなかなかのもの。

Gimg_0186 東北方面隊でも行事が開始され、船岡駐屯地祭、第2施設団創設記念行事が行われます。船岡駐屯地は宮城県柴田郡の駐屯地、第2施設団は東北方面隊直轄施設部隊で、東日本大震災では応急橋梁構築や道路障害除去などで自衛隊の迅速な任務を展示しました。応急橋梁だけは数時間で橋をかける事、民間ではなかなかできません。

Gimg_4334 航空自衛隊では福岡県久留米市の高良台分屯基地祭が明日土曜日に行われる予定ですが、基地HPによれば“都合により中止となりました”、とのこと。春日基地の分屯基地である高良台分屯基地には第8高射隊が配置されており、現在防衛大臣によるミサイル破壊命令が発令中、ペトリオットミサイルが射撃準備態勢を継続しているため、実施できなくなったのでしょう。このほか、行事に足を運ばれる方はどうかHPで最新の情報をご確認ください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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尖閣諸島防衛への一視点⑮ 南西諸島南部への防空強化、戦闘機分散配備を再検討する

2013-04-11 19:29:39 | 防衛・安全保障

◆JAS-39-NG/AV-8Bを少数機調達する
 現在尖閣諸島を含めた南西諸島の防空は沖縄本島の那覇基地より展開していますが、この本島以南に戦闘機を配備する方式を再検討してみましょう。
Simg_2215 冒頭に私見を示しますと、基本的に沖縄本島以南に戦闘機部隊基地を置くことは不用であるという前提で、航空自衛隊のレーダーサイトが置かれる宮古島か、陸上自衛隊の駐屯の実現へ調整が開始された石垣島へ、航空救難団の救難隊を一個増勢し配置、UH-60J救難ヘリコプターとU-125救難機を展開させ、必要に応じ、補助飛行場、例えば救難隊の展開する新潟分屯基地や陸上自衛隊別海駐屯地に隣接する航空自衛隊毛根別補助飛行場や八雲分屯基地補助飛行場のように、緊急着陸の基地として使う方が現実的と考えるところ。
Simg_2013 しかし、それでも必要性が事業評価により認められるならば、置く場合は、2~3機の前線運用に適した戦闘機を簡易掩体に収容する、基地機能が大型化する弾薬庫や燃料庫は配置せず、弾薬は緊急発進用の定数を最小限の再発進用装備とともに車両搭載し燃料は可搬式車両により輸送、基地機能を極力最小限規模のものとしつつ、必要であれば基地機能が即座に自走もしくは輸送艦や輸送機の支援により、予備飛行施設へ転換できる体制を構築する、基地は小規模でも警備小隊を置きコマンドー部隊への準備を確実とする。
Simg_0696 島嶼部への配置部隊は、入間基地の航空総隊司令部飛行隊を拡大し、航空総隊司令部航空団として、戦略予備部隊としての位置づけを受ける。同部隊は前線運用に適した一個飛行隊を基幹とし、2~3機からなる分遣隊を3~5隊編成、第一線航空基地の補完勢力として補助飛行場を中心にローテーション運用を行う。補助飛行場とは、南西諸島については先島諸島既設飛行場及び在沖米軍既設基地、小笠原諸島においては硫黄島基地及び南鳥島基地、北方については丘珠駐屯地、八雲分屯基地補助飛行場、何れかの緊張度に応じて配置する。
Simg_1582 分遣隊は、戦闘機2~3機からなる飛行班、機動野整備小隊、機動警備小隊、機動補給班、通信班、以上60名から編制し、必要に応じ当該管区航空方面隊施設隊の支援を受け移動式掩体等の架設支援を受けると共に、航空管制については既設飛行場の航空管制設備の支援を受け、これらが機能不随状態に陥った場合においては早期警戒管制機からの空中官制を受ける。任務は既存航空基地の補完であり、常設ではなく必要に応じ暫時展開を大前提とする。と、まあ、考えると、こんなところでしょうか。
Simg_0902 沖縄本島以南、今回戦闘機の前方展開を考える島嶼部は、中国が多数を揃える短距離弾道弾の射程圏内にあります。前提条件として、F-15,F-2,F-4EJといった現在航空自衛隊が運用する戦闘機は本島以南の、例えば先島諸島などでの運用を行うことは不可能です。こういますのも先島諸島は中国の短距離弾道弾射程圏内にあり、短距離弾道弾は数が多いことから容易に基地が使用不能となり最悪飛行隊ごと地上で無力化、こうした理由から、高性能であるものの、大きな運用支援が必要な大型戦闘機を運用する基盤が維持できないのです。
Simg_2188 すると、この方式を考える上で実現するために不可欠な選択肢には、航空自衛隊が保有していない、前線運用可能な航空機を新たに配備する、具体的にはAV-8攻撃機やJAS-39戦闘機を少数導入し、配備する、こうしたものが入ってきます。弾道ミサイルが着弾しても復旧可能な滑走路と補修設備に戦闘機の地下格納庫を増設、という案もあるでしょうが、これではその予算だけで戦闘機数機分必要となってしまい、本島防空に穴が開くこととなり、もちろん先島諸島を見捨てるわけではないのですが、全体の運用体系を考えれば、承服できません。
Simg_3826 JAS-39,ここで考えられるのは、JAS-39です。最新のJAS-39-NGは小型ながらPS-05A+レーダーにより120kmの索敵能力を有し、AMRAAM空対空ミサイルの運用能力を有し、将来脅威に対し、圧倒は出来ないものの対抗が出来る戦闘機です。しかし最大の利点は整備器材が少ないことで、一機分の整備器材はC-130一機で輸送可能、中型トラック三台程度に分散搭載可能で、再発進までの整備は十数名で対応できる、手間のかからない戦闘機であり、変な話、地方のコンビニ程度の地上設備と駐車場の面積で少数運用が可能というほど。
Simg_0257 ただ、取得費用の大きさがかなりのものとなるのが悩みどころで、この点考えなければなりません。JAS-39,確かに軽量戦闘機ではありますが、取得費用は一定以上のものとなっていて、F-16EやF/A-18E,F-35やEF-2000と比べれても最新型のグリペンNGでは2012年のスイス空軍導入契約で22機が31億スイスフラン、当時のレートが1スイスフラン86円ですが、それなりの金額が掛かっています。タイとの契約でも2008年に締結した6機の第一次契約は合計610億円、一機当たり、100億円程度はします。
Simg_9172 そんなにしない、中古はもっと安い、という反論もあるでしょうが、中古は耐用年数が迫っており、購入に際しての近代化改修で機体価格の五割程度の費用が必要になり、十年単位でみればこれも安くはない。安く中古機を取得出来ても高い近代化改修予算と、数年おきに新しい機体を入れる事を考えると結局は高くつく。ただ、JAS-39は前線運用を元から考慮した航空機ですので、整備支援に必要な機材が非常に少なく纏められており、数機毎の分散運用も元から考えられているため、付随器材が少なくて済む、これが大きな利点といえるでしょう。
Simg_7531 6機から最大で14機、JAS-39-NGを導入する場合、この規模が上限でしょう。いっそF-35の代わりに大量配備しては、という意見があるでしょうが、JAS-39は戦闘行動半径が小さく、現状の自衛隊基地に配備しては要撃体制が維持できません。また、F-35であれば2050年代の脅威にも十分対抗できる第五世代戦闘機としての性能を有していますがJAS-39ではこうした運用はできません。一機100億円前後のJAS-39-NG、しかし同時にF-35も必要で、ほかにも必要そうな優先度の高いものあるため、この機数でも厳しいのですが。
Simg_2162 もしくはAV-8Bのような垂直離着陸機、正確には実用化されている垂直離着陸可能な戦闘攻撃機はハリアーしかないので、必然的にこのハリアー一択なのですけれども、この機体であれば、元々イギリス軍が欧州のソ連軍大規模侵攻に際し前線基地での運用を行うべく開発された機体ですし、米海兵隊がA-4攻撃機の後継として滑走路が使えない第一線での航空支援用に採用した航空機ですので、前線運用となる南西諸島での運用では、滑走路が破壊された場合でも運用が継続可能で、理想的な機体です。
Simg_0821 ただ、生産が完全に終了しているため、イギリス空軍が国防予算削減のため早期退役させたハリアーGR7,その近代化改修型であるハリアーGR9について、中古機として部品取用に取得している米海兵隊との交渉が必要となります。部品扱いの航空機の形をしたものを作戦気にするのか、と色々な方に呆れられそうですが、このハリアーGR9ですが、製造元のBAEシステムズが当初2018年までの運用を契約していたもので、一部の機体は早期運用終了の僅か数年前に胴体換装改修を受けているので、一部は飛行可能なものもあるとのこと。
Simg_0823 正直なところ、自衛隊には未経験の航空機で、制空戦闘を前提とした航空優勢確保を最大の任務として勤めてきた自衛隊、基地が破壊される危惧の産物で誕生したこのハリアー、全く運用基盤の無い航空機ではありますが、ハリアーは軽空母からの運用を念頭にスペインとイタリアへ、初期型はインドと、中古機がタイへ輸出され、少数機であっても運用が可能となっています。もっとも、タイへ輸出された7機のハリアーは予算不足で保管状態となっており、整備及び搭乗員といった要員の訓練が継続できていないようですけれども。
Simg_9091 他方、ハリアーは既に性能的に過去のものとなりつつある機体ですので、将来のF-35Bへの置き換えを前提として海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦に搭載し、機動運用したほうが現実的ではないか、とも考えます。第一線機へAPG-65レーダとAMRAAMのみで対抗は、かつてハリアー艦上運用に求められた爆撃機の洋上迎撃という任務と比べ厳しいですが、艦載機は艦対空ミサイルが警告か撃墜かという狭まった選択肢しか無い部分に警告という運用の柔軟性を付与出来ます。もっとも、那覇基地のF-15戦闘行動半径圏内では不用ですが。
Simg_3812 ただ、航空機そのものの運用基盤構築と併せ、例えば6機程度の少数機導入でも整備費用は1000億円に迫るものとなります。これにより、例えば弾道ミサイル防衛体制の整備延期、基地防衛装備の取得延期、新輸送機の取得数削減、次期練習機の導入計画延期、様々な弊害があるでしょう。加えて、南西諸島に飛行基地を創設する場合、既存飛行場の利用であっても、航空機整備施設の新設に既設飛行場の誘導路工事、騒音対策の住宅工事や周辺環境整備事業等に少なくない予算が必要となります。
Simg_9271 多くの方は、予算の問題は十分配慮しなければ防衛計画そのものが破綻してしまうとの認識を持っています。無理な国防費の支出を続けてきた米軍が歳出強制削減措置の勧告を2012年1月に受けていたのですが、これをもととした五年間で4900億ドルの削減措置でも不十分であり、今年3月に予算均衡法に基づく1兆2000億ドルの強制削減措置を強いられ、大打撃を受けました。国防は何事にも優先されるべきとの視点から、必要な予算は必要なだけじゃぶじゃぶ使えると夢を見られている方がいますが、アメリカは上記の通りになりました。
Simg_9840 現状の防衛費では、一割程度増額しても既存装備を定数代替することが難しくなってきています。必要な装備が不十分である現状で、新しい装備体系を少数とはいえ導入することは、果たして事業評価の面でどうなのか、特に那覇基地からのF-15で対応できる部分も大きいことから、そこまで先島諸島に部隊を配置させるよりは、那覇基地の能力を高め、併せて新戦闘機として調達されるF-35の配備数を造成することや、F-15の近代化改修の強化などを優先してすすめるべきではないのでしょうか。

北大路機関:はるな

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