北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第126次対潜特別訓練、海上自衛隊米海軍参加で四国九州南方洋上にて開始

2015-02-08 22:19:34 | 防衛・安全保障
◆護衛艦3隻が日米潜水艦5隻へ対応
 海上自衛隊は本日より第126次対潜特別訓練を開始しました。

 第126次対潜特別訓練は本日2月8日より2月16日に掛け、四国沖から九州南方に至る海域にて開始されました、参加部隊の規模は防衛省発表に拠りますと海上自衛隊の護衛艦3隻と潜水艦4隻および航空機数機が参加し、米海軍からは原子力潜水艦1隻が参加するとのこと。

 対潜特別訓練は1957年より定期的に実施されている日米訓練であり、その名の通り訓練では対潜戦闘に重点を置いて実施され、訓練統制官には海上自衛隊より潜水艦隊司令官の鍜治雅和海将があたり、米海軍からは第7潜水艦群司令スチュアートBマンチ海軍少将が当たります。

 護衛艦は対潜掃討や船団護衛などを想定し、潜航する潜水艦を捜索しますが、潜水艦も反撃を試み、発見が遅れれば護衛艦が撃破される状況も有り得ます。そして非常に静粛性の高い通常動力潜水艦と長大な航続距離と速度を持続可能な原子力潜水艦が参加し、会場の海中の駆け引きが行われる。

 低気圧の位置から、洋上は荒天となる可能性があり、この場合は対潜ヘリコプターを飛行させるのに支障がある状況、強風下では運用出来ない事もあり、護衛艦は搭載するソナーを駆使して捜索を行いますが、潜水艦はその状況を見越して索敵が行いにくい状況での襲撃、もしくは回避運動を行う事でしょう。

 海上自衛隊は対潜自衛隊と呼ばれるほど対潜水艦戦闘を重視し、続いて機雷戦対処を重視しています。これは第二次大戦中に潜水艦により海上交通路を封鎖され、機雷により港湾を閉塞され飢餓状態に陥った飢えの苦い経験に起因するものですが、そのために徹底した訓練を組んでおり、数的にも質的にも世界最高水準といって差し支えありません。

 対して、環太平洋地域の特に西太平洋地域では、軍事力による占有を以て海洋の自由という国際公序への挑戦を行う新興海軍国が急速に潜水艦戦力を含む海軍力を近代化し、戦力を増強しています。今回の対潜特別訓練はアメリカ側にも世界最高水準の対潜掃討部隊を相手とする戦術行動訓練にもなり、日米双方の海軍力と環太平洋地域全体の海洋自由受益諸国へ資することとなるでしょう。

北大路機関:はるな
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榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第六回・・・装甲車両の変容と分化

2015-02-07 22:42:13 | 防衛・安全保障
◆正面拡大と装甲車の変容
 前回まで、対戦車ミサイルと陣地防御の転換を示しました、しかし、第一線火力、特に機甲部隊へ随伴する砲兵へ自走榴弾砲が装備されます。

 加えて自動測量や音響評定等対砲兵戦の技術向上とともに自走火砲の生存性が向上したため、掩蔽陣地は位置が暴露した瞬間に加えられる砲迫火力が向上することで対戦車ミサイルは、一射撃後陣地転換を強いられ、キルゾーンを構成しての防御戦闘、装甲車に搭載する例、ほかには軽車両に搭載し遅滞行動など、絶対的優位性は持ち得ませんでした。

 重ねて、運動戦は、歩兵の防御面積を際限なく拡大しています。第一次大戦当時や第二次大戦当時の一個師団の正面担当は18kmから22kmに過ぎませんでしたが、徐々に拡大し、新冷戦と1980年危機が叫ばれた時代には70kmから110km、イラク戦争期には250kmを越え、運動戦を前提とする広範囲を前に、これに対応する装備として装甲車は高まるばかりです。

 逆に前述した装甲戦闘車の開発は、第一線火力の向上を企図したものとも受け取れ、特に大口径低圧砲を搭載する装甲戦闘車などは多分に陣地攻撃を念頭としたものの代表と言えます。この命題に対処すべく、キルゾーン陣地、脅威対象が凝集する地形を選定し多数の火器を一点に集中させ対処する方策が開発され、野戦築城は築城資材の技術開発と相まって、運動戦の中に用途を見出してゆきます。

 他方、装甲車は独自の深化を続けます、装甲戦闘車が開発され、独立した戦闘を志向するようになります。しかし、興味深いのは乗車戦闘に関する銃眼の装甲戦闘車への配備というものです。マルダー1やBMP-1など初期の装甲戦闘車には銃眼が装備されており、乗車戦闘、降りずに車内から銃眼を通じて小銃を射撃する方式が主流でした。

 この装甲戦闘車の銃眼ですが、車内からでは命中しない、銃眼部分が対戦車火器などに対する開口部の脆弱性が無視できない、周辺監視能力の限界、等の視点から徐々に廃れ、当初から銃眼をもたない車種も見られるようになったほか、当初配置されていた銃眼を近代化改修の際に増加装甲で塞ぐ事例も出ておりまして、他方で依然として89式装甲戦闘車やダルドにBMP-3等維持するものも少なくありません。

 銃眼ですが、乗車戦闘を対戦車火器からの車体防護に関する戦闘手段として見出しますと、乗車戦闘よりは敵歩兵に近接されないよう降車戦闘を行うという視点即ち車体を守るためには降車しより遠い場所で歩兵が戦闘を展開すべきという視点、その瞬間までの乗車歩兵を防護するためには銃眼よりも装甲防御の重要性、ということで銃眼の廃止は行われた、とも。

 ただ、尤もな視点と共に銃眼の用途にはその降車戦闘展開以前の掃討用に重要性をもつものでもありますから、結局は銃眼の有無は運用想定と装備運用研究の相違から来たもの、と言えるのでしょうか。他方で、降車戦闘は歩兵の最も重要な任務、土地の占有と奪還、に直結するものであり、降車戦闘と装甲車の位置づけが、車両の装備と機動力や防御力といった特性に影響しているともみられるところ。

以上の通り、前線の火力が装甲車単体と装甲戦闘車単体とは分化してゆきます。此処で興味深いのは、装甲車の用途は装甲戦闘車と区分されてゆくのですが、近年、特に装甲車全般が装甲戦闘車に対応する能力向上を受けているところ、このあたりについては後述しましょう。

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平成二十六年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.02.07・02.08)

2015-02-06 22:15:45 | 日記
◆自衛隊関連行事
 首都圏に降雪が見られ、寒々とした中ではありますが皆様如何お過ごしでしょうか。

 今週末の自衛隊関連行事ですが、ミサイル護衛艦みょうこう一般公開、週明けには練習艦しまゆき一般公開、掃海母艦うらが艦艇一般公開等が行われ、昨今の自衛隊関連行事が行われない季節ではあるのですけれども稀有なことに週末と祝日共に艦艇一般公開が行われるかたち。

 ミサイル護衛艦みょうこう一般公開は海上自衛隊下関位置におきまして本日と明日土曜日に日曜日と行われます、練習艦しまゆき一般公開は高知県の高知県高知市の高知新港にて11日祝日の水曜日に、掃海母艦うらが艦艇一般公開は三重県四日市港において行われる、とのこと。

 掃海母艦うらが一般公開は三重地本HPに記載がありまして、伊勢湾機雷戦訓練が行われる関係かと思ったのですが、訓練への掃海母艦参加は一隻と記載されており、掃海母艦ぶんご、が参加しています、念のため足を運ばれる方は三重地本HPなどで最新の情報を元にお出かけください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭
・2015.02.07-08:下関基地ミサイル護衛艦みょうこう一般公開・・・http://www.mod.go.jp/msdf/formal/info/event/index.html
・2015.02.11:高知新港練習艦しまゆき一般公開・・・http://www.mod.go.jp/msdf/formal/info/event/index.html
・2015.02.11:四日市港霞ヶ浦ふ頭掃海母艦うらが艦艇一般公開・・・http://www.mod.go.jp/pco/mie/know/event.html

◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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P-1哨戒機、空対艦ミサイル発射試験へ第51航空隊2機をアメリカ派遣

2015-02-05 23:02:55 | 防衛・安全保障
◆P-1哨戒機、ハープーン試験
 海上自衛隊によれば、昨日4日からP-1哨戒機の派米試験を開始した、とのこと。

 現在海上自衛隊ではP-3C哨戒機の後継機としてP-1哨戒機を実運用に向け試験中ですが、P-1哨戒機はその長大な洋上哨戒機能を以て対潜哨戒任務や対水上哨戒任務に当たりますが、空対艦ミサイルを搭載することで洋上哨戒に際しての非常に高い対艦攻撃能力を持ちます。

 派米試験はアメリカハワイ州において周辺海域を利用し、長大な射程を有するため日本周辺海域では試験が難しいハープーン空対艦ミサイルを投射する試験を行い、派遣部隊指揮官として厚木航空基地第51航空隊企画審査隊長杉本和隆2佐があたり、P-1哨戒機2機と人員60名が派遣されるとのこと。

 派米試験の日程などについては、P-1哨戒機は4日に厚木航空基地を出発しハワイ州カネオヘ基地へ展開、9日にハープーンミサイル発射試験を行い、11日にカネオヘ基地を出国、途中にグアムのアンダーセン空軍基地を経由し13日に厚木航空基地へ戻る行動概要が発表されています。

 有事の際にシーレーン防衛などにその能力が期待されていまして、機首レーダーは大口径で遠距離を索敵及び識別が可能、最大8発の空対艦ミサイルを搭載可能で、平時の海洋監視に対し有事の洋上哨戒任務は艦載防空火器の長射程化等により従来の哨戒機では生存性が制限されるため、P-1はより高い高度の飛行能力とレーダーの能力強化により遠距離での監視能力を付与し、この問題に応えました。

 P-1哨戒機の戦闘行動半径は、八戸航空基地を基点とした場合は戦闘行動半径にアラスカ州が含まれ、那覇航空基地を基点とした場合は東シナ海や南シナ海全域を含みインドネシアまでもを含む能力があり、環太平洋地域の諸国間共通利益である海洋自由航行の維持に大きく寄与できるでしょう。

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榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第五回・・・装甲車と装甲部隊に影響を与えた三要素

2015-02-04 22:50:37 | 日記
◆装甲車と運動戦の幾つかの転換点
 本日も装甲車についての特集を掲載します。まだ第五回ですがお付き合いいただければ、と。

 欧州ではドイツ軍を筆頭に空挺部隊対戦車部隊のヘリボーン展開という方策が具現化し、観測ヘリコプターへ対戦車ミサイルを搭載した初期の対戦車ヘリコプターが、陣地防御を行う軽歩兵部隊の地位を高めます。具体的には陣地へ大規模攻撃が開始された際に多数の対戦車ヘリコプターが地形を超越攻撃し、対機甲突撃破砕射撃を急速支援するという方式が一つ。

 対戦車ヘリコプターはこうして陸上戦闘、軽歩兵部隊の防御線を急速強化する手法として新体系を構築するに至りましたが、上記ヴェトナム戦争において脆弱なヘリコプターを地上防空部隊の不期遭遇から生存させるべく機体形状や防護能力が発展し、攻撃ヘリコプターへと発展します。

 東西双方が攻撃ヘリコプターを整備したため、攻撃ヘリコプターは対戦車能力に加え地域制圧能力を付与し、地上からの反撃にもある程度耐弾性を有していますので陣地攻撃にも多用されるようになり、加えて野戦防空能力も発展、自走高射火器へ高度な火器管制装置が搭載されるようになり、双方での運用にて一方を利するものでは無く相殺されてゆきました。

 防御戦闘における装甲車の位置づけは、冷戦時代の核戦争、戦域核戦場の想定とともにNBC防御能力が必須となり、同時の乗車戦闘の必要性が提示され、徐々に装甲車へ重火器を搭載する構想が具体化、監視装置は当初偵察部隊に搭載される装備から始まりますが、徐々に普及してゆきました。

 前後しますが、20mm機関砲を搭載するドイツのSpz-11装甲車へ対抗する形でソ連がBMP-1を開発、これに応えドイツのマルダー1やフランスのAMX-10Pが開発、一つの流れが形成されます。ここで、戦車と装甲車の機械化部隊に対して、装甲戦闘車単独を含む機械化部隊の柔軟な編成が生まれ、運動戦の概念は転換してゆく。

 一方の掩蔽陣地は、対機甲戦闘を除く対歩兵戦闘の分野では1970年代のヴェトナム戦争において当時の新鋭火器を相手としても能力を維持し得る事を証明しましたが、対機甲戦闘においては1973年の第四次中東戦争においてイスラエル軍のバーレブライン防御線が呆気なく突破され名実ともに運動戦への展開への限界が示されました。

 この際に大きくその威力が示された対戦車ミサイル、対戦車ミサイル自体は1950年代後半に既に幾つかの有力な機種が開発開始されているのですが、この装備が陣地防御へ提示されています。掩蔽陣地へ対戦車ミサイルを配置する事例や、小型形状から掩砲所に温存することも可能でした。従来の対戦車砲よりも射界が広く、陣地転換も容易です。
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小型戦術ヘリS97、朝雲新聞が特集 V-280と共に米次期ヘリコプター選定へ臨む

2015-02-03 01:05:28 | 先端軍事テクノロジー
◆自衛隊次期航空機体系への影響
 2日付の朝雲新聞が、アメリカのシコルスキー社製S-97複合ヘリコプターを”世界の新兵器”として紹介しました。

 陸上自衛隊は現在、UH-1多用途ヘリコプターの後継機を開発へ着手する方針ですが、アメリカは先に開発が発表されたV-280とS-97を先進的な可動翼機や複合ヘリコプターとして開発しており、多用途ヘリコプターや軽偵察ヘリコプターとして採用したのち、これを原型として攻撃ヘリコプター等への転用を視野に入れているもよう。

 V-280はUH-60の後継機を目指す可動翼機で、可動翼機には海兵隊のMV-22がすでに実用化されていますが、V-280は10名の兵員輸送とMV-22よりは小型で収容時の折畳機構などを簡略化し、取得費用をUH-60程度としたうえで整備性も向上させ普及を期しています。S-97はOH-58観測ヘリコプターの後継機を企図し、二重反転ローターと補助推進翼を以て高速飛行を目指しているとのこと。

 共に、米陸軍の共通ヘリコプター候補として開発されている機体ですので、米連邦政府歳出赤字強制削減措置の影響がこれ以上拡大しなければ、何れかの機体が選定されることとなりましょう。共に革新的航空機ですがV-280は既にV-22という実用機の開発経験から姿勢制御機構等の問題は参考点を見出せますし、S-97は原型となる実験機が1970年代から継続されており、見た目よりは技術的に開拓されているもの。

 自衛隊は米軍がこの種の装備を大量配備した場合、当然影響を受けるでしょう。S-97とV-280の共通点は共にUH-60と比較し高い戦闘行動半径と巡航速度を有する点で、仮に自衛隊が那覇駐屯地に配備した場合共に一時間以内に尖閣諸島や先島諸島に展開し、戦闘行動半径内であるため着上陸事案へ軽攻撃や強襲任務が可能となります。

 もちろん、米軍はUH-72という、本土の州兵用ヘリコプターUH-1後継として軽多用途ヘリコプターを開発し運用しています、陸上自衛隊のUH-Xは用途的にUH-72と同程度の用途を想定していますので、UH-Xの要求性能として考えられているUH-1と同程度のヘリコプターは十分実用的な範疇ですし、時期的に現在開発が始まるUH-Xに影響はあり得ません。

 ただ、複合ヘリコプターに近いものは我が国では富士重工が1960年代にHU-1.今のUH-1ですがHU-1Bを原型機として主翼を装着し高速飛行させる研究を行っていました、主翼は取り外されましたがその機体は一部が群馬県内の博物館で展示されていまして、この種の技術に我が国も無関心だったわけではないのですが。

 さて、同盟国の米軍がこの種の複合ヘリコプターか可動翼機により進出速度と行動半径を増大させる訳ですから、特に草創期からヘリコプターの運用を重視し、寧ろ陸上自衛隊の装甲車不足はヘリコプターへ予算をふりわけすぎたからではないかというほどの現状を鑑みれば、同等の機体取得が検討されるのはある種当然ともいえる。

 この場合ですが、もちろん航続距離の延伸と進出速度の向上は広大な南西諸島を筆頭に我が国の長い地形を舞台とする防衛には非常に理想的な装備ではありますが、方面隊や師団の位置づけを大きく転換する可能性を秘めている、という視点は考えられるかもしれないでしょう。

 UH-1の後継機としてUH-60を一時導入したのですが結局は並行調達となり、今に至るのは広く知られているところですが、UH-1の戦闘行動半径を見ますとほぼ方面隊管区内の飛行、西部方面隊管区の南西諸島と東部方面隊管区の小笠原諸島は少々広大すぎますが、これを例外とすれば管内に収まっています。

 戦術的な必要性、協同運用上の必要性から自衛隊がS-97やV-280に同等の航空機を導入した場合、2030年代の話として、方面隊の管区を大きく超えて行動半径を得る事となります。これこそ統合機動防衛力、自衛隊の求める方面隊管区を越えた運用、と言えばそれまでですが、他方で航空装備の高性能化が、方面隊管区の在り方そのものを転換させる端緒ともなり得るかもしれませんね。

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榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第四回・・・徒歩歩兵の新しい運動戦への対応

2015-02-02 22:22:22 | 防衛・安全保障
◆運動戦と空中機動
 前回までに掩蔽陣地を基本とした陣地戦闘は装甲車により置き換えられ、これが城郭から野戦陣地への転換の流れの延長線上にある事を紹介しました。主陣地と射撃陣地を交通壕により結ぶ方式は先進国において過去のものとなった、ということです。

 こうしますと、稜郭陣地や塹壕陣地は、五稜郭のような相互支援のための形状が文字通り装甲車の陣形により置き換えられた、と言えます。稜郭陣地がこの形状に発展したのは、塹壕線が単一線として位置しただけでは相互に火力支援や人員などの兵力展開支援を行えないために発展した帰結ですが、装甲車は容易に部隊陣形を転換可能です。装甲車が装甲箱ではなく装甲車たる所以はここ。

 動けない掩蔽陣地に対して、装甲車による防御は運動戦を志向しているため、従来の陣地防御に対する運動戦、例えば空挺強襲による連絡線遮断や接近経路確保への対処は容易となります。更に錯綜地形では装甲車の機動には制限が掛かるものの、徒歩歩兵や陣地戦闘では対処できない方法を選択し得ます。

 そして装甲車の重要性を示したのですが、もちろん、徒歩歩兵の価値が完全に失われたわけではありません。山岳歩兵等は装甲車が運用出来ない地形を踏破するため、装甲化が出来ません。そして山間部には隘路など緊要地形、其処地点を確保することで優勢を得られる地形がある。

 例えば隘路などにおいて挟撃できる位置を確保するには徒歩歩兵の踏破力が不可欠であり、携帯対戦車火器の発展はこの重要性を更に高める事となっています。山岳歩兵は、特殊部隊的な位置づけを残し、地形制約の克服という意味で空中機動部隊による歩兵展開に部分的にその道を譲りました。

 そして、空挺歩兵についても、展開への地形制約への克服という意味で同様の位置づけがあります。もちろん、正面から機械化部隊と相対することは絶大な損耗を強いられるため、緊要地形を先制到着するのではなく先制確保する事、つまり陣地構築の時間を見越さなければならないのですが。

 機械化部隊に関する新動向は、空中機動作戦の普遍化にあります。第二次大戦当時、空挺作戦は特殊作戦に範疇に含まれ、通常の歩兵師団ではなく空挺師団が対応していました。しかし、第二次大戦末期にヘリコプターの技術が開発され、朝鮮戦争期には墜落時の操縦士救出や急患輸送に対応します。

 インドシナ戦争期には、限定的に空中機動、小隊規模の増援部隊をヘリボーンする概念が萌芽し、マラヤ動乱期には空中機動部隊という概念の下、ヘリコプターによる機動歩兵という概念が定着してゆきます。これがヴェトナム戦争期には機動力が評価され一挙に普及するのですが、同時期に当然ながら所謂装甲車や戦車等機械化部隊主体の戦線にも波及してゆきました。

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そうりゅう型潜水艦、通常動力潜水艦としては最大規模の行動力が豪州に続き輸出可能性

2015-02-01 23:54:03 | 防衛・安全保障
◆そうりゅう型潜水艦輸出成るか?
 海外報道にて、インド海軍が次期潜水艦へ海上自衛隊そうりゅう型潜水艦を候補の一つに挙げている、というものがありました。事実とすれば豪州海軍に続く輸出候補となります。この報道の信憑性を観てみる事としましょう。

 海上自衛隊の潜水艦そうりゅう型は、原子力潜水艦以外の通常動力潜水艦としては最大規模の船体を有しており、米海軍や海上自衛隊との対戦訓練の必要上から徹底した静粛化設計を尽力したことで、潜水艦が最も重視すべき静粛性をかなり高い水準としている有力な潜水艦です。我が国が防衛装備移転三原則制定後、海外からどう縫うの検討の第一号としてオーストラリア海軍が現在のコリンズ級潜水艦の後継候補に挙げました、オーストラリア海軍は現在国内の潜水艦建造メーカーによるドイツ製新設計の216型潜水艦ライセンス生産か、そうりゅう型潜水艦の事実上のノックダウン生産を行うのか、検討中とのこと。

 我が国の潜水艦が長大な航続距離を有する背景には、冷戦下、ソ連太平洋艦隊を念頭に広大な太平洋での潜水艦戦を展開する必要から、必然的に船体が大型化しました。この種の潜水艦は大型化すればその分騒音が大きくなり発見されやすくなり、大型化する場合はバッテリー容量により航続距離が限定される通常動力潜水艦ではなく原子力潜水艦を用いるのが一般的ですが、小型化すると航続距離が小さくなり、沿岸用や近海用に限られます、この限界に挑んだのが日本の潜水艦というわけ。

 逸話として我が国の潜水艦の水中放音が非常に大きくロシア海軍がキロ級潜水艦を海外へ販売する資料へ最も騒音の大きな潜水艦として、我が潜水艦うずしお型が挙げられてきました、2010年代になってもこの数値が提示されるのですが、少し調べればわかる通り、うずしお型潜水艦は1960年代に設計された潜水艦で、一番艦が進水式を果たしたのは1970年、実に四十年以上前の話です。実は自衛隊にとり初の涙滴型形状潜水艦であり、水中高速性能を盛り込んだ艦ですが、推進軸の加工に問題があり、ガタピシ音として水中放音が問題視されていましたのは事実ではあります。

 これは当の海上自衛隊に問題視され、改修が行われています。うずしお型は練習潜水艦転用を含め1992年に最後の一隻が除籍、ロシア側の資料は全て除籍された旧式潜水艦の数値を出して自国製最新潜水艦の優位性を示したものですが、海上自衛隊潜水艦はその後、ゆうしお型、はるしお型、おやしお型、そうりゅう型、と改善を重ねており、逆に潜水艦ゆうしお型以降の水中放音資料をロシア側が提示できないことが、静粛性の高さを証明しているといえるやもしれません。

 それでは海外報道にあります、導入の可能性の候補、その信憑性はどの程度なのでしょうか。インド海軍が導入を希望する候補の一つに、という点ですが、現在インド海軍は国産戦略ミサイル原潜アリハント級の建造を進め、ロシアよりアクラ級攻撃型原潜を10年契約でのリースを念頭に新造し、2012年に一番艦を就役させています。一方でインド海軍は通常動力潜水艦の導入を続けており、仏西共同開発のスコルペヌ級潜水艦6隻を2021年までにライセンス生産する、とのこと。

 スコルペヌ級潜水艦は当初2012年より引渡開始予定でしたが、建造に難航し一番艦の引き渡しが間もなく、と伝えられています。インド海軍は水中排水量1880tのドイツ製209型潜水艦を1986年から4隻取得、同時期から2000年にかけ水中排水量3125tのソ連製キロ級潜水艦を10隻導入していまして、スコルペヌ級は水中排水量1732tであるため、209型の後継艦であることがわかります、すると、キロ級潜水艦の後継が時期的に必要であり、スコルペヌ級に続いて2025年頃を念頭に建造計画が立てられると考えられるでしょう。時期的には、信憑性を裏付けます。

 潜水艦は最高機密の集まりであり、ライセンス生産を認めるべきではないとの声はあるでしょうが、事実としてインドはライセンス生産をスコルペヌ級で行っていますが遅延していることは技術移転の難易度の高さを示しているものです。また、オーストラリアも最高機密を技術移転という形で、スウェーデンよりコリンズ級潜水艦の設計と建造支援を受け建造しましたが、実質的に海軍が納得する潜水艦を建造できていません。そして潜水艦そうりゅう型は、一番艦が2007年に進水式を迎えたもので、仮に輸出する場合はその時点で最新型潜水艦となっていない可能性があります。もしかしたらば、輸出の可能性はある程度有り得るのかもしれませんね。

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