◆島嶼部侵攻対処訓練を主眼
防衛省によれば27日月曜日より自衛隊は平成26年度方面隊実動演習開始を開始した、とのこと。
この演習は西部方面総監番匠幸一郎陸将を訓練担任官とし、西部方面隊、中央即応集団、第2師団、東北方面特科隊等から人員16000名、車両3800両、航空機80機を集中し運用することで、方面隊の各種事態における対処能力の向 上を図る事を目的としているもの。
九州及び南西諸島に対し軍事的圧力がかけられたとの想定ものとで同地域を担当する西部方面隊を主力とし、防衛出動を展開するとともに中央および他方面隊管区よりの部隊を以て統合任務部隊を編成し、迅速な対応を以て事態の拡大を阻止する想定です。
加えて来月初旬から中ごろにかけ平成26年度日米共同統合演習キーンスウォード15が南西諸島を含めた我が国周辺海空域において予定されており、日米40700名の参加を以て展開され、平成26年度方面隊実動演習はこの一端を構成することとなるでしょう。
演習の概要として、島嶼侵攻対処訓練、兵站施設の開設訓練、航空部隊の展開訓練、射撃訓練等が挙げられ、西部方面区の演習場、自衛隊施設等を演習区域とし27日より来月26日までの一か月間、訓練が展開されます。
西部方面隊に加え、東北方面隊が実施する協同転地演習と北部方面隊が実施する協同転地演習が同時に行われ、九州南西諸島での有事に際し、北部方面隊及び東北方面隊の部隊が機動防衛力を発揮し緊急展開、支援に当たる事は特筆されるべきでしょう。
北部方面隊協同転地演習として、北部方面総監田揮司良陸将指揮の下第2師団の1コ普通科連隊基幹部隊が人員1000名と戦車3両及び自走榴弾砲3門を含む車両320両、航空機6機を以て九州の大矢野原演習場及び日出生台演習場展開します。
東北方面隊協同転地演習も同時に展開され、東北方面総監 松村五郎陸将の指揮下で南西諸島の奄美大島及び空自福江島分屯基地へ 第4地対艦ミサイル連隊2個中隊及び第5高射特科群1個中隊の人員230名と車両100両を緊急展開させ、長距離機動に必要な統制調整能力の向上を図るとのこと。
本年の西部方面隊実動演習は、九州に加え鹿児島県島嶼部である奄美大島や長崎県島嶼部である福江島を舞台として展開されます。これは近年の実動演習が九州と共に沖縄県を中心に展開していたのに対し、中国の軍事圧力が鹿児島県島嶼部へ及び始めている現状を反映させたものと言えるでしょう。
過去数年、自衛隊創設以来の規模で対領空侵犯措置任務緊急発進が増大していますが、その増加部分は中国機によるもので、その増大数は中国が対外的に奪取を公言する沖縄県南部ではなく、鹿児島県島嶼部に向かう経路を採っている統計データが防衛省により発表されています資料より読み取れます。
これは単純に見た限りでは、中国の標的となった沖縄県南部への接近が隣国中華民国空軍の台湾からの緊急発進を受けるため迂回せざるを得ない、との見方が出来ると共に、仮に沖縄県への侵攻を企図する際には九州を含めた自衛隊主力部隊の増援を封殺する必要があり、鹿児島県へ圧力がかけられているという見方もできるわけです。
鹿児島県島嶼部への限定着上陸が阻止できなければ九州から沖縄に掛けての増援展開が不可能となり、シーレーン海上交通路が途絶すると共に奪取された当初が更なる我が国中枢攻撃の策源地となり、我が国は太平洋戦争末期以上の緊迫した状況に追いやられる。
この状況を防ぐため、今回の西部方面隊実動演習では、九州の演習場を離島に見立てての例年通りの島嶼部防衛訓練を行うと共に、南西諸島の重要地域だる奄美大島へ地対艦ミサイル及び地対空ミサイルを展開させる体制を演練することとしたのでしょう。
歴史上、万全の準備が整う地域は戦場となりにくい実情がります。太平洋戦争における沖縄戦についても、台湾か沖縄へ侵攻する米軍側の意図に対し沖縄の第32軍より第9師団が台湾へ抽出されたため、手薄となった事が沖縄戦に繋がっています。
一方で、憲法上の制約から自衛権行使の発動を著しい自制下に置いている我が国は、第一撃を甘んじて耐えなければならない状況下にもあり、この点で第一撃を受けるまでの準備態勢の示威、同じく憲法上の要素から制約される策源地攻撃能力に依拠した、開戦即本土決戦という非常に不利な現況で、即応体制の誇示をもってのみ抑止力を示せるという状態にあるため、この種の演習を継続的に展開せねばなりません。
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