北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成二十五年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.10.12・13)

2013-10-11 23:36:40 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 十月なのに三十度越えの天候を含め異常気象が毎年続くため極端気象と言い換えた今日この頃、数年内に去年よりも厳しい気象と言い換えられそうな印象の暑さの中、皆様如何お過ごしでしょうか。

Gimg_5758 今週末の自衛隊関連行事、最大のものは日曜日に行われる中部方面隊創設記念伊丹駐屯地祭でしょう。東海北陸京阪神紀伊山陽山陰四国地方を防衛警備管区とする中部方面隊、年々周辺の宅地開発が高層化し、訓練展示などが制約される中ではありますが、観閲行進に祝賀飛行に頑張り続けている行事です。

Gimg_7620 自衛隊関連行事では、今主末、九州が熱いです。熱い筆頭は目達原駐屯地祭、西部方面航空隊の隷下部隊が駐屯し、九州補給処も置かれている目達原駐屯地、我が国唯一のAH-64D戦闘ヘリコプターを実戦部隊として装備する第3対戦車ヘリコプター隊も駐屯しています。

Gimg_9492 大村駐屯地四部隊合同行事、陸海空自衛隊の大村市周辺部隊が一斉に参加する土曜日の市街パレード、日曜日の駐屯地祭と、こちらも注目で、大村駅から長崎空港に向かう途中の大通り、最寄駅は大村線諏訪駅を南下した場所にてパレードが行われます。一度足を運んでみたい行事の一つ。

Gimg_6430_1 九州唯一の戦車部隊、玖珠駐屯地祭も日曜におこなわれます。第4師団隷下の第4戦車大隊と第8師団隷下の第8戦車大隊が駐屯、74式戦車が大挙登場する行事となるのでしょう。二個戦車大隊、というと今津駐屯地のような印象なのでしょうか、ね。

Gimg_4607 九州日曜日、注目の行事はもう一つ、久留米駐屯地祭です。最盛期は80門のFH-70榴弾砲を揃え世界最大級の砲兵連隊といえた久留米は、火砲数こそ削減されましたが、それでも大砲の街としての迫力は期待できるでしょう。写真は先日の豊川駐屯地祭。訓練展示で久留米はどれだけの火砲を並べるか、興味ありますね。

Gimg_0234 東北も戦車が吠えます。大和駐屯地祭、第6戦車大隊と第6偵察隊が駐屯しています。先日の機動戦闘車報道公開は偵察教導隊の隊員が行っていた、という事ですので、C4I実験師団である第6師団、機動戦闘車の早い時期の配備先に、ここが選ばれる、という事もあるかもしれません。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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新防衛大綱と我が国防衛力の課題③ 海上の防衛、重視されるべき平時と有事の両立

2013-10-10 23:41:17 | 防衛・安全保障

◆八八艦隊とDE護衛艦の復権という必要性

 現在の防衛計画の大綱における護衛艦定数は、南西諸島と九州南部における周辺国海軍艦艇行動の恒常化と比較し、果たして平時にこれほどの運用を想定して算出された数字なのでしょうか。

Bimg_8639 北大路機関では、かねてから現在の護衛艦隊四個護衛隊群八個護衛隊体制をヘリコプター搭載護衛艦8隻とイージス艦8隻から編制する八八艦隊構想を提案しています。現在ある護衛隊群護衛隊は八個あり、それぞれイージス艦基幹の編成四個とヘリコプター搭載護衛艦基幹の編成四個となっていますが、ヘリコプター搭載護衛艦基幹の編成護衛隊についても半分がイージス艦を有しており、残る二つもイージス艦を配備する方針が示されたため、それならばイージス艦基幹の護衛隊にもヘリコプター搭載護衛艦を配備し編成を共通できないか、と。

Bimg_0819 北大路機関の護衛艦部隊に関する提案はこれに終始し、最大の利点は全通飛行甲板型護衛艦が現在の護衛艦いずも型2隻と護衛艦ひゅうが型2隻の4隻体制から8隻体制とすることで、周辺国の航空母艦への軍事恫喝に対して全通飛行甲板型護衛艦による平時の警戒対処が可能となり、軍事的な対応というよりは平時における空母による恫喝に対し、同数以上の全通飛行甲板型護衛艦を遊弋させることで、政治的に、または社会的に、分かりやすく表現すれば我が国民へ、我が防衛力は劣勢ではない、と強調できる訳です。

Bimg_2940 一方、前述の通り平時における軍事恫喝、特に航空母艦を伴わない艦艇部隊による同時多方向からの領域接近に際し、解呪防衛力を飽和状態に追い込まれないよう対処するにはどうするべきか、という視点は真剣に検討されなければなりません。こういいますのも、周辺国には外洋海軍を目指しつつ、同時に1500t級のコルベットを大量建造し、実に年間コルベット隊単位で増強している事例が既にあり、有事の際には戦力的に不確かな小型艦艇は我が方の格好の標的でしょうが、平時にはいきなり撃沈など出来ません。

Kimg_9291_1 この意味するところは、大型護衛艦と共に平時の警戒任務に当たる中型以下の護衛艦、もしくはミサイル艇と汎用護衛艦の中間にあるような水上戦闘艦を量産し、海上防衛力が飽和状態に陥らないようにしなければならない、という一点に尽きます。もちろん、全体の汎用性を考えるならば、むらさめ型護衛艦程度の護衛艦を年間量産することが出来ればそれに越したことはないのですが、予算には限りがあり、同時に海上防衛力だけを以て防衛力全般を自己完結できる訳ではありません、より明瞭に言えば他に買うべき重要なものがある。

Oimg_8811 以上を踏まえたうえで、海上自衛隊と政策決定者及びその支持者、国民のことですが、反省しなければならない点として脅威が潜在化し、加えて顕在化する可能性が残る中、冷戦終結を理由として一方的な海上防衛力の縮小、冷戦時代と比較し護衛艦定数を実に15隻以上削ったことが影響している部分は無いでしょうか、護衛艦定数が削られたとしても脅威の可能性が残る王強化では多機能化と高性能化を求めるしか無くなり、事実、護衛艦定数の削減と共に我が国の護衛艦は一隻当たり一斉に基準排水量が増大しました。

Bimg_1262 しかし、現在の海上防衛において護衛艦が大型化し、特に沿岸防衛用の小型護衛艦の建造が、あぶくま型を以て終了した半面、海上自衛隊において平時の警戒監視に最も重宝されているのは、あぶくま型護衛艦であるといわれました。意外と思ったのですが、平時は相手の群と同数の護衛艦を展開させれば警戒監視任務は事足りるわけで、その分運用経費、燃料消費などが少ない艦船が平時は重宝される、という話です。写真、奥の護衛艦むらさめ型が満載排水量6200t、手前の護衛艦あぶくま型は2800t、燃料消費量の違いは想像できるでしょう。

Img_9072 この提案ですが、まず、八八艦隊との両立を念頭に考えますと、第一に必要としている八八艦隊だけでは同時多方向の脅威に対処することは難しい、一方で実現には既存の予算でも厳しい状況下で、ヘリコプター搭載護衛艦4隻を増勢する必要性を提示しており、建造費だけで一隻当たり1100億円に達する、勿論維持費も大きい、しかし、平時の抑止力、有事の際には、艦載機に将来的にF-35Bを導入できた場合、防空の補完、策源地攻撃、シーレーン防衛、海上阻止、全てに有用で、他方F-35Bもさらに高いものですが、必要だ、という前提をひとつ。

Img_4550 他方で、兎に角数が必要な場面は平時において存在する、というもう一つの前提を加えますと、安価な水上戦闘艦を建造し、八八艦隊以外の護衛艦を充足させる、もしくは安価で低性能に甘んじるので護衛艦定数を限られた予算下でも、有事の骨幹戦力を維持しつつ数的増勢を図る苦肉の策に、小型護衛艦の復権が必要なのではないか、と考えたところ。もっとも、安ければいい、というわけではありません。最小限艦艇として必要な性能を盛り込み、艦艇を護衛艦隊の装備体系に包含する運用面からの配所が必要なのは言うまでもないのですが。

Eimg_5922 上記前提を踏まえたうえで平時の海上防衛力を維持するべく、同時多方向からの艦艇に対処するためには、あぶくま型以来建造が停止している小型護衛艦の再整備という必要性を再度提示する必要はないのか、と考える次第です。もちろん、必要なのは巡視船では無く護衛艦ですので、対空レーダーやソナーは必要ですし、アスロック対潜ロケットやハープーンミサイルなどは断念するとしても、76mm単装砲と短魚雷発射管にRAM簡易SAMシステムかCIWSのような個艦防空火器は必要で、有事の連携に備えデータリンク能力は不可欠です。

Bimg_9328 特に海上警備任務には潜水艦対処が含まれますのでソナーが無ければ潜水艦は発見できません。対艦ミサイルですが、もともと例えばミサイル艇のミサイルなどは127mm砲を搭載できない小型艦艇が代用として搭載したミサイルがその起源でしたので、艦砲で代用できるのですが、有事の際に目標情報を他艦と共有し、自艦がこの種の装備を有さずとも対処できる体制を確立するためにはデータリンク能力は必要です。また、ヘリコプター運用支援能力は不可欠で、来年度予算から研究を開始する艦艇用無人機の運用能力も不可欠でしょう。

Bimg_94790 一時期までは、この種の任務、平時のポテンシャル行使はミサイル艇により代用できるものと考えていた頃もありましたが、防衛省が公表する我が国周辺の外国艦船行動状況において、警戒監視に当たっている艦艇は護衛艦が基本であり、ミサイル艇や掃海艇は、実施しているのかもしれませんが、少なくとも警戒監視として周辺国艦隊に対し、積極的な行動には出ていません、いうなればこの装備は有事の一撃必殺用や、港湾周辺と離島周辺の防備用に過ぎず、平時よりは有事の装備だった、というべきところでした。

Bimg_4691 こうした前提の上でミサイル艇と既存護衛艦の中間を模索しますと、基準排水量2400t程度、満載排水量3000t前後、後部に飛行甲板を有し、前甲板に艦砲とRAMを搭載、上部構造物内に短魚雷発射管を搭載、ただ、後日搭載用として艦対艦ミサイルの運用区画を上部構造物内に残し、ステルス性を重視、速力は25ノットから27ノット程度、警戒監視用に多機能レーダーを搭載し、平時の監視に特化し、有事の際にはデータリンク能力により打撃力を補完する、という装備が検討されるところでしょうか。

Img_2616 有事の際には八八艦隊のヘリコプター搭載護衛艦8隻・イージス艦8隻・汎用護衛艦16隻で対処する一方、平時には、それはもう兎に角数が必要だ、という前提で無理な提案を考えてみました。この時点で汎用護衛艦は、現装備中の護衛艦むらさめ型9隻、護衛艦たかなみ型5隻、建造中を含め護衛艦あきづき型4隻、25年度護衛艦、となりますので、最低18隻、練習艦所要を含めても維持でき、25年度護衛艦、あさぐも型、とでもなるのでしょうか、整備開始後一定数を確保したのちには、ヘリコプター搭載護衛艦と小型護衛艦へのシフトを提案します。

Bimg_5102 この小型護衛艦について、例えば無人掃海器具SAM、掃海器具などを搭載し、部分的に掃海艇、特に掃海隊群の掃海艇以外の、地方隊装備の掃海艇を置き換える能力を併せて付与させ、平時は地方隊において訓練練成し、同時に平時の警戒監視任務に際し、所属地方隊管区を越えた動的運用を行う、地方隊の掃海隊をそのまま小型護衛艦任務を兼ねる多機能艦に充て、地方隊旧掃海隊を訓練練度担当部隊に位置付けると共に、地方隊を越えた運用担当部隊に配置する、という柔軟な対応を併せて考えてみる必要もあるかもしれません。

Bimg_9536 更には、多機能艦には通常の護衛艦が2隻程度搭載する搭載艇を、高速複合艇4隻程度の運用能力を付与させ、離島警備能力と陸警隊の機動運能力付与や、簡易的な輸送任務への対応というものも考えられていいでしょう。もちろん、前述の通り掃海艇の能力を付与するにしても提示した小型護衛艦は排水量で掃海艇よりも遙かに大型となりますので、掃海艇としての訓練を行う際の費用が増大し、加えて多機能艦は、多用な機能に応じた訓練を一艦で行うため、個々の能力練度に影響するため、やり過ぎには気を付けなければなりませんが。

Bimg_9498 こうして提示したものを見ますと、過去の掲載で反共、と言いますか、反論が大きかった、ひうち型多用途支援艦へ76mm砲を搭載しての多用途哨戒艦へ、という提案とどこが違うのだ、と批判されてしまうかもしれませんが、当方が提案しているものはどちらかと言えば、アメリカ海軍が進める沿海域戦闘艦LCSの日本版、LCSを導入するとなるとインディペンデンス級にしてもフリーダム級にしても、あきづき型護衛艦と同程度の費用が必要になりますので反対ですが、日本版多機能護衛艦、として位置づけるものを考えている、というもの。

Bimg_6673 少々無理がある、という前提ではありますが、平時の警戒任務への小型護衛艦、運用経費の易い護衛艦という概念は、新しい防衛大綱に、護衛艦定数ではなく、大型護衛艦と小型護衛艦の区分が存在するという明示の上で、もちろん比率は防衛大綱に盛り込むべきではありませんが、明文化する必要はないだろうか、と考える次第です。もっとも、MQ-9無人機のような機体に平時の警戒監視、等と併せ有機的立体的に行うべき、とも考えるべきなのかもしれませんが。

Bimg_5258 さしあたって当方は平時を考えると小型護衛艦、特に小型多機能護衛艦を前提とした護衛艦定数の維持乃至増勢が必要ではないか、と考えるところです。何故ならば、有事とは相手の軍事的圧力に対し、平時の警戒管制と抑止力が破綻した際に紀州を以て始まるものなのですから、有事における必勝の態勢ももちろん抑止力とはなりますが、併せて平時の防衛を如何に破たんさせないかが、優位の必勝態勢の構築に負けないほど、重要だと考えますから、ね。

北大路機関:はるな

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機動戦闘車報道公開!2016年度より装備化目指す防衛省技術研究本部先端技術の結晶

2013-10-09 23:51:53 | 先端軍事テクノロジー

◆行進間射撃が可能、車幅は2.98m

 報道によれば本日、相模原において機動戦闘車の試作車が公開されました。

Kfile0807 正直なところ、当方の予想は完敗でした。報道と同時に陸上自衛隊は動画を公表、10式戦車遺体の衝撃で、陸上自衛隊は平時運用の車幅という法律の壁よりも実用性を重視した装備を完成させています。八輪式の車体は車体前部に発動機区画を配置し、車体中央後部寄りに105mm砲塔を搭載、車幅は大きいのですが行進間射撃が可能、として完成していました。

Kimg_3586 機動戦闘車は全長8.45m、全幅2.98mで105mm砲を搭載、100km/hでの機動が可能です。これは87式偵察警戒車の車幅2.48mよりも大きく、道路運送車両法に基づく車両制限令に明示された一般車両の車両限界寸法を50cm近くも越えていますが、行進間射撃が可能で、これが全ての運用制限を打ち消したといえるやもしれません。

Kimg_6460 陸上自衛隊が公表した動画では、旋回しつつ側面方向に射撃を行う動作がありました。走行しつつ射撃を行う車両は、例えば米軍のストライカー装甲機動砲もイタリアのチェンタウロ戦車駆逐車も前進しつつの行進間射撃が可能ですが、旋回しつつの射撃や側面への行進間射撃はなかなか聞かず、同軸の連装銃を使用するくらいです。

Kimg_4685 性能か車幅か、実は陸上自衛隊が第二次大戦中の師団特科火砲を置き換える次期火砲選定を行った際、FH-70榴弾砲とともにスウェーデン製FH-77榴弾砲、アメリカ製M-198榴弾砲が候補とされました。特に重視されたのは短時間での効力射能力とされ、この中でFH-77が最も高い評価を受けたのですが、牽引時の全長が大きすぎ、結果FH-70が採用されています。

Nimg_1494 この点、当方の最大の関心事は、機動戦闘車が車幅2.5m以内に収められるのか、それとも大型化とともに行進間射撃能力を付与するのか、というところで、逆に言えば、元々軽量な装輪装甲車を用いて大口径火砲の行進間射撃を行うことの難しさを正攻法で克服するのか、断念するのか、という一点に帰結されたのかもしれません。

Img_2500 実のところ、2.5mの車幅以下で大口径火砲を搭載している装甲車はフランスのパナールERC-90空挺突撃砲くらいで、逆に言えばフランス軍が大量に装備した105mm砲搭載のAMX-10RC装甲偵察車でも車幅は2.95mあるものの、停止射撃が基本となっています。ただ、74式戦車のように砲安定装置を搭載しつつも停止射撃を行う車両も多いのですが。

Img_0799 こうした半面、行進間射撃能力があれば、戦闘時の被弾確率が格段に低下しますので、重量と共に制限される防御力の補完に機動力を必要とするこの種の装輪装甲車には望ましいものでした。この打開策として、フランスのスフィンクス装甲偵察車のように大口径機関砲を搭載し、命中精度を補う、という構想もありますが、射程ではどうしても限界がある。

Img_2434 こうして一つの論点ともなっていた車幅か戦闘力かですが陸上自衛隊の要求にC-130輸送機での輸送が盛り込まれていませんでしたので、19tの搭載が可能なC-130での輸送を想定しない程度に重量は大型化することがある程度は見込まれていたといえるでしょう。

Img_480700 特に、諸外国の装備で空輸を想定する装備は全て世界の標準輸送機と言えるC-130輸送機への搭載能力を念頭に開発されますので、より大型のC-2輸送機を開発した我が国としては、諸外国よりも高性能なものを開発し、世界標準よりも優れてしまう、所謂ガラパゴス化で防衛力を構築できる強みがあります。

Img_4801 そして結果、行進間射撃能力を以て開発されたわけで、正直なところ、無理に2.5m以下という車両制限令車両限界という難題を、敢えて国内での平時の長距離機動能力を犠牲として制式化した、という点は、言い換えれば制限があっても有事を重視しよう、という現れといえるかもしれません。

Kimg_3606 実際問題として車幅の大きさは余り馬鹿にできません。片側一車線道路では僅かな車幅の超過でも対向車と衝突する可能性があるためです。運転技量が如何に高くとも、センターラインを乗り越えて走行する車両はこちらが歩道に乗り上げでもしない限り回避が難しく、これは言い過ぎとしても道路を所管する警察や国土交通省としては励行はできない。

Kimg_5087 平時の移動ですが、機甲部隊駐屯地であれば演習場と隣接しているので平時の訓練へはそのまま演習場へ展開すれば問題ありません。しかし、演習場に隣接している駐屯地は意外と少なく、重機関銃など屋内射撃場以外で実弾射撃する際には遠距離を展開しなければならないという部隊が実質、殆どです。

Kimg_4623 夜間に所轄警察署から許可を受けて駐屯地から演習場へ移動する必要があります。千歳市内などは戦車が日常的に移動していますが、千歳市HPにその移動予定などが出されており、いつも気ままに展開できる、というわけではありません。

Kimg_8070 車幅については、機動戦闘車が非常に多きことだけは確かです。74式戦車の3.18mよりは小さいですが、路上走行状態の94式水際地雷敷設車でも2.48mで、機動戦闘車はこれよりも0.5mも大きい訳で、路上で走行している状態での圧迫感は凄いという事は分かるでしょう。

Kimg_5937 また、03式中距離地対空誘導弾は車幅が2.5mで、ぎりぎり適合のように見えますが、結局は制限を受けるため、その運用には制限が付きます。FH-70等であれば、昼間でも走行でき、96式装輪装甲車や82式指揮通信車もこれに当たるのですが、機動戦闘車は03式中距離地対空誘導弾や戦車と同じく、これはできません。

Kimg_0911 一方で公的に評価したいのは、車両制限令よりも戦闘能力を重視するという前例が生まれたことに他なりません。例えば、開発が開始された火力戦闘車などは車幅の制限の有無により性能が大きく左右されてしまうのですが、機動戦闘車ほどの車幅が認められたならば、柔軟性は大きう広がります。

Kimg_0003 火力戦闘車は、自動装填装置を搭載するのか、それとも野砲を重装輪回収車にそのまま搭載し射撃時はジャッキアップする必要があるのか、これも興味深いところなのですが、車幅の制限を乗り越える覚悟という点が今回示されたところは非常に勇気づけられるところ。

Kimg_4237 この趨勢がこのほかの例えば装輪装甲車に対しても適用されるのか、という興味もあるのですが、そろそろ本腰を入れて幹線国道の拡幅を期待したいところです。もっとも、これは長物船便コンテナなどの横転事故事案を受け、検討されていることではあるようですが、2%の幹線国道の拡幅に5兆円がかかったという事ですので、その50倍、これは厳しいかもしれません。

北大路機関:はるな

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榛名防衛備忘録:機動戦闘車配備方式と普通科連隊対戦車中隊廃止の趨勢を考える

2013-10-08 23:46:59 | 防衛・安全保障

◆連隊に対戦車中隊、中隊に機動戦闘車小隊を!
 先日の守山駐屯地祭で、79式対舟艇対戦車誘導は今年度限りにて師団では廃止される、という事実を、訓練展示模擬戦のアナウンスで知らされました。
Cimg_8809 これは来年度から中距離多目的誘導弾が各普通科連隊の対戦車中隊へ配備されるのか、普通科連隊の対戦車中隊が廃止され人員規模が縮小するのか、第五中隊が置かれるのか、はたまた87式対戦車誘導弾を有する中隊対戦車小隊に一任するのか、来年度まで分かりませんが、ただでさえ陸上自衛隊全体で戦車が削減され、火砲も削られ、充実するという方針の普通科部隊には一向に装甲車が増えない、これで大丈夫なのかな、と不安にもなる。
Cimg_9028 しかし、ここは普通科中隊の対戦車小隊こそ、例えば先日話題の、と言いますか無理矢理話題とした機動戦闘車を配備し、機動砲小隊に置き換えるなどして中隊長の手札を増やし、運用を柔軟化させると共に、普通科連隊には連隊戦闘団編成時の連隊長最後の手札として、対戦車中隊を多目的誘導弾中隊へ改編し、普通科中隊が圧される局面において、延伸した射程と同時多目標対処能力を発揮できる体制を構築するべきではないか、と考えるところ。
Cimg_8456 最後の手札というものは重要です。その昔、ガメラ2という一部で伝説化した有名な作品がありまして、特に90年代の作品ながら自衛隊の扱いと実態が秀逸であることから今なお語り継がれている作品があります。この作中で79式対舟艇対戦車誘導弾が意外な活躍をしましたが、作品を議欄になった方はご記憶の方も多いのではないでしょうか、師団長最後の手札と呼ばれた対戦車隊が、文字通り最後の手札として投入され、しかしその威力が最大限発揮されたことで、状況が一変する、というもの。
Cimg_06170 師団長最後の手札、陸上自衛隊では16セットの対戦車誘導弾を配備する対戦車隊をこのように呼んできましたが、映画ガメラ2でも、札幌や仙台と次々に都市を破壊しつつ営巣地を求め東京へ南下する宇宙生物に対し、第1師団は、多くの部隊を既に失った師団長が宇宙生物の東京侵攻を阻止する行動を見せたガメラに対し、最後の手札として79式対舟艇対戦車誘導弾所謂重MATを全力投入する決心を下します。
Cimg_1295 作中で宇宙生物は高濃度の酸素環境を自ら形成しつつ大きな繁殖力と電波を介した意思疎通を行うため、営巣地を一旦構築すると爆発的に増殖し地球そのものの生態系を根本から破壊してしまうという危機があり、加えて宇宙生物の母体は非常に硬度が高く、強力な電波を発する為通常の火力や誘導弾は効果が薄かったのですが、有線誘導方式を採用し、HEAT弾を目標の下から叩き込む重MATは意外な威力を発揮し、その後の展開を一新させる、という描写がありました。
Cimg_1171 さてさて、初めて練馬駐屯地祭へ足を運んだ際、実はすでに師団対戦車隊と共に重MATは廃止され、普通科連隊にも対戦車中隊は置かれていないので、師団の対戦車誘導弾は普通科中隊の対戦車中隊に装備されたこれだけですよ、と射程半分でレーザー誘導型の87式対戦車誘導弾を指差された時、軽い衝撃でしたが、その分、重MATは第2師団や第4師団に第8師団と第10師団等の普通科連隊全てに対戦車中隊が置かれ、師団全体で従来の師団対戦車隊三倍にあたる対戦車誘導弾を集中配備する編成へ移行していたわけです。
Cimg_0870 なお、第4師団と続いて第2師団は、師団に96式多目的誘導弾システムを運用する対舟艇対戦車中隊が師団直轄として新編されることとなり、師団対戦車中隊はこちらに統合される形で廃止されました。上記以外の師団では、師団編制のうち、対戦車中隊の区分をそのまま普通科中隊として、維持し、第五中隊を置いている師団もあります、第3師団がそうでした。ただ、高価な重MATを持たない分、その分の予算で取得費用が同程度、実際はやや安いようですが、96式装輪装甲車を第五中隊に配備してほしかったところですが、まあ、お教えいただいた方も同感しつつ、予算がね、と。
Cimg_4876 さて。対戦車中隊ですが、中距離多目的誘導弾を集中配備するべき、とした背景には、赤外線画像誘導方式とレーザー誘導方式を併用し発射後ロックオン方式が可能な新世代型対戦車誘導弾、中距離多目的誘導弾故の特性を考慮するべきだと考えた次第です。レーザー誘導方式を併用することが出来るため、今後普通科連隊へ現在位置部へ試験配備されるにとどまっている携帯飛行体のような無人機、その改良型が配備された際には、連隊の監視範囲が大きく広がることを意味します。
Cimg_1305 もちろん、軽量で微風にも揺れる携帯飛行体からレーザー照準を行うことまでは、特に搭載量の限界が厳しく、即座に希望しませんが、監視範囲が増大すればそれだけ中距離多目的誘導弾の特性を活かした運用も可能となるでしょう。特に自己完結型の中距離多目的誘導弾は、高機動車一両にy通洞団と索敵装置に照準装置を搭載していますが、高機動車であるため、大きさから87式対戦車誘導弾のように掩砲所を構築することは簡単ではなく、また車体に装甲防御力はありません。このため、極力脅威対象と距離を置く必要もある。
Cimg_4430 他方、普通科中隊の対戦車小隊は機動戦闘車を装備するべきではないか、ということ。これは軽装甲機動車に続き、開発が開始される装輪装甲車(改)や96式装輪装甲車の普通科中隊への配備が進む、という期待の下に、というべきものですが、機動戦闘車は、ミリ波レーダーを搭載する中距離多目的誘導弾ほど同時多目標対処能力が高いとは考えられず、もちろん一秒毎に次々と誘導弾を発車する中距離多目的誘導弾ほど同時多目標対処は行えないのですが、装甲防御力を有し、誘導弾のような最低射程等の制約が無い直接照準での戦闘が可能です。この点、無反動砲小隊への回帰ということもできるのでしょうか。
Cimg_4949 機動戦闘車は戦車の代用にはなりませんが、直接照準による瞬発戦闘能力を有する大火力の拠点であり、加えて、発表されるまで車幅については関心度が残るものですが、仮に既存の道路交通法に適合する車幅に抑えていた場合、装輪装甲車や軽装甲機動車とともに、市街地の駐屯地へ配備する場合でも、演習場へ日中を自走して展開することも可能です。これは戦車部隊駐屯地を演習場から離れた市街地に置けない最大の理由である訓練環境の問題をも解決できる、ということ。
Cimg_8480 日本の普通科連隊は普通科中隊を基本単位として、間に普通科大隊をおく編成を採っていません。正確には1962年の管区隊編成師団制度移行の際に廃止し、結果戦闘基幹部隊を普通科中隊としてきました。しかし、多くの国では歩兵大隊隷下の歩兵中隊の定員を100名程度とし、迫撃砲小隊などは大隊直轄としています。このため、これら火力を有する自衛隊の普通科中隊は概ね200名前後となっており、対戦車小隊と迫撃砲小隊を火力中隊に統合した場合、隷下小銃小隊を普通科中隊とし、あと90名ほど人員は欲しいですが普通科大隊を名乗っても遜色ない、規模を有している、という気はしないでもありません。
Cimg_6888 閑話休題。中距離多目的誘導弾を普通科中隊の対戦車小隊へ配備した場合、、理想としては射界を確保できる地域に接続できる掩砲所を構築し、適宜展開し射撃し射撃後は掩砲所へ戻る、という運用が望ましい一方、発射後ロックオンが可能ですので、必要ならば相当後方に展開し、第一線の小銃小隊からレーザー照準を受け、見通し線外射撃、間接照準射撃を行うという運用もあるでしょう。特に掩砲所を構築する時間が、攻撃前進などにより確保できない際にはこの運用以外、敵砲迫の火力で制圧される可能性もあります。しかし、この方式を採った場合、中隊長は中距離多目的誘導弾の展開状況と掩砲所の構築にかなりの配慮を行わねばならず、これが中隊の行動を制約してしまうのではないか、と。
Cimg_9485 機動戦闘車であれば、攻撃前進に随伴できますし、中隊長は掩砲所の設営よりも攻撃と防御に集中できるほか、普通科中隊を構成する三個の小銃小隊は、自小隊が展開する距離から遠くない範囲に一個小隊とはいえ機動戦闘車が配備されるわけですので、不意遭遇や障害除去に際し、即座に105mm砲の瞬発交戦能力を発揮することが出来ます。もっとも、この場合、機動戦闘車は中隊の他の装甲車と共に最前列に位置して戦闘加入するわけですので、損耗を考慮した予備車両や運用全般を考える必要が出てくるわけではありますが。
Cimg_9482 さて、普通科連隊対戦車中隊を維持すれば、直掩火力となる重迫撃砲中隊の120mm重迫撃砲とともに連隊の普通科中隊への支援能力は大きくなります。機甲脅威状況に応じ、もしくは防御正面に応じ、連隊本部管理中隊が無人機を用いて必要な状況を収集、機動戦闘車が得た目標情報などもC4ISRによる情報共有により対戦車中隊の展開必要位置を連隊長が決心し、必要で且つ最大の効果が発揮できる地域に中距離多目的誘導弾を展開すれば、連隊全体の戦闘能力の防御力はかなりのもとのなるでしょう。
Cimg_6172 なお、こうした視点に際し、それでは戦車の存在意義は無くなるのではないか、という指摘があるかもしれませんが、前述の通り、機動戦闘車は60式自走無反動砲のような運用を想定しています。73式装甲車や60式装甲車を装備する普通科部隊は冷戦時代の北部方面隊に幾つか配置されていましたが、この部隊に対し、60式自走無反動砲は火力支援と対戦車戦闘を専ら任務としていた半面、これにより戦車中隊は連隊戦闘団に不要、という論理には至っていません。この点とともに、普通科連隊対戦車中隊には中距離多目的誘導弾を、普通科中隊対戦車小隊は機動砲小隊への改編を、と考えた次第です。
Img_481_5 予算面の問題が最大ではありますが、現在まで継続されている普通科の重視という防衛計画の大綱に従えば、この程度は必要なのではないか、と。少なくとも、NATO等で進む高性能な大口径機関砲と戦車用火器管制装置と同程度の機器を備えた歩兵用の装甲戦闘車とは、搭載する火器管制装置が同程度ですのであまり値段で変わりません、装甲戦闘車で一個連隊を充足するよりは、それこそけた違いに安価な選択肢ではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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平成25年度協同転地演習(連隊等転地),北部方面隊第11旅団が北富士地区へ展開

2013-10-07 16:55:28 | 防衛・安全保障

◆90式戦車など180両が本州展開

 防衛省によれば、明後日10月9日より、北部方面隊による平成25年度協同転地演習(連隊等転地)が開始される、とのことです。

Mimg_2041 協同転地演習とは、有事の際に方面隊を越えた部隊の増援要請に迅速に対応するべく、長距離戦略機動と戦域策源地構築、戦闘序列の構成と戦闘加入までを迅速に行う目的のもと実施されている演習で、冷戦時代はオーロラ演習、北方機動演習として本土の師団を北海道へ緊急展開する目的で行われていました。

Mimg_1600 北方機動演習として実施されていた北海道への増援ですが、冷戦構造の終結と共に、西方地域への軍事的圧力が高まるようになり、北方脅威への対処と演習場環境の良さにより重装備を充実させている北部方面隊の部隊を、併せて本土へ展開させる能力を付与する必要性が生じてきました。

Mimg_1505 こうして、北部方面隊からの本土への展開訓練と共に、加えて本土の師団及び旅団を北海道へ展開させる訓練を並行することで、陸上自衛隊の戦略機動能力強化を図る目的から、方面隊が相互に協同するという意味で協同転地演習と名称を改め、今に至ります。

Mimg_1462 今回の協同転地演習は、北部方面総監田邉揮司陸将が統裁官を務め、北部方面隊管区から連隊規模の部隊を東部方面隊管区の北富士地区へ展開させる目的で行われ、演習には札幌市の真駒内駐屯地に司令部を置く第11旅団より一個普通科連隊を中心とした部隊が参加します。訓練期間は10月9日から10月21日までの間とのこと。

Mimg_2014 参加部隊の規模は、人員530名、車両180両、航空機2機が参加し、車両には90式戦車4両が含まれます。部隊は9日に駐屯地を出発し、海路及び陸路、もしくは空路を利用し14日までに北富士演習場へ展開、18日までの期間に攻撃訓練などを行い、18日から21日までの期間を以て復路を達成するもよう。

Mimg_1680 西方脅威と共に、迅速な展開能力を整備することは、有事への切迫性が高まる際に、着上陸侵攻を受ける蓋然性の高い地域への予防展開が、その発生を抑止することが可能です。この論理は、安易に陸上国境の地域で急に行う場合緊張を増す可能性がありますが、専守防衛を国是とし、実績として先の大戦後に軍事侵攻を行っていない我が国では、非常に有用な抑止力となるでしょう。

北大路機関:はるな

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日米共同訓練(国内における米海兵隊との実動訓練):饗庭野で第三師団と第三海兵師団参加

2013-10-06 16:38:06 | 防衛・安全保障
◆MV-22本土での日米訓練へ初参加
 防衛省によれば、明日7日から18日まで、滋賀県饗庭野演習場において日米共同訓練、国内における米海兵隊との実動訓練が実施されるとのこと。
Thimg_7584 今回の日米共同訓練の目玉はMV-22です。日本本土での訓練、特に日米共同訓練において初めてMV-22が参加する点で、詳しくは後述しますが、第三飛行隊の所属と考えられるUH-1が訓練に参加しますので、MV-22は野整備隊を饗庭野へ展開させ整備支援を行うのか、第三飛行隊の八尾駐屯地、近傍の海上自衛隊舞鶴航空基地か航空自衛隊小松基地を拠点とするのか、野外整備性という面から興味深いものがあります。
Nimg_2043 日米共同訓練には陸上自衛隊より中部方面隊第3師団が参加し、米海兵隊からは在沖米軍の第3海兵師団が参加、統裁官は第3師団長鈴木純治陸将と第3海兵師団ヘルマンSクラーディ少将が任務に当たります。特に陸上自衛隊と米海兵隊が独自の指揮系統に基づいて共同作戦を展開する連携を演練するとされ、実動部隊がこの練成にあたります。
Simg_9989 続いて再来週からは、王城寺原演習場において陸上自衛隊第9師団と米陸軍第25軽歩兵師団との間で日米共同訓練が行われますので、米軍との共同訓練は海兵隊に陸軍にと継続的に実施されることとなります。併せて、自衛隊の演習として北部方面隊第11旅団が東部方面隊管区への連隊等協同転地演習を行いますので、比較的特筆できる内容の演習が続く10月、となりました。更に中央観閲式も行われますね。
Eimg_6041 陸上自衛隊と海兵隊の日米共同訓練、実動部隊は信太山駐屯地の第37普通科連隊より1個中隊150名、第3海兵師団第3海兵連隊第3海兵大隊より2個中隊基幹の180名が参加し、日本側は89式小銃やMINIMI分隊機銃、81mm迫撃砲と120mm重迫撃砲、それに航空機としてUH-1が参加し、米海兵隊からはM-16A4小銃やM240中機関銃、60mm迫撃砲に航空機としてCH-53及びMV-22が参加すると発表されました。
Uimg_9385 前述の通り、MV-22が本土での訓練に供されるのは今回が初めてで、一方、陸上自衛隊からはUH-1が参加することとなっていて、米海兵隊も在沖米軍のUH-1の派生型として従来のUH-1NをUH-1Yへ置き換えています。MV-22は防衛省が関心を示している機体ですが、これまでの機体の後継となるのではなく、AH-1S対戦車ヘリコプター導入以来30年ぶりの全く運用の想定が異なる機体ですので、多機種の連携要領についても今回の訓練で参考となる点があるやもしれません。
Iimg_9937 また、CH-53の参加も明示されていますが、陸上自衛隊はこの種の重輸送ヘリコプターに相当する機体としてCH-47輸送ヘリコプターを装備しています。併せて将来的にMV-22の導入を調査検討開始していますので、双方の運用連携要領も関心事として大きいでしょう。更に付け加えれば、我が国がMV-22を導入する際に如何にして火力支援や護衛を行うのか、海兵隊のようにAV-8Bや将来的にF-35を導入する可能性はあるのか、この点護衛については悩みどころでしょう。
Gimg_6392 他方、主要装備として日本側に対し、米側の装備が陸上自衛隊では順次廃止された7.62mm機関銃や、かつて装備されつつも廃止された一方携行し即応火力として用いることが可能である点が再評価された60mm迫撃砲を参加させている点で、今年度予算に陸上自衛隊は60mm迫撃砲を盛り込んだため、その特性も共同訓練により第一線部隊同士で再確認されることも望まれる。
Img_2421 例年の方式では、日米訓練開始式をおこない、その後各種機能別訓練、携帯火器や迫撃砲の射撃に市街地と野戦での各種近接戦闘や障害対処などを機能別訓練を実施、これには空中機動も今回の装備からふくまれ、続いて最後に総合訓練として一連の流れを同時に展開する方式が採られると考えられます。毎年行われる海兵隊との日米共同訓練、年々装備が強化されていますね。
北大路機関:はるな

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豊川駐屯地創設63周年記念行事(2013.10.05) PowerShotG-12撮影速報

2013-10-05 20:58:00 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆日本最大級特科連隊、装備するFH-70は60門!

 F-15の小松航空祭か、八尾の中方航空隊か、いろいろ悩みましたが、日本最大級の特科連隊が駐屯する第10特科連隊の豊川駐屯地へ行ってきました。

Timg_6997 第10特科連隊は全国の師団特科連隊が全般支援大隊を廃止し、もしくは特科大隊を全廃し特科中隊基幹の特科隊へ改編する中、現在も60門のFH-70榴弾砲を装備する連隊として中部方面隊から全国へ抑止力を利かせています。このほか、第49普通科連隊、第6特科群、第10高射特科大隊と多くの部隊が駐屯しています。

Timg_7002 整列した部隊を巡閲する第10特科連隊福元洋一一佐、隷下には五個特科大隊十二個中隊が配置されています。ただ、この壮観も今年度限りで、現在即応予備自衛官を基幹とする第四大隊は廃止されると考えられ、併せて第五大隊も廃止、第4特科連隊のように直掩火力大隊のみの三個大隊編制となるのでしょう。

Timg_7046 観閲行進へ臨む第49普通科連隊の軽装甲機動車、即応予備自衛官を主体とするコア化連隊で、連隊本部は、ここ豊川駐屯地へ置かれていますが、即応予備自衛官の訓練は第10師団管区に加え第3師団管区の一部でも行われており、分散しての訓練をおこなっているもよう。

Timg_7050 重迫撃砲チュ隊の120mm重迫撃砲、中部方面隊には、このほかの即応予備自衛官の普通科隊員は元第13旅団隷下の現中部方面混成団第47普通科連隊が実施、この第49普通科連隊も年度末へ中部方面混成団へ移管されるとのこと、つまり即応予備自衛官主体の普通科連隊は中部方面混成団へ統合されることとなります。

Img_70670
 第10特科連隊情報中隊。全国の特科部隊が大きく削減されつつも特科大隊へ縮小されない背景には、特科部隊には陣地構築への施設作業部隊を含め本部管理中隊が必要であるほか、写真の情報中隊のように対砲レーダ装置や気象測定装置などが装備されていなければ現代砲兵戦を実施できず、火砲を保有する意味が無くなるから。

Timg_7097 他方、特科連隊編成が第10特科連隊の場合維持されるとみられていますが、一部師団では特科隊へ縮小されています。普通科連隊戦闘団編成に際し、特科大隊を充当することはできませんが、特科中隊ならば充当出来る、という話です。しかし、あまり細かくしてしまうよりは、普通科連隊の重迫撃砲中隊に情報小隊を置き、その分特科隊は全般火力支援に充てるべきでは、と思ったりもします。

Img_7123 直掩火力とは、その昔105mm榴弾砲が装備された特科大隊により普通科連隊の支援と敵迫撃砲の制圧を任務として二個特科中隊基幹の特科大隊で実施されていました。対して全般火力支援は対砲兵戦と長距離火力支援へ155mm榴弾砲の四個特科中隊基幹の第五大隊が実施していました。

Img_7101 現在は榴弾砲の155mmへの統合という趨勢に応じ、全ての部隊が155mm榴弾砲を装備していますので、全般支援と直掩火力の意味合いは薄れましたが、対砲レーダ装置などの支援を受けるという意味で、師団長が最後の火力を展開できるという第五大隊の意味は小さくは無いのでは、と考えるもの。

Timg_7150 この特科連隊が大きく削減されるのは非常に残念で、コンパクト化という意味にて火力戦闘車の開発が開始されましたが、運用自体も、普通科連隊は重迫撃砲中隊に門数以外の観測小隊や小型対迫レーダを装備する情報小隊などを新編し、その分特科連隊は師団長最後の手札、として維持されるべきなのでは、とも。

Timg_7160 第10高射特科大隊、本部管理中隊情報小隊の対空レーダ装置と低空レーダ装置、これらの情報を師団対空戦闘情報システムへ送り、これをもとに対空戦闘を展開すると共に防空警戒情報を師団各部隊へ送ります。レーダー情報が無ければ対空戦闘は実施できません。

Timg_7168 第1中隊の93式近距離地対空誘導弾、小隊ごとに必要に応じ連隊戦闘団へ配置させ、近接防空に当たります。上記の対空戦闘情報と自動連動しているため、その射程内に接近した目標へ即座に対処することが可能、乗員は車両から離れ遠隔操作し対処もできます。

Img_7175 第2中隊の81式短距離地対空誘導弾C,このC型は従来型よりも射程が延伸されています。レーダーを搭載した射撃統制車両に四連装発射装置を2両がセットとなり、師団後方策源地や火砲拠点などの防空を担います。4セットが配備されており、これも第二次大戦中に空からの攻撃に悩まされた反省からの装備ですが、二個中隊の防空能力はかなりのもの。

Timg_7205 第6施設群、大久保駐屯地第4施設団の隷下部隊です。装甲ドーザや地雷原処理車など、本来師団施設大隊に装備すべきものを集中装備していますが、これは装備の更新への問題と共に、師団施設大隊の連隊戦闘団への組み込みに際しての編成の難しさもあるのでしょう、必要に応じ師団を支援します。

Timg_7305 G-12はここまで、流石に観閲行進に続いて実施された訓練展示はG-12で追随できるものではありません、発砲焔が映っていまして頑張ってくれましたが、やはりEOS-7DとEOS-50Dの独壇場です。こうしたかたちで、豊川駐屯地へ行ってまいりましたので、第一報として掲載しました。

北大路機関:はるな

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平成二十五年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.10.05・06)

2013-10-04 23:47:23 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 コッペリオンがBS-211で放映始まりましたね、内容からようやく震災から一息ついたというところか、一方、台風二つが列島接近、ダブルタイフーンという仮面ライダーV3のOPのような状況ですが、皆様如何お過ごしでしょうか。

Fimg_5946 健軍駐屯地西部方面隊創設記念行事、今週末一番行きたい!、が少々遠いので来年こそと考える行事は、西部方面隊創設58周年記念行事です。熊本県庁の近く、健軍駐屯地は九州沖縄を防衛警備管区とする西部方面総監部が置かれ、第8師団司令部も近く、まさに平成の軍都、戦車部隊や特科部隊が市中パレードを行います。ああ、来年度こそ。

Img_71338 今週末最大の航空部隊行事は、明日行われる小松基地航空祭2013です。白山の麓、小松基地第六航空団は第303飛行隊と第306飛行隊というF-15飛行隊二個を基幹としており、対岸に北朝鮮を睨む日本海側唯一の航空団、ブルーインパルスも飛行展示を予定しており、北陸道大渋滞と何故か周辺が荒天でも基地は晴れるという小松マジックが有名な航空祭です。

Mimg_6043 首都圏では日曜日に館山航空基地ヘリコプターフェスティバル2013が行われます。東西日本は東日本の哨戒ヘリコプター部隊総元締め、第21航空群が展開する海上自衛隊回転翼航空部隊の一大拠点です。千葉県南部という事で少々行き難い立地ですが、基地内には駐車場も一定数用意されているとのこと。

Img_0092 京阪神地区では、明日の八尾駐屯地中部方面航空隊創設61周年記念行事です。中部方面航空隊は八尾に多用途ヘリ部隊、明野に対戦車ヘリコプター隊の約50機を以て編成され、第3師団隷下代の3飛行隊も八尾に駐屯しています。狭い区画しか解放されませんが、訓練展示はやや近く迫力があります。なお、月曜日から滋賀は饗庭野で日米合同演習が行われ、海兵隊がMV-22とともに参加しますので、地上展示機にMV-22でも参加してくれればなあ、と思うところ。

Img_2035 航空部隊関連行事では、北部方面航空隊の丘珠駐屯地祭が行われます、札幌市内の丘珠空港に置かれており、こちらは方面航空隊ですがCH-47輸送ヘリコプターも配備されており、中部方面航空隊よりも輸送能力が大きくなっています。民間機の発着もありますが祝賀飛行や訓練展示なども行われるもよう。

Img_6525 中京地区では、豊川駐屯地創設63周年記念行事が行われます。第10特科連隊、第49普通科連隊、第6施設群、第10高射特科大隊と多くの部隊が駐屯していますが、第10特科連隊は年度末へ縮小改編、第49普通科連隊は対戦車中隊廃止と中部方面混成団への移管、節目となる年の行事と言えるでしょう。

Img_2630 北海道では、岩見沢駐屯地、創設k年行事がおこなわれます。北部方面施設隊隷下の第12施設群が駐屯している駐屯地で、有事の際には方面隊隷下の旅団への支援と建設工兵としての任務に当たります。行事内容が今一つ良く分からないのですが、市内パレードを行うという話があり、市内で装備品展示も行われるようです。岩見沢に土曜日、日曜日に丘珠へ、という選択肢もあるやもしれませんね。

Img_0711 福島駐屯地祭、第44普通科連隊と第11施設群が駐屯していて、第6師団隷下の部隊として東日本大震災福島第一原発事故へは文字通り身を挺しての実任務へ当たりました。部隊の精強さの一つに地元との結びつきがある、と考える当方には、本当の意味での精鋭郷土部隊といえるのではないでしょうか。

Kimg_8573 山陰地方は、今週末が行事の連続です。第13偵察隊の駐屯する出雲駐屯地にて市街パレードが行われます。第13偵察隊は、北朝鮮を対岸に睨み拉致事案も管区内で発生したこともあり、沿岸監視能力と無人偵察機による航空偵察能力の強化が図られた部隊となっています。

Kimg_80930 米子駐屯地祭、第13旅団隷下の第8普通科連隊が駐屯している駐屯地です。同じく日本海側の駐屯地という事もあり、連隊には無人偵察機が装備されています。旅団連隊という事で中隊数は限られていますが、任務は非常に重大です。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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YS-11EA電子訓練機の迷彩新塗装 入間基地航空総隊司令部飛行隊電子戦支援隊所属機

2013-10-03 22:51:49 | 先端軍事テクノロジー

◆対電子戦訓練が任務、新迷彩塗装のYS-1EA

 かなり前からあるのだけれども、当方には未見の装備というのは、やはり多々あります。そのうち、一機種、旧塗装は撮影したのですが新塗装は初めて、という写真をご紹介しましょう。

Yimg_9078 YS-11EA電子訓練機の迷彩塗装、言わずと知れた戦後初の国産旅客機YS-11の自衛隊仕様、入間基地に所在する航空総隊司令部飛行隊電子戦支援隊所属機です。旧塗装は数年前に撮影したことがあるのですが、2009年頃より迷彩塗装へ変更され、今回、少々粗い画像ではありますが高高度を往く機体を撮影することが出来ました。ようやく撮影、ですがYS-11EAは航空自衛隊に2機しか配備されていないため、こちらまで飛行することは稀で、致し方ありません。

Yimg_9098 航空総隊司令部飛行隊電子戦支援隊の任務は、2機のYS-11EAと1機のEC-1を以てレーダーサイトや航空部隊、防空部隊に対し電子妨害を掛けることでこれら部隊の対電子戦能力向上の訓練支援にあたることにあります。従って、機内には妨害電波などの発信装置が搭載され、機体右翼基部から後部胴体にかけ、電子戦装置の発電動力装置排気口が見えます。その昔はC-46輸送機をレドーム追加など改造し、電子戦訓練支援任務に充てていましたが、C-46輸送機の老朽化によりYS-11が配備されました。

Yimg_9140 実際に妨害電波を発信し、実戦的な訓練を行う部隊の航空機ですが、余り真面目にやり過ぎると、基地周辺のテレビ画像や携帯電話などの通信電波を遮断、本気を出せば家庭用パソコンなどが破損しかねないため、運用は慎重を期し、それ以上の規模の訓練は本土から離れたところで実験されている、とされています。どちらにせよ、航空祭では見れないもの。もっとも、入間基地が春に実施している滑走路ウォーキングなどの開放行事では滑走路沿いに置かれていることもあるようです、平日に入間基地近くで撮影すれば意外と見えるとのこと。

Yimg_9367 こちらが2009年2月に撮影したYS-11EAの旧塗装です。なお、よく似た機体として入間基地には航空総隊司令部飛行隊電子測定隊のYS-11EB電子情報収集機があります。YS-11EBは4機配備されており、当方にとり実は写真でしか見たことが無い未見機で、塗装はYS-11EAの塗装と似ており、実のところYS-11EBのほうがその任務の特性上先に迷彩塗装とされていました。。電子情報収集機とありますが、これは即ち電子偵察機であることを意味し、我が国周辺での軍用電子情報を傍受し、有事の際の電子戦に備えており、一説にはかなり遠くまで飛行しているもよう。

Yimg_0129 こちらは入間基地航空祭で撮影したYS-11FC,飛行場の航法装置などの飛行点検を行う航空機で3機が配備されています。このほか、航空自衛隊にはYS-11P人員輸送機が4機、海上自衛隊も輸送機としてYS-11を採用しています。YS-11は既に我が国では民間航空路線からは引退した過去の航空機で、国土交通省のl期待も運用終了、海上保安庁では運用が続けられていますが全体で残りは僅か。自衛隊機も将来的にC-2輸送機派生型やC-130中古機、機体容積の面では開発中のMRJ改造機等、に置き換えられることとなる機体ですので、初の国産旅客機最後の頑張りを見守りたいですね。

北大路機関:はるな

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防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望? 国産装備の調達費は高くない

2013-10-02 23:11:20 | 国際・政治

◆単純比較は一種の極論であるという前提で
 前回記事ですが、ご指摘の通り小銃の比較については無理がありました。ただ、本稿は現在の話をしていまして、この点を御理解いただければ、と。それでは続き。
88img_1087 南西諸島の防衛に関する特集記事の作成中、艦艇の値段を調べ驚いたことがあります。むらさめ型や、たなかみ型護衛艦のような大型護衛艦よりは、少し小型でも安価な艦艇を揃えたほうが、という事で少し小型すぎる気がしましたが、掲載当時最新型のシグマ級コルベットを比較対象と考え、費用を見てみますと3隻の契約で8億1600万ドルという数字が出ていました、2008年2月の契約ですが、邦貨換算で一隻当たり291億円、たかなみ型護衛艦は満載排水量6300tの建造費は650億円、対して2075tのシグマ級は291億円だったわけです。
Aimg_2940 そんな、いしかり型護衛艦は100億円しなかったぞ、と30年以上大昔の数字を一瞬思い浮かべましたが、まあ、これはさておき、建造時期が20年違うので比較数値にはなりませんが、満載排水量4800tの護衛艦うみぎり、あさぎり型護衛艦の最終艦で建造費が432億円、90年代に同艦との比較が行われた際にドイツ製輸出用MEKOフリゲイトならば200億円で買える、と提示されていただけに隣国オランダの輸出用であるシグマ級は排水量で半分、100億円とまではいかずとも150億円程度の費用ではないかと期待し、たかなみ型の四分の一程度だろうと考えながら調べると、建造費は半分弱程度、高さに驚きました。
Himg_7216 外洋哨戒艦を、次いで調べてみますと、オランダ海軍のホランド級外洋哨戒艦が4隻を2005年に5億2960万ユーロで建造を決定しており、邦貨換算で181億円です。満載排水量は3780tで、はつゆき型護衛艦よりも小型、76mm砲と30mm機関砲を搭載し、ミサイルも魚雷もソナーさえも搭載せず、速力も21ノットと抑えられているのですが、C4ISR能力を付与し、対水上対空兼用のIM-400レーダーを搭載しているものが、181億円、それも国内向けの費用ということで、やはり比較しますとこれも驚く数字でしょう。
Aimg_0673 あきづき型護衛艦も比較すれば高い部類には入らず、イギリスの45型ミサイル駆逐艦デアリング級は建造費が一隻当たり9億7600万ドル、ただ、搭載するサンプソンレーダやアスター30艦対空ミサイルを比較する場合、アスター30とESSMの射程などで、確かに一つ上の艦と言えますが、あきづき型護衛艦のような運用を視野に含めていると考えられます、あきづき型の建造費は750億円、45型の満載排水量は7350tですが、あきづき型も満載排水量は7000tで、ほぼ、同じ大きさの水上戦闘艦ということが出来るでしょう。
Img_9945 イギリス海軍が計画中の26型フリゲイトGCSは建造費が2億6000万ポンドから3億5000万ポンドと見積もられ、この幅の大きさに少々疑問符を持ちつつも邦貨換算では400億円から630億円、あくまで単純比較ですが、ポンドの為替相場により随分違ってきますが提示されました。対して同時期に建造する平成25年度計画護衛艦25DDの建造費は701億円です。26型の満載排水量は5400tで、25DDは基準排水量が5000t、満載排水量で7000t程度となりますので一概に比較はできませんが、それにしても建造費では割高という印象には繋がりません。
Avimg_4020 ひゅうが型などは19000tでFCS-3とMK-41VLSを搭載し、僚艦防空として一定の艦隊防空能力を有しつつソナーを搭載した海外では全通飛行甲板型巡洋艦に区分されますが、建造費は約1000億円でした。ヘリコプター搭載護衛艦いずも、の建造費は1139億円であるのに対し、同時期の建造であるオーストラリア海軍のキャンベラ級強襲揚陸艦の建造費は13億ドル、建造費を観ますと、ともに一番艦、キャンベラ級はスペイン海軍の強襲揚陸艦ファンカルロス一世を原型とし一部再設計していますが、いずも、は、いずも型の設計費用を含めた建造費です。
88img_2753 いずも、と比較したキャンベラ級は、共に戦力投射艦という、かつての軽空母と強襲揚陸艦の中韓を担う艦艇として同列に語られることがあるので、比較対象として並べましたが、全通飛行甲板型船型を採用し満載排水量で27851tですが、速力は20ノットと機関出力なども抑えられています。いずも、の満載排水量は27000t、同じく全通飛行甲板構造を採用し、OPS-50対空レーダーや個艦防空装備を有すると共に、速力は護衛艦として用いるため30ノットを発揮、機関出力も11万2000馬力と大きいのです。強襲揚陸艦と護衛艦を比較すれば速力が小さな揚陸艦の方が安くて当然だ、と反論しようとした方、よく見たら護衛艦の方が安いではないか、と驚かれたことでしょう。
Mimg_7237 潜水艦を続いて比較してみましょう。そうりゅう型潜水艦の建造費は570億円程度です。日本の潜水艦は大型で、そうりゅう型の水中排水量は4200t。潜水艦についての比較は難しいですが、これも総じて我が国の潜水艦が高いという印象は受けません。比較が難しいというのは、海上自衛隊の潜水艦は任務範囲が非常に広いため航続距離の大きさを求められ、言い換えれば海上自衛隊の運用するような大型通常動力潜水艦で比較できるものが非常に少ないのです。ただ、単純比較をするならばこの限りではない、と少々乱暴な論理を。
Biimg_8143 そうりゅう型と212A型、比較軸には以上の通り無理があるという前提を挙げ、こうしたうえで比較しますと、ドイツ製212A型AIP潜水艦で水中排水量が1830tに対し建造費が初期で4億800万ドル、輸出市場では5億ドルとなっています。確かに日本の潜水艦よりも安いのですが、4200tの潜水艦と1830tの潜水艦の比較であり、しかも日本の防衛警備海域の面積を哨戒するには、航続距離の違いにより必要な隻数が違ってきます。簡単に比較できないのですが、国産が高すぎるという結論にだけは至りません。
Img_7940 航空機ですが、哨戒機で比較しますと海上自衛隊のP-1哨戒機は最初の調達が4機を679億円で調達しています。双方とも洋上哨戒機ですが、対潜哨戒機としての性質が強いP-1と洋上哨戒を軸に置いた警戒管制機的な運用も視野に入れるP-8の比較は難しい、と前置きしつつ、アメリカ製P-8哨戒機はインド海軍への輸出費用で8機が21億ドルとなっています。ただ、インド海軍はこれ以上出さないという契約で取得するため、開発費が高騰したP-8Aに対し、インド海軍仕様のP-8Iは電子行きの一部が簡略化されることとなりました。もちろん、個々の性能で差異はありますが、入手できる哨戒機で比較すると海外製は非常に高くなってしまうことが分かるでしょう。
Uimg_4816 航空自衛隊装備ですが、C-2輸送機は今年度予算で2機が333億円で調達されています、初期生産費用は高くなりがちですが、エアバスA-400M輸送機はフランスのF2ニュースでは昨日遂に空軍へ納入されたと報じられ、漸く戦略展開能力が、と喜びの声が伝えられましたが、単価が現時点で1億3600万ユーロ、ただし開発期間の延長と共により高くなる可能性があります。このほか、生産が終了するC-17輸送機は2009年の米空軍向け生産費用で15機が29億ドルですので1億9330万ドルとなりますので、そこまで高いのか、というところ。
Gimg_7078 戦闘機ですが、海外製は高い、という印象、F-35戦闘機の導入で固まりました、が、国産で第五世代戦闘機を用意する場合、開発費が想像できない水準となります。このため、90億円のF-2支援戦闘機と比較する事しかできないのですが、韓国空軍が暫定契約しその後白紙撤回したF-15SE戦闘機は7260億円で60機を導入する、という契約でした。なお、ボーイング社はF/A-18E戦闘機よりはF-15SE戦闘機の費用を抑えているとしていたので、F-2とよく比較されるF/A-18Eはもう少し高くなります。
Img_7422 ユーロファイタータイフーンは開発国へは邦貨換算で70億円程度で供給されていますが、これは開発費として開発国は先払いしているため取得できる費用とされ、トランシェ1のサウジアラビア輸出価格が190億円程度、この機体のトランシェ3への改修費用が42億円程度、インド空軍へのトランシェ2のライセンス生産費用が230億円程度、とされています。また安い安いといわれたF-16戦闘機もBLOCK60以降は当初のハイローミックス路線は忘れ去られ鷹のように高性能化が進み、調達費が110億円以上となっており、実のところF-2支援戦闘機の納入費用よりも大きくなってしまいました。
Img_8934 しかし、ここまで比較軸がおかしいのではないか、と考えられた方もいるのではないでしょうか。これは国産装備が高いという視点に対して、国産装備は高くない、という視点に基づき指摘に選択肢をしている主観は、否定しません。すると、結局のところは装備の費用は、比較できるものもあるように見えるけれども、高価な装備をライセンス生産して取得するならば、それは無駄が生じているだけなのか、それによって稼働率が上がることで取得しなければならない総数が変化しているのか、という視点も踏まえると、比較することそのものは意味があるように見えてそこまでおおきくないのではないか、という視点に至らないでしょうか。
Gimg_9490 初度調達部品を含めた値段と既に量産され配備されている機体の価格比較は埠頭ではないか、とか、初度調達品の価格を含めれば安価と言われるスウェーデン製JAS-39戦闘機でもタイ空軍向けが6機で610億円になるので、どんな機体でもF-2より高くなるのは当然だ、とか、いやロシア製のSu-27やMiG-29ならもう少し安そうな、待て待てロッキードは30年運用の総合費用でF-35の方がJAS-39よりも安くなるという数字を出している、いや長期間運用しない前提のJAS-39を無理やり30年運用させるのなら維持経費が大きくなるのは当然で恣意的な数字だ、等などの反論はあるでしょう。
Img_1267 つまりは、国産兵器が高い/国産兵器は安い、という一方が極論を出して反論を締め出してしまうと、対論も極論で印象付けたのちに、理論展開を組み立てる構図が成り立ってしまう、ということ。兵器の価格比較では、例えば国産装備へ懐疑的な識者が見解を示す場合には、国産価格が最も大きい時期の数字を出して費用の大きさを批判する事例、海外装備の輸出費用を無視し自国向け費用と国産費用を比較した事例、海外装備でも軍事援助の費用を加えて援助の意味で装備品を安価に友好国へ供している事例と国産装備の国産費用を単純に比較するという事例があります。ただ、当方の数字も実のところ、全ての輸出事例を比較するのではなく、比較対象は実際の費用を示しているのですが、網羅はできていません。
Gimg_2350 これは数字のトリックというべきでしょうか、即ち背景を無視したもので、もちろん、これを網羅し、装備品の輸出価格と対外援助、勿論初度調達部品や維持費用の面を踏まえどう影響しているのかを明示すれば、政治過程論や合意形成過程と外交関係の事例研究と併せる事で、誰かの修士論文にはなるかもしれませんが、結局のところ数字は引用者の主観を織り交ぜただけで違う結論に導くことも可能であるわけです。国産装備よりも海外製装備の方が安い、という論点には以上の通り注意が必要、という事を忘れてはならないでしょう。
Iimg_0459 冒頭に記したとおり、これは単純に比較できるものではないのですが、単純に海外製装備が輸出され、導入されている費用と、我が国が国内で生産し導入している費用を観た場合、比較軸を最大限合わせた事例でも、決して国産装備は高くない、ということはできないでしょうか。随分と遠回りをしましたが、結局のところ、海外製は安く国産は高い、というのは数字と条件をどう取り出すかの比較であり、我が国の選択肢は結局良いものを安く導入し防衛費を最も効率化しようとした場合、安易に海外製を探すことは必ずしも得策ではない、といえるのかもしれません。極論を以て前回と今回の比較を行いましたが、高くは無い、という視点を示しつつ、極論だけではなく、過去の27回とともに、その背景を提示しました次第です。

北大路機関:はるな

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