北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

噴火活動と自衛隊、霧島山新燃岳の大規模噴火時における避難支援事例より

2014-10-22 23:19:50 | 防災・災害派遣

◆一方でカルデラ噴火の可能性も残る日本列島
 御嶽山の火山災害は積雪期に入ることで火山泥流の可能性はやや低まりました。
Img_1950  御嶽山山頂付近での困難な自衛隊と警察消防による行方不明者捜索ですが、御嶽山が積雪期に入り山頂付近での降雪状況が始まり、火山性ガスの危険性も顕著であることなどから、苦渋の決断として16日を以て行方不明者捜索は積雪期の終了に至るまでの期間、休止することとなった旨報じられました。一方火山災害へ関心高まる中NHKが本日報じた大規模噴火に関するもので“日本の広い範囲が火山灰で覆われ、火砕流が100キロ余り先まで達するような巨大噴火が、今後100年間に起きる確率はおよそ1%だとする研究結果”というものが。
Img_7982  この報道はNHKが神戸大学大学院の研究グループがまとめましたものを報じたもので、具体的事例として阿蘇山の大規模噴火などを提示し、過去の噴火では九州全域のみならず火砕流が山口県にも達したことを紹介したもの。御嶽山では現在でも7名の行方不明者が残っているとされ、発見を期して捜索が継続されてきましたが、火山灰の堆積によりこれ以上の捜索も難しく、其処へ積雪となりました。今後は捜索部隊への撤収要請などを経て、噴火活動への警戒監視体制の強化による今後の噴火活動への対処を軸とする事が予想されるところ。
Img_5294  喫緊の課題は御嶽山ですが、最も警戒された水蒸気爆発が引き金となり数千気圧の岩盤に閉じ込められた深層マグマが依拠に吹き出すという最悪の事態は想定せずとも当面は済むようになったのですが、火山活動はこのまま沈静化に向かうのか、マグマ噴火へと続くのかについては現在のところ流動的ですが、危惧された最大規模の噴火は想定せずに済む状況で、積雪期を迎えその後の行方不明者捜索の在り方などが今後の焦点となるところでしょう。一方で、噴火が最大規模となっていた場合や噴火当日の被害が拡大し数日間推移していたらばどうか。
Img_8454  さて、御嶽山が今後の展開により参考点を含むであろう2011年の霧島山新燃岳噴火災害の事例より参考となる事例についてみてみましょう。子の提示については大規模噴火の際における自衛隊行動指針を円滑に遂行する上での留意事項に対するものと、火山災害に対する自衛隊の行動能力の現実的な限界などについて示されています。陸上自衛隊に対する災害派遣要請の基準ですが、ガイドラインにおいては以下の二点を留意し想定していまして、噴火活動がより活発化した場合、降灰による土砂災害が発生した場合、指針として示されたものは以上の通り。
Img_0481  このなかで、陸上自衛隊の災害派遣活動に伴い検討が必要な事項としまして、災害派遣要請系統についてでは、県知事から各隊区担当部隊へ指揮系統を確立するとしたうえで、但し宮崎県においては災害派遣地域が第24普通科連隊と43普通科連隊の両隊区に及ぶ場合、第8師団長に要請する、としました。現在第24普通科連隊は即応予備自衛官基幹部隊として分散配置への改編準備が進められていますが、なお、この時点では駐屯地に中隊を集約し災害派遣に対しては気化に要因のみで、防衛出動に対しては動員を前提としているコア化編成を採っていました。
Img_226_0  避難支援時の車両運行に伴う検討事項では、第一としまして、装甲車等による一般道の通行。第二には、避難対象地域近傍における装甲車等の駐車場の提供。第三には、避難支援時における、自治体職員等の自衛隊との同行。第四に留意事項として降灰によるヘリコプターの運航制約、というものが挙げられています。口述しますが噴火初動の段階で御嶽山ではヘリコプターが展開していたものの、航空機と火山灰の関係を考えますと二次災害を避ける観点から非常に慎重にあるべき事例、というものでした。
Mimg_2182  装甲車等による一般道の通行は、当時災害派遣に車幅の大きな73式装甲車などの装備が北部方面隊より管理替えとして西部方面隊の災害派遣待機部隊へ配備されており、火山噴火災害に際しては徒歩退避が火山弾等の飛来により非常に危険であったことから危険であったための措置です、この点については御嶽山の富士教導団普通科教導連隊隷下の車両が第12旅団隷下日時的に管理替えとなって実現しました89式装甲戦闘車派遣と同じです。
Gimg_2585  加えて車幅の大きな装甲車の通行を予め退避計画に盛り込んだ背景には、自家用車との事故や交通渋滞の危惧があった点、挙げられるでしょう。この点が道路交通法の難しいところで、車両限界は2.5m、対して73式装甲車の車幅2.9m、車両限界を超えた装甲車両は防衛出動のような武力攻撃事態を除けば所轄警察署長の許可が無ければ一般道の地涌通航に制約が掛かり、出動に際してこうした問題が表面化しないようにあらかじめ、派遣を念頭に置いた時点にて予め盛り込んでいたわけですね。
Nimg_3558  避難対象地域近傍における装甲車等の駐車場の提供と避難支援時における、自治体職員等の自衛隊との同行、この二点は土地収用など、これも武力攻撃事態等の際に部隊の集結や陣地構築の際の民有地利用や接収などの問題で、財産権侵害の危惧などと解釈される方もいるようですが、武力攻撃事態法制定以前においてはこれら行動に先んじて会計科隊員による交渉が必要、こうした手続きにより人命救助が妨げられぬよう現行法に準拠し予め平時法制下での有事というべき災害への対処の一例と言えるところ。
Phimg_2777  県知事から各隊区担当部隊へ災害派遣を要請する際、ということですが、第24普通科連隊と43普通科連隊の両隊区に及ぶ場合、第8師団長に要請、という部分は指揮系統一元化の意味から重要です。なお、御嶽山火山災害において私事ながら長野県知事より旅団長へ、と災害派遣の記事に当方の誤記がありました、その背景についてですが、当方、新潟中越地震の事例から旅団への災害派遣要請は旅団長へ、と複数隊区にまたがる災害とそうでないものを誤解して掲載しご指摘を頂きましたのは過去記事の通り。
Img_8985  降灰によるヘリコプターの運航制約、についてですが、霧島山新燃岳噴火災害では新田原基地などに火山灰の影響がおよび、航空機エンジンやピトー管などへの損傷による飛行障害を警戒し、小松基地などに訓練移転を実施した事例がありました。エンジンを噴煙以外にも肉眼で確認しにく火山性エアゾルを吸い込めばエンジン内で溶解しエンジンを閉塞させエンジン停止へ、ピトー管が詰まれば計器類が使用不能となりどちらも飛行性能を左右する深刻な状況を誘発するため、下手をすれば不時着や墜落につながる、通常火山灰の影響下では航空機は飛行できません。
Img_0560  今回の御嶽山噴火災害では噴火数時間後には山小屋へ着陸を試みるべく陸上自衛隊のヘリコプターが噴煙柱付近を飛行していましたが、水蒸気爆発の影響であり火山性エアゾルなどの数値が低いとして飛行したのか、UH-60JAの双発高出力エンジンを頼ってのものかは未知数ですが、新燃岳噴火災害でもUH-60JAが派遣されており、状況次第では空からの救援は行えない、という状況は留意しておくべきでしょう。

北大路機関:はるな

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