北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛予算二〇一九検証【3】戦車と火砲世代交代と支援車両近代化,課題の装甲車量産空白期

2018-10-11 20:05:26 | 国際・政治
■次期装輪装甲車の課題も
 防衛予算二〇一九検証、今回は戦車や火砲などについて、新装備調達も開始されますが課題も残り、その概要を視てみましょう。

 戦車火力について、陸上自衛隊の主力である10式戦車は今年度の5両に続き来年度も6両が80億円で要求されます。戦車定数は300両、既に90式戦車300両以上が配備されていますが、初期の90式戦車については電子装備やデータ通信装備の更新こそ行われているものの機動力と駆動系などの老朽化は30年の運用を経て否めず、10式戦車調達が行われる。

 16式機動戦闘車も今年度の18両に続いて来年度は22両164が要求されます。第6師団と第11旅団とが即応機動旅団に改編され、また第4師団隷下の第4偵察隊が第4偵察戦闘大隊へ改編される為、今年度末だけでも5個中隊分の16式機動戦闘車が必要となり、戦車大隊廃止を補完する偵察戦闘大隊改編は全国で続くため、まだまだ量産せねばなりません。

 89式小銃については今年度1500丁が調達されましたが来年度概算要求に調達はありませんでした、教育訓練部隊への89式小銃配備も開始され実に30年間に迫る小銃の更新が完了したもようです。対人狙撃銃 は今年度の6丁に続き来年度も6丁が0.4億円で要求されています。分隊機銃MINIMIについても要求は無く、軽火器更新は一段落したかたちです。

 迫撃砲は60mm迫撃砲Bが今年度 6門と同数の6門が0.2億円で取得、さり気なく対人狙撃銃よりも安価なのですね。81mm迫撃砲 L16は要求されておらず調達終了、120mm迫撃砲 RT は今年度2門に続き来年度に12門が6億円で要求、これは特科火砲の補完位置づけで、水陸機動団新編に伴う所要と即応機動連隊火力支援中隊所要があるためでしょう。

 特科火砲については新型装備の導入が開始されます。装輪155mm榴弾砲が新装備として来年度から調達が開始され、特科教導隊所要として7両が48億円で要求、現在まだ正式構え、ドイツMAN社製大型トラックへ先進軽量砲を原型とする先進火砲を搭載した機動性の高い自走榴弾砲です。一方、99式自走155mm榴弾砲について昨年度7両が最後となります。

 装輪155mm榴弾砲は本州九州特科部隊に配備される事となりますが、現在九州四国を除く全国の旅団と師団に残る特科隊と特科連隊は順次廃止改編され、新編の方面特科連隊へ統合される事となる予定です。北海道では99式自走155mm榴弾砲が今後も師団旅団特科連隊特科隊の主力となりますが、一部は定数割れとなっており編成縮小の可能性もあります。

 96式装輪装甲車は今年度に続き要求されませんでした。これは小松製作所が進めていた装輪装甲車-改の開発失敗を受けての装甲車量産空白期です。それでは自衛隊に装甲車は充分なのかといえば、逆で即応機動連隊が年度末に二つ新編される為、6個中隊分を全国の装甲化普通科中隊から抽出し掻き集めねばなりません、必要な装甲車を帳尻だけ合せるという。

 次期装輪装甲車が必要である、とは陸上自衛隊も十分考えているようで、次期装輪装甲車導入候補車種の試験用車両として来年度予算には20億円が要求されています。試験用車両は外国製車輌取得への借用費用か、16式機動戦闘車車体等を応用の国産車両取得費用かは言及されていませんが、導入候補車種試験用車両、という以上は新規開発ではありません。

 車両、通信器材、施設器材等の取得は今年度の194億円を大きく超える406億円が要求されています。浄水セット1式1億円やグラップル付油圧ショベル3台1億円、10式雪上車の取得10両3億円、資材運搬車8台0.8億円、07式機動支援橋1式12億円、18式個人用防護装備7500式18億円、また電子妨害装置等など、多種多様な装備が要求されました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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韓国国際観艦式2018南部済州島で開始,韓国政府非常識の自衛艦旗拒否要求で護衛艦不参加

2018-10-10 20:18:39 | 国際・政治
■自衛艦旗拒否は常識外要求
 韓国国際観艦式2018が最近話題となっています、もっとも日韓では悪い意味での報道が目立っているかたち。

 本日から韓国南部の済州島において韓国国際観艦式2018が開始されました。韓国国際観艦式は韓国が十年に一度開催しているもので最初の開催は1998年、今回は第三回となります。西太平洋海軍シンポジウムへは日米など48か国が参加、観艦式には韓国海軍艦艇24隻と航空機24機の他に日中を除く12か国が艦艇17隻を派遣、本日総合予行が行われました。

 海上自衛隊は当初、護衛艦一隻を派遣する予定でした。1998年第1回韓国国際観艦式へは、海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦はるな、ミサイル護衛艦みょうこう、護衛艦みねゆき、を派遣し、みょうこう、は式典直前に日本海において北朝鮮弾道ミサイルを水上戦闘艦として初めて探知追尾に成功した旨が紹介され、見学者から拍手が沸き起こった事も。

 護衛艦不参加、当初派遣予定だった護衛艦を海上自衛隊は派遣を断念しました。その理由は自衛艦旗を降ろして参加するよう要請された為です。自衛艦旗を降ろしてほしい、当初韓国政府が要求したと報道された際には、何らかの間違いであるか、もしくは日韓離反を狙う第三国によるフェイクニュース攪乱ではないか、そう考えました。常識に反している。

 韓国政府の要請は残念な事に事実でした。朝日新聞9月28日報道によれば韓国政府は国際観艦式参加各国へ“自国の国旗と韓国国旗太極旗だけの掲揚を要請した”とのこと。当時の防衛大臣である小野寺五典防衛相は28日、要請にかかわらず従来通り自衛艦旗を掲げる考えを示しています。当たり前だ、軍艦が軍艦旗を降ろすのは除籍か降伏か沈没の時のみ。

 観艦式に参加したければ降伏せよ、という意味に等しい。そして軍艦旗は、アメリカ海軍が独立戦争以来、国旗を軍艦旗として用いていますが、むしろ例外で、中国海軍やロシア海軍、イギリス海軍やフランス海軍にドイツ海軍等欧州NATO海軍の全ても国旗とは異なる軍艦旗を採用しています、そして主催国である韓国海軍も事実上国籍旗として国旗以外の軍艦旗を採用している、韓国海軍も掲揚しないのでしょうか。

 自衛艦旗は国際法上の軍艦旗にあたります。国際慣習法では軍艦と商船が存在し、公海条約8条2項や国連海洋法条約29条により明文化されています。自衛艦は憲法上軍隊ではないという位置づけですが、国連海洋法条約上の商船とは見做されず、軍艦に当ります。そして武装した艦船が軍艦旗を掲げていない場合は国際法上権限を行使する事が出来ません。

 韓国では日本国旗が、過去の慰安婦問題や日韓併合問題、政府間では1965年の日韓基本条約締結による日韓国交正常化により、日韓併合の正式解消に朝鮮半島全域旧日本資産全面引渡と11億ドル経済協力協定といった条件とともに実に半世紀以上前に解決した問題ですが、民間視点では摩擦が残る事は否めません。韓国観艦式問題もその延長といえましょう。

 十六条旭日旗が今日の自衛艦旗に当る軍艦旗に指定されたのは1889年、明治憲法制定の年度です。しかし、韓国国内には過去の韓国併合と旭日旗を同一視する潮流が2012年頃から始まりました、韓国併合は寺内正毅統監と李完用総理との間で1910年に締結された日韓併合条約に依拠、寧ろ日章旗の方が、とも思うのですが、何故か十六条旭日旗が敵視される。

 韓国では戦犯旗、という言葉があるようです。聞きなれないでしょうが2013年頃から韓国で出始めたというもの。これは2013年の野球世界大会に当る第三回ワールドベースボールクラシックWBCにてサンフランシスコ会場に島根県竹島が韓国領土であると掲示が行われWBC理念に反する大会政治利用行為だと大会本部より警告されたものが始りでした。

 WBCが国際観艦式へ飛び火した理由は非常に幼稚で、韓国側が竹島主張が政治主張ならば大会会場に応援に持ち込まれた日章旗の隣に在る旭日旗も同様だ、というものが蟠りの始りです。しかし上記の通り、自衛艦旗を掲揚しなければ護衛艦は航行できません、また韓国海軍艦艇が日本入港に際し日本に自粛し軍艦旗を降ろす事も当然、あり得ないでしょう。

 国際観艦式は信頼醸成の場、韓国は十年に一度の観艦式で日本との信頼醸成を拒否しました。自衛艦旗を掲揚しているからこその自衛艦、この当たりは韓国政府も国民へ説明するか、もしくは日韓関係への国民感情から海上自衛隊を最初から招待しなければよいのです、勿論これは韓国が隣国とも友好関係を維持できない事を世界に示すだけなのですが、ね。今回の韓国の要求は非常識過ぎ、残念といわざるを得ません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【19】F-35B艦上哨戒機,第五世代戦闘機搭載の戦略的意味

2018-10-09 20:10:43 | 先端軍事テクノロジー
■現実的安保情勢変化へ対応
 現実的安全保障情勢の変化として冷戦時代日本が想定する必要のなかった中国海軍の急速な拡大と空母量産に我が国は対応せねばなりません。費用は大きいですが、F-35B採用は必要と考える。

 ひゅうが型護衛艦にF-35Bを搭載する事で、センサーノードとして、例えばステルス性とレーダーに頼らない索敵能力が水上戦闘のおおきな威力を発揮する事はこれまでに繰り返し述べました。対空ミサイル射程が400km以遠に延伸する中、SH-60K等のヘリコプターによる索敵は難しく、遠距離警戒監視能力を高めたE-2D早期警戒機でも対空ミサイルは早期警戒機を狙い射程を伸ばしている為に油断できません。

 しかし同時に、近年顕著になる中国海軍航空母艦への対抗という意味でもF-35Bを護衛艦に搭載する事は、新しい意味があります。勿論ひゅうが一隻、いせ一隻で中国海軍の001A型航空母艦へ対抗する事は難しいでしょうが、少なくとも行動を抑制する事は出来ます。SH-60Kにヘルファイアミサイルを搭載しても対抗する事は難しいでしょうが、F-35Bにはその能力があるのです、もちろんセンサーノードとして索敵用にも散る前提ではあるのですが、JSMミサイル搭載能力を持つF-35Bを相手がどのように判断するか、という意味です。

 F-35Bの必要性が提唱される背景はそもそもが従来想定外であった中国海軍による空母部隊建設へ対応手段を創設しなければ亡くなった、という点に帰結します。F-35B戦闘機を格納庫に5機搭載する事が限度であっても、友好国を親善訪問する際にその5機を飛行甲板に並べ親善訪問する事で、搭載している事を大きく示す事が出来ます。そして必要であれば10機以上を搭載する事が可能、という検証を十分に示しておくならば、例えば行動中の護衛艦の格納庫内は哨戒機等からは判明しませんので不確定要素を与える。

 ひゅうが型護衛艦は、しかし当然ながら航空母艦ではありません。いずも型護衛艦についても基本はヘリコプター搭載護衛艦であり設計の時点では当然ながら航空母艦ではありません。飛行甲板に目いっぱい並べたとしても、アメリカ海軍のジェラルドフォード級原子力空母やニミッツ級原子力空母とは根本的に艦載機運用能力が違います、護衛艦の弾薬搭載能力についても弾薬を運用する航空機がF-35BとSH-60Kでは根本から違い10万トンのアメリカ空母とは比較にならないのある意味当然だ。

 001A型航空母艦、中国海軍が量産を開始したものですが、我が国シーレーンに対し不透明な運用を行う可能性が、というよりも用途が不明確なのが不確定要素に直結しているのですが、何らかの対応策が日本に必要となる。するとセンサーノードという運用から外れると指摘されるかもしれませんが、ヘリコプター搭載護衛艦をカウンターバランスとして抑止力に充てる事も可能で、この001A型航空母艦の量産を進める中国海軍に対しても、001A型航空母艦は満載排水量からロシア製Su-30戦闘機派生型を24機から36機程度は運用可能であり、ひゅうが型護衛艦が目いっぱい搭載した場合でも、数の上では対抗し得ません。ただ、ヘリコプター搭載護衛艦なのですから数字の上で考えるならば、空母と一対一の決戦を行う方が間違っており、必要な数を集めればよい。

 いせ、ひゅうが、ヘリコプター搭載護衛艦とはいえ最大でF-35B戦闘機の飛行隊を運用できる護衛艦が仮に我が国に対する示威行動を試みた際に、800km圏内を航行していた場合、001A型航空母艦であっても安寧は得られないでしょう。即ち中国のが我が国に及ぼす不確定要素に対し日本も最小限度でもDDHにF-35Bを搭載し不確定要素を、海上権力行使に異議を示す事ができる体制があればよい。001A型航空母艦F-35B戦闘機は航続距離1670km、戦闘行動半径865km、射程500kmのJSM空対艦ミサイルを運用できるが威力はもう一つ。

 F-35B戦闘機はステルス性を有しており、捕捉が困難です。実際、航空管制に支障がある為にレーダーに映るようレーダーリフレクターを複数装着し運用している程で、0.025平方m程度しかレーダー反射面積は無く、10平方mのレーダー反射面積を有するF-15JやSu-27戦闘機とは雲泥の差があります。不確定要素への不確定要素、という視点はここにあり、空に一機でも展開可能性があれば、無視できません。

 F-35Bが居ないか居る、全くいない場合と一機でもいる、数の問題ではなく中国海軍空母による軍事恫喝を決定的に抑制する事となるでしょう。抑制、というのは要するに800km圏内にヘリコプター搭載護衛艦が皆無であればその可能性は払拭できるのですが、800km圏内の索敵が可能である航空母艦はE-2D早期警戒機を搭載するアメリカ海軍の航空母艦程度、それ程に長大な距離なのです。

 Su-30戦闘機は極めて高い空中運動性と高出力のレーダーを搭載し、中国がこの期待を参考に開発したJ-15戦闘機はどの程度の能力を有するかは未知数ですが、例えば従来の垂直離着陸が可能な航空機、AV-8Bハリアー攻撃機等では対抗できない可能性があります、もちろんAV-8BであってもAMRAAMを搭載出来るのですが戦闘機は単なるミサイル運搬手段ではなく、これをもってAV-8BがJ-15に優位性を持たせる事が出来るとは言えない。しかし、F-35Bは第五世代戦闘機です、J-15は基本的に第四世代戦闘機であり、第五世代戦闘機のF-35B戦闘機に対抗する事は余程の好条件がそろっても難しいでしょう。

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【G7X撮影速報】中部方面隊創設58周年記念伊丹駐屯地祭,“生々躍動”の姿(2018-10-07)

2018-10-08 20:16:35 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■伊丹駐屯地祭2018速報
 伊丹駐屯地祭、行って参りました、コンパクト機種G7Xにて撮影、その速報記事です。

 中部方面隊創設58周年記念伊丹駐屯地祭、昨日10月7日日曜日に兵庫県伊丹市は伊丹駐屯地にて挙行されました。本年は台風25号接近に前途を考慮するも幸いその進路は避けられ、“生々躍動”を掲げ記念式典と訓練展示を実施したほかにLIVE配信を実施しました。

 岸川公彦総監以下中部方面隊はその隷下部隊として、第3師団、第10師団、第13旅団、第14旅団、第4施設団、中部方面混成団、第8高射特科群、中部方面航空隊、中部方面通信群、中部方面衛生隊、中部方面後方支援隊、中部方面情報隊、関西補給処等が揃います。

 中部方面隊管区は京阪神近畿地方、東海北陸地方、山陽山陰地方、四国、西日本2府19県と広大であるのが特色で、その警備隊区は日本国土の三割にも達するとともに、中部山岳地帯や中国地方山間部という山岳地形から京阪神中京大都市圏等都市部も含まれている。

 日本海の対岸には北朝鮮とロシアが控えており、防衛上は大規模着上陸の蓋然性は高くはありませんが、長大な海岸線は限定侵攻の脅威に常に曝されると共に管区内では北朝鮮によると考えられる特定失踪者拉致事案も実際に発生し、防衛上の留意事項といえましょう。

 即応機動旅団として第14旅団が年度末に改編を迎え、前回第14戦車中隊所属として初公開された16式機動戦闘車は第15即応機動連隊所属として登場、同時に第14戦車中隊は廃止改編を受けその歴史は幕を閉じました。この一年でも大きな変容はあるものなのですね。

 第10師団は中部方面隊大改編に併せ、新たな陸上戦闘へ対応すべく実験師団として部隊運用研究にあたる、これは方面隊行事訓示において岸川総監が触れられた点で、将来の方面隊戦車全廃と特科火砲大幅縮小を前に新たな運用方式の研究が為されている事が示された。

 16式機動戦闘車は昨年度、観閲行進に初登場し話題となりましたが、本年は訓練展示において初動部隊として出動しその105mm砲空包射撃を展示しました、第14旅団祭でも実施した空包射撃ですが、方面隊管内で四国以外では初めての空包射撃展示となったわけです。

 74式戦車は96式装輪装甲車とともに訓練展示の機動打撃力として展開し、自慢の105mm空包射撃が会場を震わせました。考えてみれば、74式戦車と16式機動戦闘車の協同は、本邦初のものとなったかもしれません。もっとも、富士学校祭では対戦している関係ですが。

 軽装甲機動車や96式装輪装甲車とFH-70榴弾砲に03式中距離地対空誘導弾といった各種装備も訓練展示で迫力の展開を実施し、会場では発砲焔写った写らなかった、バッテリー切れだ、と大盛り上がり。意外に大きな16式機動戦闘車の発砲焔も話題となっていました。

 岸川総監の訓示では防衛安全保障上の留意事項に触れ隷下部隊の隊員各員の士気を鼓舞すると共に、本年発生しました西日本豪雨災害、大阪府北部地震、台風21号災害、といった大規模災害を振り返るとともに、脅威度の高い南海トラフ地震へも広く警戒を促しました。

 南海トラフ巨大地震は歴史地震の研究が進むと共に我が国へ及ぶ新たな脅威として認識され、過去の日本史に記される最大規模での発生の場合には犠牲者32万名という広島長崎原爆投下に匹敵する災厄となり、中部方面隊はその脅威にも正面で向き合わねばなりません。

 西日本豪雨災害は台風が温帯低気圧となった安心が裏目に出た災厄ですし、大阪府北部地震は阪神大震災以来の備えが果たして十分であったかを突き付けられ、台風21号災害は毎年襲来する台風の脅威度を再認識、明日に備え今日に即応する、訓示の言葉は響きました。

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【G7X撮影速報】ベトナム海軍チャン-フン-ダオ堺親善訪問.日越国交45周年(2018-10-05)

2018-10-07 20:08:39 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■アンゴルモア-大越元寇合戦記
 アンゴルモア-元寇合戦記放映記念というわけではないでしょうが艦名チャン-フン-ダオは大ヴェトナム帝国の将軍です。

 NHK“歴史秘話ヒストリア”“蒙古襲来の真実-鎌倉武士-最強の秘密”という番組が放映され、10万の大軍を相手に武士1万がいかに戦ったかについて、最新研究と共に鎌倉武士の奮戦と苦闘を紹介していました。蒙古軍、元帝国は当時欧州から中東まで侵略しました。

 チャン-フン-ダオ,日本を初訪問したヴェトナム海軍フリゲイトの艦名ですが、チャン-フン-ダオ将軍は陳朝大越の将軍で、初代国王の甥にあたる王族の一人でもある。そして蒙古襲来という鎌倉時代の日本国際関係史上の一大事件とも、実は間接的に関係しているという。

 アンゴルモア-元寇合戦記, たかぎ七彦氏原作の蒙古襲来下の対馬武士と派遣された元御家人等流人の対馬での激闘と奮戦を描いた漫画作品で、主人公朽井迅三郎を小野友樹さんが、輝日姫をLynnさんが演じ、本年の夏アニメとして放映され、大きな話題となりました。

 日本は元の二度にわたる侵攻を九州での徹底抗戦と僅かな僥倖により、掴んだ戦機を離さず撃退に成功したという事実は我が国でも教育の場において広く学ばれるところですが、実はこの広い世界にはもう一つ、日本と同じく元帝国の侵略を撃退した国があるのです。

 陳朝大越、大ヴェトナム帝国、蒙古侵攻を二度に渡り撃退する。元帝国は機動戦を実現する騎馬戦術と異なる言語の民族軍を今日の通信符丁にあたる銅鑼と喇叭により統制する集団戦術を併用し、欧州平原等現代に戦車戦が起きうる地形では圧倒的な威力を発揮出来た。

 皇帝仁宗、大ヴェトナム帝国第三代皇帝は1257年の蒙古侵攻を何とか食い止めるも1282年に再度モンゴルは元帝国と国名を改め、遥かに大きな戦力を以て侵攻した際、余りもの圧倒的な兵力差から一時は元帝国皇帝フビライへ降伏を真剣に考え、思い悩んだという。

 チャン-フン-ダオ将軍は、戦わずして降伏するならば先ず私を含め国軍将軍を斬ってほしい、として皇帝の迷いへこれを諫め、勇気づけられた行程は国軍最高司令官にチャン-フン-ダオ将軍を任じ徹底抗戦を命じたという。そしてヴェトナムの地形は錯綜地形が全土に広がる。

 チャンパ王国として当時ヴェトナムは北部の陳朝大越と南部のチャンパ王国へ分裂状態にありましたが、元帝国がこの南北両国を二方面作戦で同時侵攻した為、兵站線が長く伸びており、チャン-フン-ダオ将軍が重視したのは国土錯綜地形を活かした近接戦闘の強要です。

 諭諸裨将檄文という過去の戦史から少数精鋭主義と戦術運用に緊要地形等の重要性を説いた激励を国軍に広く説いたチャン-フン-ダオ将軍、文武両道の将軍だったといえます。しかし、日本の元寇蒙古襲来が数日、続いて数か月の二度だったのに対し大越侵攻は長引いた。

 白藤江の戦いとして戦いが始まって六年目の1288年、遂に元軍は大規模な撤退に転じます。中国とヴェトナムは陸続きとはいえ、消耗戦が限界に達したのでしょう。しかし、元軍には撤退戦の経験が不充分であり、その甘い認識は士気旺盛な大越軍により打ち破られます。

 白藤江へ撤退中の元軍は渡河準備に手間取り9万もの大軍が河岸に凝集し身動きが取れない状況下、ここに勝機を見出した大越軍は最大規模の総攻撃を受けます。元々渡河点を研究し、川底に多数の障害物を配置する等万端の準備と共に攻勢に転じ、殲滅に成功します。

 尚父という称号を受けたチャン-フン-ダオ将軍は皇帝の信任と共に臣民に広く慕われ、第四代皇帝陳英宗は晩年のチャン-フン-ダオ将軍を自ら訪れ、快方を願ったともいう。アンゴルモア-元寇合戦記コラボではありませんが、粋な艦名の艦艇日本親善訪問といえましょう。

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【G7X撮影速報】ベトナム海軍チャン-フン-ダオ堺親善訪問,日越国交45周年(2018-10-05)

2018-10-06 20:10:12 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■堺港あぶくま,ホストシップ
 ベトナム艦堺港入港、ベトナムというよりヴェトナムの方が使い慣れているか、撮影して参りました。

 日本ヴェトナム国交樹立45周年、今年は我が国とヴェトナム人民共和国が国交を結び45周年に当たります。これに合わせヴェと南海軍は最新鋭フリゲイトチャン-フン-ダオを日本へ派遣、最初の寄港地である横須賀基地に続き、大阪の堺港へ親善坊門にて入港しました。

 チャン-フン-ダオ入港は3日、大浜埠頭第五号岸壁に接岸し、入港記念行事では堺市竹山修身市長、日越堺友好協会の加藤均理事長が訪日団司令レ-ホン-チェン海軍上級大佐を出迎え、6日まで寄港していました。ただ、もう少し明るくてにぎやかな埠頭は無かったのかな、と。

 ゲパルト型フリゲイト11661型警備艦チャン-フン-ダオ,日本を初訪問、ヴェトナム海軍が誇るディン-ティエン-ホアン級の三番艦です。満載排水量2100tの水上戦闘艦で堺港親善訪問に際して海上自衛隊は呉基地の護衛艦あぶくま、をホストシップとして派遣しました。

 ディン-ティエン-ホアン級は中国の軍事圧力増大を受け海軍近代化の一環としてロシアより取得したもので、ロシア海軍のゲパルト型フリゲイト3.9型という位置づけで、2011年に最初の2隻が、本年2018年に更に2隻、加えて新たに2隻が建造中となっています。

 ヴェトナム海軍の主力フリゲイトとなり、一番艦ディン-ティエン-ホアン、二番艦リ-タイ-ト、三番艦チャン-フン-ダオ、四番艦グエン-フエ、五番艦ゴ-クエン、六番艦リ-トゥオーン-キエット、現在は四番艦までですが、2020年頃にはこの6隻が揃う事になるでしょう。

 あぶくま型護衛艦は海上自衛隊最小の護衛艦ですが満載排水量は2800t、ディン-ティエン-ホアン級の大きさが分かるでしょう。全長102mでDS-71ガスタービンエンジン2基と巡航用D-61ディーゼルエンジンを搭載し最高速力28ノット、乗員は98名の2交代制です。

 ロシア艦らしく重武装が特色で、AK-176/76mm単装砲,AK-630/30mmCIWS2基,9K33短SAM連装発射機1基,3M24/SSM-4連装発射筒2基,RBU-6000対潜迫撃砲1基,533mm連装魚雷発射管2基,機雷20個、ロシアでは長射程のカリブル巡航ミサイルも搭載可能です。

 ヴェトナム海軍配備艦はヘリコプター発着甲板を追加しており、また、復元性確保の観点から,9K33短SAM連装発射機や弾庫、艦尾搭載の可変深度ソナーを撤去したほか、個艦防空火器についてもAK-630/30mmCIWSに代えて独自にパルマCIWSを搭載したという。

 3M14TEカリブルNK巡航ミサイルはカスピ小艦隊所属艦が1500kmと遥かに離れたシリア国内の武装勢力拠点をイラン上空経由で攻撃した事で有名となりました。ゲパルト型フリゲイトは沿岸警備用の小型艦ながら、戦略攻撃能力も有する、ということになりますね。

 ヴェトナム海軍は中国による西沙諸島侵略により戦死者を出すと共に領土を護れませんでした。この為、ロシアからキロ級潜水艦6隻、タランタル級ミサイルコルベット12隻、韓国から中古のポハン級コルベットを導入するなど、その海軍力近代化を全力で進めている。

 シグマ級コルベットとしてオランダより最新鋭のステルスコルベットの導入計画も模索中で、フランスからドーファン対潜ヘリコプターを新たに導入し、ディン-ティエン-ホアン級での艦上運用を開始するなど、数はまだまだ不十分ですが、その能力整備を急いでいます。

 大浜埠頭第五号岸壁、非常に遠かった。大浜北公園近くというも、公園は高架下、結局多くの人は対岸MOVIX堺と堺浜楽天温泉の海岸当たりから撮影したとも。南海堺駅から本当に遠かったのですが、日越友好、もっと賑やかな埠頭に招待した方が、と思いました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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平成三〇年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.10.06-10.08)

2018-10-05 20:07:08 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 行事紹介の前に。台風25号が沖縄県を経て日本列島に接近しています。土曜日から日曜日にかけ、九州西日本へ接近するとみられ、御注意下さい、今週もだ。

 中部方面隊創隊58周年記念行事、伊丹駐屯地にて行われる、西日本四国東海北陸地方全域を防衛警備管区とする中部方面隊の創設記念行事です。今年度までに方面隊では新たに中部方面特科連隊が新編されると共に全国に先駆け、四国善通寺の第14旅団が即応機動旅団へ改編、16式機動戦闘車2個中隊を有する第15即応機動連隊が改編により誕生しました。

 伊丹駐屯地はJR伊丹駅と阪急伊丹駅からシャトルバスが運行されます、もう少し近い駅もあるのですがタクシー乗り場がありませんので注意が必要です。駐屯地式典会場は一般スタンド席と観閲台周辺の招待者用スタンド席があり、訓練展示などを俯瞰風景に収める事が出来ます。観閲行進を撮影する際には観閲行進を正面から撮影できる位置があります。

 第5旅団祭、第5旅団創設14周年帯広駐屯地祭、道東地域を防衛警備管区とする第5旅団の創設記念行事です。第5旅団は90式戦車装備の第5戦車大隊、99式自走榴弾砲装備の第5特科隊、全ての普通科連隊には96式装輪装甲車中隊を有する理想的な編成の旅団です。また、帯広駐屯地には北部方面航空隊隷下の第1対戦車ヘリコプター隊も駐屯している。

 帯広駐屯地第5旅団は自衛隊師団旅団の戦車保有数で第7師団、第2師団に続く我が国第三位の規模を有するに至りました。道東地区は北方領土に近く、特に沿岸部は北方領土から北海道やロシア軍野砲射程内に入り、冷戦時代から防衛警備が重視されている管区です。冷戦時代の第5師団は縮小改編にて今日第5旅団となり、14周年を迎える事となりました。

 福島駐屯地創設65周年記念行事、第6師団隷下の第44普通科連隊及び方面施設部隊第2施設団隷下部隊である第11施設群が駐屯する駐屯地です。第6師団は今年度末に即応機動師団への改編を控え、新たに16式機動戦闘車が即応機動連隊へ配備、第6戦車大隊と第6特科連隊は廃止改編が予定されています、行事で74式戦車が参加するのもあと僅かです。

 中央観閲式総合予行、一般非公開行事ですが朝霞駐屯地にて月曜日の祭日に挙行されます。一般非公開行事なのですが、式典会場周辺では祝賀飛行予行としてヘリコプター部隊の大編隊を見上げる事が出来、朝霞駐屯地陸上自衛隊広報センター見学と併せて大編隊を見上げてみるのは如何でしょうか、かなりの大編隊です。あとは、不気味な台風25号、その進路次第ですね。

 さて撮影の話題、コンパクトデジタルカメラとスマートフォン、サブカメラとして用いるにはどちらが優れているのか。Apple i-phone7,当方はEOS-7DとEOS-7DmarkⅡにEOS-KissX7を使い七繋がりでこの機種を愛用しているのですが、写真機能についてはデジタルカメラの方を愛用しています。しかし、コンパクト機種はスマートフォンとの性能競争に曝されている。

 CANON-PowershotG-12、2011年のデジタルカメラで当時店頭価格が三万円台でしたが、使い勝手と云いますと、光学ファインダーもあり、バリアングル液晶もあり、描写性能は今日的に充分、センサーが大型で電子ズーム機能の限界を除けば中々いい写真を仕上げてくれます。しかしこれもスマートフォンとの性能競争に数字だけで負けているようみえる。

 カメラ機能大艦巨砲主義、勝手に命名しているのですが、最近の世界の装輪装甲車じゃあるまいし無駄な高性能と高価格抱き合わせがひどい。兎に角カタログスペック優位主義に終始しまして、結局カメラは使い勝手と性能両方が良い写真を生み出すのに対し、前者だけが過度にクローズアップされ、後者が置き去りにされている印象が無いでもありません。そもそもスマートフォンはカメラと本来の性能競争相手なのか、とも思う次第です。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・10月7日:第5旅団創設14周年帯広駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/5d/
・10月7日:福島駐屯地創設65周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/6d/unit_hp/fukushima_hp/
・10月7日:中部方面隊創隊58周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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インドネシア津波スラウェシ島北西部地震,中部スラウェシ州パル市中心に犠牲者1400名以上

2018-10-04 20:15:46 | 防災・災害派遣
■スラウェシ島北西部地震
 インドネシアで先月末に発生した地震は、時間が経つにつれて被害の大きさが判明しています。

 スラウェシ島北西部地震、9月28日にインドネシアスラウェシ島において発生したマグニチュード7.5の地震は直後に発生した津波により中部スラウェシ州パル市などで大きな被害が発生しました。インドネシア政府は救助活動を急いでいますが、パル市への主要道路が全て通行不能となり、唯一の空港施設も被害を受けている事から被害全容も掴めません。

 我が国では安倍総理がインドネシアのジョコ大統領へ最大限の支援準備がある事を表明しており、インドネシア政府の要請を受け航空自衛隊小牧基地よりC-130H輸送機が緊急人道支援任務へ出発しました。海上自衛隊最大の護衛艦かが、が現在来月まで南シナ海からインド洋へ親善訪問と訓練航海を実施中で、場合によっては派遣もあり得るのでしょうか。

 被災地スラウェシ島とは何処か。旧称セレベス島、北部に旧軍が空挺強襲作戦を成功させたメナドがあり、西側にボルネオ島、南西にマカッサル海峡を経てジャワ島、スラバヤ沖海戦で有名なスラバヤ市が立地しています。インドネシアは2004年にはインド洋大津波の被害を受けたように、過去にも多くの地震津波災害と巨大火山災害に見舞われてきました。

 地震の規模と震源は何処か。マグニチュード7.5の地震は震源の深さが10kmと非常に浅く、アメリカ地質調査所による分析ではスンダプレートとモルッカ海プレートの境界で発生した南北走向左横ずれ断層型地震であるとのこと。マグニチュード7.5の本震から遡り三時間前にマグニチュード6.1の前駆地震が発生し、この地震でも若干の被害が発生しています。

 パル市津波被害は、スラウェシ島の地形がH字とK字を重ねたような複雑な地形、津波被害が歴史上多い三陸地方沿岸部と似た湾、これは同時に波浪を遮る良港の条件ともなるのですが、この深部にパル市が位置していた事で、非常に大きな被害が及ぶ事となりました。しかし、津波被害はパル市に集中し、インドネシア防災当局は死者数千人を示唆している。

 地滑り被害の発生も報じられています、パル市とドンガラ市にマムジュ市の山間部では地震に伴う土壌液状化が発生し、オーストラリアABC報道によればこの地滑りにより数百人が被害を受けている可能性があるとのこと。市内山間部で発生の地滑り被害はそのまま泥流被害として標高の低い地域へ大きな被害を及ぼしています。津波以外にも被害は大きい。

 被災地は地域孤立と物流途絶により住民は危険な状態にあります。報道では略奪が始っているとの事ですが、略奪とされる映像には商店入口に警察官が警戒し、秩序だった物資持ち出しが行われている映像もある為、非常事態宣言に基づく非常措置が採られている可能性もあります。一方AFP通信によれば治安出動の国軍に略奪への発砲命令が出ているとも。

 ムティアラ空港はパル市内にある唯一の空港で、標高は86mあったことから津波被害からは免れる事が出来ました。しかし、地震により空港管制塔が倒壊し管制官が殉職するとともに、2500m滑走路にも500m以上の亀裂が発生、翌日から滑走路一部を用いた暫定運行を再開、先月30日に滑走路が全面復旧しています。ターミナルビルは倒壊を免れたという。

 空港施設が復旧した為、被災地から脱出を試みる被災者で空港は大きな混乱に在る様子が報道されていますが、パル市は人口34万名で中部スラウェシ州人口280万の州都となっています。被災地救援へ、現在必要なのはヘリコプターです。インドネシア軍はAH-64E戦闘ヘリコプター8機を最近導入しましたが、多用途ヘリコプターの数は充分ではありません。

 インドネシア陸軍は30万名、と規模は大きいのですが空中機動力は限られており、その中で多用途ヘリコプターはロシア製Mi-17中型ヘリコプター10機程度とUH-1/ベル412多用途ヘリコプターが60機程度、この他空軍がフランス製中型ヘリコプターSA-330/EC-725等を29機、空軍はこの他C-130輸送機20機とスペイン製C-295輸送機を15機保有する。

 インドネシア政府は被災地支援へ各国支援受け入れを表明していますが、自衛隊がC-130を派遣したほか、シンガポール空軍はC-130輸送機2機に救援物資を搭載し派遣、イギリス海軍は極東地域へ派遣中のフリゲイトアーガイルを派遣すると共に本土からA-400M輸送機の派遣を決定、豪州、韓国、マレーシア、台湾が救助専門部隊派遣を決定しました。

 津波警報が地震発生直後に発令されたもののインドネシア当局は一時間後に解除したという報道があります。実際には津波は海底地滑りによるもので、地震発生数分後に発生し十数分でパル市内に到達したものと考えられており、しかも横ずれ断層型地震であると共に震源深さが10kmと浅かった為、海溝型地震に起因する津波発生の条件ではありません。

 海底地滑りを起因とする津波は海溝型津波が沿岸部に達すると速度を落とすのに対し、近距離であれば水深に関係なく速度を維持したまま沿岸部に達するようです。一方、被災地周辺には津波警戒装置も設置されていましたが、予算不足により機能不随のまま放置されたものが多く、正常機能していれば最大波到達数分前に警報を発令できたかもしれません。

 八重山地震、1771年の歴史地震ですが、今回のスラウェシ島北西部地震津波災害と重なるものがあります。1771年4月24日に発生した地震は石垣島東断層を最大推定マグニチュード8.7のエネルギーと共に揺れ動かし、琉球海溝に巨大な海底地すべりを誘発させたと考えられています。石垣島等周辺部の震度は現在換算で4程度と推測される程のものでした。

 明和大津波はこの海底地滑りにより発生し、八重山諸島において最大遡上高30m程度という破局的な巨大津波が発生し、死者行方不明者9000名以上、実に住民の三分の一が犠牲となりました。民間伝承では石垣島内陸部の津波縦断や津波岩の到達標高から遡上高85mというものもあり、近年の地質研究により否定されていますが、伝承に残る程の津波でした。

 石垣島東海岸津波石群という津波痕跡は現在、天然記念物指定を受けていますが、沖縄本島や九州では大きな被害がなく、千葉県にて潮位変化の記録が残るのみ。この為、明和大津波は海溝隆起沈降に起因する津波ではなく海底地滑りであると考えられています。津波被害は局地的、しかし、極めて遡上高の高い破局的な津波が発生する事を示しています。

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【映画講評】ゴジラvsビオランテ(1989)【4】検証:自衛隊伊勢湾水際防衛戦略の破綻

2018-10-03 20:15:36 | 映画
■小田原着上陸と太平洋転進
 ゴジラvsビオランテ、リバイバル上映はとっくの昔に終わっていますが、この映画は語り始めるとガメラ2並に長くなる傑作です。

 ゴジラvsビオランテ、浦賀水道海戦に続いてゴジラと陸上自衛隊の防衛戦を今回は検証してみましょう。ゴジラは小田原へ上陸、市内を国道1号線沿いに芦ノ湖へ向かっています。小田原上陸時に水際防御等は行われていません。実は、富士駐屯地の特科教導隊203mm自走榴弾砲と当時駒門駐屯地駐屯の第1特科連隊のFH-70榴弾砲は小田原沿岸部に届く。

 小田原は、富士駐屯地祭や駒門駐屯地祭に武山駐屯地祭においてFH-70榴弾砲が訓練展示空包射撃の際、本火砲は最大射程で射程した場合、この駐屯地から小田原まで届かせる事が可能です、と紹介されます。横須賀の武山からも御殿場近郊の富士に駒門からも狙われ、小田原も大変ですが、ゴジラvsビオランテでは着上陸阻止へ砲撃は行われていないもよう。

 防衛出動は、しかし発令されているようで、ゴジラが芦ノ湖に接近した際、芦ノ湖周辺に第31普通科連隊、第34普通科連隊が警戒出動しています。第31普通科連隊は芦ノ湖を含む神奈川県を警備隊区とする武山駐屯地の普通科連隊、第34普通科連隊は近傍の御殿場市板妻駐屯地にて静岡県全域を警備隊区としています。第1戦車大隊は確認できなかった。

 芦ノ湖周辺にゴジラが出現したものの、普通科連隊が派遣されたのみ、第1戦車大隊と恐らく第1師団長隷下に移管されるであろう富士教導団、戦車総数は実に100両近くなる規模だ。何故第1戦車大隊が芦ノ湖周辺へ進出しなかったのでしょうか、これは推測ですが、ゴジラが芦ノ湖から箱根登山鉄道線路と小田急線沿いに首都進攻を行った場合に備え第1戦車大隊は東名高速道路を首都圏人口密集地警戒へ優先配備されていたのではないか。

 第34普通科連隊は山岳戦闘にも長け、当時は107mm重迫撃砲と106mm無反動砲に87式対戦車誘導弾を装備しています。ただ、強力な79式対舟艇対戦車誘導弾は練馬の第1対戦車隊装備でした、これら装備では避難誘導が限界だったのでしょうか、積極的な攻撃は行っていません。勿論、可能性としては作品世界では1990年代に一部の普通科連隊へ行われた様な対戦車中隊増設が行われた可能性がありますが、勿論これも推測に過ぎません。

 普通科連隊の展開は警戒配備、特に芦ノ湖周辺の住民と観光客の誘導に充てていたのではないでしょうか。作品を見ますと普通科連隊の芦ノ湖周辺配置完了は夜間となっていますので、まず最初にゴジラが上陸した小田原市での避難誘導が行われた可能性があります。また、練馬の第1普通科連隊等は首都圏住民退避支援へ温存された可能性もあるでしょう。

 第1師団は、2011年東日本大震災に際しても大規模な部隊投入は行われませんでした。もちろん派遣要員を被災地へ展開させているのですが、福岡の第4師団や名古屋の第10師団より派遣された人員の方が多く、一説には福島第一原発事故の原子炉暴走が止められない最悪の場合に首都圏全域退避を念頭に温存された説があり、作品世界推測一助となります。

 芦ノ湖では作品世界の展開、自衛隊の攻撃を受けず既に出現していた植物型巨大生物ビオランテと、巨大生物同士の戦闘となりますが、最終的にゴジラが熱線でビオランテを焼き払い、そのまま駿河湾方面へ転進し太平洋に移動します。海上自衛隊は館山航空基地よりHSS-2対潜ヘリコプターを全機出動させ対潜戦闘を展開しますが、捕捉には至りませんでした。しかし、ここで当方として考え難い方法で自衛隊がゴジラ迎撃を構想します、ゴジラ上陸地点を伊勢湾と断定したのです。

 伊勢湾上陸の根拠は、若狭湾原子力発電所集積地域です。伊勢湾は、1985年ゴジラ上陸が核物質を狙い静岡県井浜原子力発電所を攻撃した事を受け再度原発が狙われると想定します。恐らく井浜原発襲撃後は、本州太平洋岸の原発は全て稼動していない、日本初の原発、茨城県東海第一原発、その近傍の東海第二原発も核燃料搬出完了したものと考えられる。

 伊勢湾着上陸が想定されたのは、小田原から太平洋に逃れたゴジラが核物質を奪取するべく、日本海側の若狭湾原発集中地域、美浜原発、高浜原発、敦賀原発、動燃ふげん、この稼動中の原子力発電所を狙うものと想定し、相模湾から若狭湾へ本州縦断を想定しての最短距離が伊勢湾から関ヶ原地峡と琵琶湖を経由し、侵攻するものと考えられたためですが、しかし最短距離を選ぶ、と想定した根拠が薄弱です、そして太平洋から若狭湾へ最短距離で移動するならば、豊橋や浜松など東海道沿岸に上陸する可能性もあった。

 自衛隊はしかし結局、伊勢湾を決戦場と想定しました。伊勢湾内に護衛艦隊を展開させ、上空に航空攻撃部隊と特殊無人攻撃機スーパーX2,志摩半島と知多半島及び渥美半島へ陸上自衛隊を展開させ水際防御体制を執ります。しかし、護衛艦は海上の打撃手段であると共にソナーとレーダーをシステム化し、ゴジラ索敵に絶対必要な戦力です。ゴジラ捜索よりも沿岸配備を優先した、これは非常にリスクが。

 若狭湾原発集積地域へ侵攻するのであれば、津軽海峡か対馬海峡を経由し日本海側から進出する危険性も留意するべきでしょう。要するに広い日本の沿岸部に戦闘部隊を展開させ正面緊迫を薄くするよりも、伊勢湾周辺に戦力を集中させる水際撃破を構想したものといえます。これは目標の正確な位置を把握できない状況での合理的な配置とはいえません。

 紀伊半島に88式地対艦ミサイル連隊と野砲部隊を展開させ、若狭湾、伊勢湾、大阪湾、何れの方面から着上陸された場合にも対処できるよう備える、当方ならば、こう迎え撃つ。もっともゴジラをレーダーで捕捉し長距離攻撃できるかが課題ですが。88式地対艦ミサイルは、元々北海道の大雪山等中央部に配備し、冷戦時代ソ連軍が道北や石狩湾と道東などいずれの地域へ着上陸した場合にも対応できるよう開発されたものです。

 83式600mm地対地ミサイルと92式ペトリオット特車という作品世界では88式地対艦ミサイルに代わる装備が登場しています。地対空ミサイルを地対地ミサイルに転用する事例は実は多く、航空自衛隊が採用したナイキ地対空ミサイルも例えば韓国でNHK-1地対地ミサイルに転用されている。ペトリオットの転用例は皆無ですが、なんとかしたのでしょう。

 戦車部隊は第1戦車大隊と第12戦車大隊を首都防衛として動かさない前提で、当方ならば、富士教導団戦車教導隊と第1機甲教育隊を富士戦車団へ改編し機動運用部隊とし、今津駐屯地第3戦車大隊、第10戦車大隊とともに航空自衛隊奈良基地周辺か饗庭野演習場へ進出させます。戦車には機動力があり、ここは若狭地区に近く京阪神中京人口密集地にも近い。

 ただ、若狭湾原子力発電所集積地域を襲撃するのかは推測でしかなく、1985年の井浜原発襲撃を念頭に想定したものでしかありません。また、1985年ゴジラ上陸ではソ連が戦域核平易に寄るゴジラ攻撃を強硬に主張する展開がありますが、これはウラジオストックの原潜を防護するとの目的もあったでしょう。ただし、作品世界では方向は違っても若狭湾を目指した為に防衛線構築は必ずしも間違ったものではありませんでしたが、ゴジラは伊勢湾ではなく紀伊水道に出現する。恐らく徳島県の小松島航空隊HSS-2が発見したのでしょう。

 結局、自衛隊伊勢湾水際防衛戦略は紀伊水道に出現した事で破綻しました。作品世界では愛知県三重県沿岸部を名神高速道路から大阪に転進させるか、名神高速道路を北陸自動車道に若狭地区へ進出させる激論の末、若狭地区で防衛線を立て直す事となります。大阪に上陸したゴジラへは、空中機動で展開した特別部隊により抗核エネルギーバクテリアANEBの注入に成功、丹波山中での防衛戦では勝機が見える事となります。

 軍事的には最短経路を選ぶという選択肢はあったのでしょう、例えば冷戦時代にソ連軍が北海道に侵攻すると考えられたのも近い為です。ソ連軍とゴジラの最大の違いは、絶対に二方向からは来ないという特性があります、また、ソ連軍と違いゴジラは自己完結で兵站線を必要としない為、何処にでも出現し得る。水際撃破よりも内陸誘致、作品世界では伊勢湾に防衛力を集中し失敗しましたが、二方向から侵攻しないゴジラに対しては、内線作戦という機動運用部隊と警戒部隊を分けての防衛作戦が確実です。ゴジラvsビオランテを見返しつつ、勝機はあるも若い指揮官では限界があるという事を、感じました。

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日英初合同演習,島嶼部防衛主眼に陸上自衛隊&イギリス陸軍が富士学校-北富士演習場で開始

2018-10-02 20:18:55 | 防衛・安全保障
■初の陸自&英陸軍国内演習始る
 日英防衛協力に新しい一歩です、日本国内でのイギリス陸軍と陸上自衛隊初の共同訓練という形で。

 日英共同訓練が富士学校と山梨県の北富士演習場にて開始されました。富士学校長高田祐一陸将は、「基本的価値を共有するイギリスとの防衛協力の強化は、日本の安全保障だけでなく、インド太平洋地域を含む国際社会の安定と繁栄にとって重要な意味をもつ」と意義を強調し、9月30日から13日間の予定で実施、富士学校での訓練が報道公開されました。

 富士学校での報道公開は、CH-47輸送ヘリコプターを用い、富士駐屯地祭で模擬店等が並ぶヘリポートで実施、離島防衛を想定した偵察部隊の展開と迫撃砲部隊への座標標定及び情報伝送が訓練されています。これは昨年の日英首脳会談における安全保障包括協力の一環として実施され、イギリス海軍揚陸艦の訪日等も日英防衛協力として進められています。

 陸上自衛隊がイギリス陸軍から学ぶ点は非常に多い、今回は日本本土での初演習という事で顔合わせという程度となりますが、陸上自衛隊が目指す統合機動防衛力や運用体制について、例えば戦車を大幅に縮小し偵察部隊と歩兵部隊を重視するイギリス軍の運用は装備と運用面から学ぶ点が多いですし、師団定員が5000名台となる現状からも学ぶ点は多い。

 イギリス陸軍は陸軍81000名と国防義勇軍27000名、実員は11万名規模であり実のところ陸上自衛隊よりも小規模です。その戦闘基幹部隊は5000名規模の歩兵旅団と機械化歩兵旅団及び空中機動旅団で、これらを第1歩兵師団と第3機甲師団、第16空中機動旅団、として運用しています。戦車はチャレンジャー2戦車245両、自衛隊より戦車が少ないのです。

 島嶼部防衛についてはイギリスが先駆者です。勿論旧陸軍は太平洋地域での島嶼部戦の戦訓を重ねましたが70年以上前のもの、離島防衛としては1982年のフォークランド紛争という戦後稀有な強襲揚陸作戦を実施したイギリス、2000年のパリサー作戦としてアフリカ沿岸部への緊急展開作戦を実施したイギリスには自衛隊には無い深い実戦経験があります。

 AJAX装甲偵察車の導入を開始したイギリス陸軍、これは従来の軽装甲車両と装甲偵察車主体の騎兵部隊から思い切って墺西共同開発のASCOD装甲戦闘車を重装甲化し38t、増加装甲装着時は42tの車両に40mmCTA機関砲を搭載した車両体系へ転換中です。AJAX装甲偵察車は要するに装甲車による偵察部隊なのですが2026年までに589も調達する計画だ。

 自衛隊は戦車を廃止し偵察戦闘大隊を新編しますが、編成は偵察中隊と機動戦闘車中隊という規模であり、情報優位が戦域優位に繋がると様々な機会に説明する陸上自衛隊ですが、この規模は小さすぎます。一方、AJAXは89式装甲戦闘車よりもかなり高価な車両です。イラク戦争始め偵察の重要性を編成に反映させたイギリス軍、学べる点はあるでしょう。

 歩兵重視のイギリス陸軍、戦車が陸上自衛隊よりも少ないイギリス陸軍は自衛隊が柔軟な運用が可能であるとして普通科部隊重視を掲げていますが、イギリス陸軍も同様です。ただ、自衛隊の高機動車主体に若干の軽装甲機動車を混成運用する軽歩兵編成であるのに対し、イギリス陸軍は30mm機関砲を搭載したウォーリア装甲戦闘車を789両も揃えている。

 ボクサー重装輪装甲車導入を本年イギリス国防省は発表しました。MIV構想として、予算難から1997年に提示されたピラニア装甲車導入計画遅延が再検討に再検討を重ね漸く実現したもので当面は400両から600両、最大1500両を取得する。我が国では普通科重視が予算節約の方便とされている印象ですが、主兵として歩兵の位置づけを考えさせられます。

 旧式装備の延命改修と近代化改修を行うとともにAJAXやボクサーという新装備、またAH-64D戦闘ヘリコプターを一挙にAH-64E戦闘ヘリコプターへ更新するなど、思い切った装備更新を行う点も自衛隊としては学ぶべき点でしょう。基本的に専守防衛で国土が戦場となるまで基本的に実戦を行わない我が国としては各国軍隊との交流が必要でしょう。

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