北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

令和二年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2020.09.12-09.13)

2020-09-10 20:17:15 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 台風一過で、被害が無くフェーン現象が起きなかった地域には漸く涼しさを感じるころとなりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今週末も自衛隊関連行事は執り行われません。新型コロナウィルスCOVID-19感染症の感染拡大に伴う行事自粛の為です。自衛隊関連行事といいますと航空祭や観艦式が有名ですが師団祭や旅団祭、方面隊行事に駐屯地創設記念行事がありますし、地方隊展示訓練もあればマリンフェスタにグリーンフェスタとサマーフェスタ、艦艇広報も重要な行事です。

 あの人は今。なにかテレビ番組のタイトルの様ではありますが自衛隊関連行事のみでお会いする方、というのは多いのですよね。戦闘機部隊の基地外縁の公園や史跡などを探訪しますと、滑走路エンド付近と呼ばれる滑走路延長線上の戦闘機等が発着する様子を遠望する事は出来まして、だいたい曜日によってお会いできる方々、というのが決まっています。

 自衛隊行事といいますと、撮影位置が重要だ、とはこれまでに幾度も紹介しましたが、駐屯地記念行事等では撮影位置は観閲行進を重視して撮影するのか、訓練展示を撮影する重点かで撮影位置は変ってくるものですが、だいたい、此処で撮影していればあの人と会える、というようなかたちであいさつするだけの顔見知り、という方は多くいるのですね。

 艦艇入港撮影でも、この港のこの場所ならば、なんとなくあの人とこの人が来ているだろうなあ、という、まあ大体の想定で行ってみますと、現地にて、オハヨウゴザイマス、コンニチワ、といった挨拶から、撮影位置の情報交換や各国新装備に自衛隊改編現況の話題で盛り上がりまして、成程教えて頂く事は山ほどある。自衛隊OBの方というのもおおい。

 第一空挺団降下訓練始め、練習艦隊近海練習航海部隊外洋練習航海部隊江田島出航。正直なところ今年の自衛隊行事はここだけとなりそうです、あとは北大路機関としては細々と艦艇基地や航空基地を外縁から探訪していますが、自衛隊関連行事のみでお会いする方々、お元気なのでしょうか、ね。知識としては知っていてもここまでの非常事態が起こるとは。

 COVID-19,実際のところ収束について自然終息というものを期待するのは難しい様で、予防薬ワクチンが望みの綱です。スウェーデン政府などは公衆免疫という自然感染を敢えて放置する事で免疫の獲得を目指したのですが、大量の死者をだし失敗に終わりました、学校閉鎖に一瞬遅れたイギリスが世界最大規模感染死者を出してしまった事も記憶に新しい。

 イギリス製薬大手アストラゼネカのワクチン開発治験中止。今週報道。原因はワクチンに問題が在ったとしか説明できない疾患が発生した為という。やはりか、開発には副作用による失敗が数多あるという知識がありましたが、オックスフォード大学と共に進める開発、なんとかなれば、との期待もあっただけに世界で最も進んだワクチン開発の停滞は厳しい。

 アデノウィルス系列ワクチン、ロシアと中国が実用化に成功したワクチンはCOVID-19ウィルスを用いない新しいワクチンです、コロナウィルス全般に対し予防効果があるワクチンである為にCOVID-19にも効果があるだろう、という。しかしアデノウィルスは既に多くの人が抗体を持っている為、意味があるのか、感染予防への効果が疑わしいとされます。

 都市封鎖にも限度があり、ウィズコロナ、社会的距離、三密を避ける、こうしたものを維持しつつ、恐る恐る、こう表現する他ないようなものですが、安全で且つ効力のあるワクチンが開発されるか、未知数ですが特効薬のようなものが開発されるを気長に待つほかないのでしょうか。気長に待つのは苦しいもの、と思いつつ受け入れるのが新しい日常です。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都幕間旅情】祇園祭山鉾巡行回想録(4)ベルギー経てオランダから江戸へそして京都へ

2020-09-09 20:12:20 | 写真
■幕府の威光と豪商の美徳
 山鉾のタペストリーを歴史で辿りますと行き着きましたのは徳川家康という驚きの歴史がありましたのは前回の話題です。

 徳川家康の秘仏を護るように掲げられたタペストリー、ただ惜しまれるのは明治44年に火災で失われたという。残る四枚も幕府が持っていたのではないかと考えられているのですが、石川県、そしてあとはこの探し始めた鯉山と祇園祭祇園會が、保存しているという。

 オランダから日本に送られたものではないかという。実際、この鎖国の時代、唯一オランダが日本と交易を結んでいました。タペストリーはベルギーのものであり、オランダの隣国でして、そのハーグ国立公文書館に200年以上の交易の記録が残されているのですが。

 ハーグ国立公文書館、当時の帳簿をみますと徳川幕府への献上品のリストが記されており、将軍や幕府に献上されたものにタペストリーが含まれていたという。世界中の銀の三分の一を産出していた江戸時代の日本、ここと交易関係を維持するには献上品が必要だった。

 徳川幕府への献上品、しかしタペストリーと有るだけで当時の記録には作者などの正確な情報も残っていません、いや、目録が在っただけでも驚きなのですが、他にも説が。仙台藩主支倉常永による欧州使節団からのものではないか、という推測も成り立つようです。

 オランダからの献上品という説のほかに、いろいろ考えてみますと、禁教令前のイエズス会による献上品、という可能性もあるようですが、まだまだ知られていないことは多いのですね。もっとも、増上寺の一件からオランダの献上説がもっとも説得力がありますがね。

 将軍への献上品、もうひとつ鯉山のタペストリーは鶏鉾にも連作の一つが用いられていまして、ここには不自然な部分があるという、それは補修のあとが数多あり、実際色彩も異なるという、ならば一枚のものを補修したのではないか、と。すると探せばみつかるもの。

 一枚もののタペストリーを山鉾に掲げる為に切り上げたのは、まあ、今の視点からはかなり勇気のいる事なのですが、失われた部分について、記録が残らないために不明ですが、切断された部分は調査により滋賀県長浜にあった、という。新快速が結ぶ長浜城のところ。

 長浜も古い町並みで400年前から山車を引く長浜曳山祭がおこなわれています、その山車に用いられているのですね。長浜のタペストリーを電子的に組み合わせますと図柄はうまく重なるという。長浜には四条通り新町の呉服商藤倉屋から250両で売ったという記録が。

 松坂屋。呉服商藤倉屋というのは、いまの松坂屋にあたる豪商でして、要するに松坂屋で買って山車に掲げた、松坂屋から買った、という何か所帯じみたというか、親近感がわくところではあります、しかし、新しい謎が、松坂屋はどこから仕入れたのでしょうか。

 幕府の宝がなぜ松坂屋に、これも不思議ですが江戸時代、名古屋城で宴があり、ここに幕府へ献金をおおくしていました豪商が呼ばれ、尾張藩から伊藤次郎左衛門の藤倉屋にわたされたという。すると、豪商と祇園祭という、江戸時代の庶民文化故の歴史があります。

 三井本店。滋賀県大津にもうひとつある完全な連作のタペストリーも豪商からといい、三井本店から銀八貫で買ったという、四条烏丸に在る三井のおおもとですね、そしてのちに三井財閥となってゆくのですが、呉服と両替で京都の本店は大きく育ち、存在感を強めましたもの。

 三井本店も、大名や幕府へ貸し付けも多かったという。なかでも紀州徳川家へは34万両、今で言う200億円を貸し付けていたと言いまして、この縁があったといえる。祇園祭では新町通りに三井本店と松坂屋が向かい合っていたというのですが見栄もあったでしょうか。

 松坂屋や三井本店、そこからタペストリーが町にわたったのだろう、と。しかし、当時かなり貴重ではあるものの記録が少ないのがおもしろい部分でして、この記録が残っていないものには、祇園理事会の研究として、松坂屋や三井本店は日本の美学と言うのがあった。

 豪商の美徳と云いますか美徳と云いますか、武家に大量のお金を貸し付けたことを知られては迷惑をかけるという認識があり、迷惑をかねないように記録をあえて残さず、そして三井本店も松坂屋も権勢を誇ることなく、まあ、敵を造らない様に静かにというものです。

 貴重なタペストリーですが、これを秘蔵することもなく、広く一般に供したのはまた行きと云いますか風流と云いますか、それもいちばんの晴れの舞台といえる祇園祭にその美術品を託したのではないか、そここそ豪商の美学であった、と研究する方もいますほどで。

 年に一度、祇園祭で多くの人々に示すために。もちろん、伊達や酔狂で高いタペストリーを並べたのではなく、三井本店も松坂屋も共通するのは呉服商であったという事です、当時は有名ブランドなどありませんので、呉服商自身がブランド力を高めねばなりません。このためのおひろめでした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】ロシア兵器展モスクワ陸軍2020フォーラム最新情報とロシア海軍原潜最新情勢

2020-09-08 20:20:24 | インポート
■週報:世界の防衛,最新10論点
 今回はロシア国内で一斉に行われた兵器見本市、特にモスクワ陸軍2020に重点を置いて最新のロシア情報を紹介しましょう。

 モスクワ陸軍2020フォーラムにてロシア国防企業バルトBMK社は新型のドロズド水陸両用装輪車両を発表した。ドロズドは四輪駆動のソフトスキン車で車体重量は2t、260hpのエンジンを搭載している、特筆すべきは通常の水陸両用車輛が車体底部を船型形状とした上でスクリューを設置するのに対してドロズドは車輪を車内に内蔵し水の抵抗を減らす。

 ドロズド水陸両用装輪車両は四輪駆動車として陸上を100km/hで疾走するとともに車輪を格納しウォータージェット推進とする事で水上を70km/hときわめて速い速度で航行する。なお、ドロズド水陸両用装輪車両は最大1.5tまでの人員や機銃などの武装、貨物及び増加装甲を装着可能だ。なお、開発中で、満載状態での速度などについては公表されていない。
■T-14戦車無人操縦改修
 自衛隊は90式戦車と10式戦車という正統進化を続けていますがロシアは戦車の無人化という新しい試みを拓こうとしています。

 モスクワ陸軍2020フォーラムにおいてウラルヴァゴンザヴォート産業社は新型戦車T-14アルマータの無人型についての開発進捗状況を発表しました。T-14は2015年に発表された新戦車で重量55tとソ連ロシア戦車としては非常に重量級で全長10.8m、全幅3.5m、全高3.3m、全幅こそT-90より抑えられているが重量は9t、全長と車高は1m以上大きい。

 T-14アルマータの無人型は、同戦車が完全無人砲塔を採用し車体部分に戦車長、砲手、操縦手全員が乗車しており、これは砲塔を遠隔操作できる可能性を示しています。乗員は車体の硬質装甲カプセルに守られていますが、ロシア軍はチェチェン紛争やシリア内戦介入から乗員防護に積極的、センサーに依存し損耗に際し乗員を失わない戦車を模索中です。
■新型自動僚機グロム
 高価な第五世代戦闘機を編隊で飛行させず一機の第五世代機をもう一機が自動僚機で対応する試みがアメリカや豪州で進みますがロシアも加わろうとしています。

 ロシアモスクワ陸軍2020フォーラムにおいて新型自動僚機グロムが発表されました、クロンシュタットグループにより開発され第五世代戦闘機Su-57や主力戦闘機Su-27戦闘機に随伴し戦闘を支援します。フライングウイングマン、忠実な僚機と訳される無人機は有人戦闘機に随伴する新区分で定訳が存在しない事から“自動僚機”と訳する事としました。

 グロムは有人戦闘機を掩護する機体であり自重7t、ハードポイント4箇所にKAB-500TV誘導爆弾や重量22kgのMAM無人機用レーザー誘導爆弾、KAB-250S-E衛星誘導爆弾にIzdelie85対戦車ミサイルなど2000kgまでの各種兵装を搭載、空対空ミサイル等は搭載せずステルス機の生存性を脅かす敵防空網制圧や敵レーダー施設破壊を任務としています。

 Su-57戦闘機は第五世代戦闘機としては安価ですがロシア国防費からは高価でグロムはその補完が期待される。戦闘行動半径は700km、最高速度は1000km/hと亜音速発揮可能で飛行高度は12000mを想定しておりエンジン部分や機体主要部は可能な限りYak-130高等練習機と共通化されていることから練習機整備能力を有する基地からの運用が可能という。
■滞空型無人機シリウス
 自衛隊はグローバルホーク導入を再評価していると伝わるところですがこの種の無人機は必要である事に代わらず、ロシアも同様の様です。

 モスクワ陸軍2020フォーラムにおいてロシアは最大の無人機シリウスの開発進捗発表しました、これはモスクワ航空ショーMASK2019において展示されたものと同型、シリウスは対空型無人機であり全幅30mにも達し、前著13m、最大離陸重量は5t、ターボプロップエンジン双発です。アメリカのグローバルホークが全幅39mであることからこれに準じる。

 シリウス無人偵察機、高度12000mにて40時間滞空が可能という。展示されたものはモックアップであり試作機は2021年に完成するとのこと。開発はクロンシュタットグループが担当、ロシアはソ連時代から超音速無人偵察機など多種多様な無人機を開発しており、ソ連崩壊後の経済破綻などはありましたが、ソ連遺産というべき技術的蓄積は非常に大きい。
■ホーカムにAESAレーダー
 AH-64D戦闘ヘリコプターはミリ波レーダーによるデジタル戦場対応がその要諦でしたが、ロシアもこのほど追随しようとしています。

 エアウルフを思い出す並列複座攻撃ヘリ、ロシア軍のKa-52Mホーカム戦闘ヘリコプターへAESAレーダー搭載改修が開始された、ホーカムを製造するAAKプログレス社、旧カモフ社により発表されました。AESAレーダー搭載型はホーカムと区別しアリゲーターと称されており、ホーカムは単座型でしたがアリゲーターは並列複座型を採用しています。

 ヘリコプター搭載火力の長射程化は着実に進んでいます、攻撃ヘリコプターの搭載ミサイルと云えば一頃まではTOWが3750m、ヘルファイアミサイルの射程が8kmに延伸した際には長射程と注目されましたが、厳密にはシーホークに搭載するペンギンミサイルは25km、フランスのAS-332哨戒ヘリコプターには射程40kmのエクゾセミサイルが搭載できました。

 ロシア軍は将来的に100km程度までヘリコプター搭載ミサイルの射程を延伸させる構想があり、今回のAESAレーダーの搭載はこうした長距離運用を視野に索敵能力を付与したのか、超長距離索敵は無人機等に任せ、AESAレーダーそのものは20km圏内程度を索敵する構想なのか、肝心のAESAレーダーの性能そのものについては、触れられていません。
■防弾チョッキ貫徹の新拳銃弾
 自由主義圏では拳銃に対する歩兵の防弾装備普及へ4.7m弾や5.7mm弾と小型弾薬を開発し対応していますがロシアは強力な新型拳銃弾で臨むもよう。

 ロシア軍はボディーアーマーを貫徹する新型9mm拳銃弾を開発したとのこと。9mm拳銃弾を用いる短機関銃、所謂サブマシンガンは1930年代から1960年代にかけ歩兵火器の主力装備を担ったものの、アサルトライフル、小銃の性能向上とともに低い貫徹力と短い交戦距離が問題点とされ、軍事機構では指揮官や憲兵隊や対テロ部隊以外置換えられた。

 新型9mm拳銃弾これはカラシニコフを製造するロステック社系列のツニートチマッシ社が2014年から製造するウダヴ拳銃や7月に発表されたばかりのカラシニコフPPK-20短機関銃等から射撃が可能とされる。拳銃の短銃身からクラス2のボディーアーマーを75mの距離で貫徹するとのこと。ウダヴ拳銃に用いられるという事は既存弾薬へ適合を意味する。
■ロシア版ペトリオット新型
 ロシアの地対空ミサイルは長射程化が続いていますが、このほどそのデジタル型が開発されたようです。逆にペトリオットミサイルの陳腐化が進んでいる。

 ロシアのアルマース社は八月末に実施されたモスクワ陸軍2020フォーラムにおいて新型地対空ミサイルS-300-V4の構成車輛を発表した。これはロシア版ペトリオットと称されるS-300グランビルのデジタル型であり、9A83M-2E発射装置と9A84M-1E弾薬車両を展示した、ミサイルは9M83MEおよび9M82MEで対航空機用と弾道ミサイル迎撃用である。

 S-300-V4は主として輸出用という位置づけで、最大射程400kmとロシア製地対空ミサイルの近年著しい射程延伸を象徴する装備であり、デジタル化により24目標への同時交戦能力を有する。9A83M-2E発射装置は巨大な装軌式で背負い式に発射装置4基を有すると共に射撃管制レーダーを車体前部に配置、射撃統制装置からの独立運用も可能となっている。
■射程100kmのエルメスATM
 ATM対戦車ミサイルといえば96式MPMSのような10kmも射程が在れば長射程、そんな時代はいよいよ過去のものとなるのでしょうか、それとも使い難く普及しないのか。

 モスクワ陸軍2020フォーラムにおいてロシア軍の新型エルメス対戦車ミサイルが発表されました、開発したシプノフによれば西側の全ての戦車を撃破し得るとのこと。如何なる対戦車ミサイルでも同じ販売表現が為されるが、エルメスは射程100kmと対戦車ミサイルとしては破格の長射程を誇りマッハ4により目標に肉薄する、命中まで一分半程度である。

 エルメス対戦車ミサイルは無人偵察機、6連装発射装置六両と弾薬車及び指揮通信車より構成され、無人機の情報に基づきミサイルを発射する、ミサイルには20kgのTNT弾頭が搭載されており、対戦車ミサイルというよりは小型の地対艦ミサイルを精密誘導にて戦車へも命中させる精度を付与したもの。発射装置は大型トラックを改修しており整備性は高い。
■ヤーセン級攻撃型原潜8番艦
 ソ連時代のヴィクター級攻撃型原潜は過去のものとなり世代交代が急速に進んでいます。

 ロシア海軍のヤーセン級攻撃型原潜七番艦と八番艦が7月20日に起工したとのこと。艦名は七番艦がヴォロネジ、八番艦がウラジオストク、艦の命名式にはプーチン大統領が自ら出席し発表している。この二隻は885M型潜水艦として建造されるが、建造を担うセヴマシュのミハイルブドニチェンコ総取締役によれば、幾つかの仕様変更が行われるという。

 885M型潜水艦との最大の相違は、ヴォロネジとウラジオストクには新開発の極超音速兵器が搭載される事であり、これにより攻撃型原潜であるヤーセン級にも戦略ミサイル原潜を補完する長距離打撃力が付与されることとなる。ヤーセン級は一番艦セヴェロドヴィンスクが1993年に起工したがソ連崩壊の経済破綻で建造が遅れ、就役は2014年となっている。

 ヤーセン級は初期型の885型と改良型の885M型が存在し、水中排水量13800t、OK-885加圧水型原子炉を採用し水中速力は31ノットを発揮、553mm魚雷発射管10門と魚雷及びミサイルを30基搭載するとともに船体にVLS8セルを有し、従来の巡航ミサイル原潜任務も担う。ロシア海軍はヤーセン級に続く新型攻撃型原潜としてハスキー級も計画している。
■ボレイ級戦略ミサイル原潜四番艦
 ロシアは冷戦時代のタイフーン級戦略ミサイル原潜の後継艦を急速に建造中です。これらは日本の潜水艦とは根本から大きさも任務も異なる。

 ロシア海軍最新戦略原潜クニャージウラジミールの竣工後完熟訓練は順調に進む。クニャージウラジミールはボレイ級戦略ミサイル原潜の四番艦、五月末に公試を完了し六月中旬にセブマッシュ造船所にて竣工した最新鋭潜水艦で、三番艦ウラジーミルモノマーフまで旧ソ連圏より部品を調達したが本艦は初めてロシア国内部品だけで建造された。

 ボレイ級戦略ミサイル原潜は水中排水量24000tとアメリカのオハイオ級戦略ミサイル原潜の18500tよりも大きく中国海軍最新の晋級戦略ミサイル原潜の12000tと比較し二倍の規模を誇る、搭載するSS-N-30 ことR-30/3M14ブラヴァ潜水艦発射弾道弾は通常6発で最大10発の多核弾頭を有し射程10000kmで、タイフーン級戦略原潜にも搭載されている。

 クニャージウラジミールとともにロシア海軍は現在4隻のボレイ級戦略ミサイル原潜を建造中で、ロシア国防省は更に2隻の建造計画があり、10隻のボレイ級により旧式化したタイフーン級戦略ミサイル原潜を御子買えるという。R-30/3M14ブラヴァ潜水艦発射弾道弾は各16発を搭載するため、一隻当たり通常96発、最大160発の核弾頭を投射可能だ。

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日本版ハリケーンハンターが必要だ(1)正しく恐れる必要,台風10号は猛烈な勢力には至らず

2020-09-07 20:02:14 | 防災・災害派遣
■過去にない巨大台風の実際は
 台風10号は九州西方沖を蹂躙し死者1名と行方不明者4名及び負傷者84名という被害を及ぼし現在は北朝鮮東方の日本海を中心気圧970hPsの勢力で北上中です。

 台風10号、過去にない勢力での上陸ということで気象庁がいれいの会見を重ねていましたが当初は915hPsでの九州最接近という戦慄すべき勢力が予報されていたのにたいし、南大東島接近時の920hPsという勢力を最盛期として奄美大島に接近する頃には徐々に勢力を鈍化させ925hPs、九州南方に接近する頃には935hPsと年に数回ある台風となりました。

 正しく恐れる必要がある。この言葉は今年春に新型コロナウィルスCOVID-19が日本国内へ浸透を始めた頃、厚生労働省が啓発した言葉です。さて、台風についても同様のことが当てはまるように思えまして、台風が勢力を増すのか減じるのか、これは多少予算を投じてでも確実にその脅威度合いを計る必要があるよう考えるのです。簡単ではありませんが。

 警戒しすぎても損はない、これは至極当たり前に思える言葉ですが実際はどうでしょうか、たとえば津波災害を連想してください、大津波警報で私たちが沿岸部において確実に避難行動を執るのは大津波警報は津波がくることを確実に証明しているためです、ではもし、震度も規模も大きくない地震で大津波警報が頻発し多くが外れたらばどうでしょう。

 台風を正しく恐れるためには、過去にない勢力の台風、というのであれば概算値だけではなく実際にその数値となり、毎回、過去最大というが高潮は伊勢湾台風より凄かった、過去例がないというが実際市街地で風速80m/sを観測した、というような結果でなければ、過去最大と云うが前回も大げさであったので今回もそうなのだろう、と油断を生みます。

 気象予報にはもう少し予算を割くべきではないか、気象庁は予算不足から中央官庁としては異例の公式Webサイトへの民間広告掲載検討が報じられたのは今年の話です。その上で、特に国内情勢に大きな影響を及ぼす台風については、台風に直接触れてその進路や勢力の見通しなどを予報する必要はないでしょうか、具体的には台風を航空機で観測するという。

 ハリケーンハンターが必要ではないか。台風の目の中に直接展開し台風内部の風速や気温、湿度や大気中イオン濃度などを直接観測する任務です。ドップラーレーダーにレーザーセンサー、気象観測衛星に海洋観測衛星、台風を観測する技術は確かに発達しているのですが、いまなお"直接観測"、これ以上の精度が高い観測手段はいまのところ存在しません。

 アメリカ空軍では伝統的にこのハリケーン監視任務を継続中で、1990年代より前はグアムのアンダーセン基地に専用の飛行隊が配属されていました、空軍がハリケーン監視、太平洋では台風監視ですが、こうした任務を行う背景には、フィリピンのクラーク空軍基地、沖縄の嘉手納基地、東京の横田基地、アンダーセン基地、ここには基地が多かった為です。

 アメリカ軍が台風を監視するのは軍事上必要であったためです、ただ気象衛星などの観測手段が整備されたことから太平洋での観測任務は終了しました、併せてフィリピン国内米軍基地廃止など、その必要性が低下した、という背景もあるのですが。しかしハリケーンハンターという広い視野に立てば、メキシコ湾沿岸のハリケーン観測任務は続いています。

 巨大台風が接近する場合には大型機を別の基地へ待避させなければなりません、過去、ヴェトナム戦争のラインバッカー作戦など北爆が行われていた時代には台風を避けるためにアンダーセン基地のB-52爆撃機が大挙嘉手納基地へ避難した事があり誘導路までB-52があふれた、という事例が過去にありました、防衛上、台風進路は重大な問題なのですね。

 ハリケーンハンターとしてアメリカ空軍は現在もフロリダ州からアメリカ本土へ接近する巨大ハリケーンへの監視飛行を実施しています、こちらは軍事目的と云うよりはハリケーンの正確な位置を把握し正確な予報に役立てる、という目的により実施されWC-130気象観測機、C-130の派生型機が対応しています、太平洋での任務は終了していますが。

 空軍が現在もハリケーンハンターを実施するのは、2005年ハリケーンカトリーナを筆頭に、アメリカ本土へ及ぶ被害としては軍事的脅威よりもハリケーン脅威のほうが遙かに大きいためで、事実2005年ハリケーンカトリーナでの死者は2001年同時多発テロよりも大きくなっています。実際、この任務飛行は過去に事故もあり、安全とは言い切れません。

 日本においても正確な予報を行うためにはハリケーンハンター、いやタイフーンハンターというべき任務が必要である、こう考えます。正確な予報、これがなければ安易に自治体が市内全域避難指示を乱発しては所謂"狼少年現象"を引き起こしまして、住民が自治体の避難指示を真に受けなくなる可能性が生じるためです。実際、今回は大袈裟すぎたよう思う。次も避難を継続できるか、正しい防災には正しい予報が必要です。

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【日曜特集】観艦式2009-守る!この海と未来-【18】横浜ベイブリッジ遠望(2009.10.23)

2020-09-06 20:01:35 | 海上自衛隊 催事
■横須賀基地へ横浜港へ
 観艦式も早朝の出航からいよいよ帰港の頃合いとなり海色も夕暮れを思わせる色彩を漂わせてきました。

 こんごう、いよいよ横浜ベイブリッジの姿も見えてきた。横須賀から横浜、京浜急行で移動しましても多少、JR横須賀線から東海道本線で行きますとかなり遠い印象ですが、海の上からみますとベイブリッジも指呼の距離のように覚える、海の広さ故、というところね。

 艦内の一段上からDSRVを眺める。実はDSRVは小型ですし魚雷を撃てるわけでもありませんが、建造費で潜水艦一隻に相当する。そして潜航可能深度は秘密ですが、一般的に潜水艦の安全深度が700m前後という中でDSRVについて更に深く1000m以上潜れる、とも。

 ROV深海調査船。1500mまでは潜る。DSRV説明の乗員さん曰く、DSRVが何処まで潜れるかは秘密ですが普通に考えてDSRVが潜れないところまでROVが潜って遭難潜水艦を探すと思いますか、悪戯っぽく解説いただいた。DSRV,もしかして1500mまで行けるのか。

 あぶくま艦上を行くカモメ。DSRVが実のところどこまで潜れるか、そして第12旅団の識別帽は先行するイージス艦こんごう辺りから飛来したのか、金剛榛名といえばなにか旧海軍戦艦を思い出す繋がりですが、謎が解けないので大自然の雄大な景色と護衛艦を眺める。

 くらま以下5隻の単縦陣、くらま、艦首をこちら側へ向けている。艦隊運動のような情景ではありますが、いよいよ浦賀水道が横須賀へのアルファポイントという地点を越える時機となってきました。出航時刻で通過しているライン、入港時刻で通過するラインです。

 くらま、背景に房総半島の山間部が。千葉県には有名な鋸山が330mの標高をたたえていますが、もうひとつ愛宕山という408mの山があります。もっともイージス艦あたご、艦名由来は京都の愛宕山、愛宕神社の霊峰が由来となっています、神護寺の高雄山が続く。

 ちはや自衛艦旗。自衛艦旗を照らす陽光もそろそろ夕日の色彩を帯びてきまして不思議と色調は朝日とおなじくの度合いではあるのですが出航の色彩と入港にみる色彩とは同じものでも心なしか風情が変わって見える、というところでしょう。まもなく観艦式も終わり。

 USH-60K試験機が上空を飛行する。館山航空基地や厚木航空基地から上空を飛行し続ける航空機は、大量の各種艦艇航行とともに安全確保、全貌の漁船などの凝集への警戒も兼ねているのでしょうか、実際航路上で漁労は多い、車道真ん中で昆虫採集するような危険だ。

 まつゆき出航の様子、はつゆき型護衛艦が一隻出航してきました、観艦式には参加していない艦番号130、130は護衛艦まつゆき、日常の警戒監視任務か観艦式予備艦の点検、というところでしょうか。期せずして母港舞鶴まつゆき出航を横須賀でみることになるとは。

 まつゆき、そして住友よこすかクレーン。横須賀らしい風景ではあるのですが、入港撮影の際にはヴェルニー公園から眺める際の背景に見えるクレーンを海からみています。よこすか、大書してありますクレーンがありますと横須賀で撮影した写真のクレジット代わり。

 まつゆき、斜め後ろから多様な装備を持つ護衛艦を眺める。私が小学生の頃にこの護衛艦を知った際、対潜対空対水上の各種ミサイルを備えヘリコプターまで搭載する護衛艦がものすごく力強く感じたものだ。満載排水量4000t、実際強力な護衛艦として君臨しました。

 さわゆき、にちなん、横須賀基地停泊中です。こちらは第11護衛隊、長らくよこすか地方隊第21護衛隊として知られたこの海域の守り手です。地方隊にかつて護衛艦が配備、というと最近の方には伝わらないのでしょうか、この数年前に護衛艦隊に移管されたのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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台風10号九州沖縄接近,中心気圧920hPs-重大災害確度高く記録的豪雨と暴風と高潮厳重警戒

2020-09-05 20:15:37 | 防災・災害派遣
■九州離島避難にCH-47出動
 台風10号、6日午前にも鹿児島県に台風の特別警報の可能性を気象庁が発表し中心気圧が920hPsとなっていますが明日にも915hPsまで成長するとの予報があり、巨大だ。

 気象庁主任予報官が“最新の台風の進路予想では、九州から離れて進む可能性が低くなってきた。逆に言えば、重大な災害が起きる確度が高くなってきている”“高潮が発生する前には暴風となることが予想されている。暴風の中では逃げること自体が危険となる。暴風警報が出たら、逃げられる最後のチャンスだ”という異例の表現で警戒を促している。

 陸上自衛隊西部方面隊は鹿児島県知事からの要請を受け台風10号が接近する一部島嶼部からの住民避難輸送を実施中です。これには西部方面航空隊の保有するCH-47J/JA輸送ヘリコプターが動員され、また鹿屋航空基地より海上自衛隊第22航空隊鹿屋分遣隊のUH-60J救難ヘリコプターが参加、航空自衛隊も避難輸送を支援しているとのことです。

 伊豆大島三原山火山災害や三宅島火山災害の全島避難、輸送艦まで動員し全住民を避難させたような、過去に自衛隊が災害派遣において住民避難を支援した事は多々ありますが、台風災害、それも上陸前、災害発生前に予防的な離島住民避難を行う、これは極めて異例であり、それだけ、現在九州に接近する台風10号が規格外である証左ともいえましょう。

 台風10号は本日1700時の推定値で中心気圧は920hPa、風速は50m/s、瞬間最大風速は70m/sという規模に成長しており1700時時点の位置は南大東島の南方約100kmを15km/hの速度で北西方向に進んでいます。現在の予報ではこのまま沖縄本島東方海上を北上し明日0900時頃には奄美大島南方へ、1500時には九州南方に迫り九州西方沖を進むという。

 今まで経験ない暴風と大雨のおそれ、気象庁はこのような踏み込んだ表現で今回の台風に警戒を呼び掛けています。記録的な暴風への警戒、記録的な大雨への警戒、記録的な高潮への警戒、気象庁が呼び掛けています。ただ気象庁は台風が本日中にも猛烈な勢力となる予報を出していましたが、非常に強い勢力、という状況を維持し北上をつづけています。

 気象庁は台風階級区分を“強い勢力”では33m/sから44m/s未満、“非常に強い勢力”では44m/s以上で54m/s未満、“猛烈な勢力”を風速54m/s以上、としていまして、大型の台風を強風域が500kmから800kmの半径、超大型の台風は800km以上、としています。現段階では台風10号は大型で非常に強い勢力を維持していますが、猛烈な勢力ではありません。

 河野防衛大臣は本日の記者会見において台風10号災害対策について、何か起きたときに対応できるよう自衛隊およそ2万2000人で初動態勢を組んでいる、として待機体制が強化されているとのこと。国土交通省も気象庁の予報に基づき河川災害への対応準備を進めていますが、今回予測される雨量では国管理の大型河川においても氾濫の危険があるとのこと。

 津波に近い。気象庁は今回の台風高潮被害について海水が押し上げられ吹き付けられる事で一度に接近する事から津波に近いという異例の表現で警戒を促しており、また河川周辺において水位が上昇した後では自動車を含め立ち往生する危険があることから、早めの避難を行わなければ、避難が出来なくなり水没するか流失するかという危険があるとのこと。

 高潮のメカニズムは発生原因こそ全く異なりますが、台風の低い気圧に海水面が吸い上げられ、短時間で潮位が高まると共に暴風により内陸部へ短時間で押し寄せる為、単発の波の連続と波の波長が長い津波との比較でいえば、メカニズムは違っても生じる結果は似ており、過去では伊勢湾台風で高潮が瓦礫等を伴い内陸部住宅等に甚大被害を及ぼしました。

 南大東島に今夜に接近、1500時過ぎには南大東島において瞬間風速41.7mが観測されており、沖縄本島では沖縄市や南城市などで既に全域に避難準備情報が発令されており、厳重な警戒が呼びかけられています。また九州沖縄南西諸島では既にフェリー運航について大規模運休措置が採られている他、那覇空港はじめ空の交通にも大幅な乱れが生じています。

 安全を確保するにはなにをするべきでしょうか。九州沖縄では、九州上陸とならない場合でも大きな被害が予測されている事から、沿岸部や河川周辺では高潮を警戒し、防潮堤を高潮が越えた場合の自治体が発行している災害ハザードマップを早めに確認し、アクセス集中により閲覧不能となるまえに現在位置の危険性がどの程度かを認識すべきと考えます。

 水害について。河川水害ハザードマップは各自治体がどの水系が氾濫するかを分けて作成しており、近傍の河川だけのハザードマップだけを確認した場合、意外に離れた地点、10km以上隔てていても、過去には鬼怒川水害等で想定外の水害が高低差を伝って押し寄せた事例があります、面倒でも現在位置に影響を及ぼし得る全水系を確認しなくてはなりません。

 暴風については、木造家屋や軽量鉄骨建築物では瞬間最大風速が80mに達する様な今回の予報の規模である台風の場合、倒壊したり圧潰する危険があります。この場合は家財が大事でも在宅していて対応できる事は非常に限られているというところが過去に巨大台風を経験された方のお話し。可能ならば中層以上のホテルか親類縁者、避難所避難が望ましい。

 被害想定は九州沖縄は勿論、本州西部も危険という。京都や東京で戸板を打ち付け遠隔地に避難する必要はないようです、しかし西日本を含め広い範囲に大雨が降り注ぐ危険があるとしていますので、例えば台風進路から離れた地域であっても山間部や過去土砂災害の危険がある地域等では大雨特別警報や記録的短時間降雨というものを認識すべきでしょう。

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大水害時代にLAV-25とBvS.10が必要だ【4】25mm機関砲搭載と車幅2.5mで水陸両用性能

2020-09-04 20:09:10 | 防災・災害派遣
■米海兵隊軽装甲偵察用
 LAV-25,アメリカ海兵隊では古くはなっていますが軽装甲偵察大隊に装備される使い勝手の良い装甲車です。

 LAV-25軽装甲車は浮航能力を有する装輪装甲車でスクリューにより水上を推進可能です、従って浸水地域へ進出し孤立者の救助が可能です。浸水地域で後部ハッチを開放したらば車内に浸水して沈没してしまうのではないか、こう思われるかもしれませんが車体兵員室上部にハッチがありまして、ここから乗降できます、車内には完全武装兵員6名が乗る。

 LAV-25の兵員室はそれほど広いものではありません、しかし、完全武装の海兵6名を収容できますが、この広さは防災ヘリコプターとして全国で活躍するアグスタA-109と同程度のものでして、あくまで装備を満載した海兵を想定していますので、被災者の一時収容ならば10名とペット10匹程度、なんとか収容可能、この際にて、隊員は砲塔に乗ればよい。

 スーパーAV(妖しい響きだ)、アメリカ海兵隊はイヴェコ社の大型水陸両用装甲車をLAV-25とAAV-7の一部を置き換える車両として構想しています、現在の視点から見れば1972年に開発されアメリカ海兵隊へ配備開始されたのが1981年というLAV-25は旧式ではあります、しかし、この車両は車幅が2.5mに抑えられ、高速道路を一般車として通行可能だ。

 96式装輪装甲車が車幅2.48mでして、もちろん災害派遣に際しては特殊大型車両の緊急走行は許可されるのですけれども、平素からの防災訓練などにも参加することが簡単で、特に実際の災害派遣では浸水被害のある地域では路肩に水没車両、心肺停止の被災者が車内に取り残されている場合を考えれば、大型車両はなかなか運用が簡単ではありません。

 1972年に開発されたLAV-25を採用するくらいならば、国産の73式装甲車を再生産した方がよいのではないか、あれならば浮航キットを装着したならば流れのある那珂川や鬼怒川で何度も渡河訓練を行っている、こう批判はあるかもしれません、しかしLAV-25はアメリカ海兵隊が何度もエンジン改良や火器管制装置更新を行っている第一線の高性能車両だ。

 25mm機関砲を搭載しています、昨今は装軌式装甲戦闘車に正面装甲が35mm耐弾という頑丈なものが開発されているなかで若干時代遅れは否めませんが、現状の12.7mm機銃よりは根本的に別次元の威力がありまして、そして火器管制装置が新型となっていますので2000m程度の交戦距離を有しています、故に防衛用として心細い装備ではありません。

 小松製作所へ、自衛隊が導入する場合はライセンス生産を依頼することとなります。現在、LAV-25を開発したスイスのモワク社はLAV-6を生産しており、初期型のLAV-1にあたるLAV-25は生産終了となっています。それならば最新のLAV-6を調達すればよいのではないか、という意見はあるでしょう。実際、LAV-6は選定が進む、将来装甲車の候補の一つ。

 LAV-6,すばらしい装甲車なのですが、唯一、水陸両用性能を有していないのですね。装甲を強化した結果、車体重量が増大し水陸両用性能を省きました。いや、こうした事例は世界に多いのです、例えばフランスのAMX-10RC装甲偵察車、105mm砲を備えた装輪装甲車ですが水陸両用性能はあったのですが、装甲強化の結果、浮かなくなってしまっている。

 パンドゥールⅡ装輪装甲車とLAV-6装輪装甲車、三菱重工が開発した16式機動戦闘車派生の機動装甲車に対抗する将来装甲車の候補として防衛省が検討している車両ですが、パンドゥールⅠ装甲車は水に浮いたのですが、装甲防御力を重視した結果、六輪式から八輪式への拡大改良型であるパンドゥールⅡもまた、重くなり水に浮かなくなっているのですね。

 装輪装甲車の浮航性能、冷戦時代には機動力の一端を担う性能として重視されてきたものなのですが、近年は先進国が護岸工事を進めた結果、河川の渡河機会は架橋に頼ることが多くなり、それよりも装軌式装甲戦闘車の性能を補完すべく、重装甲が重視され浮航性能は省かれる傾向があります、故に敢えて古いLAV-25が日本の場合は理想型と考えるのです。

 普通科連隊や偵察戦闘大隊にLAV-25の中隊を置けば、もちろん全国約40の普通科連隊へ置くのですから、整備費用は膨大なものとなります、しかし、災害に即応して全国の普通科連隊が水陸両用車両を装備するのですから浸水地域にボートを組み立てる必要はなくなり、被災地に到着次第、いや被災地への道路が水没していても、そのまま対応が可能へ。

 LAV-25の25mm機関砲は威力が馬鹿にできません、96式装輪装甲車の12.7mm重機関銃とは比較にならないものがありますし、なにより統合機動防衛力の視点から、離島防衛の増援を命じられた際に、即座に沿岸部から揚陸する事も可能となります、軽量ですのでC-130輸送機や貨物列車に載せて北海道から九州までも即座に展開することが可能です。

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令和二年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2020.09.05-09.06)

2020-09-03 20:15:00 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 台風10号が意外な巨大規模に成長し脅威及ぼす最中ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。懐かしい清水や蒲郡などの艦艇広報の写真とともに行事の話題を。

 今週末の自衛隊行事はありません、やはり新型コロナウィルス感染症COVID-19の感染状況に鑑みてのものです。感染拡大は頂点を超えて抑制傾向にある、とは政府専門委員会の視点ですが、大規模行事実施自粛要請が解除されなければ、艦艇広報一つとっても数千数万があつまり、航空祭となれば十万単位の来場者が集う為に、難しいといえましょう。

 艦艇広報が一つもない、異例の夏が終わろうとしています。艦艇広報、海上自衛隊は例外的にこうしたものを募集対象者と高校生に対して実施しています、イージス艦一隻に事前予約制で数名づつ一日で四十名という、観艦式で千名近くを乗艦させている艦艇がこうした状況でして、しかも密集回避に一般立ち入り出来ない埠頭に寄港、行われているという。

 募集広報に防衛省は必死です。なにしろ防衛副大臣筆頭に公式SNSにおいて募集が集まらず頭を抱えている状況なのですが、要因が廃止された曹候補士制度という終身雇用制度から曹候補学生という、七年間の限定雇用で上位者のみを曹に昇進させるという、非正規公務員制度を取り入れて人件費を縮減しているのですから、非正規雇用に集まらぬ現状です。

 広報を重視し、自衛隊への理解を深めたいというところでしょうが、非正規なのにあんなに拘束時間が長くて残業代も出ないなんて凄いなあ、と尊敬する機運は高まりますが、非正規で継続雇用は七年間まで、しかし32歳までならば一旦解雇されても再試験で二士から再就職できるので40近くまで勤められるよ、という制度も広まってしまいまして、これは。

 最近の若者は凄い、これが率直な印象です。コロナ禍とともに最近の子供も凄い忍耐力、と感心を深めている所でして、曹候補学生制度、曹に昇進できる枠は決まっているのですから、勤怠管理により怠けている曹候補学生を昇進させない、というのは一見合理的で素晴らしい制度に聞こえるのですが、真面目で優秀な隊員でも全員残れない事を意味します。

 平日の帰隊遅延、実際聞きますと曹候補学生は余程のことが無い限り問題を起こさない、何しろ脱柵さえ90年代と比べて大幅に減った、という事ですので、五分から十五分の帰隊遅延が、結局のところ曹候補学生を昇進させない背景になるといいます。しかし、自衛隊は憲法上の軍隊でなくとも軍事機構、時間厳守は社会人として当然だろう、と思うものの。

 鉄道遅延証明があっても平日の帰隊遅延の記録は残る、となるようでして、しかも社会人であっても二曹昇進までは駐屯地の営内居住が原則、つまり長期休暇を除けば曹候補学生は何年も職場に住み込み、課業後の自由時間消灯時間前に外出は認められているが帰隊遅延が年一回あるだけで、下手すると事実上の雇止めとなるのですね。拘束時間は24時間だ。

 曹候補学生制度を思い切って曹候補士制度に戻してみてはどうか、若しくは曹候補学生制度であっても53歳までは士長のまま任用継続できるよう改めてはどうか、または営内居住を即応待機部隊等一部に切替えて駐屯地外に官舎を設置し、個室は無理でも班ごとに大部屋で居住し、課業時間外の門限を廃止してはどうか。非正規雇用を改めては、と思います。

 コロナ禍下で艦艇広報が軒並み中止となっている状況をみますと、なるほど昨年までに艦艇広報に行っておいてよかったなあ、と的外れな事を考えつつ、しかし募集難の実情を聞きますとコロナ不況でも非正規雇用に人気は無く、人材を人財として大切にする組織と、人材は広報努力で勝手に集まってくる、と考える組織の違いを垣間見ました様な次第です。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都幕間旅情】祇園祭山鉾巡行回想録(3)欧州明朝中東インド結ぶ祇園祭には不思議がある

2020-09-02 20:03:11 | 写真
■世界から京都に至る道の謎
 祇園祭の撮影位置陣地変換は、それはもう歩道側道裏道地下道を駆使して走り回るのですが苦労すると良い写真が残せるのですね。

 祇園祭にはいくつも不思議があるという、筆頭は山鉾。鶏鉾はギリシャ神話を描く欧州のタペストリー、山伏山は明朝の龍の描写がタペストリーに、太子山はインドムガル帝国の織物で、世界中の産物、異国の芸術品がいろいろありましてこの洛中に至りましたもの。

 大航海時代や帝国主義の時代に世界の毛織業者により織られましたタペストリーが山鉾に飾られるにはひとつひとつありまして、そして文字や描写、そして毛織物の原料と成るもの、これは誰がどう織物として仕立てたのか、どの経路を通じて京都の洛中に至ったのか。

 鎖国時代、そう不思議なのは鎖国時代に日本には来ないはずの名品が競われるように飾られている訳でして、まさか密輸も無いでしょうし、世界の国際関係や物流の整備と多文化時代にどのような経路にて、山鉾を飾るタペストリーが渡来したのか、様々領域の学問さえまだ探求の途上、といいます。

 応仁の乱。実は祇園祭は官側の八坂神社が執り行い、此処は比叡山延暦寺の影響を受けていた為に政治的に中止する事は出来たのですが、再開を町衆の両側町が願い出て実現した歴史がありまして、実のところこの頃から下町の文化、として定着してゆく事となります。

 山鉾巡行、4kmの道のりを進む神事は、ここで山鉾により町の中が祓い清められる、こうかんがえられているのですね。山鉾は山と鉾にわかれ、鉾は高いものは25mとビル八階に相当し車輪は2mもの巨大なものとなっています、対して山は細部を視てゆきますと違う。

 山、これは舞台を備えていましてご神体として人形が掲げられている、こう山鉾は区別されているのですね。描かれるものも、弁慶と牛若丸が五条橋で戦い蟷螂山ではかまきりが一生懸命からだをうごかすからくりが。船鉾などは皇后が韓国を攻めたときのものを示す。

 辻回し、山鉾巡行は10t以上の山鉾が50名の引き手により一気に回ります、これらを町内会、山鉾町が保存会として町の名前に山鉾の名前を関しまして、山鉾と同じ名前の町は実に20にのぼるとのことですが、それこそまさに、地域に根付いて山鉾を保存しています。

 豪華に飾ります山鉾は洛中を災厄から守るために神々に歓喜を祈る、こうした目的があるとともに町衆が山鉾を飾りたて、再度疾病の災厄が訪れないよう願ったものです。一切効果はあったのか、と言いますと、山鉾巡行に先立って清掃は多少予防の意味はあったのか。

 祇園祭は謎が多いともいう。山鉾のタペストリー、ここも謎でして中国にイスラム世界や欧州まで、世界中の古い美術品が数多並びます。霰天神山、この山鉾には海の神々を描くタペストリー、伯楽天山は欧州のもの、しかし江戸時代と云えば鎖国時代です、不思議だ。

 江戸時代後期に日本に入った、という以外は昭和一杯を研究してもその発祥の地はわからなかったといいます。鯉山などは9枚のタペストリーで全体を飾っていますが、江戸時代中期1793年に京都奉行所が天竺から輸入した、と記録しているのですけれども、記録はその経路までは明らかにしない。

 欧州製であり、実に江戸時代の鎖国を越えて欧州のものが日本に来ていたのですね。しかし意外と答えはあるものです、これは1966年に修復が行われた祭に、覆う赤いラシャの部分を修復にはずした際、"BB"という文字が見つかり、これはブリュッセルブラバント、を示すものと判明したという。

 ブリュッセルブラバントをしめす“BB”、当時世界の最高級タペストリーを織物としていた欧州ブラバント公国のものである、ということが初めて分かったという。そこで鯉山町かベルギー大使館に連絡を取り、更に詳細を研究したところ、ベルギーには記録がのこっていたというのですね。

 ベルギー国立美術歴史博物館が模様を分析、空と大地と海、としてトロイヤ戦争について描かれたタペストリーであることが判明し、なんでも縁飾りの特徴からニカシウスアエルツという職人によりブリュッセルで織られた1600年から1620年頃のものであると分析結果が出ました。

 ブリュッセルブラバントでは、おそらく五枚が連作され、そのうちの一枚が鯉山となっているのではないか、との専門家の推測があるようでして。これはトロイヤ戦争を示すには一枚では物語の流れからして不自然という論拠なのですが、しかしそのうち四枚を手元において一枚だけ京都に売られた、とは考えにくい。

 ブリュッセルブラバントからのタペストリー、実際連作のものは実は五枚ほどが日本に渡っていた可能性がある、これはトロイヤ戦争を描いたものであり、残りの四枚も日本に渡ったのではないか、ベルギー研究者のなかにはこう結論した方もいまして、鯉山町は全国を探すことで実際手がかりを探したとのこと。

 祇園會にあった、もう近所も近所で近い所です、実際このうち二つがありましたが、調べればあとの三枚は、なんと滋賀県と東京都と石川県にあったという。東京のものは東京都の増上寺、東京タワーの増上寺ですが、ここにあったとのことです。それも一年に三日間開帳される秘仏、徳川家康の秘仏黒本尊をまもるための壁に明治時代まで残っていた、といわれているのですね。

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防災の日(関東大震災発災日),RQ-4グローバルホーク&V-22オスプレイ導入と東日本大震災

2020-09-01 20:02:26 | 防災・災害派遣
■二つの装備,政治主導で導入
 防災の日では例年ならば政府中央防災訓練が行われますが今年はCOVID-19コロナ禍下で小規模な訓練が各地で行われたのみ、しかし、災害脅威は現実です。

 台風9号が沖縄県を蹂躙中です、そして日本の南の会場には24時間以内に台風となる可能性が高い低気圧がある。こうした中で防災の日を迎えました、まもなく関東大震災から100年を迎えますが、いままでは大災害の際に居の一番に離陸し情報収集に展開した航空自衛隊の偵察機は今年三月に飛行隊解体され廃止、陸上自衛隊観測ヘリコプターもありません。

 九月一日は防災の日、1923年9月1日に関東大震災が発生、日本の中枢を激震が襲い明治維新とともに増加した煉瓦造中層建築物や新興木造家屋を中心に大被害、その後の大火災によりかつてない被害が発生、一部は社会不安へ発展する懸念があり、政府は戒厳令を布告しています。この教訓を忘れぬよう、防災の日、というものが設定されたものです。

 グローバルホークとオスプレイ、本日は防災という視点から側聞した話題を中心に論題を構成してゆきましょう。グローバルホーク導入中止の打診、こうしたものが永田町界隈から漏れ伝わる様子が報道などの紙面や電波に伝播していますが、この二つの装備が真剣に検討された背景をたどってゆきますと、はじまりは3.11、あの東日本大震災に至ります。

 オスプレイについては水陸機動団の島嶼部防衛における緊急展開に際して、空中機動用に政治主導において導入された、という説明が基本的な理解として挙げられるのですが、実は自衛隊と政府には過去に幾度かオスプレイ導入計画があり、国としてオスプレイが必要であるものの、最終的にその受け皿となったのが陸上自衛隊、という構図もあるようです。

 東日本大震災以前にもオスプレイが検討された事はありました、US-1A救難飛行艇の後継機として海上自衛隊は一時期検討していまして、これはUS-2の国内飛行艇建造技術の維持という視点、着水できるという利点からオスプレイ導入には至りませんでした。この他に航空自衛隊もUH-60J救難ヘリコプター後継候補の一つに情報収集は行っていました。

 政治家の公式発言として自衛隊のオスプレイ導入が記されたのは森本大臣時代、いずれ必要になると考えるが現段階では取得費用の高さから現実的ではない、という発言でした。そしてこの背景を探していますと、東日本大震災災害派遣続く2011年4月4日トモダチ作戦、この最中に宮城県沖の原子力空母ロナルドレーガン艦上で行われた会議が在りました。

 ロナルドレーガン艦上、日本からは北澤防衛大臣、折木統合幕僚長、杉本海上幕僚長、君塚東北方面総監兼統合任務部隊司令官がこの会議に出席し、アメリカからはルース駐日大使、ウォルシュ太平洋艦隊司令官、フィールド在日米軍司令官が出席しているのですが、日本側の代表は君塚総監以外全員が厚木航空基地よりC-2艦上輸送機にて移動しています。

 C-2艦上輸送機、日本側では米軍の空母艦載機での移動に難色を示し、海上自衛隊のSH-60や陸上自衛隊の要人輸送ヘリEC-225を検討したが、航続距離と速度の面からC-2輸送機となった、という話がありまして、この話は側聞したものですのでもう少し色々な方の話を聞きたいところなのですが、この後に民主党政権下、V-22の話題が出始めたのですね。

 MV-22、勿論優れた航空機であり、木更津に暫定配備されていますが、これならば6機あれば第1空挺団の完全武装一個中隊を即座に木更津から那覇駐屯地へ空中機動させる事が可能です。この為に、東日本大震災の際に閣僚が全般の安全を米軍にゆだねた事への反省、という事は的外れとも言得るのですが、MV-22を陸上自衛隊が切望した訳ではありません。

 CH-47輸送ヘリコプターを34機取得できる費用、V-22の17機取得には巨額の防衛費を要しており、もしV-22導入が無ければ、西部方面隊に第2ヘリコプター団を創設する事も可能であったし、もっと広範に航続距離の大きなUH-60JA多用途ヘリコプターを取得する事も出来、防衛調達の均衡に影響した、という反論も存在します。政治主導だったのですね。

 グローバルホーク。こちらも、現在の河野防衛大臣時代に入り、機体の旧式化が進むとしてイージスアショア導入計画と同じように計画半ばでの調達中止が一部報道に乗るようになりました。しかし、グローバルホークを必要としていたのは、やはり3.11、あの東日本大震災で、特に福島第一原子力発電所事故に首相官邸が情報不足となっていた時点でした。

 自衛隊にはRF-4戦術偵察機や方面航空隊のUH-1に映像伝送装置が搭載されたものが2機程度確保されていましたが、RF-4は光学フィルム方式であり百里基地での現像装置での現像を経て入間基地までC-1輸送機かT-4練習機、首相官邸までヘリコプターで空輸しており、リアルタイムとはとても言えないものでしたし、UH-1は災害派遣で空きがありません。

 福島第一原発ではリアルタイムの情報が得られず、特に炉心が極めて深刻な状況に陥っていた12日から13日にかけては前線基地であったオフサイトセンターとも通信が途切れがちとなり、首相官邸では前線基地と原発作業員が急性被曝により全滅したのではないのか、という危惧は常にあったといい、リアルタイムでの原発画像情報を必要としていました。

 高高度滞空型無人機、としまして防衛装備庁はグローバルホークではなく国産機、長大な主翼全幅を有しターボプロップエンジン二基により長時間にわたり高高度を滞空する、現在ロシアが開発中のシリウス無人偵察機のような機体を独自開発する構想が伝えられていましたが、東日本大震災以降、グローバルホーク導入、という方針へと一変するのですね。

 グローバルホーク導入中止検討という報道、もちろん最新型を考えるのであれば2011年という9年前の震災に活躍した機体よりも、昨今ならばMQ-9リーパーの偵察専用型ガーディアン、という選択肢の方が新型といえます。ただ海上保安庁が検討しているという報道はありますが、自衛隊としてMQ-9をRQ-4グローバルホークに代える報道がありません。

 本日は防災の日、もちろん大震災で冷温停止中の原発が損傷しても電力会社が重輸送ヘリコプターと高高度偵察機を運用し、市町村の消防に高圧ポンプ車とこれを輸送するドック型揚陸艦があれば、自衛隊の出番はないのですが現実的ではありません、すると国家が崩壊するか存続するかという事態に際して最後の砦に自衛隊、その装備に関心は尽きません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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