北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望⑲ 輸出論とキャンセルのリスク

2013-04-10 23:34:10 | 国際・政治

◆防衛産業は過剰なリスクを好まない

 前回紹介した、輸出が防衛装備品を安くするので輸出するべきだ、という論点へのリスク、今回はこれをもう少しだけ踏み込んでみましょう。

Iimg_2946 我が国の90式戦車は自動装填装置と火器管制装置自動追尾能力付与により打撃力で今なお世界第一線級の打撃力を備えていますが、性能だけでは輸出できません。イギリスはかつて、輸出用シール1戦車を開発、チーフテン主力戦車を原型として複合装甲を備えた第三世代戦車として完成、開発を要請したイランへ輸出へ着手しようとしたところ、イラン革命が勃発し、キャンセルされてしまい、イギリス陸軍がチャレンジャーとして採用しています。

Iimg_0862 イギリスの場合はちょうど第三世代戦車を必要としていた時期と重なりましたため、イギリス軍に採用され、開発費を回収できましたが、開発し量産の段階に転換した際にキャンセルが入り、損失を被ることはあります。また、74式戦車をサウジアラビアがかつて導入を切望した時期がありましたが、実行していた場合、中東情勢を元に可否が左右される大きなリスクに陥っていたことも考えられたでしょう。

Iimg_9932 既に開発された装備であれば、このリスクは少ないのかもしれませんが、輸出用に仕様変更を行い失敗した場合、その損失を防衛産業はまさか自衛隊へ要求するわけにもいかず、さりとて簡単に第三国に転売するわけにも行けません。過去にこの特集で紹介していますが、もともと防衛産業の自衛隊向け生産は利益を度外視した、企業としては切り捨てたい分野という事も忘れてはなりません。

Simg_0563 事実、不採算部門があり、例えば自衛隊が91両を導入した水際防御の切り札、MLRSなどは最初日産自動車が生産していましたが、不採算部門であり、日産経営再建の際に切り離されることとなってしまい、辛うじて余裕があったIHIが引き受け手となった、そんなこともあるほど。

Iimg_1034 こうした状況下で、防衛産業がリスクを冒せるかと問われれば、そんなことはなく、しかもキャンセルのリスクはかなり大きいのです。例えば、潜水艦、日本の潜水艦を求める声は一応あるのですが、しかし、潜水艦輸出のトラブルと言いますと、ドイツの212型AIP潜水艦の事例を思い出さずにはいられません。

Iimg_5946 潜水艦、日本は毎年一隻を川重と三菱に交互発注し、二年間の機関に毎年一隻を就役、二か所の建造所を維持しています。どの国も毎年潜水艦を導入できるほど余裕はありませんので、日本以外の国では輸出に力を入れているのですが、ドイツでトラブルがあったのです。

Iimg_7516 ドイツがギリシャ海軍向けに建造した212型AIP潜水艦について、完成し、引渡も間近となったところで、ギリシャ海軍が212型潜水艦について海軍の要求性能を満たしていないとして引き取りを拒否し、建造費も支払えない旨通知してきたことがありました。この時期、ギリシャは財政難下にあり、単に建造費が支払えないためという可能性もありますが、非常に高価な潜水艦が一隻完成品のまま売れなかった、これは大きな問題です。

Simg_1017 日本がこうした境遇となった場合どうすればいいのでしょうか、一隻受注があり建造したところ、相手国が経済破綻、紛争当事国となり禁輸措置、大災害の導入費用支出不能、こうなった場合、企業は事故となった高額装備、建造費700億円のものを在庫とするには問題があります。

Simg_4233 海上自衛隊が買えばいい、こんな短絡的な意見も出そうですが、そもそも予算が無いので輸出するわけですので、これでは本末転倒、無理に購入すれば翌年度予算で潜水艦を調達出来なくなり、潜水案の建造所が維持できなくなるため、二重の意味で本末転倒になってしまう、これを忘れてはならない。

Iimg_5660 また、販売先を簡単に変えられるものではありません。同盟国アメリカと敵対している国、輸出が我が国の安全保障に影響を及ぼす国もありますので、どれだけ資金を積まれても、輸出できない国もあるのです。そして代わりに日本が買う、というのも長期的に見ればマイナスになってしまう。

Iimg_9502 急な情勢変化、戦闘機の分野を見てもいろいろあります。今話題のスウェーデン製JAS-39などは、チェコ空軍に採用が決定したものの大洪水被害の復興予算捻出で引き取れなくなってしまい、結局格安リースを提供することとなりましたし、ハンガリー空軍も購入の費用で難航しリースに、しかし、リースでは契約期間の十年後に返還されても、旧式化し老朽化しているため使いにくく、その後の難航を生みました。

Iimg_7400 スウェーデン空軍は最新型JAS-39グリペンNGの輸出を含めた自国向け20機をサーブ社に発注しましたが、これはグリペンNGの生産ライン維持のために、本来は輸出したいものの販路がないためスウェーデン空軍が誰も買わなければ引き取るという前提での発注でもあり、こうした手法は日本でとれそうにありません。

Iimg_7327 ほかにも思い出す限りではパキスタンへ輸出用のF-16がパキスタンの核実験強行で経済制裁により輸出できなくなった事例、タイへ輸出用のF-16がアジア通貨危機により経済が国際通貨基金管理下にはいってしまい、購入不能に。日本が防衛装備品の輸出を模索するのは前述の予算が無いためなのであり、防衛産業は手を引きたい分野として維持しているものなのですから、これでは解決できません。

Iimg_5138 そして、キャンセルのリスクですが、日本は国内の防衛産業で生産しているので、例えばミサイルの場合、毎年毎年着実に発注し、備蓄してゆくのですが、普通の国で輸入する場合は、途中で途絶する可能性も配慮し、一括発注するのが普通です、そういうのも生産国がこちらの全部隊配備完了まで生産を継続する保障がありませんから。

Iimg_0647 そこで、一括発注を、近年躍進が目覚ましいイスラエルのスパイク対戦車ミサイルからみますと、イタリアが各型150機ミサイル1000発以上、オランダは発射器227機、ポーランドはミサイル2675発、スペインが発射器260機とミサイル2600発、ペルーは小口ですがそれでも発射器24機とミサイル224発、こうした規模になります。

Iimg_0782 発射器一基あたりミサイル10発なら、自衛隊は恵まれているなあ、と変な関心をしつつも、仮に日本に一括千発や二千発単位で発注があり、それがそののちに前述のような致し方ない理由により、購入できない状況となりキャンセルされた場合、目も当てられません。

Iimg_3640 だから輸出するな、とは言わないのですが、輸出する場合にリスクを何処が支払うのか、財務省と防衛省がしっかりとした協定を結ぶなどの手続きを踏まなければ、防衛産業はその分野から撤退します、何故なら、民間企業なのですから。この点の討議を充分せず、リスクはあるがそれは商売だ、という意見は、それならば海外は勿論自衛隊にも納入しない、こう突きつけられた特に国はどうにもならなくなる。

Iimg_8478 そして、大量生産を行う場合に設備投資を企業は強いられます。しかし、設備投資に見合う需要が急になくなってしまえば、これも損失を被るのです。使わない工場でも課税されますので、そんな見通しのきかない分野ならば、そもそも防衛需要だけに付き合う、という事になるのではないでしょうか。それが限界というもので、輸出に過剰な夢を抱くのは余りに非現実的と言わざるを得ません。

北大路機関:はるな

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新田原基地航空祭2011詳報⑫ 空挺降下展示、南九州の大空に花開く落下傘の一群

2013-04-09 22:39:40 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆精鋭 習志野第一空挺団、新田原基地へ降下

 新田原基地航空祭、眺鷲台撮影位置から基地へ移動し、前回の掲載分まで地上展示や装備品展示を撮っていました。

Nimg_8976 遠くから先ほど離陸したC-1輸送機のエンジン音が聞こえてきます、見えてきた速度感あふれる輸送機の機影、C-1輸送機には空挺降下展示に向けて空挺隊員が続々と機内へ収容されていく様子が見え、そして今まさに空挺降下展示として新田原基地へ落下傘降下を開始しようと、基地へ進入してきたところ。

Nimg_8980 機体の側面ハッチは既に開け放たれ、今しも降下を開始する準備を整えた習志野第一空挺団の精鋭が見えます、先んじて基地より効果誘導を行う要員が展開していて、この地上からの誘導に従い、まず一名が降下、続いて次々と降下へ移る、空挺降下の基本的な流れは以上の通り。

Nimg_8986 空挺降下、空挺強襲は敵が意図しない地域に迅速な兵力展開が可能で、特に本土防衛に際しては内陸侵攻を受けた際に補給路を叩く能力や、緊要地形の先制確保など、攻勢と防御双方にその威力を発揮するのが空挺部隊の大きな威力、即ち日本侵攻を企てる勢力は仮に大兵力を着上陸させることに成功したとしても、その後にリスクを強いらせることが出来る。

Nimg_8993 空挺部隊は一人ひとりに精強を求められます。何故なら、空挺部隊は降下すればそのまま実態は軽歩兵であり、輸送機の能力では展開できる重火力や車両が少なく、仮に展開したとしてもこれを支える後方支援が継続しにくい、だからこそ一人一人に高い能力が求められる、ということ。

Nimg_9004 降下してゆく隊員。第1空挺団は、本部中隊、第一普通科大隊、第二普通科大隊、第三普通科大隊と空挺特科大隊、通信中隊、施設中隊、空挺後方支援隊、空挺教育隊を以て編成されています。各普通科大隊は三個中隊を基幹としており、以前の一個普通科群基幹の編成から実戦的な三単位編成へ転換されました。

Nimg_9247 再度C-1が進入を開始します。快晴の青空にぽつんとC-1輸送機が展開してくる様子が見えます。毎年正月明けに習志野にて行われる空挺降下訓練始めでは三機から六機の輸送機が支援に参加するのですが、航空自衛隊の輸送機も十分ではなく、此処が悩みどころ。

Nimg_9250 降下開始。なお、落下傘降下は正しい判断と飛び降りる胆力に降下完了後の迅速な機動と装備の運搬、個々人の機転などが求められ、これが結果的に精鋭の要員を多数そろえる背景となります。一方、落下傘降下では車両なども投下されるのですが、衝撃で破壊されたり、破損し即座に稼働できない車両も少なからず出てくるという。

Nimg_9256 他方で、落下傘降下は見ての通り迫力があり、多数の輸送機で同時に空挺降下を行うことは、例えば自国内での占領地域への空挺強襲を実施した場合、相手側に対し無視できない動揺を強いると共に、我が方に対し心理的な高揚をもたらす、このような無視できないものもあったりします。

Nimg_9259 空挺降下の利点と限界、この均衡を探る場合、まず空挺部隊は落下傘降下を基本とした特技として各隊員にその能力保持を求めると共に、空挺部隊とは輸送機により展開、それも落下傘だけにより降着するのではなく、航空基地や野戦飛行場に着陸し車両を展開する、こうした運用との連携が図られるべきでしょう。

Nimg_9263 軽歩兵である空挺部隊ですが、この空挺部隊を以て航空基地などの滑走路と飛行場機能を把握してしまえば、あとはその空港の滑走路を利用し、直接車両や人員を展開させることが可能です。落下傘を装着した隊員よりも普通の完全武装要員のほうが同じ輸送機でも多くを運ぶことが出来ます。

Nimg_9273 第1空挺団は三個普通科大隊が高機動車による自動車化に続いて、どんどん軽装甲機動車の装備による装甲化を進めていますが、むしろ96式装輪装甲車と軽装甲機動車を有する中央即応連隊のような装甲化部隊を輸送機により緊急展開させる、空挺部隊の在り方を考える必要もあるのかな、と。

Nimg_9293 さらに続いてもう一度C-1が空挺降下へ進入します。このC-1輸送機ですが、輸送能力が当初設計要求を大きく上回る時代を迎えると共に初飛行から40年以上を経て、飛行開発実験団などに装備される一部の機体を除き老朽化が激しく、後継機として開発中であるC-2輸送機へおきかえられます。

Nimg_9294 今後の南西諸島防衛を考えた場合、緊要地形の先制確保をおこなうには離島に緊急展開する部隊はヘリコプターによる空中機動と空挺部隊による空輸展開以外あり得ないわけですから、機動戦闘車の大量配備や、現在の重迫撃砲に留まらない軽量火砲など、落下傘で運ぶものと同時に純粋な空輸で運ぶものとを併せて整備するべきでしょう。

Nimg_9302 大空に広がり花開く落下傘。C-1輸送機の後ろに一列と並ぶらか三と、地上のF-15やF-4,そして無数の観衆がその様子を見上げている。地上の景色と共に写真の構図に入れると、新田原基地で撮った空挺部隊の降下展示、という情景を強調できますね。

Nimg_9312 降下してゆきます。なお、日本の落下傘部隊、即ち空挺部隊は、パレンバン強襲やメナド空挺作戦などの太平洋戦争初期に大きな戦果を挙げ、沖縄戦での義烈空挺隊のような強襲というより特攻というべき悲劇もありましたが、空挺作戦、それも空挺作戦で成功した経験は、比較的多く有しています。ある意味伝統と共に今在る空挺団、今後も様々な任務と困難へ臨む姿を応援したい。

Nimg_9325 空挺降下展示を完了したC-1輸送機が基地へ戻ってきました、着陸します。新田原基地へ入って最初の飛行展示がこの通り完了したのですが、午後の飛行展示は続いて航空祭の目玉の一つとも呼ばれるブルーインパルスによる飛行展示が開始されます。このあたりは次回紹介しましょう。

北大路機関:はるな 

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駒門駐屯地創設53周年記念行事(2013.04.07) PowerShotG-12撮影速報

2013-04-08 23:47:54 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆最新鋭10式戦車、第1師団配備開始!

 強風に防風、東海道本線が一時熱海から米原の間で運転見合わせとなりました昨日は駒門駐屯地祭が執り行われました。

Pimg_0191 駒門駐屯地祭は第1師団への10式戦車配備、重ねて日本最初の最新鋭11式戦車回収車(11式装軌車回収車)の一般公開が行われるとの発表でしたものの、豪雨の予報が出ており、事実前日御殿場へ向かう途中、浜松城から三方原古戦場を見ているときに豪雨、御殿場市内に到達したときには東海道本線一部不通という状況で、昨年見つけた美味しいお店まで豪雨の中進んだのですが、当日は幸い、晴天に恵まれましたのが幸い。

Pimg_02_09 大荒れの天候は前日日本全土に台風並みの強風と豪雨をもたらし、気象庁は不要不急の外出を控えるように繰り返し、JR東海は列車運行本数を大幅に減らす運行体制に、前夜は静岡県内で広く浸水被害がありましたが、足を運んだ駒門駐屯地祭、この模様をコンパクトデジカメPowerShotG-12の写真にてお伝えしましょう。

Pimg_0088 駒門駐屯地、静岡県御殿場市のJR御殿場線富士岡駅近くにあり、駐屯地からは御殿場線の車両、特急あさぎり沼津乗り入れ時代にはその特徴的な車両が通過する様子が見え、東名高速道路からも眼下に駐屯地とともに並ぶ戦車が広がる様子を見ることが出来る駐屯地です。

Pimg_0090 駐屯部隊は、国際活動教育隊、第1機甲教育隊、第1戦車大隊、第1高射特科大隊、第1後方支援連隊第2整備大隊支援隊、第364施設中隊など、中央即応集団隷下部隊、東北方面混成団隷下部隊、第1師団隷下部隊が共に駐屯しており、駐屯地司令は国際活動教育隊長伊崎義彦1佐が務めています。

Pimg_0093 指揮官訓示へ整列した隊員、厳しい国際情勢と共に、南海トラフ巨大地震へ装備人員共に充分ではないが諦めない、という点を強調されました。国際活動教育隊は人員規模でそれほど多くはないのですが大臣直轄部隊ということで駐屯地司令と指揮官を兼ねていますが、その前は第一機甲教育隊長が駐屯地司令を務めていました。

Pimg_0100 観閲行進、国際活動教育隊の軽装甲機動車、教育支援小隊の車両です。写真撮影ですが、今回は大雨に暴風という想定でしたので、装備の重点を防水防滴装具と雨具を中心に、EOS-50Dはお留守番として、EOS-7Dに18-200mmを、長物に120-400mmを携行しつつ、併せて予備にG-12を携行してゆきました。

Pimg_0119 第1高射特科大隊の93式近距離地対空誘導弾、これら写真はG-12で撮影しました。撮影方法は折畳小型三脚を携行し、G-12にコード式のレリーズを装着、EOS-7Dでズームを駆使して自在な写真を自在な角度で撮影しつつ、角度を計算して定点に向けたG-12のレリーズを操作し、撮影したもの。

Pimg_0126 81式短距離地対空誘導弾、第1高射特科大隊の車両で、この三両で一セットを構成、大隊隷下の中隊に四個セットが配備されています。駐屯地で売られていた高射特科Tシャツに“高額装備でごめんね”旨も書かれていましたが、本装備一セットで装甲車に換算すれば二個中隊分、つまりこの一個中隊で二個普通科連隊を装甲化できる予算を投じている、ということ。それだけ防空を重視している。

Pimg_0140 第364施設中隊の観閲行進、本中隊は座間の第1施設団第4施設群に所属する施設中隊で、第4施設群は、座間駐屯地の本部管理中隊、駒門駐屯地第364施設中隊、座間駐屯地第388施設中隊、古河駐屯地第389施設中隊、座間駐屯地第390施設中隊を以て編成されています。

Pimg_0156 第1戦車大隊の観閲行進開始、10式戦車の雄姿、遂に第1戦車大隊の74式戦車が置き換えを開始しました。最後の最後まで61式戦車を運用し続け、20世紀最後にようやく74式戦車で完全充足した第1戦車大隊は、いま、世界で最も進んだ10式戦車に大隊旗を掲げ観閲行進へ臨みました。

Pimg_0170 凄い近代化の進み具合です、2010年にようやく軽装甲機動車の配備が開始され、それまでは高機動車で普通科隊員が頑張っていた第1師団が、新鋭戦車を第一線部隊として最初に受領、その他の装甲車と共に観閲行進を進んでいるのですから、これはある意味驚きでしょう。

Pimg_0186 10式戦車は、第3世代戦車を圧倒する火力と情報戦闘力に同水準以上の防御力を有しつつ、機動力を戦術戦略面で強化した新しい戦車の概念を具現化させたもの。第1戦車大隊への10式戦車は第1中隊から開始されました。第1戦車大隊は、大隊本部と第1中隊に第2中隊の編成、戦車数では第1機甲教育隊よりも少ないのですが、新鋭戦車の導入で一際目立つようになった、ということ。

Pimg_0190 この戦車について思うのは、滝ヶ原駐屯地の評価支援隊が隷下に置く第一機械化大隊のように、戦車中隊一個と装甲化された普通科中隊二個から成る編成がある意味理想なのでは、という事。着上陸という従来脅威が今なお残る日本では欧州が実用化したような高度な装甲戦闘車よりも戦車の直接戦闘火力と普通科隊員の降車戦闘との連携が重要になるのではないでしょうか。

Gimg_0205 10式戦車は、無段式変速機が誇る加速力で90式戦車を遙かに凌いでいますし、後退速度も凄い。攻撃力は情報共有による共同交戦能力はもちろん、かなり激しい機動下でも主砲を正確に射撃し命中させられます。また、防御力を維持強化しつつ、軽量化する技術を完成させましたので、輸送という戦略機動性も高い、これはもっと広く装備できないものか、と。

Pimg_0201 これだけの戦車を開発できたのですから、一個普通科連隊を三個機械化大隊編制として、普通科六個中隊と戦車三個中隊で大隊が独立して運用できる体制を構築すれば、警備管区を連隊が保持しつつ、一個大隊を派出し動的防衛力に充てることが出来ます。また、旅団は連隊を置かず五個機械化大隊を基幹とする編成としてみるのも一考の価値はある、と言えるやもしれません。

Gimg_0210 一方で、10式戦車の駆動系を中心にした整備を如何に野戦時に継続するかという課題、共同交戦能力の高さが大きな10式戦車ですけれども、データリンクする相手がどこか、という問題もあります。このてん、現在普通科部隊には軽装甲機動車の大量配備が進んでいますが、一個班を二両に分け、中隊あたりの装甲車数が増えますので、その分多くのデータリンク情報端末が必要となり、この課題に今後どう挑むか考えねばならない。

Pimg_0217 第2中隊の74式戦車、まだまだ現役ではあるのですが、耐用年数を迎え除籍される車両が年々多く、その数を補う10式戦車の導入が進んでいません。民主党政権時代に当時600両の戦車定数を200両削り400両定数とし、その200両分の予算を以て南西諸島防衛強化を図る、という方式が明示されていたのを当時の新聞記事を読み思い出したのが先週です。

Pimg_0225 南西諸島防衛強化と言っても具体策が当時出されていませんでしたので、どうせ政権公約に5000億円防衛費削減を明示していた与党は体の良い予算削減に置き換えるでしょうから、それならば非効率を承知でいっそ200両の戦車を、沖縄本島、久米島、大東島、石垣島、宮古島、西表島、与那国島に各二個中隊を分散配置したほうがまだまし、と考えていました。実際、南西諸島防衛の具体策は明示されず純減になりましたが。

Pimg_0235 11式戦車回収車、本邦初公開の装備です。11式装軌車回収車として装備化された車両ですが、11式戦車回収車と呼称されていました。10式戦車の第1戦車大隊配備に伴い、従来の78式戦車回収車を置き換える後継装備として、第1後方支援連隊第二整備大隊戦車直接支援隊に装備された、配備されたてのもの。

Pimg_0241 新しい11式戦車回収車は車体を10式戦車のものとしています。90式戦車回収車と似ていますが、第1後方支援連隊には78式戦車回収車はまだ一部残り、第一機甲教育隊には90式戦車回収車が配備中、出来れば、78式戦車回収車と90式戦車回収車に11式戦車回収車の並びがみてみたかった。

Gimg_0252 第1機甲教育隊の観閲行進、第4中隊の96式装輪装甲車が進んでゆきます。戦車大隊本部や後方支援連隊の戦車直接支援隊への装備で、本土の普通科部隊には殆ど普及していませんが、多くの駐屯地で見る事となった装備、本部班や直掩普通科隊員の輸送に整備要員の輸送に用いられますが、戦車は長距離機動で戦車輸送車にて輸送されますので、ゲリラコマンドーからの護衛にもこの種の車両が随伴する必要はあるのかも。

Pimg_0260 第一機甲教育隊の87式偵察警戒車、偵察隊は機甲科の所属です。ところで、第一機甲教育隊第1中隊の所属なのですが、第1中隊の本部に装備されている装備で、他に中隊は戦車で充足しているのでしょうか、本年は少々第1機甲教育隊の戦車が少なかったように感じましたので、そんなことが、ふと。

Pimg_0284 第2中隊の74式戦車、第1機甲教育隊は四個中隊編制で、武山駐屯地の東部方面混成団に所属しています。東部方面混成団は第1教育団と即応予備自衛官主体の第31普通科連隊を第1師団から配置換えしたものですが、機甲教育隊により東部方面隊有数の戦車部隊を有していたりする。

Pimg_0289 90式戦車、第3世代戦車としての装備を整えつつ、自動装填装置の採用による射撃能力の強化、自動追尾装置による戦闘能力の向上が行われ、現在、データリンク能力の追加が第2師団を中心に進められています。世界的に火力では高い水準にあり、機動力も大きいのですが、日本本土での運用には重量が大きく、北海道に重点配備されています。本土では富士教導団とここ第1機甲教育隊、あと9は武器学校に配備されているのみ。

Pimg_0299 観閲行進はこのように進みました、こののち訓練展示に装備品展示と進みましたが、G-12は定点撮影を広角で行うのみですので、激しく機動する訓練展示をこのG-12で撮影することは出来ず、EOS-7Dで撮影しました。ですから、その模様は別の機会に紹介できれば、とおもいます。荒天予報は好天が実際で、風が強かったものの幸い雨天には至りませんでした。現地でご一緒いただきました皆様、最後になりましたがありがとうございました。

北大路機関:はるな 

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朝鮮半島危機、北朝鮮弾道ミサイル日本海側へ移動 防衛省ミサイル破壊措置命令等を発令

2013-04-07 22:57:43 | 防衛・安全保障

◆菅官房長官、不測の事態への備え強調

 NHK等の報道によれば、菅官房長官は本日、不測の事態に備え弾道ミサイル破壊措置命令の発令を検討していることを表明、続いて今夜、小野寺防衛大臣降りミサイル破壊措置命令が発令されました。

Img_9945 今回のミサイル破壊措置命令は、北朝鮮の弾道ミサイル部隊が日本海側のミサイル発射施設に向けての移動を開始していることが衛星画像の解析により指摘されており、日本のほぼ全域を射程へ収める中距離弾道ミサイルがこの発射施設へ運び込まれているとの分析に依拠するものです。

Img_1480 一方で、小野寺防衛大臣はミサイル防衛部隊の展開については“国民に不安を与えないように命令の詳細を公表するのは避けたい”と記者会見にてのべていますが、これは不安を与えないようにするという一方で、同時にどの地域に重点配備を行っているかの情報を北朝鮮側に与えない、という配慮がなされていることも大きいでしょう。

Img_5652 弾道ミサイル実験であった場合に日本国内への破片落下の可能性が生じた場合、もしくは日本本土が直接ミサイル攻撃に曝された場合にそれぞれミサイルが日本国内に落下し被害を及ぼす前に高空にて迎撃し破壊、想定される被害を未然に防ぐことがこの破壊措置命令の任務です。

Img_6352 しかし、今回は非常に大きな難易度が伴います。こういいますのも自衛隊へのミサイル破壊措置命令は過去に三回発令されていますが、何れもミサイル実験にあたる飛翔体の発射が行われるとの日時と経路の発表が北朝鮮側により行われ、これに基づいて破片落下にそなえる、というものでした。

Pimg_2350 即ち、大まかな経路に沿って飛翔することが確認され、時間帯なども公表されていたわけなのですから、一定の時間帯において飛翔経路の真下を中心に開会に当たっていればよかったのですが、今回は不意に発射される可能性があり、経路も目標も発表されず、分かりません。

Mimg_2837 言い換えるならば、日本全土が危険区域となるため、前回のように人口は少なくとも万遍なく迎撃部隊を張り付ける、という方法は取れませんし、どの期間まで迎撃態勢を継続するのかも未知数となるわけですので、どの地域にミサイルを配置するのか、ローテーションを如何に維持するのか、厳しい問題となるでしょう。

Himg_9408 これが、どの地域に優先迎撃能力を付与しているのか、小野寺防衛大臣がミサイル破壊命令に伴う部隊行動の詳細を今回発表しなかった背景にあると考えられるわけです。即ち、予算上全ての地域を万遍なくミサイル防衛部隊で配置することは物理的に不可能であるわけで、その中で手薄な地域を敢えて暴露することは避けなければならない、ということ。

Mimg_6288 イージス艦と全国レーダーサイトによる監視と共に、PAC-3部隊の首都圏とともに京阪神と中京地区、拠点となる基地を中心にミサイル迎撃準備が行われることとなるでしょうが、前述の通り厳しい状況も多々あり、しかし重要な任務でもありますので、なんとか頑張ってほしいところです。

北大路機関:はるな

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北朝鮮危機 その挑発と半島有事の可能性、警備強化と邦人保護、我が国の対応を考える

2013-04-06 02:51:13 | 防衛・安全保障

◆全面戦争は常識では考えられない

 北朝鮮の韓国及びアメリカへの繰り返される挑発は、その目的が不明確であるのですが、危機的状況が続いています。

Img_7857 朝鮮半島有事ですが、北朝鮮側の目的が韓国政府の崩壊と半島武力統一に置かれる限り、成功の余地はありません。燃料が不十分であるため、半島を南下しきれる余地がない、此処に尽きます。一方で北朝鮮の主権維持は、少なくとも米韓両国に武力併合を行う余地は無く、特に併合した場合の経済的負担の大きさがあるため、どちらかと言えば体制崩壊よりも体制転換、ミャンマーが成し遂げたような平和的民主化を望んでいることが見て取れます。この点で、北朝鮮が軍事的冒険を行う必要はないはずなのですが、意図がつかめないところ。

Bimg_1788 可能性は低いですが、最大規模で北朝鮮が南進した場合を想定しますと、まず北朝鮮は軍事境界線付近に世界最大の密度にて砲兵部隊とロケット砲兵を展開させ、170mm砲など長距離砲の一部は韓国の首都ソウル近郊へ、ロケット弾の一部はソウル中心部を射程に収めているため、開戦直後の数時間は多数の砲兵火力を以て韓国に大きな人的消耗を強いることはできるでしょう。ただ、韓国側はこれを想定したシェルター退避訓練を定期的に実施しているため、国境付近の砲迫射程圏内を除けば混乱は一時的でしょう。

Bimg_0785 韓国軍は粗雑な国産装備と維持費不足の輸入装備により、その能力は決して大きくはありませんが、数は一定数確保しており、燃料備蓄等で北朝鮮よりはまだ能力が高く、1000万都市のソウルへ北朝鮮軍が侵攻することは非常に難しいでしょう。特に韓国側にも砲兵火力は一定数あり、北朝鮮軍砲兵は標定され、大打撃を受けるため火力投射が持続できません。空軍力でも韓国と北朝鮮では、北朝鮮軍機が飛行するだけで報じられるほどに稼働率が低く、海軍に至っては沿岸海軍としてみた場合でも装備が古すぎ話になりません。

Aimg_6797 ですから、軍事的冒険の強行は難しく、離島への砲撃や特殊部隊少数の浸透、小型潜水艇による港湾の機雷封鎖が武力紛争として現実的に考えられる規模、これ以下の挑発としては核実験の再開と弾道ミサイル実験を行う程度でしょう。ただ、我が国としては、隣国であり多くの邦人が居留し、経済活動を営んでいるのですから、最悪の場合をある程度考える必要があります。もちろん、自衛隊が元山に強襲揚陸する、というような選択肢は元々あり得ませんが、邦人保護と国内警備強化などは考えられるでしょう。

Bimg_1900 国内警備強化、朝鮮半島の緊張に際して日本が取らなければならない対策はここにあります。北朝鮮空軍の航空機は戦闘行動半径で最も南側の基地を使用した場合でも日本には展開が非常に難しく、最も強力なMiG-29を全て展開させても、小松基地の第六航空団は十分能力を発揮できるでしょう。ただ、武装工作員の浸透は大きな脅威です。かつて日本は第二次大戦中に米軍のB-29戦略爆撃機を航空戦で撃退できなかったため、歩兵と騎兵を展開させ直接基地を狙う大陸打通作戦を実施しました。これが踏襲される可能性があるということ。

Img_1333 北朝鮮の特殊部隊、もちろん本土からの掩護や航空機支援を受けられないため、実質は軽歩兵の遊撃隊に過ぎないのですが、自衛隊航空基地や米軍施設、海軍基地や燃料補給処に弾薬庫などの施設、原子力発電所を含む発電施設や公共交通機関に対する、攻撃が加えられることが想定されます。特にこうした施設攻撃は国内社会を混乱させることで厭戦世情を醸成出来るとともに、防御側は施設が非常に多く、攻撃側が自由に目標を選べるため、全てを守り切ることが非常に難しい。

Img_0196_1 これを防ぐためには、警察力を動員し沿岸部の監視と検問を実施すると共に、銃器対策部隊などの即応体制を高め、併せて武装工作員浸透の兆候を受けた際には自衛隊法に基づく治安出動命令を以て、重要施設警備や機動巡察を行うことが必要となるでしょう。施設警備訓練や市街地戦闘は自衛隊も90年代終わりごろから重視しています。全てを守り切ることは難しいと記述しましたが、同時に軍事的に効果ある目標の破壊も同時に難しいことを意味しています。福島第一原発事故でもいい方話悪いですが被害は最悪を避けていますし、日本は意外と堅固です。

Aimg_24371 自衛隊の能力で北朝鮮の軽業師のような身動きに対処できるのか、と北朝鮮特殊部隊の公開映像を見た範囲内で、不安に思われる方もいるやもしれませんが、軽業師のような格闘戦術が軍事的効果を発揮したことは近代戦史でありません、映画では活躍していますが、北朝鮮の公開映像を見る限り、相当仮設敵と事前の打ち合わせをしなければ成り立ちません。重要なのは的確な小銃射撃、これは韓国の朝鮮戦争時代の英雄、白善燁将軍も対ゲリラ戦で述べているもの。

Img_3734 不用意に動かない、不用意に音を立てない、この徹底で歩兵部隊は特殊部隊をかなりの面で制圧できます。自衛隊は移動監視隊など監視装備を高めてきていますし、警備任務でも北朝鮮の武装工作員はかなり制圧出来るのだろうと考えます。武器使用に関しては、指揮官への裁量を持たせることが重要となりますが、行使されたことはないのですけれども、この実施の枠組みに関しては、自衛隊のイラク派遣などである程度培われています。そういう意味で、自衛隊はかなり頼りになりますし、警察力も期待できるでしょう。

Img_7166a 武装工作船の接近ですが、これも初の海上警備行動命令を日本海で発令し工作船を追跡した時代と比べれば法整備はかなり大きく行われ、臨検と制圧を行う特殊警備隊の編成と訓練も行われていますし、機関銃などの追加もおこなわれています。そして海上保安庁の巡視船も、防弾能力や警備執行能力として管制式機銃の搭載などが行われていますし、最初の海上警備行動命令発令から十年以上の期間でどれだけ自衛隊と海上保安庁が準備したか、無為に過ごしたわけではありません。

Aimg_0154 武装工作船は、沿岸部に接近した場合、意見見分けがつかないことが指摘され、特に偵察要員揚陸任務に当たる工作船は漁具の不搭載や通信用アンテナなどで判別されるとの海上保安庁の報告もありますが、この点を過剰に信用する場合、偽装されると逆にわかりにくくなるのが難しいところです。ただ、朝鮮半島有事となれば朝鮮半島周辺での漁業が不活性化しますので、ここをもとに航空哨戒を強化し、武装工作船への警戒という任務は行う事、ある程度現実的なのだと考えます。

Img_5656i 邦人救出、朝鮮半島有事で最も危険なのはこの分野です。特に邦人が最も多く居留するのはソウル、最大の大都市であると共に軍事境界線から近く、空港と空軍基地が日本にとり使用しにくくなる可能性があります。特に人数がかなり多いわけで、東京の外務省が渡航危険情報と退避勧告を出した場合、空路や、場合によっては鉄道などで自力避難することはかなりの人数が出来るでしょう。しかし、事業継続などで最後の人員が残る必要はありますし、この場合には自衛隊が邦人救出任務を行わなければならなくなる場合も想定すべきでしょう。

Himg_6118 この難しさは、安易に外務省が退避勧告を出した場合、もしくは渡航危険情報を出しただけでも韓国経済に深刻な打撃を与えてしまう事となるのです。観光収入一つをとっても日本人観光客の韓国観光業への影響は非常に大きなものがありますし、何よりも韓国の隣国である日本政府が退避勧告を出した場合、日本以外の国で同じく退避勧告を出さない国というものは考えられないため、これを行ってしまうと、韓国の観光業は東日本大震災で日本が受けた影響よりもはるかに大きくなる。

Gimg_8992 日本の邦人救出任務は、航空自衛隊の輸送機、政府専用機は潜在的にこの任務を想定しているとも言われるのですがこれに空中給油輸送機に輸送機を併せて投入し、併せて海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦と輸送艦が邦人輸送に用いられることとなるでしょう。もちろん、邦人救出の輸送は民間船舶と民間機ももちられるのでしょうが、最も危険な地域についてはどうしても自衛隊が展開しなければなりません。この点で、一応かつての橋本内閣時代以前に韓国政府と事前協議は行われているときくのですが、これが試されます。

Gimg_9092 港湾や空港まで自力にて邦人が集合することが望ましく、現在の自衛隊法では集合地域まで迎えに行く、これを想定して集合地区となる空港と港湾の警戒、必要に応じて保護下の邦人と自分を防護するために武器使用、火力の投射を含めて認められているのですが、ただ、集合地域まで移動することが現実的であるのかについては議論の余地があります。アルジェリアガスプラント邦人襲撃事件にて、この必要性は再討議されたのですが、残念ながら法整備を行ったとしても今回は自衛隊の準備が間に合いません。

Img_0551 ただ、自衛隊は誘導隊として90年代終わりごろから邦人輸送の訓練を続けています。邦人輸送とは救出という表現も行うことが出来るのですが、施設に集合してもらい、これを輸送する、と部分を強調するために邦人輸送という言葉が選ばれたようです。一方、この邦人輸送ですが、自衛隊は実際に邦人輸送の実任務を行っています、イラクで邦人襲撃事案を受け外務省が退避勧告を出した際、サマーワ駐留自衛隊部隊が邦人報道陣を中心に国外への退避への輸送を行いましたし、アルジェリア邦人襲撃事案の生存者輸送もこれに当たります。

Img_3683a このように、現行法で出来る事は限られていることは確かなのですけれども、すでに自衛隊は邦人輸送任務を実際に行っているのですから、現行法の範囲内で行うことが可能な邦人輸送任務は、確実に実施できるでしょう。ただ、邦人退避勧告は、前述のように行った時点で韓国経済に大きな影響を与えてしまいます。北朝鮮が武力侵攻を行う時期を真剣に見極め、その上で早すぎず遅すぎず行う、情報収集と情報交換が何よりも重要となり、日本の情報取集能力が試されるでしょう。

Aimg_2372_1 北朝鮮による、このほかの日本への影響は、弾道ミサイル事件による日本周辺へのミサイル攻撃の実施、そして潜水艦による米軍艦艇を標的とする機雷敷設でしょう。ミサイル攻撃に際しては、昨年十二月の実験のような時期と時間帯を明示することはありませんでしょうから、自衛隊がこれまで研究し訓練し整備してきた弾道ミサイル防衛体制がどの程度機能するのか、国民へ退避を呼びかけるJアラートの弾道ミサイル警報を併せ、その能力が試されることとなる。

Img_9192 機雷敷設ですが、北朝鮮の外洋に出ることが可能な潜水艦は原型が第二次大戦直後のソ連製潜水艦ですので、ほぼ確実に海上自衛隊の対潜哨戒網で捕捉することが出来ますし、稼働数も多くはありません。潜水時間と水中騒音から海上自衛隊の潜水艦と比較できないほど旧式です。ただ、小型潜水艇が艇内に予備燃料を最大限搭載し、我が国近海へ接近する可能性、偽装漁船による国際法で禁止された浮流機雷の投射、これは考えられるでしょう。

Img_1122 ただ、これをやりますと、北朝鮮東岸の日本海ではロシアの航路を、西岸の黄海では中国の航路を、それぞれ危険にさらしますので、これも実際にやることが考えられるのか、と問われますと、その可能性は低いやもしれません。しかしながら、常識として考えられないことを現状として北朝鮮は行っているのですから、この行動そのものが不確定要素で危険なのです。一方、この行動に利益は無いのだ、という事と、民主化と緩やかな体制変革が現指導者の政権と将来の繁栄を担保するということを説得する事こそが、今求められるのでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十五年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.04.06・07)

2013-04-05 23:07:32 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 新年度最初の週末は爆弾低気圧直撃にて大荒れの予報ですが、皆様如何お過ごしでしょうか。

Gimg_3794 今週末から、習志野、宇都宮、新町、駒門、熊谷、春日井と新年度自衛隊行事が早速始まります。習志野は千葉の、新町は群馬県高崎市、駒門は静岡県御殿場市、春日井は愛知県春日井市で、春日井以外は関東の行事、そしてこのほかに名古屋市の守山にて桜フェスティバルが行われる、とのこと。

Gimg_39_47 習志野駐屯地祭は第一空挺団創立記念行事で、第一空挺団の行事として最も有名なものは毎年一月の第一空挺団降下訓練始めにて実施される訓練展示ですが、習志野駐屯地祭では式典と加熱後進などが行われます。なお、例年訓練展示などは行われないのでご注意ください。

Gimg_3301 駒門駐屯地祭、第一機甲教育隊と第一戦車大隊という戦車計六個中隊が駐屯し、第一高射特科大隊と国際教育隊が駐屯しています。本年は昨年の第一機甲教育隊に続き第一戦車大隊へ最新10式戦車が配備となり、併せて11式戦車回収車も配備となりました、今週末最も注目の行事と言えるやもしれません。

Gimg_6436 宇都宮駐屯地祭、緊急展開部隊である装甲化された中央即応連隊と第12特科隊の駐屯地で、特に中央即応連隊は第一空挺団と並び自衛隊最精鋭部隊、訓練展示模擬戦が行われ、重機関銃搭載の装甲車を最大限活かした戦闘展示、こちらも迫力の行事として知られています。

Gimg_6354 新町駐屯地祭、明日土曜日に予行が一般公開され、日曜日に本番が公開されます。第12後方支援隊と第12対戦車中隊、第12施設中隊の駐屯地です。対戦車隊は現在、師団・旅団直轄部隊がどんどん整理される中、空中機動重視で戦車を有さない第12旅団では重要な部隊であり、この点から注目の行事と言えるでしょう。

Gimg_16_81 守山駐屯地祭、守山駐屯地の一般開放が日曜日に桜フェスティバルという形で行われますが、安芸に行われる師団祭のような観閲行進などの行事は行われず、部内の守山駐屯地創設54周年記念日とともに、駐屯地の桜並木を一般に開放するもので、資料館なども開放されるとのこと。

Gimg_2622 春日井駐屯地創設46周年記念行事、毎年三月に行われる春日井駐屯地祭が本年は一ヶ月ずれ込み四月の実施となりました。第10後方支援連隊、第10施設大隊、第10偵察隊などが駐屯、訓練展示では毎年、戦闘回収展示や偵察隊の近接戦闘展示など、創意工夫が特色の行事となっています。

Gimg_7086 熊谷基地祭、埼玉県の熊谷基地は航空自衛隊の教育部隊の基地で滑走路はありませんが、東日本大震災前では例年ブルーインパルス最初の飛行展示行じとして知られていました。本年は飛行展示と装備品展示等が予定されています。他では見られない通信系の装備なども展示されます。

Gimg_9273_1 海上自衛隊の週末基地一般公開について。佐世保基地週末一般公開は中止、6日と7日ともに中止です。舞鶴基地一般公開は6日桟橋開放、7日広報担当艦上甲板一般公開が行われます、見学時間にご注意ください。呉基地日曜日一般公開は7日に護衛艦あぶくま一般公開です。大湊基地一般公開は6日土曜日と7日日曜日で見学時間が短いのでご注意ください、護衛艦ちくま一般公開の予定です。このほか、大湊基地にて土曜日と日曜日潮干狩り大会などが行われるもよう。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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与那国自衛隊駐屯計画撤回の可能性、防衛省は石垣島へ新駐屯地と沿岸監視隊配置検討

2013-04-04 23:23:27 | 防衛・安全保障

◆与那国町用地交渉難航、礼文分屯地方式が理想

 台湾に隣接する与那国島、産経新聞の報道によれば、自衛隊の誘致を行った与那国町が自衛隊へ迷惑料10億円の一時金を求めたことで、防衛省は与那国島ではなく同じ南西諸島の石垣島へ配置する方向で検討を進めているとのことです。

Nimg_0842 与那国町は、自衛隊用地26ヘクタールの借地料を自衛隊が想定する倍以上の金額を提示、加えて迷惑料として10億円を要求してきました。10億円は一時金で、表現を協力金と切り替え防衛省へ求めましたが、元々与那国町が自衛隊の駐留を求めてきたものですので防衛省としては応じることに難色を示し、今回の石垣島駐屯地案となりました。

Nimg_0520 石垣駐屯地案、防衛省が考えるのは、沿岸監視隊と基地通信隊から成る100名規模の要員を駐屯させ、情報収集を行う事でしょう。沿岸監視隊は北海道の稚内分屯地に第301沿岸監視隊が50名、同じく北海道の標津分屯地に第302沿岸監視隊が50名規模で置かれ、このほか今津駐屯地に中部方面移動監視隊が置かれています。

Img_7403h 北海道の沿岸監視隊は50名規模の部隊となっているのに対し、新編される南西諸島の沿岸監視隊の駐屯地駐屯規模がが100名規模の部隊となるのは、那覇駐屯地の分屯地ではなく通信機能を有する駐屯地として基地通信隊を置くためであるか、もしくは警備小隊を隊本部に置くためではないかと考えられます。

Nimg_2369 さて、与那国島の駐屯地建設ですが、土地を強制収容してはどうか、という意味不明な提案もあるようですが、そもそも軍事機構の任務は主権を軸とした国家体制の維持ですので、憲法が定めた人権に抵触する強制収容は行うべきではありませんし、確実に違憲訴訟となります。また、住民と連携してこその自衛隊ですが、強制収容して住民と和睦が図れると考えるのは相当な楽天家でしょう。

Mimg_1693 さて、石垣島ですが、ここに沿岸監視隊を配置したならば、与那国島に沿岸監視部隊を置く場合に、石垣駐屯地の分屯地として与那国分屯地を設営する、こうした方式が理想だと考えます。与那国島と石垣島は距離にして100km、途中には地形障害が無く通信の確保はこの距離であれば十分可能です。

Oimg_2746 実はこの方式、北海道最北の礼文分屯地と稚内分屯地の関係を踏襲する案です。稚内分屯地に第301沿岸監視隊が置かれていますが、この分遣隊が礼文分屯地なのです。礼文分屯地は田舎の公民館規模の建物で駐留は30名ほど、正門と警衛が無く建物が一つで自己完結している珍しいもの。

Yimg_5984 礼文分屯地は非常に小さな施設ですが、もともと過疎に悩む礼文島の要請もあって、少数の部隊ながら駐屯することで一定の経済波及効果があります。礼文町の人口は2900名ですので、1%以上が自衛官で加えてそれ以上の家族がいるのでしょう。与那国島も1haほどの土地を借用し、30名ほどの沿岸監視隊分遣隊と通信分遣隊に業務班を配置すれば、与那国町の人口は1600名ですので、それなりの過疎対策にはなるか、と。

Img_4450 実際のところ、与那国島は台湾に隣接していますが、台湾からの着上陸は考えにくく、尖閣諸島への着上陸が懸念される中国側も台湾と目のはなの先にある与那国島へ着上陸する可能性は低く、少なくとも26ヘクタールもの用地を確保し、駐屯地を設営する必要はあるのかとなると疑問が無いでもありません。

Himg_4858 自衛隊は世界でも有数の空中機動力を有しており、一機50億円の大型輸送ヘリコプターを陸空自衛隊で70機保有、予算難で後継機確保がとん挫していますが攻撃ヘリコプターに分類される戦闘ヘリコプターと対戦車ヘリコプターも70機以上保有しています。このため、緊急時には大兵力を空中機動で展開することも可能、という点は思考体系の片隅においてもよいでしょう。

Nimg_1766 ただ、沖縄県島嶼部は、沖縄本島とともに、先島諸島の宮古島と石垣島を中心とした島嶼部から成るため、この何れかには用地確保、増援を受ける受け皿となる部隊が必要となりますし、危機が有事に発展する前に予防するための情報収集を行う必要は、元々ありました。

Img_8997 特に宮古島は航空自衛隊のレーダサイトが置かれているため、この宮古島分屯基地を基点として陸上自衛隊の施設を併設する、例えば稚内分屯基地の第18警戒隊レーダサイトと第301沿岸監視隊に大湊地方隊稚内基地分遣隊の駐屯のような方式が望ましい、と考えていたのですが、既に警備小隊と受け皿を持つ宮古島よりも、完全に放置されている石垣島へ部隊を置くことを重視したのかもしれません。

Pimg_9648_1 既設の施設であれば緊張が発した際に増援を送り防備を強化できる、これは実際に前例があります。ご記憶の方も多いでしょうが、北朝鮮弾道ミサイル実験が昨年実施された際に自衛隊は沖縄救援隊を編成し、地対空ミサイル部隊や特殊武器防護部隊とその支援要員を派遣した実例があります。

Mimg_0983 石垣島ですが、沿岸監視隊とともに可能であれば石垣警備隊を置き、本部管理中隊に舟艇班を置き、20km西の西表島に80km東の宮古島と連携がとれれば、と思うのですが、ちょっとこの距離は複合艇では動けません、やはり那覇の第15旅団の空中機動力を強化し、もう一個普通科連隊を本島に置くべきでしょうか。

Eimg_4530 ともあれ、石垣島に先に駐屯地を、という構想は、先島諸島の中心にあり、位置的に理想的なものであると考えます。そして、この駐屯地の分屯地そして、もちろん過疎対策というものも結果的に含めても、与那国島に自衛隊駐屯が必要な場合には、稚内分屯地と礼文分屯地の関係のような方式、これが理想ではないでしょうか。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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舞鶴地方隊舞鶴展示訓練2011詳報⑧ IRフレア発射!、ミサイル艇&哨戒ヘリコプター

2013-04-03 23:05:25 | 海上自衛隊 催事

◆大空に炸裂する焔!巻き上がる海面の白煙

 訓練展示は機動航行展示に続いてIRフレアの発射展示へと転換してゆきます。舞鶴展示訓練詳報第八回は、IRフレアが海から、空から、投射される展示です。

Mimg_6880 IRフレア、赤外線誘導方式の誘導弾やFLIRカメラなどによる照準から回避する自衛手段で、レーダーを乱反射させるチャフ弾と共に、ミサイルの命中を妨害するソフトキルの方法として知られるのですが、同時に見栄えが良い展示でもありますので、撮影位置が右舷か左舷か、見極めて撮影位置を考えねばならない。

Mimg_6812 ミサイル艇はやぶさ、より投射されるIRフレア、上空で炸裂すると同時に添加剤付酸化マグネシウムが激しく燃焼し、多量の赤外線を放出、白煙とともに放物線を描きつつ海面へ落下する中を、はやぶさ型ミサイル艇が二隻並んで全力で高速航行してゆくところ。

Mimg_6805 発射薬で100mの上空へ投射され炸裂するIRフレア。赤外線誘導方式の誘導弾、そして艦艇に搭載されている熱画像方式の照準器にミサイル艇が照準された場合、搭載する前甲板の76mm砲で反撃すると共に、ミサイル艇は小型であり小型ミサイルや砲弾一発の被弾が致命傷となりかねないため、良く残るためには、まず自らが受けている照準から逃れなければなりません。

Mimg_6813 ミサイル艇うみたか、既にIRフレアは海上に落下し、激しく燃焼を続けています。このIRフレアはソフトキルと呼ばれるのは前述の通りですが、攻撃を受けた場合、例えばミサイルが接近する場合に対処する方法は二つあります、一つは妨害電波や金属片に赤外線を放出してミサイルを逸らすソフトキル、もう一つがミサイルそのものに艦対空ミサイルや砲弾か大量の機関砲弾を集中させ破壊する、これがハードキルというもの。

Mimg_7155 ハードキルを行うには、シースパローやESSMといった短射程ミサイルを用いるのですが、この為には重量のある発射装置に複数の目標を感知する一定以上の索敵力を持つ対空レーダ、これらの情報から最優先目標を選定し迎撃する射撃指揮装置を搭載する必要があり、これを搭載するのは駆逐艦やフリゲイトのような、つまり護衛艦規模でなければならず、ミサイル艇には搭載できない。

Mimg_6814 こうした理由からミサイル艇はソフトキル手段を重視しているわけです。IRフレアは、テルミット効果にて激しく燃焼する酸化マグネシウムへ、ミサイル艇のエンジンと同じ赤外線特性を発する添加剤が加えられており、これを連続投射することで赤外線を追尾する照準装置や追尾装置はどれが囮でどれがミサイル艇か判別できなくなる。

Mimg_6819 照準には赤外線と共にレーダーによりミサイル艇を狙うものがありますが、ミサイル艇にはIRフレアとともにチャフ弾として金属片を上空に散布し、レーダーの光点を霞掛ったように妨害する装備が搭載されています。そして電子線装置による妨害電波により、対艦ミサイルを攻撃することなく回避することが可能、となるはず。

Mimg_6822 かなりの白煙を棚引かせるIRフレアにより、満載排水量4800tの護衛艦あまぎり、も隠れてしまうほど。ソフトキルはミサイルを撃破するのではなく回避するので、一見非力な印象がありますが、例えば1973年の第四次中東戦争のラタキア沖海戦ではイスラエル海軍ミサイル艇隊がエジプト海軍ミサイル艇隊と交戦した際、ソフトキルによりエジプト側が発射したソ連製対艦ミサイルを尽く逸れさせ、逆にイスラエル側の対艦ミサイル攻撃によりエジプト海軍ミサイル艇隊を全滅させたことがあります。

Mimg_6823 護衛艦あまぎり。対艦ミサイルを搭載するミサイル艇は、1967年の第三次中東戦争でイスラエル海軍の駆逐艦エイラートがエジプト海軍魚雷艇掃討中に同海軍のミサイル艇よりソ連製ミサイル攻撃を受け、撃沈される事案があり、世界初のミサイルにより水上戦闘艦撃沈、エイラート事件として大きな注目を集めました。この為、現代の水上戦闘艦は、対艦ミサイルと哨戒ヘリコプターによるミサイル艇撃滅手段、ソフトキルとハードキルを備えています。

Mimg_6825 護衛艦のような水上戦闘艦は、元々駆逐艦、駆逐艦とは魚雷により巡洋艦や戦艦に挺身攻撃を試みる水雷艇を駆逐するもので、水雷艇はその後速力を向上させ魚雷艇となり、武装を魚雷からミサイルに改めミサイル艇に、ミサイルは魚雷艇対処を念頭とした駆逐艦を葬る能力を得ましたが、巡洋艦と駆逐艦は任務を対潜対空対水上に統合させ対抗手段を整備しつつ今日の水上戦闘艦体系を構築、イタチゴッコのように見えるのは当方だけでしょうか。

Mimg_6857 大型護衛艦に対し、ミサイル艇が挑むのは指揮官が稚拙で不用意に沿岸の入り組んだ地形に近づいた際に奇襲する時くらいですが、輸送艦など上陸を試みる船団に対しては有効ですし、敵の水上戦闘艦に対し、ミサイル艇を我が方が保有していれば、安易に我が沿岸に近づかせないという抑止効果があります。さて、続いてヘリコプターのIRフレア発射展示に向け陣形を組み直し、前へ。

Mimg_6836 ソフトキルの展示と共に、思い出すのは今年1月31日に中国艦が我が護衛艦ゆうだち、に対し射撃管制レーダを照準した事案です。もしかして、チャフ弾発射などのソフトキル手段を我が方に強いて、ソフトキルとはいえチャフ弾を砲弾と言い換え我が国を貶め、開戦の口実を造る意図があったのでは、ということ。

Mimg_6843 冷静な海上自衛隊に対し、中国海軍は逆に射撃動作である射撃管制レーダを平時に用いたことを世界に暴露され、過去にも台湾空軍機に対し同様のことを行っていたことを含め世界に危険な国、もしくは中国海軍が前線指揮官が旧帝国陸軍並みに勝手に戦端を開き開戦しかねない無統制集団であることが広く世界に露呈、世論戦は中国が日本に完敗してしまいましたが。

Mimg_7148 SH-60哨戒ヘリコプターによるIRフレア発射展示、航空機は、短射程空対空ミサイルが基本的に赤外線誘導方式により照準し追尾するため、IRフレアの散布能力は現代戦においてその生存を死活的に左右します。機体に搭載するセンサーはミサイルのような機動性を有する赤外線放射物体が高速接近する兆候を捉えると機内に警報を発し、ソフトキル手段により回避を行う。

Mimg_7151 閃光と共に発射した瞬間の様子。ヘリコプターにはIRフレアとともにチャフも搭載されており、迅速に連続投射することで攻撃を回避します。一方で、護衛艦などに搭載されるハードキル、つまり接近するミサイルを物理的に破壊する手段は現時点では航空機に搭載することはできないため、この手法で回避するしか生き残る手段はありません。

Mimg_7153 連続発射されるIRフレア、最近のミサイルは赤外線を一発投射しても誤魔化せません、昔のミサイルなどは航空機の熱源と太陽の熱源を見誤り、太陽に向かって航空機が回避するとミサイルが、どうせ一発きりのミサイル人生、最後に狙うなら大物と太陽に向かって推進剤が尽きるまで飛んでいくこともありましたが、最近のミサイルは一発程度の赤外線妨害では見破るため、連続投射して赤外線囮の面を構成して回避する必要があり、こうして次々と発射する展示が行われます。

Mimg_7158 こうしてIRフレア発射展示が完了しました。大昔であれば3インチ連装砲の射撃展示で水平線が水柱に包まれたのですが今の3インチ砲は射程が大きく射撃は不可能、ボフォース対潜ロケットが海面を火山の如く弾けさせたのですが現用のアスロック対潜ロケットはこの狭い海域では展示が出来ず、このまま艦隊行動展示となってゆきますが、こちらは次回の紹介としましょう。

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第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑤ 通信・後方支援・特防部隊

2013-04-02 23:35:30 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆師団任務を通信と整備で支える部隊

 福岡駐屯地祭観閲行進、前回に続き今回も師団の任務と前進を支える重要な部隊の行進です。

Fimg_5765 第4通信大隊観閲行進、指揮官小林義孝2佐以下の二個中隊よりなり、通信大隊は多重無線通信搬送、通信伝送、有線通信搬送等を行い、師団と隷下部隊の通信を担当します。そして通信大隊は暗号や電子戦を担当、このほかに写真なども通信大隊の任務となっています。大隊は350名からなっているもよう。

Fimg_5775 通信大隊は二個中隊が配置され、師団通信システムDICSを運用、一個中隊を以て師団司令部を中心とする根拠地に合同通信所を開設し、師団の指揮命令を隷下の連隊戦闘団へ骨幹通信網を構築します。この中隊は主合通小隊、前方合通小隊、後方合通小隊より編制、師団司令部が移動する際には最後まで通信系統を維持しつつ移動先に先んじて展開しなければならない、機敏さが必要な部隊とのこと。

Fimg_5784 通信大隊第二中隊は、四個支援合通小隊より編制され、連隊戦闘団へ分散配置し命令系統のネットワークを構築します。連隊本部管理中隊の通信小隊は隷下の中隊との情報体系を構築します。現在はデータ通信能力や対妨害能力を強化した新師団通信システムiDICSが開発中になっています。

Fimg_5788 第4後方支援連隊、連隊長稲川解1佐以下の観閲行進です。後方支援連隊は2000年度から陸上自衛隊の後方支援部隊改編により二個大隊と三個隊編制となっており、第一整備大隊、第二整備大隊、補給隊、衛生隊、輸送隊という編制になっており、第一線部隊の支援能力を高めるものとなりました。

Fimg_5808 第一整備大隊は師団根拠地において重整備を行う部隊で、本部付隊と火器車両整備中隊に通信電子整備隊と施設整備隊に工作回収小隊を以て編成されています。要するに第一線部隊で対応できない整備などは一旦最前線から師団根拠地が置かれる後方に下げて、十分に整備する、こういった感じ。

Fimg_5822 第二整備大隊は、連隊戦闘団や部隊に配置させるもので、第一線まで前進します。第4後方支援連隊第二整備大隊は、本部付隊に大村駐屯地の第一普通科直接支援隊、福岡の第二普通科直接支援隊、小倉の第三普通科直接支援隊、別府の第四普通科直接支援隊、玖珠の対舟艇対戦車直接支援隊、久留米の特科直接支援中隊、久留米の高射直接支援中隊、玖珠の戦車直接支援中隊、福岡の偵察直接支援小隊という編制です。

Fimg_5832 戦車に関する装備では、第二大隊の戦車直接支援中隊は戦車部隊に随伴する部隊ですので、96式装輪装甲車を保有しており、戦車に向かう火力に対応しつつ整備支援を行いますが、工作回収小隊は重レッカー車とともに戦車を支援する際に備え78式戦車回収車を装備しているということ。

Fimg_5840 重レッカ、10tまでのつり上げ能力があり、軽装甲機動車なども吊り上げられます。後方支援連隊、現在の編成は陸上自衛隊の機械化が進むと共に、各部隊の本部管理中隊では完全な整備支援を行うことが難しくなったためで、特に軽装甲機動車の装備開始により整備する車両がさらに大きくなったため、これに対応する手段として改編が行われました。

Fimg_5849 浄水セット車載型、7.5tの浄水能力があり、第一線部隊は野戦時に毎時4?と野営時に洗顔用等を含め20?が必要となるので、この為に装備されています。後方支援連隊には、このほか色々とあり、同時30名の入浴が可能な野外入浴セットや洗濯機を野外で使用する野外選択セット2型などが装備されている。

Fimg_5857 第4後方支援連隊輸送隊の観閲行進、輸送隊は普通科連隊が自動車化される以前の昭和時代に50両の大型トラックを以て一個普通科連隊を辛うじて自動車化する任務に当たっていましたが、今日では普通科部隊が自動車化を完了し部分装甲化に取り組んでいるため、維持装備や物資の輸送等を行い、その他重装備を運びます。トラックも現在ではもう少し増えているのでしょう。

Fimg_5863 7tトラック、旧称74式特大トラックにより資材運搬車が輸送されています。戦車は長距離を自走することが出来ますがブルドーザなどは自走能力に限界があります。高い防御力と不整地突破能力を持ちつつも長距離移動に多大な整備支援を必要とし所要時間も大きい装軌車両はこのようにトラックに搭載して輸送しなければなりません。

Fimg_5868 73式特大型セミトレーラ、戦車輸送車で、74式戦車や10式戦車を輸送できます。輸送隊には8両程度が配備されているもので、戦車が長距離を自走する場合、かなりの整備支援が必要となります。適切な整備支援を行えば1000km単位での機動が可能ですが、輸送車により輸送したほうが稼働率が高い。

Fimg_5871 実は日本列島は狭いと錯覚される方がいますが、火山性弧状列島ですので移動の際の距離はかなり大きくなります。例えで東日本大震災を挙げますと、福岡第四師団は被災地東北地方までの距離は、欧州ではパリからベルリンまでに匹敵します。冷戦時代であれば、ベルリン以西にある当時ドイツ国境から大西洋に面したアントワープやシェルブールまでの距離で、長距離機動支援の重要性が端的に分かります。

Fimg_5888 第4後方支援連隊衛生隊、隊本部と救急車小隊と治療隊から成る部隊です。師団全体の治療任務や後送業務に健康管理業うや防疫任務の実施及び技術援助を行うと共に隷下部隊への衛生器材補給や医薬品補給を行い、衛生器材の整備なども実施します。

Fimg_5892 救急車小隊の1t半救急車、負傷者を後方へ搬送する装備です。ただ、医師法の関係で搬送中の医療行為が限定されているため、車内には担架と簡単な応急処置用の資材が載せられているのみ。個人的にはAEDと心電図に点滴などの後方野戦病院まで延命措置を積極的に図れる車両を、82式指揮通信車の派生型として必要だと思う。

Fimg_5899 野外手術システム、治療隊に装備され、役割の異なる数台を連結し野戦病院の手術室としています。これまでは手術の練習が野外で行うことが出来る器材、という建前がありました、医療法で病院設置は厚労省の許可が必要だったためです。しかし、東日本大震災において初めて病院として運用された、こう説明を受けました、やはりあの震災は戦後初の“有事”だったわけですね。

Fimg_5901 第四特殊武器防護隊、師団司令部化学防護小隊が化学防護隊に拡大改編され、2009年に特殊武器防護隊となりました。化学兵器対処や生物兵器対処に核兵器の対処などを行い、毒物の中和や生物兵器の防疫に核汚染の除染等を行う部隊です。福島第一原発へ派遣された部隊でもあります。

Fimg_5919 化学防護車、従来の60式装甲車を改造した少数の車両から、82式指揮通信車を原型とした装備となり全国の師団や旅団に配備されました。化学剤や放射性物質汚染地域に進出し、汚染状況や汚染分布と拡大情報、汚染物質を防護された車内から検知します。将来的に新型のNBC偵察車により代替される。

Fimg_5922 除染車、師団の補給路など、化学剤により汚染された場合通行不能となってしまうため、中和剤を高圧噴射させ汚染物質を中和させます。各車両は2500?水槽と加熱装置を搭載し、車体前後からの高圧噴射と携帯噴射ノズルにより、一日当たり800mほどの汚染地域を除染できます。

Fimg_5929 師団司令部付隊の観閲行進がはじまりました。司令部付隊は師団長と幕僚機構が指揮命令を行うために、師団司令部としての機能を維持し、作戦運用などを師団として展開するために必要な各種支援を行い、管理小隊と車両小隊に司令部勤務班を以て編成されています。

Fimg_5941 82式指揮通信車、陸上自衛隊最初の国産装輪装甲車として装備されたもので、四系統の無線装置を搭載しています。開発当時の要求から音声以外の画像データ通信能力が現在搭載されていないため、能力的には限界があるものとなっていますが、将来的に大型のNBC偵察車派生型により置き換えられるのでしょう。

Fimg_5942 師団司令部付隊の観閲行進に続いて、独特の唸るようなエンジン音が一際大きく駐屯地へと響き渡ります、準備しているのは74式戦車、そしていよいよ福岡駐屯地祭観閲行進は戦車部隊の観閲行進へ進んでゆきますが、こちらは次回紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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本日より2013年度 四月一日、新年度もWeblog北大路機関をよろしくお願いいたします

2013-04-01 22:51:29 | 北大路機関 広報

◆今後とも北大路機関をよろしく

 本日から新年度、四月一日からの新しい年度もWeblog北大路機関よろしくお願いいたします。

Gimg_5312 2013年度、東日本大震災から二年を経て新し防災政策に基づく国造りが必要となると同時に、南西諸島での戦後最大の緊張状態、そして朝鮮半島問題の核開発と南北対立の深刻化、実のところWeblog北大路機関創設の2005年以来年々安全保障情勢が緊迫化しているのを心苦しく思うところですが、色々と考える社会的相互行為を進めてゆきたいところ。

Dimg_4058 現実問題として、イラク戦争以前はここまで日本が世界の安全と平和に積極的に関与し平和と安定に責任を持つことは考えられず、北朝鮮拉致事案の日朝交渉が進むまでは安全保障における防衛の重要性を認識できなかったところであり、日中関係と日米関係の重要性は沖縄を巡る緊張を経るまでここまで共有知として認識することはできませんでした。

Img_8934 この点で、どうしても既存のメディアは論理展開に様々な柵が生じてしまい、討議と意見集約の場所を供することはできませんでした。ここで一つの意見集約体系として、一つの視点を供したうえで、これを議論展開させる一助となる場所を提供できたことは、その意義と実用性はさておき、幸いと思う次第です。

Bimg_0786 他方で、安全保障情勢は、戦後の平和を基調とした安全保障体系から、真剣に武力紛争を抑止する施策を講じなければ我が国が戦後の基本的枠組みから外れ、いわゆる国際武力紛争の第一線に立つ脅威に曝されているという厳しい状況に置かれてしまっているという事は否めません。

Aimg_6818 そこで、新年度は、これまで過激な意見を提示しない、という評価を受けてきたWeblog北大路機関ですが、もう少し踏み込んだ視点から、我が国がいかに平和の恩恵を享受し、国際の平和と安全を継続するかについての、少々厳しい視点も踏まえて考えてゆかねばならないのではないか、そう考えるところ。

Bimg_6965_1 具体的には、安全保障面でのアメリカ政治の変容、特に財政問題を起因とする衰退期のアメリカを前提とした日本防衛と安全保障環境維持への必要な措置について、つまり集団的自衛権や憲法九条の理念を広げるための周辺国との防衛協力の在り方、核秩序への挑戦に対する危機管理の在り方、こういったものも考えてゆきましょう。

Mimg_3757 また、これを補完するために、現在継続している自衛隊関連行事の紹介、陸上自衛隊駐屯地祭と海上自衛隊行事に航空自衛隊航空祭の詳報を通じた自衛隊の任務と編成、装備と運用についての紹介もこれまで以上に強化して伝えたいところで、第二北大路機関の活用を含め考えています。

Nimg_7290 ただ、一つ残念であるのは、昨年、全てのコメントに対し確実に変針を掲載する、というWeblog北大路機関発足以来の態勢が、コメントの多数化という歓迎する藩王により、逆に崩れてしまった、ということです。返信数を拡張したいところですが、こちらにも限界がある、という現状をどうかご理解ください。

Img_5619 また、色々と転換する情勢に対応することを目指すWeblog北大路機関ではありますが、自衛隊行事紹介を通じた理解の増進への一助と、新鋭装備の紹介を通じた予算運用の理解増進への一助となるべく、掲載は今後とも不変の目的として達成へ邁進してまいります、やや曖昧とはなりましたが、新年度の北大路機関の運営方針提示として、新年度もよろしくお願いいたします。

北大路機関:はるな

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