北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成二十八年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.06.11/12)

2016-06-10 23:08:24 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今週末の自衛隊関連行事について掲載する前に、毎度の知らせ。来週火曜日0000時から1200時まで十二時間にわたり、Weblog北大路機関はブログサービスメンテナンスにより非表示となります、ご留意ください。

 6/14 サービス停止を伴うシステムメンテナンスのお知らせ、から始まりました記事です。梅雨入り、じめじめする季節となりましたが紫陽花が風景を彩る今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。今週末の自衛隊関連行事の紹介です。今週は環太平洋合同演習へ海上自衛隊参加部隊が出港、横須賀からアメリカ海軍航空母艦ロナルドレーガンも出港しましたが、興味深い行事がいくつも開催されます。

 滝川駐屯地創設61周年記念行事、第11旅団隷下の第10普通科連隊が駐屯する北部方面隊の駐屯地で、札幌から旭川へ特急スーパーカムイ号にて乗車し、滝川駅が最寄りの行事です。留萌や旭川方面から道都札幌を結ぶ交通の要衝にあり、旅団普通科連隊ではありますが96式装輪装甲車中隊を有する機械化普通科連隊としての行事を観る事が出来るでしょう。

 美唄駐屯地創設39周年記念行事、こちらも札幌から旭川へ特急スーパーカムイ号にて乗車し美唄駅が最寄りです。駐屯地には第2地対艦ミサイル連隊が駐屯しており88式地対艦誘導弾の観閲行進や射撃状況の展開等の訓練展示が行われます、演習場に隣接しており90式戦車体験搭乗が行われまして、実際に足を運びますと戦車数に対し来場者が少なく、二回ほど乗る事も出来る。

 稚内分屯地創設記念行事、札幌から旭川へ特急スーパーカムイ号にて乗車し、旭川から更に特急に乗り換える、北海道の北端稚内での行事です。陸海空自衛隊共同施設が置かれていまして、沿岸監視隊や警備所に防空監視所が置かれています、行事と施設見学が中心となっていまして、冷戦時代、稚内港はソ連から防護すべき重要港湾であり、この地域へは監視体制が厳重に整備されていました。

 相浦駐屯地創設記念行事、西部方面普通科連隊が駐屯する長崎県佐世保市の駐屯地です。西部方面普通科連隊は間もなく南西諸島島嶼部防衛能力整備の主軸となる水陸機動団の基幹部隊となります、西部方面隊は隷下の西部方面航空隊に多数の輸送ヘリコプターを装備しており、空中機動能力と水上での機動力を重視、陸上自衛隊屈指の精強部隊として知られています。

 よこすかYYフェスタ、横須賀基地を含む横須賀市内でののりものイベントで、特急電車や消防自動車に警察用車両は勿論、乗り物には護衛艦や潜水艦も乗り物であるわけでして、こちらの一般公開等も行われます。横須賀基地の他、JR横須賀駅、ヴェルニー公園、三笠公園なども会場となります。式典や訓練展示などはありませんが、その分ゆったりと楽しめるかもしれませんね。

 普天間航空基地フライトラインフェア、沖縄県の普天間航空基地一般公開行事で、海兵航空部隊としてMV-22可動翼機、CH-53重輸送ヘリコプター、AH-1Z攻撃ヘリコプター、UH-1Y軽輸送ヘリコプター、等が装備されています、岩国航空基地からAV-8B攻撃機などが参加する事もあります。撮影機材持ち込みなどに制限が加わる事で有名な行事ですので、部隊HP等で最新の情報をご確認ください。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭


・6月12日:稚内分屯地創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/unit/butai/bunton/bunton.html
・6月12日:滝川駐屯地創設61周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/jgsdf-post/images/takikawa/top/top.html
・6月12日:美唄駐屯地創設39周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/jgsdf-post/bibai.html
・6月12日:よこすかYYフェスタ…https://twitter.com/JMSDF_PAO
・6月11日・12日:相浦駐屯地創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/
・6月11日・12日:普天間航空基地フライトラインフェア…http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Installations/Futenma.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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尖閣諸島接続水域へ中国海軍ミサイルフリゲイトが侵入、東シナ海での中国海軍行動が活性化

2016-06-09 23:00:00 | 防衛・安全保障
■中ロ艦接近!緊張の沖縄県
 アシガラさんのインパクトある画像とともに北大路機関広報、来週14日0000時から1200時まで12時間、Weblog北大路機関はgooブログメンテナンスにより全て閲覧できなくなります、FC2ブログ第二北大路機関は閲覧できますのでそちらをご覧ください。

 中国海軍のミサイルフリゲイトによる沖縄県尖閣諸島領海の接続水域に初めての航行事案が発生しました、警戒中の護衛艦護衛艦せとぎり、が監視している中、中国海軍の江凱1型ミサイルフリゲイト1隻が9日0050時頃尖閣諸島の久場島の北東接続水域へ進入しました。尖閣諸島近海では事案発生以前の8日2150時頃、ロシア海軍のウダロイ級駆逐艦や補給艦など艦艇3隻が5時間に渡り当該海域周辺を航行しており、中国海軍は続いて接続水域へ浸透、その後0310時頃、久場島の東にある大正島の北北西で接続水域を北上し離脱しました。

 東シナ海での中国による不法行為ですが、尖閣諸島近海において我が国民主党政権時代に顕著化していました。しかし、海上自衛隊の毅然たる行動、海上保安庁による法執行活動強化が進むにつれ、中国の行動は一定以上の、云わば一線を越える事は無く、海警局所属の公船による領海侵犯の常態化へ留まります。その後中国の海洋における不法行為はこの二年間、東シナ海から南シナ海へ移り、ヴェトナム海洋開発への実力妨害、1970年代に軍事力でヴェトナムから奪取した西沙諸島の軍事基地化、1990年代にフィリピンから不法奪取した南沙諸島環礁の埋め立て飛行場化など、継続してきましたのは既報の通り。

 しかし、南シナ海から東シナ海へ中国の行動が転換する軍事的徴候は再発し始めました。アメリカ国防総省報道官は6月7日、中国空軍のJ-7戦闘機2機がアメリカ空軍のRC-135電子偵察機に対し意図的な異常接近行動鵜を実施しています。RC-135は沖縄県の嘉手納基地を基点として周辺地域での電子情報収集を実施、これは公海上へ漏洩する電波情報を収集する任務に当たる事を意味しますが、このRC-135に対しJ-7戦闘機が異常接近、危険な状態であったと抗議する事案が発生したばかりであり、この異常接近事案が中国軍の軍事行動が南シナ海から東シナ海へ転進する徴候ではないかとの危惧を呈じたばかりの時でした。

 今朝未明の江凱1型ミサイルフリゲイトの接続水域浸透ですが、これは中国海軍がこれまで尖閣諸島近海での海軍艦艇行動を控え、海洋法執行機関である海警局所属の公船による領海侵犯などを実施するにとどめてきたためです。その背景には、我が国では国境警備活動を担う海洋法執行機関である国土交通省海上保安庁と、国土防衛に当たる防衛省海上自衛隊との任務区分があり、海警局所属の公船に対しては海上保安庁が対応しますが、海軍艦艇が展開した場合には海上自衛隊が対応するという原則において行動していた為です。

 海軍艦艇の行動は海上自衛隊及び米海軍、航空自衛隊や米空軍と協同しその我が国周辺における行動は長期的に警戒が継続されており、仮に尖閣諸島付近で無い場合でも我が国領域へ接近する事があれば即座の対応を採る体制が継続されています、こういいますのも我が国には世界第二位の航空機数を誇る哨戒機部隊、世界第二位の規模を誇る大型水上戦闘艦部隊が維持されており、中型小型艦艇の規模では中国海軍の後塵を拝するもののその任務対応能力では充分な能力を維持している為です、仮に同様の状況が再発したとしても確実に対応できるでしょう。

 無害通航権、海軍艦艇でも他国の海域に対しては無害通航権を有しています。しかし、無害通航権は必要が求められる場合に艦艇が旗国を明示し通過する場合に限られ、例えば蛇行する場合や停戦する場合には国際法上の国連海洋法条約に基づく無害通行権を主張する事は出来ません。仮に当該艦船が無害通航権を行使できない行動をとった場合、領海侵犯となり自衛隊法に基づく海上警備行動命令が発令されていたでしょう。ただ、海上警備行動命令は今回中国海軍艦艇による接近が接続水域へ留められていた為発令されていません。

 こうした中国海軍の行動に対しては多国間で連携するほかありません、多国間での連携については元来、我がくにでゃ憲法上の制約から他の国々との平和維持への連携を自ら強く制約してきましたが、安全和尚協力法制整備により、限定的ではありますが、平和秩序の維持に対する価値観を共有する諸国との間での防衛協力へ道を開くことが出来ました。平和への多国間での防衛協力は我が国でも少なくない野党が反対していますが、中国との軍事対立へ一国主義を掲げてきた我が国は安全保障協力法制により多国間協調主義へ転換する大きな転換点となりました。

 多国間協調への転換を背景に、海上自衛隊は7日、環太平洋合同演習リムパックへ護衛艦ひゅうが、ちょうかい、哨戒機部隊を派遣しました、部隊は8月まで太平洋地域において多国間での訓練を実施します。このリムパック2016には中国海軍も参加する事となっていますが、海洋自由原則を基調とする価値観の協同諸国が主催する多国間共同訓練です、この枠組みに中国海軍が参加する事は一つの機会でもあり、海洋自由原則の枠組への内部化を図る一つの機会とする事も期待すべきですし、環太平洋諸国が一致して中国へルールを理解できるまで叩き込む機会として我が国も環太平洋諸国の一員としての努力すべきかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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カスケーディアライジング2016演習、米本土西海岸M9.0級巨大地震想定し20000名が参加

2016-06-08 22:00:51 | 防災・災害派遣
■国土安全保障省主管防災訓練
 第一枚に印象的な一枚を提示しつつ、北大路機関広報、来週14日、0000時から1200時までWeblog北大路機関はgooブログサービス定期点検の関係から閲覧不能となります、トップページも非表示となります、ご留意ください。

 日本の防災訓練等は我が国は阪神大震災以降、そして東日本大震災以降数多くが報じられるところですが、アメリカではどのような訓練が実施されているのでしょうか、そこで今回は現在実施中の西海岸における訓練の様子を紹介しましょう。カスケード地溝帯での大規模災害を想定したアメリカ国土安全保障省主体の統合演習”カスケーディアライジング2016”がアメリカ西海岸において実施されました。カスケード地溝帯はアラスカからカナダとアメリカ西海岸へ至る巨大な地溝帯で、過去には1700年にマグニチュード9の巨大地震が発生しています。

 アメリカでは地震が少ない、と誤解されるのは東海岸のニューヨークやワシントンDC等に限ったもので、西海岸のサンフランシスコやロスアンジェルスなどは過去に幾度も巨大地震に見舞われている他、1965年のアラスカ地震は気象庁震度換算で震度七の揺れを筆頭に烈震がが七分間にわたり継続するという非常に長い時間の地殻破壊を継続しており、地震のエネルギーとしては1960年チリ地震と並び20世紀最大規模の地震となっています。

 カスケーディアライジング2016はオレゴン州沖においてマグニチュード9.0の海溝型巨大地震が発生、延安部に地震による広範な被害をもたらした直後にたかさ数十m規模の巨大津波が襲来し沿岸部を破壊、広範囲に孤立地域を発生させた、という想定で行われ、これはアメリカ国土安全保障省が2011年の日本における東北地方太平洋沖地震東日本大震災での津波被害を強く意識したもの、とのことでした。実際にカスケード地溝帯では1700年に東日本大震災と同程度の巨大地震が発生しているとのこと。

 演習では想定地震発生とともにワシントン州、オレゴン州、アイダホ州、三州が非常事態を宣言し、州兵の動員を開始、連邦政府及び州政府と郡庁などから即座に20000名の動員体制を立てるとの状況から開始され、第二段階として州兵部隊による離島地域への救援と物資輸送を演練しています。この水陸機動訓練ではメイソンカウンティア総合陸上競技場へ陸海空の統合物資集積空輸拠点を構築し、物資集積と空輸拠点を既設飛行場以外に開設しました。

 更にウェストポート津波避難施設が孤立したとの状況想定の上で救出訓練を実施、続いて離島であるバション島とタウンゼント港間を海軍艦艇へ州兵部隊が上船し展開し、孤立地域からの救出を演練しました。水陸機動作戦と云えばアメリカでは海兵隊の任務という印象がありますが、 州政府が初動の段階で隷下に置くことが可能であるのは州兵部隊です、中には浮橋等架橋機材をそのまま離島への交通手段として用いた事例があります、自衛隊も東日本大震災では一部実施していた方法でした。この為手元にある部隊を元に水陸両用作戦部隊を臨時編成する、見習うべき命題と云えますね。

 特殊災害への想定もカスケーディアライジング2016では演練されており、想定事故としてポートエンジェルス化学工場が大規模な津波被害により広範囲に有毒化学物質が流失し、大量の地域汚染と共に被災者が致死性化学物質により汚染され一刻を争うとの状況で除染訓練を実施しました、化学物質の流失による大規模な汚染はそのまま、万一の際の原子力施設への地震被害が生じた際にも避難要領の演練、除染施設の立ち上げや多数住民への除染実施等、我が国では原子力事故対処訓練として除染訓練を実施する事は東日本大震災以前ではほぼ禁忌ではありましたが、この方策、応用できるかもしれません。

 孤立対処訓練、特筆すべき訓練として、フォックス島において実施された孤立対処訓練が挙げられます、孤立対処訓練はフォックス島が巨大な津波に遭遇し、一方西海岸全域へ広範な被害が生じた為救助着手が遅れ、このため限られた物資を少数の連邦政府職員と郡役場職員により集積し配分するというもので、自然災害における緊急時対応計画として画定している非常対処要領に則り、平時と有事の切替を演練しています。平時と有事の切替は、法的権限や行政手続きの災害時という非常事態故の簡素化を示すもので、平時手続きでは判断や予算行使等間に合わない状況を回避する手段として重要な認識の一つ。

 訓練では平時から指定された災害緊急ボランティアグループが招集され、避難所に当たるきんきゅシェルターの設置が担当毎に平時から住民に割り当てられていると共に、受け持ち地域の巡回を行うと共に、ボランティア活動拠点へ緊急時通信ボランティアとして参加するアマチュア無線愛好家が展開し、州政府緊急対処司令部との通信基盤の確立を行い、カスケーディアライジング2016において実に40のアマチュア無線愛好家が通信拠点を構築した、とのこと。

 郡役場ではもう一つ、緊急耐震点検として橋梁施設の迅速な点検訓練を実施しています。西海岸沿岸部では地形上、峡谷や離島とを多数の橋梁や高架道路が結んでおり、緊急時においては崩落していないものの、橋梁通行に制限が加わる場合があります。この場合、例えば我が国の先日発生した熊本地震などでは通行止めとすることが基本ですが、カスケーディアライジング2016では郡役場土木科橋梁監督署が中心となり、軽車両の通行に必要な補強と重車両通行の可否、歩行者のみの通行可否などを迅速に判定する訓練を実施しています。

 我が国が大きく認識すべきは、カスケーディアライジング2016は国土安全保障省が中心となり、隷下へ州兵部隊や住民防災組織を含めた州政府を複合的な系統について一元化を図っている部分で、更に平時手続きを有事の際に継続する事での弊害を認識し、更に防災計画へ住民を参加の促しという次元を超えた内部化を図っている部分が挙げられるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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アメリカのリスク 大統領選にみる変容と国際公序再構築【4】 海洋安全保障と自由貿易

2016-06-07 22:37:01 | 国際・政治
■海洋安全保障と自由貿易
北大路機関広報、来週6月14日、GOOブログサービスにおいて0000時から1200時までメンテナンスが実施され、Weblog北大路機関の閲覧やコメント投稿等が行えなくなります、ご了承ください。

最初にいつもと一風転じた写真から来週のメンテナンスを提示しましたが本題について。アメリカのリスク 大統領選にみる変容と国際公序再構築、ポピュリズムを基調とした政策を掲げ大統領選での発言を強めるトランプ氏を支持する多くのアメリカ与論、しかし、海洋安全保障と自由貿易の連関性を考慮すれば、アメリカ第一主義を掲げつつ安全保障分野からの撤収の示唆は逆効果と云わざるを得ません。

アジア地域の人口は30億を越え、全世界人口の半分に当たり、環太平洋地域は地球の海洋面積の半分を締めます、この地域の安定はアメリカが自由貿易を国際公序として定め世界との交易により繁栄するとの建国以来の指針を維持する限り、この地域の安定はアメリカにとり不可欠です。

今回、トランプ氏の掲げる政策を支持するアメリカ国民は、この国際公序に参画する事こそがアメリカの反映の基礎部分であることを完全に忘失しており、この支持層の教養からの逃避というものが問題の背景にあるともいえるでしょう。ここで大きな不確定要素は、トランプ氏の経済観とアジア観の総和です。

アジア地域での自由貿易の促進は、トランプ氏が経済に関する保護主義を掲げ、更に環太平洋包括自由貿易協定TPPの多国間合意を反故とする指針を示しています、これが公約となるかについては現段階では未知数ですが、少なくとも日本産自動車への関税の大幅引き上げを、アメリカ国内において流通する日本車は日本産の自動車ではなくアメリカ国内の日本メーカーが製造しているアメリカ製日本ブランド車が多く増大してきました。

これは日本メーカーが年々現地化を指針とした多国籍企業化を進めてきました所以でもあるのですが実施しており、加えてアメリカ製自動車の日本への輸入に際しては既に関税を全面撤廃しています、しかし、トランプ氏は農産物に我が国が関税を掛けている為、これを口実として農産物への関税と同程度の関税を日本車に対しかけるとの施策を提示している訳です。

しかし、自由貿易とは机上や電子商取引によってのみ独立して完成するものではなく、実際にモノを運ばなければなりません、特に農産物など一次産品はメール添付や3Dプリンターにより電送する事は出来ず、産地から太平洋を経て日本本土まで運ばなければならないのです。国際物流の円滑な維持に依存しています、残念ながら北米と日本本土を結ぶ橋梁やトンネルは現在の技術では不可能でしょう。

海上輸送、太平洋を越えての物流には海洋の航行自由確保が非常に重要となってくるわけです。ここでどうしても日米の安全保障協力と討議の軸が連関してくるのは自明といえるでしょう、何故ならば日本のシーレーンは石油輸送一つとって中東から日本本土へ11000km、環太平洋シーレーンは北方航路を経由したとしてもアリューシャン諸島まで3700kmの長距離となります。

そこで西太平洋全域とインド洋の制海権を自衛隊が担えるような、かの空母信濃と同程度の、つまりフォレスタル級空母と同規模のという事ですが、航空母艦、もしくは航空護衛艦を建造し常時インド洋と西太平洋南西海域へ一隻を遊弋させることが出来たならば、ローテーションを考えた場合5隻で対応出来る事となりますが。

しかし経済的政治的に、これは現実的な施策とは言い切れません、日本が制海権を保持する事は国際的な正当性と正統性を併せて勝ち得るのか、という視点、確実にアメリカ海軍の行動海域を別の国家アクターにより転換するという試みは日本以外の国への転換、その中には海洋自由原則を必ずしも共有しない国が含まれる可能性があり、高い確率で将来の戦争へ危険を及ぼす事となります。

この命題、例えば食糧自給率が三割程度の国が国運を掛けて海軍力を高く維持し戦争を乗り切った事例が過去にあります、イギリスが第二次世界大戦当時に食料自給率が30%程度しかなく、食糧輸入に海路を重視した為、緒戦におけるドイツ通商破壊、Uボートと通商破壊艦に磁気機雷敷設を海軍力で押し切り、維持しています。

こうした実例はあるにはあるのですが、戦後は国内の食料自給率を高めるべく農業政策を根本的に転換せざるを得なくなりました。このように海洋自由原則無しには自由貿易減速は確立し得ないものであり、アメリカがこの役割を放棄するならば、地域的であってもこの海洋自由原則を継続的に保持する海軍力を有する国が対応しなければなりません。

この現実性と実現性が両立できない場合、単純に例えば食糧自給一つとっても有事の際に輸入に依存し自国内の食糧生産が途絶し国民が餓死しないよう、国内に農業生産基盤を構築し生産、自給体制を確立することで持久体制に昇華させる必要が出てきます、これこそが重要要素であるといえましょう。

アメリカがこの事実を無視し、海洋航行原則を棚上げする形で自由貿易か保護主義か、という究極の選択肢を突き付けるならば、世界的な保護主義への回帰運動が発生する可能性を無視すべきではありません。また、日本が自国のシーレーンを維持できたとして、日本の防衛力は長大なシーレーン全てを守る事は出来ません。またアメリカも一国では出来ず日本をはじめ価値観を共有する諸国と協同し、維持してきました。

もちろん、海洋安全保障が自由貿易を担保しているという原則ですが、トランプ氏の政策は保護貿易の視点から、例えば関税引き上げやTPP枠組脱退等を示唆している現状を根拠に、視てとる事が出来るのですが、貿易政策は保護貿易を原点として、世界の海上交通の閉塞化を期待しているほどではない、と考えます。しかし現在の安全保障政策は保護貿易からアメリカ一国への経済的鎖国体制へ意図せざる場合を含め志向している実情があります。

冒頭に記した30億の人口を抱えるアジア諸国の多くは、海洋占有を掲げ公海上に人工島を構築し戦力投射を進めると共に周辺国の島々を武力制圧し自国へ割譲する状況を克服できません、すると、30億の人口を抱える地域での自由貿易が阻害される事となり、アメリカが仮に軍事力を撤退させ一方で自由貿易を進めようとした場合でも、購入を希望する国まで運ぶことが簡単に妨害される事となるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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熊本地震災害派遣総括【中篇】:全国から九州へ、人命救助に重点を置いた初動の自衛隊派遣

2016-06-06 22:19:50 | 防災・災害派遣
■人命救助に重点を置いた初動
 自衛隊の災害派遣任務は人命救助のための災害派遣と生活支援に関する災害派遣双方において実施されました。

 人命救助に関してはその具体的内容を見ますと、人命救助行方不明者捜索を16名に対し実施、急患や病院倒壊及び全壊判定などを受けての患者輸送が累計510名、更に安全確保のための人員輸送としまして累計730名を輸送しました。加えて道路啓開任務を人命救助任務として実施しており、瓦礫除去を累計16kmにわたり実施しました。

 安全確保のための人員輸送と急患輸送ですが、熊本地震は医療施設や社会福祉施設へ甚大な被害を及ぼしています。医療施設被害は病院施設の病棟などの損壊により入院診療が不可能となった病院が12病院、高齢者施設の被害は1234件に上り、内建物被害が354件で発生、この為の緊急輸送任務を自衛隊は車両及び航空機により実施しており、後述する交通施設の麻痺では、夜間飛行能力も有する航空部隊の能力が特に発揮されたといえるものです。

 地震により九州全域の新幹線在来線と私鉄の鉄道網が麻痺すると共に高速道路の被害、港湾施設の被害も大きいものでした。交通マヒは、地滑り9件に土石流発生57件とがけ崩れ70カ所という被害により復旧へ時間を要する状況となり、河川堤防等への被害も322件に上りました。港湾施設被害は、熊本県の重要港湾で熊本港と八代港に三角港で被害、大分県の重要港湾では別府港が被害を受け、現在も一部立ち入り禁止区画がありますが、復旧しています。

 空港被害は、熊本空港が被害を受け19日まで管制塔業務が字視できませんでした、19日よりターミナルビルの一部を使用再開し一部の旅客便を運航再開、4月28日より本格的に運航が再開され、5月14日には大半の航空便が運行を再開しましたが、国内線全便運行再開は6月2日までようしました。

 ただ、熊本空港は自衛隊高遊原分屯地と施設を供用しており、地震直後の航空情報収集を筆頭に陸海空自衛隊及び在日米軍の航空輸送拠点として機能した事は特筆すべきでしょう。熊本地震に伴う避難所は最大855カ所で開設され、18万3882名が避難所に身を寄せました。

 この為、停電と断水にガスの供給停止による食糧不足が発生し、自衛隊は給食支援を実施しました。災害派遣における生活支援では、被災者への野外調理器具などを用いた食事の提供としまして給食支援91万1700食、が供給されています。更に、弁当などの輸送支援も自衛隊により広範に実施されました。

 水道管破裂などでの断水は最大44万5857戸に上りました。この為、自衛隊は自治体とともに断水地域への給水車派遣や避難施設での給水支援を実施、自衛隊により累計10920tを給水しています。更に避難所などへ断水地域を中心に野外入浴セットを展開させ浄水キットによる飲料水を過熱し入浴設備を解説、入浴支援としまして累計140900名へ風呂を提供しています。

 生活支援は加えて、衛生部隊による医療支援としまして2320名を診療治療した他、復旧を復興につなげる瓦礫等の搬出としましてトラック160台分を搬出しています。また、災害関連犠牲者を回避すべく今回の災害派遣任務ではエコノミークラス症候群対策を20張の施設展開として実施しており、被害の拡大阻止へあたっており、生活支援の災害派遣任務としまして特筆すべき事例といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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将来小型護衛艦の量的優位重視視点【5】 地方隊警備隊が装備すべき量産小型護衛艦

2016-06-05 20:00:58 | 先端軍事テクノロジー
■警備隊が装備すべき将来艦
 将来小型護衛艦ですが、基本的に水上戦闘艦としての任務を重視し要求仕様を画定すべきだと考えます。

 護衛艦いしかり、等を提示しましたが、例えばフランス海軍の通報艦として運用されているフロレアル級フリゲイトのような、法執行任務の延長線上としての任務を展開する性能要求とするべきではありません。フロレアル級通報艦は、自衛隊観艦式へ参加し横須賀でも一般公開されています。

 またフランス太平洋艦隊に所属する事から定期的に我が国を表敬訪問するため、我が国でもなじみ深い艦船ではあります。通報艦は、フランスが海外県と海外領土での洋上警備及び救難や領海排他的経済水域保全を主軸として低烈度紛争と対テロ非対称戦争への対処能力を重視したものです、護衛艦いしかり、と比較した場合ですが対潜能力をフロレアル級は有していません。

 フロレアル級通報艦は、その分、ヘリコプター運用能力を有しており最大でAS-332シュペルピューマ中型ヘリコプターまでを収容可能な格納庫を上部構造物に有します。しかし、フロレアル級はこの航空機運用能力により満載排水量が2900tと大きくなっていることをわすれてはなりません。

 フロレアル級、あぶくま型護衛艦と同程度となっています、航空機運用能力が、はつゆき型護衛艦と同程度なのですからこの大きさはある種当然と云えば当然なのですけれども、仮にこの規模の船体にボフォース対潜ロケット等を搭載した場合、満載排水量は3000tを越えてしまいます。

 満載排水量3000t、となってしまいますとこの大きさでは、別枠で建造が計画されるコンパクト護衛艦と重複してしまいますし、なによりも、任務区分は通報艦と類似する部分はあるものの、我が国の場合は低烈度紛争と対テロ非対称戦争への対処能力よりも本土直接武力侵攻という従来型の有事を想定しなければなりません。

 それ相応の重武装は必要となる訳です、反面、重装備を搭載しすぎる事で建造費が高騰しては肝心の数を揃える、という事が不可能となり本末転倒というものです。将来小型護衛艦は、格納庫を持たず、しかし飛行甲板を有する、沿岸部を中心に運用することで格納庫を地上に置く、こうした妥協策は有り得るでしょう。

 具体的には、護衛艦いしかり、後部甲板のうち艦対艦ミサイル発射筒の上面を覆う形で飛行甲板を設置し、スウェーデン海軍のヴィズヴィ級ステルスコルベットのミサイル発射筒配置方式ような船体一体化構造が理想であると考えます。性能面からは、逆にヴィズヴィ級ステルスコルベットの方式や、オランダ製シグマ級コルベットも理想的ではあるのですが。

 これらの建造費は護衛艦たかなみ型や護衛艦あきづき型に匹敵し費用対効果に見合いません、このため、護衛艦いしかり建造費はP-3C哨戒機と同程度の費用に抑えられて建造されていましたので、基本的に建造費用はSH-60K哨戒ヘリコプターとP-1哨戒機の中間程度、が望ましい。

 そこまで安く建造する事が出来なくとも、もしくはP-1哨戒機の建造費をおおきく上回らない程度、艦載兵装も、護衛艦いしかり同程度、ミサイル艇はやぶさ型に最小限度の対潜兵装を有し、護衛艦としての最小限度の任務意を遂行できる程度に抑え、という施策が必要と考えます。

 性能よりも部隊としての能力と規模を重視する、安価に建造できることを重視し、しかしその分、数を揃えられる、具体的には各地方隊に3隻から4隻程度を配備可能とする点を重視すべきです。数が十分備えられれば、確実に行動できる艦を確保し、基本戦術と運用体系を構成する事が出来るでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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巨大災害,次の有事への備え 04:福島第一原発事故反省に学ぶ政府危機対応責任者の防衛幕僚

2016-06-04 20:24:29 | 防災・災害派遣
■自衛隊を熟知したスタッフを置く
 福島第一原発事故ではCH-47により高圧発電車を空輸すれば、原子炉損傷の事態は回避できた可能性は高い。

 ただ、要請が無かった時点で自衛隊としては勝手に主導権を東京電力から奪う事は出来ないし、高圧発電車を空輸した段階では対応出来ない状況だと理解する他なかった、という話がありました。高圧発電車を空輸するという発想そのものが、原子力事故の対処に当たる政府も東京電力も無かったのではないか、という自衛隊の方のお話がありまして、一方、事故が九州電力で発生していれば、回避できていたかもしれない、と。

 平成二十二年奄美豪雨、2010年10月20日に鹿児島県奄美大島を襲った記録的豪雨は、当時の民主党政権が11月16日に激甚災害に指定する方針を示す大災害となりました、この災害に際して九州電力は陸上自衛隊へ孤立集落への高圧発電車空輸を要請し、ヘリコプターによる移動発電施設の初空輸を行っています。被災地に移動発電車を空輸し孤立した電力網を回復させた日本で初めての事例とのことで、現地ではかなり報道されたとの事ですが。

 実は当方もCH-47にはそうした空輸能力がある事は知っていても、平成二十二年奄美豪雨災害派遣での実運用の事例があるとは知りませんでした。自衛隊にできる事はあった、しかし要求側と部隊の平時からの連絡齟齬が響いた、といえます。また、CH-47ならば高圧発電車の空輸も可能で九州地方では空輸実績もありました、自衛隊のCH-47は17日、使用済み核燃料プール冷却支援という形で漸く投入されました、電源車を発災当日に空輸する要請を出していたならば、状況は大きく変わった訳で、情報共有と齟齬の象徴的事例といえましょう。

 この問題について、勿論批判するだけならば簡単です、例えば全電源喪失や津波被害というものを想定外としていた部分は批判できるでしょうし、併せて原子力災害は複合的な要員により生じますが、原子力発電を担う電力会社は原発由来の事故防止には万全の対策を講じていましたが、津波災害は勿論、テロコマンドー攻撃やミサイル攻撃などに対する脆弱性はそのまま放置されたままでした。

 この視点から、移動発電車両等電源可搬装置等の移動が電力会社単独での迅速な展開が不可能であった場合の想定は、輸送ヘリコプター等自衛隊の実が保有する特殊機材、日本国内には中型輸送ヘリコプターまでならば、例えばスーパーピューマ等を民間航空会社が保有していますし、時間を掛けて良いならば民間輸送会社に運べないものはほぼありません、しかし、道路が使えない、浸水している、という状況です。

 その中で緊急に輸送する手段というものが必要となった場合には、そもそも平時の手続きを念頭としている機構よりも、有事での自己完結能力を求められている機構、つまり軍事機構のみが想定しているものが多い訳です。究極的には、各電力会社が電源車を空輸できるよう、CH-47やCH-53規模のヘリコプターを装備していればよかったのか、と問われるならば、民間の視点では原発事故が何月何日に発生するかの大まかな見通しが年間計画で示されるものではありません。

 大規模災害という、文字通り奇襲的に発生する事案への備えには24時間365日の即応体制を採る必要がありますが、一機当たりの取得費用が50億円となり、予備機を準備し夜間低空飛行や悪天候下の視界不良を越えて飛行する能力を民間企業が整備する事は不可能です、しかし、政府危機対応責任者の防衛幕僚として、自衛隊の装備を理解し助言できる立場のスタッフを置くことは、平時からできたはずでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.06.04/05)

2016-06-03 22:20:49 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 六月となり梅雨入りの気配が色濃く漂うところ、初夏ながら低温が続く今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 第11旅団創設8周年真駒内駐屯地祭、北部方面隊道南地区を防衛警備管区とする陸上自衛隊の旅団で、第10普通科連隊、第18普通科連隊、第28普通科連隊、第11戦車大隊、第11偵察隊、第11特科隊などを基幹部隊としています。真駒内駐屯地は札幌市にあり、さっぽろ市営地下鉄にて駐屯地まで展開可能です。90式戦車、99式自走榴弾砲、96式装輪装甲車、多数の新鋭装備を揃えています。

 戦車部隊関連の行事としましては、岩手駐屯地創設59周年記念行事、大和駐屯地創設60周年記念行事など。岩手駐屯地には第9特科連隊、第9戦車大隊、第9高射特科大隊、第10施設群第387施設中隊、等が駐屯しています。大和駐屯地は第6戦車大隊と第6偵察隊の駐屯地です。74式戦車が配備されている部隊ですが、今後74式戦車は機動戦闘車により一挙に数年で置き換えられる見通しであり、撮れるうちに撮っておくべきでしょう。

 航空部隊関連行事では海上自衛隊と陸上自衛隊が実施します、大湊航空基地マリンフェスタ2016、霞ヶ浦駐屯地創設63周年記念行事のふたつ。霞ヶ浦駐屯地は陸上自衛隊関東補給処が置かれている駐屯地ですが航空学校霞ヶ浦分校が置かれ、練習機を以て整備員養成教育と幹部操縦課程にあたっています。大湊航空基地は大湊基地へ隣接、SH-60J/Kを運用する第25航空隊、UH-60Jを運用する第73航空隊大湊航空分遣隊が展開しています。ただ、災害派遣の影響により行事が縮小される方針とのこと。

 このほか、NBC防護部隊や地対空ミサイル部隊の行事が執り行われます。大宮駐屯地創設59周年記念行事、陸上自衛隊化学学校、中央特殊武器防護隊、第1師団第32普通科連隊が駐屯しています駐屯地で、開門時間と実施会場が例年駐屯地内にて大規模に行われると年度とそうではない年度がありますが、化学科装備の最新型を観る事が出来ます。青野原駐屯地創設40周年記念行事、第8高射特科群の駐屯する兵庫県の駐屯地で、隷下の第338高射中隊、第339高射中隊、第340高射中隊、第343高射中隊、第308高射搬送通信中隊が03式中距離地対空誘導弾を運用しています。

 航空自衛隊関連行事では二つ輪島分屯基地開庁60周年記念行事、高尾山分屯基地開庁60周年記念行事。輪島分屯基地は中部航空警戒管制団第23警戒群が展開するレーダーサイトでJ/FPS-3Aを運用しています、支援車両にBV-206全地形車両が配備されている分屯基地です。高尾山分屯基地は、中央線沿線ではなく山陰本線沿線の方で、西部航空警戒管制団第7警戒隊の展開するレーダーサイトです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・6月5日:第11旅団創設8周年真駒内駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/
・6月4日:大湊航空基地マリンフェスタ2016…http://www.mod.go.jp/msdf/oominato/
・6月5日:岩手駐屯地創設59周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/9d/
・6月5日:大和駐屯地創設60周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/6d/
・6月5日:霞ヶ浦駐屯地創設63周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/eadep/
・6月5日:大宮駐屯地創設59周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/1d/html/0top.html
・6月4日:輪島分屯基地開庁60周年記念行事…http://www.mod.go.jp/asdf/index.html
・6月5日:青野原駐屯地創設40周年記念行事…
・6月5日:高尾山分屯基地開庁60周年記念行事…http://www.mod.go.jp/asdf/index.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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陸上防衛作戦部隊論(第五三回):ペントミック師団(五単位師団),作戦能力保持が必要

2016-06-02 23:01:55 | 防衛・安全保障
■部隊編制と任務遂行能力
 広域師団と装甲機動旅団に航空機動旅団という編成案、を提示してまいりました。

 これまでその対案として、または過渡案として、今回提示しました五単位師団です。作戦単位、戦略単位を考える上で必要な視点は、その部隊が戦闘基幹を構成し、有事の際には主戦闘地域を画定し、攻撃か防御の決心を行う、攻撃任務を選択する際には攻勢の基盤となる地域から攻撃準備と攻撃発起を行いその地形に掩護を行う事が可能な地形見積とそれに見合った部隊を編成する、流れはこのようになる。

 防御任務に当たる際には主戦闘地域と前方地域を画定し前地戦闘の基盤を構築した上で後方地域と段列地域を画定する、防御は最終的に敵の侵攻を阻止し奪われた国土を奪還するべく攻撃の基盤となる地域を見積もったうえで、任務遂行の分水嶺となる最終確保地域を画定しなければなりません。その為の決戦地域、進出掩護を受け易い地形、しかし迂回されにくい緊要地形、その上で戦闘展開に適した地積、火力戦闘部隊支援を受ける上で適切な地積、これらを選ぶ必要があります。

 攻撃は包囲か突破か、となるため戦闘部隊は一方向からの任務遂行ではなく双方向以上の攻撃方向を選定する必要があります、攻撃は包囲か突破かとの命題は即ち突破が包囲へ転換する戦術上の可能性を含み併せて主攻と助攻を明確化せねばなりませんため、攻撃方向を一方向へ単純化する方策は戦術上の禁忌ともなります。また、主攻部隊と助攻部隊は基本的に同一正面幅を付与する必要があり、予備隊と火力戦闘部隊との連絡線を維持可能な部隊編制も必要となるでしょう。

 絶対要件として、任務に当たる部隊に対し充分な戦闘力の配分が無いもの、この原理原則を無視した状況は回避しなければなりません。その上で、その戦闘力には攻撃開始線から敵部隊へ前進する上で必要な防御力と不整地突破能力を含めた機動力の付与は当然含まれますし、敵戦闘部隊の機甲戦力や機動能力に対応する攻撃衝力持続性も付与されなければなりません。

 主戦闘地域と前地に後方を画定する際には作戦単位が過小であれば部隊編制として任務遂行が不可能となります、攻撃方向画定に際し部隊規模が過小であれば攻撃衝力不足が生じます、主攻部隊と助攻部隊は基本的に同一正面幅を付与する観点から同一編成の戦術単位部隊が複数必要となります、主攻撃と助攻撃の前者に寄与する攻撃行動を行う事は併せて部隊規模は地積見積の観点から過小があるとともに過大も有り得る、という視点も必要です。

 こうした上で二つの作戦部隊単位を示したわけですが、共通要素は、現在の防衛省が進める機甲戦力と特科火力の本土からの撤収は間違っている、というものです。戦車に代える装輪装甲車は任務遂行に必要な不整地突破能力と攻撃衝力持続性を持つとは考えにくく、無理に任務に充てる場合には膨大な数的犠牲、その損耗に耐える配備数が不可欠となります。また、特科火力が不十分であれば対砲兵戦が成り立たず、主攻部隊と助攻部隊に予備隊、という位置づけではなく、単なるテロ対策重装備治安部隊に転落しかねません。

 もちろん、北方の戦車を迅速に本土に輸送可能となるよう北海道新幹線東北新幹線東海道山陽新幹線を複々線化し戦車貨物輸送体制を構築する、航空自衛隊が戦車や自走榴弾砲を空輸可能で先日生産終了となりましたC-17戦域間輸送機を25機程度ライセンス生産し取得する、特科火力不足を補うべく陸上自衛隊が米海兵隊のように独自航空戦力を構築しF-2支援戦闘機かF/A-18F戦闘攻撃機を90機程度配備する、というならば機甲戦力不足や特科火力不足は補えるのかもしれませんが、現実的に考え、今回の特集のような五単位師団の提案を行いました。

北大路機関:はるな くらま
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アイアンドーム防空システムと我が国ミサイル防衛、北朝鮮弾道弾と中国巡航ミサイル脅威

2016-06-01 22:48:54 | 先端軍事テクノロジー
■イスラエル製新近距離ミサイル
 北朝鮮ミサイル実験が繰り返される中、我が国は基本的にミサイル攻撃に対し先制的自衛権行使を選択肢に含めていない為、ミサイル防衛への関心が高まっています。

 こうした中で、イスラエルが新しい海上配備ミサイル防衛システムの実験に成功、というと報道がAFP等で流れました。一瞬新装備完成か、と思わせる内容ですが、実体はロケット弾迎撃用のアイアンドームシステムをコルベットに搭載し運用成功した、というものでした。アイアンドームはイスラム武装勢力がイスラエルへ数百発を投射してきましたカッサムロケットへ対抗する迎撃装置で、これは戦時中カチューシャロケットの愛称で知られたロケット弾の系譜、122mmロケットの単発発射機を用いて不特定多数が多方面から無差別攻撃を実施するもの 。

 イスラエルのアイアンドーム、我が国のミサイル防衛を考える上で、よく頻繁に識者や専門家の一部が言及する装備です。イスラエル国内へ大量に打ち込まれるロケット弾を次々と迎撃に成功する様子が報道され、特に複数の落下するロケット弾へ先行するように迎撃に上昇し、複数を十数秒間で迎撃、迎撃成功率は防護対象区域へ落下するロケット弾に対しては90%という高い迎撃能力を発揮しており、これを自衛隊が導入すれば北朝鮮のミサイルに対して有効に迎撃出来るのではないか、という、一種誤解があるようです。

 アイアンドーム、技術的に迎撃は例えばミリ波レーダーと3P機関砲弾を用いれば可能なのですが、兎に角撃たれる数が多いのが難点で、このため、20連装のロケット弾迎撃用ミサイルシステムとしてアイアンドームが開発されています。よくある誤解で、ミサイル迎撃システムという部分と迎撃が成功しているとの報道から、日本にも導入すべきとの意見を散見しますが、確かに陸上自衛隊の師団防空などには効果があるといえるものの、所謂MD,ミサイル防衛には役に立ちません 。

 それは日本へ飛来するミサイルはカッサムロケットのような122mmロケット弾ではなく、極超音速で飛来する弾道ミサイルであるためです、アイアンドームの射程は10km前後、射程は大きくなく弾頭威力も小さい為弾道ミサイルを迎撃できないのです。ミサイルの規模はアイアンドームが直径160mm、全長3m、本体重量90kg、というもの。それでは、弾道ミサイル防衛に当たるミサイルの規模は、といいますとMIM-104FペトリオットミサイルPAC-3で直径250mm、全長5.8m、重量320kg、と。

 ミサイルの大きさからアイアンドームと近い規模のミサイルを観てみますと、航空自衛隊の短射程空対空ミサイルであるAAM-5が直径130mm、全長3.1m、重量95kg、また、海上自衛隊が護衛艦などにも採用していますRIM-116C/RAMが直径146mm、全長2.82m、重量88.2kg、という規模です。超音速で高高度まで上昇し直接迎撃する弾道ミサイル迎撃用ミサイルとの違いはこのようにミサイル本体の大きさに表面化しているといえるやもしれません。

 ならば無用か、と問われると実はそうでもありません。MDミサイル防衛ですが、ただ、弾道ミサイルではなく巡航ミサイルへの防空能力ならば、大きな能力を発揮できるといえます。アイアンドームは155mm野砲弾など小型目標も多数を同時に捕捉し迎撃可能であるため、専守防衛の我が国としては、例えば相手が航空機から爆弾を投下し航空基地等を無力化する攻撃を受けるまで、本格的な迎撃を実施できない日本の国情には合致しているといえるでしょう 。

 巡航ミサイルによる第一撃は奇襲となり当然飽和攻撃という形で同時に多数が投射され、複数のミサイルが多方向から飛来する事になります、そういうのも、第一撃は海戦の状況を確認する、攻撃を加える側には防衛体制が確立するまでの位階のみの機会であるからです。こうした場合に対してもアイアンドームは1セットを構成する即応弾が20連発射機3基の合計60発、一目標へ2発を発射するとしても同時に30目標を迎撃可能ですので、航空自衛隊の基地防空地対空誘導弾システムよりも即応弾が多いのは心強い。

 H-6 轟炸六爆撃機は射程2000kmのCJ-10K巡航ミサイル6発を搭載可能で、遠距離から我が国航空基地や原子力発電所等を攻撃可能です。CJ-10K巡航ミサイルは水上戦闘艦搭載型や潜水艦搭載型の開発も同時に進んでおり、ミサイル防衛という視点から、我が国は北朝鮮の弾道ミサイルだけではなく巡航ミサイルへの対処を本格化させなければなりません。

 幸い、巡航ミサイルは弾道ミサイルと異なり低空を飛行するものの基本は亜音速巡航である為、早期警戒機等を飛行させたならば早期に捕捉し充分な余裕を以て、ペトリオット、、03式中距離地対空誘導弾、11式短距離地対空誘導弾、81式短距離地対空誘導弾C型、基地防空地対空誘導弾システム等で迎撃が可能である一方、多数を同時に打ち込み、飽和されると厄介で、アイアンドームの即応弾の多さは利点といえるでしょう。

 ただ、費用面では必ずしも我が国の国情に合致しているとは言えません、アイアンドームはEL/M-2112レーダーシステムと20連装ランチャー3基から構成されていますが、イスラエルは2億500万ドルを投じて2個中隊所要の調達を行いました、開発費や初度装備品などを考えた場合、我が国が導入する場合、那覇基地等を防護するシステム一式だけで恐らくこの2億ドルに達すると考えられます。

 一方、アイアンドームシステムと類似の装備として、艦載装備のRAMがあり、アメリカの防衛企業レイセオンなどはEL/M-2112とRAMによるシステムの第三国への提案を行っています。我が国の場合は、RAMの導入を開始した訳ですし、飽和攻撃へ対処できるシステムは、国産でも不可能ではありません、PAC-3をPAC-2四基分に各4発を搭載し16連装とし、巡航ミサイルへ備える事も出来ますし、基地防空地対空誘導弾システムを現在の高機動車へ4連装発射機を搭載していますが、これを牽引車両にけん引させる20連装発射装置を開発し、即応弾数を増大させる事でも対処は可能です。しかし、こうした視点からミサイル防衛を弾道ミサイル防衛に留めず巡航ミサイルによる飽和攻撃を想定する事は、重要といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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