北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】観艦式2009-守る!この海と未来-【19】ちはや,横須賀帰港(2009.10.23)

2020-09-20 20:09:23 | 海上自衛隊 催事
■ありがとうございました
 観艦式にお世話になりました潜水艦救難艦ちはや横須賀帰港、日曜特集自衛隊観艦式も長々と紹介して参りましたが今回が最終回です。

 ゆうべつ、入港の様子を左舷越しに。この小型護衛艦も含めて護衛艦隊へ集約されることは当時違和感を覚えたものですが、この観艦式の二年後、運命の3.11東日本大震災が発生、横須賀地方総監に全部隊を集約し統合任務部隊海上司令部方式は威力を発揮したのですね。

 さわゆき、にちなん。地方隊には、いすず型護衛艦、ちくご型護衛艦といった沿岸用護衛艦が6隻程度配備されていました、これは護衛艦あぶくま型となり、その整備中に冷戦終結に伴う護衛艦定数の63隻から54隻への削減が決まり、先ず、地方隊から削減されます。

 あしたか、海上保安庁巡視船の出航と護衛艦さわゆき。地方隊の護衛艦削減とともに、しかし沿岸用護衛艦ではなく護衛艦隊用大型汎用護衛艦を地方隊に管理替えすることで一隻辺りの能力を充実させた。そして2008年に運用を地方隊から自衛艦隊へ統合した、という。

 はたかぜ接岸の様子を飛行甲板の奥にみる。フォースユーザーとフォースプロバイダーへの転換、護衛艦の護衛艦隊への集約は、地方隊の地方総監は指揮官であり、必要な戦力はプロバイダーから提供を受け、フォースプロバイダーは必要な練度を維持、という分担へ。

 ボフォースロケット、煤がついているのが此処からも分かる。煤がついているのは先ほどの実弾射撃展示で射撃したばかりの情景です。射撃時に酸っぱいアセトン臭あ漂う、とはこのときに撮影していましたお友達の言葉、この装備が廃止された今日は懐古情景の一つ。

 ゆうべつ、逆光にうかぶ乗員。横須賀基地船越地区への帰港です。この接岸はロープ作業という、7000tの船体を岸壁に数本のロープで接岸させる、つまり一本辺りにうねり次第で掛かるt数を考えますと非常に危険な作業が始まるため、乗艦のお客さんは安全なところへ。

 ゆうべつ、逆光の夕暮れを見ると日曜洋画劇場の終わりのよう。しかし写真で見返す以上にそこらへんのハリウッド超大作などは比較にならないほどの迫力の情景をみた、観艦式ののちの情景と考えますとこみ上げてきますものもひとしお、という印象でしょうか。

 はたかぜ5インチ砲の奥に護衛艦ゆうばり。この5インチ単装砲はマウント重量が54tもあるということでして、それだけに迫力も凄い。そして自衛隊の艦砲では最後となった、祝砲や礼砲として空包射撃が可能な艦砲でもある。この当時は、はるな型など現役でした。

 ゆうばり、はたかぜ飛行甲板の奥に見える。入港作業ということでロープ作業の危険が及ばないところへ見学者は集まっていますので、その分は人口密度も凄いことになっています。そしてもう一つ、観艦式から早く家路に就きたい方も集う、そしてもう一つの理由も。

 ゆうばり、艦首を逆光の奥に望む。さて上陸である、いや私などは上陸ではなく帰宅なのですが、海上自衛隊の方々、旧海軍と違って艦内飲酒をアメリカ海軍に習い全面禁酒としています、つまり、上陸は、ビールなのですね。自衛隊では実際これを上陸ビールという。

 ゆうばり、全景。ゆうばり、ゆうべつ、貴重な護衛艦の情景をしっかり撮影しつつ、さて何処で上陸ビールをいただくか、で頭がいっぱいだ。私の知る上陸ビールのお店は舞鶴基地か横須賀では吉倉桟橋しかしらない、関係ないですが2009年はまだ逸見桟橋は建設中だ。

 やえやま、世界最大の木造軍艦の入港情景、これも懐かしい情景となってしまったのですね、掃海艦は潜水艦を狙う深深度機雷の掃討用でして、現在庫の任務はFRP製船体を持つ掃海艦あわじ型に代替されています、やえやま型はある意味木造艦艇時代終着点のひとつ。

 ちはや、横須賀基地へ接岸完了しました。上陸を終えまして、さて乗艦の際にはゆっくりと撮影できなかった、そして乗っていますと乗っている艦は当然ながら撮影できませんので、この丸一日お世話になりました潜水艦救難艦ちはや、艦容を真正面から撮影しました。

 ゆうばり、ゆうべつ、そして自衛艦隊司令部。この二隻は大湊基地の護衛艦です、いや2009年ならば大湊まで京都駅から寝台特急日本海で青森まで一本という時代ではあったのですが、流石に遠く、実はこの観艦式が最後にみた護衛艦ゆうばり型でした、ご苦労様です。

 守る!この海と未来。いかがでしたでしょうか、以上が自衛隊観艦式2009の顛末です、この二年後に東日本大震災、そして今や2020年代、自衛隊の装備も任務も大きく変容しました。最後になりましたが、貴重な乗艦券を頂きましたT様、重ねてありがとうございました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【G3X撮影速報】岐阜基地撮影,三井山山頂より俯瞰するF-15イーグル発着(2020-09-15)

2020-09-19 20:00:25 | 詳報 陸海空自衛隊関連行事
■三井城址眼下の戦闘機発着
 COVID-19コロナ禍下の世界ではありますが北大路機関では舞鶴基地と岐阜基地に絞って毎月撮影を継続しています。

 各務原市の木々の奥にF-15戦闘機、コンパクトデジタルカメラでも標高の高い三井山からであれば、こう航空祭での機動飛行のような迫力の写真を納める事が出来るのですね。航空宇宙博物館など地上からでも迫力ある構図は撮影できるのですが、高い所の方が近い。

 各務原市街地に位置する岐阜基地ですが、タッチ&ゴーを行う期待はナイフのように鋭く機体を捻りつつ、その姿は遠く岐阜市や一宮市、それに犬山市からも望見出来るといいます。そしてもう一度滑走路へ。G3Xでの撮影ですが同時にEOS7Dも交互に使い撮影です。

 岐阜基地滑走路に着陸するF-15戦闘機、ここは岐阜基地を俯瞰風景に収める三井山の山頂、岐阜基地滑走路を俯瞰風景に収める事が出来ます。勿論個々は敷地の外に在りますので基地までは若干距離を感じ小牧基地と県営名古屋空港の様には行きませんが良い場所だ。

 F-15戦闘機は一瞬滑走路に接したかと思えばそのまま陽炎と白雲を滑走路面に残してそして影だけを滑走路に走らせつつ機体はぐんぐんと大空へ駆け上がり、車輪の脚部はみるみるまに収められる、これがタッチ&ゴー、再離陸、一部の機体はこうした飛行をみせます。

 P-1哨戒機が並ぶ川崎重工岐阜工場の目の前をF-15がタッチ&ゴー、離陸してゆく。P-1には初号機もみえる。三井山からの撮影はこうした航空機、地上に並ぶ航空機と飛行する航空機が一瞬ですが確実に重なる瞬間を撮影できるのが醍醐味、というところでしょうか。

 ベル412、岐阜県警航空隊の所属機、岐阜基地に隣接して分署が置かれている。さてここ三井山、古くは城郭が置かれていました、南方1.5kmの位置に木曽川の大河が滔々と流れているのですが、ここに城郭があった当時は木曽川も直ぐ近くを流れていたという要衝です。

 T-400練習機、美保基地からの機体ですね、ビジネスジェットを用いた練習機ですがC-2やC-130といった機体の乗員を養成するにはT-4のようなタンデムの練習機よりは勝手が良いという事で運用されています、KC-767やE-2C,E-767の乗員も基礎は此れでまなぶ。

 F-15のタッチ&ゴーが。三井山の城址公園は十年前にはまさに荒れ果てた城跡、という印象でしたが、ここ数年間で木々は郭に沿って伐採され砦跡には昔から神社奥の宮が鎮座していましたが、ここも剪定が進み基地を一望できる市民公園の一つに再整備されました。

 三井山上空で旋回するF-15,素晴らしい眺望を撮影出来ますが、平時では30名も並べば満員御礼で基地とは逆の岐阜市を望む一帯ならば数百名が収容できるという、コロナ禍下の昨今では社会的距離、ソーシャルディスタンスを採るならば15名程度が限界とやや狭い。

 F-15,三井山にて撮影する最大の醍醐味は、タッチ&ゴーを実施する航空機が三井山の上空で大きく旋回する点でして、コンパクトデジタルカメラでもこのように旋回する機体を撮影できる、というところでしょうか。もちろん一眼レフの方が撮影は簡単ですけれどもね。

 着陸。三井山ではこうした俯瞰風景も。市民公園として整備されている城址公園ですが、登るには慣れていないと十五分ほど、慣れてくると十分、木立を進む北側登山道と開けた広場を進む南側登山道があり、慣れてくると、三度曲がる北側登山道の方が近く感じます。

 各務原住宅街とF-15,日本で最も古い飛行場であるだけにこうした不思議な日常風景が広がる。三井山、山頂に手洗いはありませんが参道入り口に公園手洗いがあり、近くに二軒コンビニがある。ここで食事を買い込み折畳み椅子と文庫本を相棒に撮影するのが楽しい。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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大水害時代にLAV-25とBvS.10が必要だ【5】沿岸部や湖沼地帯と山間部を踏破するBvS.10

2020-09-18 20:04:12 | 防災・災害派遣
■BvS.10,あらゆる地形を踏破
 BvS.10は晴海埠頭にてイギリス海兵隊第3コマンドー旅団の実物を見ますと、成程これは使い勝手の良さそうな車両だという印象を受けたものです。

 BvS.10全地形車両。この車両が普通科連隊の本部管理中隊や施設大隊本部などに配備されていたならば、災害派遣にも防衛出動にも大きな能力を発揮したでしょう。全地形車両というのは連接車体を採用する装軌式車両で連接式故に急斜面などでの転覆限界に余裕があり、また浮上航行性能により池沼地帯をも難なく踏破できる車両をしめすものです。

 BvS.10は連接構造を採用する全地形車両、BAE社により製造されている。戦闘重量8tで短距離ならばCH-47JA輸送ヘリコプターによる吊下げ空輸が可能です。全長7.6mと全高2.2mに車幅2.34mとなっていまして、連接構造の車両は前部に操縦士を含め6名と後部に8名が乗車可能です。最高速度は65km/hで水上を浮航により5km/hでの機動が可能です。

 資材運搬車や10式雪上車の延長線上の装備といえるもので、本部管理中隊や隊本部に4両程度、いや資材運搬車は中隊単位でも配備されていますけれどもBvS.10は相応に費用を要しますので、しかし4両程度配備されていましたらば、災害派遣では孤立地域への物資輸送と救出、防衛出動では重装備の錯綜地形への展開や普通科機動に活躍する装備だ。

 BV-206全地形車両、スウェーデン製でこの種の車両としては世界でもっとも成功した車両ですが、BvS.10はこの装甲型にあたります、登坂力が非常に高くなっていますので山間部のような錯綜地形でも難なく前進できる装備です、災害派遣はもちろん、防衛出動でも、徒歩かバイクでなければ踏破できない悪路を進む装甲車、というもので有用でしょう。

 河川氾濫のような被害はもちろん、BvS.10がもっとも活躍するのは土砂災害による孤立地域救助で、もちろん地滑りにより道路が谷間になっているところは踏破できませんが、倒木が連続していて所々水没しているような地形に対しては威力を発揮します。もともとは雪上車ですので豪雪災害においても難なく踏破できる、地形を選ばない車両というもの。

 土砂災害による孤立地救助では、まず、倒木や土砂をドーザーにより除去する道路啓開が最初に行われますが、BvS.10は道路啓開に先立って孤立地域まで進出することが可能です。浸水地域とそうでない地域、ボートですと一旦乗り越えるのが大変ですが、この点で車両ですとその煩雑さはありません、煩雑、これは迅速に救助へ展開できることを意味します。

 水陸両用車と全地形車両の最大の相違点は、水陸両用車が陸路と水上に特化し、この二つの面において優れた機動力を発揮するのに対し、積雪地や池沼を想定している全地形車両は水陸両用車が水中の倒木や瓦礫の紐状障害物にスクリューが絡まった場合に身動きがとれなくなるのに対して、履帯駆動の全地形車両にはこうした心配がないところです。

 山間部の土砂災害では、倒木などがジープのような四輪駆動車でも前進を阻みますが、もともとこうしたところを踏破するのが全地形車両の任務です。そしてBvS.10の搭載力はなかなか大きなものがありまして、資材運搬車のように復旧支援に当てることも可能でしょう、また装甲車両ですので万一落石があった場合でもある程度までは耐えられます。

 防衛出動においてはBvS.10は見た目以上の威力を発揮します、登坂力が大きいのですから錯綜地形に電波中継機材を展開する場合や稜線に対戦車ミサイルや携帯地対空誘導弾を展開させる際に威力を発揮しますし、なにより、車両が通れない森林を踏破する車両ですので、普通科部隊の迂回攻撃を根本から迅速化させることができ、装甲戦闘車よりも優位に。

 市街地戦闘を2000年代に入り陸上自衛隊は閉所戦闘として訓練を強化しました、これは元来市街戦を正規軍が避ける傾向がある中、平野部に市街地が広がる我が国では市街地での戦闘能力を高める事により抑止力を高める事が出来る、としてスイス軍が先進国として初期から市街戦訓練を重視した事の延長線上と理解する事も出来るでしょう、そして山岳だ。

 BvS.10全地形車両はイギリス海兵隊がアフガニスタン治安作戦における山岳戦で、通常装甲車が展開できない地域へ進出し、山間部に立てこもる武装勢力掃討に大きな威力を発揮しました。もちろんBvS.10だけで全国の普通科連隊に中隊を編成しろというわけではありませんが、少数でも配備されているだけで、全地形車両は部隊能力を底上げできるのです。

 81mm迫撃砲を後部に搭載し、錯綜地形において運用するならば、従来の地形防御の常識さえ覆す装備ともなるでしょう。山岳戦や冬季戦、もともとが雪上車ですので、日本に多い地形、都市と森は人を呑む、として本来活用されていない地域を地形防御として活用できるようになりますので、現在配備されていないことが、不思議なくらいとさえいえます。

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令和二年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2020.09.19-09.20)

2020-09-17 20:17:17 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 台風シーズンを迎えても先日の二連発以降は幸か不幸か一向に来ませんが皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今週末の自衛隊関連行事も新型コロナウィルスCOVID-19影響により全て中止となっています、いまのところ実施される予定の行事というものは無く、部内行事様に航空自衛隊の一部が記念塗装を実施しています。記念塗装は年末にかけてコロナ終息を見越しての準備と受け取れるのですが残念ながらその実現は難しいのかもしれません。今年いっぱいは。

 政府は行事自粛予定の5000名上限を撤廃し、これにより野外イベントなどは数万の動員があるものも実施する事は理論上可能とはなっています。ただ、自衛隊は行事実施に慎重です。考えられるのは、自衛隊に広報業務は重要ではありますが自衛隊が軍事機構であり、その任務は興行団体ではありません、劇団やスポーツ団体の様な死活性はないのですね。

 自衛隊は感染防止に務め即応体制を維持する事の方が重要度は高い為なのですね。すると、やはり感染終息までは行事自粛という状況が続くのでしょう。北大路機関では行事再開めどは東京五輪が一つの目安となるのではないでしょうか、東京五輪を実施できる程度まで感染拡大が収まったのであれば自衛隊行事再開が可能となるであろう、という意味です。

 治療法について。楽観的要素や確立した治療方法はありませんが、新しい治療方法が確立しつつあります、それはステロイド剤の利用と抗血液凝固剤の効果的な利用というも御です、旗艦総監による人工呼吸、この新型コロナウィルスが新型肺炎と呼ばれていた頃には肺の炎症に対し呼吸を維持する為に気管挿管を行っていましたが、治療実績を重ね新論が。

 炎症が危険。人工呼吸の為の気管挿管が合併症を誘発していた可能性が指摘され、人工呼吸は行わず、鼻孔に高濃度の酸素を送り込む高流量酸素療法に切り替わりつつあるようです。エコモ体外人工肺の様な負担も少なく、これにより存命率を著しく向上させているという。サイトカインシンドロームという全身一斉炎症が致命的な病状悪化が危険でした。

 全身炎症防ぐには。肺機能も全て炎症により機能不随となり死亡、これが新型コロナウィルスの恐ろしい点とされていました、しかし、肺炎ではなく延焼が危険であるという事が分れば炎症防止が第一となりますので、ステロイド剤により炎症を起こさないようにすることで肺機能が炎症を起こす、つまり肺炎症状そのものを回避する事が出来るのですね。

 全米医学雑誌JAMAによれば28日後の存命率が抗ステロイド剤により28%向上したとのこと。抗血液凝固剤も脳血栓などの衆生が出た際の最後の手段、という位置づけで実施されたのは初期の話であり、現在は症状がある患者にかなり早い時期から投与する事でサイトカインシンドロームが生じた際の血管膨張致命的劇症化を回避できる事が判明しました。

 俗説では既にコロナは弱毒化しており致死率低下がその証拠だ、という憶測が広まっていますが、ステロイド剤と抗血液凝固剤という当初あまり考えられていなかった治療法の確立と劇症化への有効な手段と考えられた人工呼吸に伴う旗艦総監を可能なかぎり回避する事で、いわば医学の勝利によって治療法が模索されたことが、大きいといえるのですね。

 いいかえれば、現在もこのCOVID-19の危険性は変わらないですが存命率は一定程度、あがったといえる。無症患者の早期隔離、実際にはもう一つ、症状が出ていない患者からは感染食が少ないという当初の俗説を覆し、感染者は症状の有無にかかわらず隔離化自主隔離を求める事で、世界では先進国を中心にかなり有効な死者数抑制の効果を示しています。

 すると厳しい自粛生活やウィズコロナという厳しい環境から脱するにはワクチン開発が今後の鍵を握ると云えます。ワクチンが開発されてもインフルエンザのように小流行を繰り返すのではないか危惧もありますが、小流行に留められる意義が大きい。COVID-19は爆発感染と無症キャリアが問題であり狙える対象を劇症化させる、ここを防げるのですから。

 アストラゼネカのワクチン治験再開について、ロイター通信が17日に報じたところによれば新型機悪露なウィルスワクチンAZD1222の治験中に説明できない疾患を誘発したとされていましたが、8日の治験中止以降、その疾患要員を調査した結果、ワクチン由来の疾患ではない、とオックスフォード大学が発表したとのことで、ワクチン開発は継続されます。

 ワクチン開発の楽観は許しません、中国ロシアのワクチンのようにCOVID-19株を使わない事で短期間で完成したが効果が疑問視されているものもある、しかし、ワクチン開発が異例といえる速度で進んでいる事も事実です。年内の治験完了が不可能ではありませんし、来年中に大量接種による集団免疫獲得は一つの目処でしょう。それまでは我慢の時代です。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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菅義偉総理大臣,第99代首相に菅義偉氏衆参両院指名選挙選出-安倍首相最長期政権から交代

2020-09-16 20:00:56 | 国際・政治
■菅総理が目指す行政改革とは
 菅総理大臣。第99代内閣総理大臣が本日衆議院にて首班指名され実に約8年ぶりに日本は内閣総理大臣の交代を迎えました。政府専用機の写真と共に展望してみます。

 菅内閣の顔ぶれは、安倍内閣からの再任とポスト変更が比較的多い点が特色です。副総理兼財務相麻生太郎、官房長官加藤勝信、総務相武田良太外相茂木敏充、防衛相岸信夫、法相上川陽子、文部科学相萩生田光一、厚生労働相田村憲久、農相野上浩太郎、経済産業相梶山弘志、国土交通相赤羽一嘉、環境相小泉進次郎、復興相平沢勝栄、閣僚は更に続き。

 国家公安委員長小此木八郎、行政改革相河野太郎、経済再生相西村康稔、一億総活躍相坂本哲志、デジタル相平井卓也、五輪相橋本聖子、万博相井上信治、となっています。報道では菅内閣の成立をトップで伝えると共にNHK等を視れば続いてJR東日本が民営化後初の赤字、JR西日本最大の赤字とCOVID-19コロナ禍の経済的影響を伝え多難な船出です。

 デジタル化の推進と通信インフラの抜本的強化、菅総理の“スガノミクス”というべき成長戦略はここに現れるのではないか、総務大臣時代や官房長官時代から携帯電話通信料や携帯電話会社変更手数料の廃止、そして携帯端末通信料上乗せ禁止や全国光ファイバー網整備と通信整備を進めており、これはアメリカが1990年代に実施したインフラ整備に似る。

 デジタル庁創設も視野に進める菅内閣は、特に現在のCOVID-19新型コロナウィルス禍下に日本の通信インフラ脆弱性がテレワークを阻害し、画質は悪く度々回線切断する問題が顕在化しています。この状況への対応と共に通信インフラ整備とテレワークの強化は、日本が抱える問題、都市一極集中と地方過疎化の遠因でもあり、政府として取り組みうる。

 自助公助共助、このため規制緩和を進め国民に信頼される国家を建設する。そして仕事をするための内閣を固め、改革意欲と実力のある閣僚を集めるとしています。そして目下の最大の課題はコロナ対策であり、特別措置法も視野に雇用と事業継続が可能な政策を行う。ポストコロナでは財政再建と景気回復を両立させる、これが菅総理大臣の国家象という。

 経済再生については十年後に消費税を再検討し、財政再建を目指すということです。言い換えればコロナによる支出からの財政再建は十年単位の遅延を生むという事かもしれません。憲法改正については自民党の党是として憲法審査会を経て広く議論し進めるという。子育て支援と少子化対策は不妊治療への公的医療保険適用を施策として提示しました。

 省庁改編。フォースユーザーとフォースプロバイダーへの転換をめざしているのではないでしょうか、中央官庁にあって省を人材プールとしてフォースプロバイダーと位置づけ、デジタル庁や復興庁などの庁を任務部隊に位置づけ、政治が内閣人事局を指揮系統とした上で、フォースユーザーという位置づけとともに省庁横断的な改革を実施するのでしょう。

 行政には無駄が多い、これは官房長官着任前の第一次阿部内閣における総務大臣時代からの菅氏の主張でした。Xという改革を行うために主務官庁であるA省と調整を終えますとB省の所管する部分と競合し、B省との調整を行うとA省との齟齬が再認識される、だから必要な規制緩和や新技術の導入が進まない、政治主導を発揮しても省令が邪魔をする。

 新技術や規制緩和を実施する際に省庁横断的なタスクフォースを編成することが基本となれば、タスクフォースが部内で決定を下し、その上で省令や規則を適合化、必要ならば立法府が立法措置により法的整合性を確立する。主務官庁は明確でも所管官庁が多岐に及ぶ場合に結果的に技術的以外の面で実現しない技術革新を再構築する目的があるのでしょう。

 無人機や3Dプリンター技術、Web検索技術や自動運転技術、結局とのところ成長分野に直結する技術の基盤を確立しても、これを実用化させる民間の努力を法規制が阻んできました。Web検索技術は草創期に日本で雛形が生まれましたが、検索結果表示が著作権法にもとづく複写にあたる可能性があるとして民間技術を生かさず、アメリカに追い越された。

 無人機については、ドローン宅配というものが確立していたらば、今日のコロナ禍下でも飲食店デリバリーや爆発的に増大した通販宅配を大きく切り替えていたことでしょう、しかし、ドローンは国内法に基づく無線操縦航空機に当たるか否かが不明確であり、空港を発着する大型無人機をそもそも飛行場付近での無線操縦機規制が阻み普及していません。

 自動運転技術は、少子高齢化時代と高齢者事故防止免許返納励行時代を迎える今日よりも先に実現しているならば、公共交通機関の発達していない地方都市での交通手段として活躍できたはずですが、免許返納により通院介護等から高齢者都市部集中を加速させ、東京一極集中へ。しかし元は自動運転車を阻んだのは道路交通法のハンドルに関する規制です。

 航空法は無線操縦機綱和知ラジコンが旅客機などに危険を及ぼさない事が目的ですのでドローン技術が確立するとともに都市部や山間部でのドローン航路などの規制緩和が行われるべきでした。道路交通法も事故防止が目的でしたので自動運転車両が運転手の手ばなし運転を根拠として規制されるのはどう考えても不自然、しかし結果論で法律は法律である。

 デジタル化の促進、この施策を進めるのではないかという可能性は前述しましたが、通信インフラが充分確保されれば、次世代産業へ繋がる労働者先端技術教育を地方都市でも受けられる事を意味し、日本産業の主柱である第三次産業はテレワークを実現させられる基盤が全国で構築されれば、地方に余裕ある邸宅を構え東京の業務に従事する事も可能です。

 経済成長への機会を規制緩和の遅れから逃し、しかし対策が打たれない事により法整備当時や規制画定当時に想定しなかった大規模な少子高齢化や東京一極集中は悪循環の様に悪化し経済成長を阻害する、こうした立法趣旨を外れた教条主義の独り歩きを、フォースユーザーとフォースプロバイダーという枠組により打破しようとしているようにも思えます。

 安倍総理大臣は本日内閣を総辞職させ、憲政史上最長の政権は菅総理大臣へと交代しました。我が国には少子高齢化と地方過疎化、これが財政再建という問題に複合化し、今日では新型コロナウィルスCOVID-19という巨大な問題が更に複雑化させています。しかし、対応策はまだまだある訳で、国民の福祉を願った古い時代の法制度が阻害しています。改革の手腕を期待しましょう。

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NATO分裂の危機-天然ガス強行調査が生むギリシャトルコ地中海東部の緊張とロシア海軍演習

2020-09-15 20:16:39 | 国際・政治
■NATO動揺は日本にも影響
 NATO北大西洋条約機構は集団安全保障機構として最も成功した機構である、NATO50周年に際してNATO事務総長が述べた祝辞ですが2020年の今日、NATOが揺らいでいます。

 NATOに歪みが生じています、トルコ軍は6日、地中海のキプロス島北部北キプロスにおいて軍事演習を開始、キプロス島北部にはトルコだけが国家承認するトルコ系国家北キプロスが存在し、長年ギリシャとの係争関係にあることから軍事演習の実施にEU欧州連合が強く抗議し、この抗議にトルコのエルドアン大統領は武力行使を示唆、緊張が高まる。

 地中海東部では2009年より海底天然ガス田が次々と発見され、欧州外縁の新しい資源フロンティアとして注目されてきました。またギリシャ領のエーゲ海島嶼部は第一次世界大戦前まではトルコ領であった経緯から、歴史的な係争地となって来ました、今回、キプロスにおいての摩擦と並行して、トルコ政府が、かなり緊張を伴う資源調査を実施しています。

 ギリシャとトルコはアジアにおける日韓関係以上に緊張をはらんで居るものではありますが、今回の対立は先月12日、ギリシャ領離島沖でのトルコ政府調査船オルチレイスによる海底天然ガス調査により顕在化しました、この調査には3000t級のヤウズ級フリゲイトなど水上戦闘艦艇多数が護衛に参加しており、非常に威圧的な示威行動であるととれました。

 この行動に対しキプロスへNATO駐留部隊を派遣するフランスマクロン大統領が懸念を示し、キプロス駐留兵力の増強を発表します。トルコ政府による係争海域での天然ガス資源海洋調査が生んだ対立がさめない中での実施であり、緊張度が一段高まった構図です。この海洋調査に対しギリシャはEU共通安全保障政策に基づく海軍合同訓練で応えました。

 地中海での合同訓練はギリシャ海軍、フランス海軍、イタリア海軍、キプロス軍が参加し8月26日から三日間実施、この訓練にはフランス海軍が戦力投射艦ミストラルを派遣する大規模なものとなりました。これに対して29日、トルコ海軍が東地中海において対抗演習を実施、NATO加盟国同士が海軍艦艇にて地中海でにらみ合う異例の状況となっています。

 フランス海軍が艦艇を派遣した背景には、トルコ政府が進めるリビアへ接近が挙げられます、ギリシャが欧州と中東を結ぶ海底パイプライン建設を牽制するべく、リビア内戦への介入を実施したのです。これはトルコと排他的経済水域が接するリビアとの関係を強化する事で等距離中間線を地中海に設定し、これによりパイプライン建設を牽制したのです。

 リビアを巡るフランスとトルコの緊張ですが、トルコ政府は内戦中のリビアを支援する際、正統政府が所在するリビア西部を支援するのではなく、自国に近く排他的経済水域を設定する事でギリシャを牽制できるリビア政府の反政府武装勢力を支援したのでした。これによりリビア安定化を目指したフランスは態度を硬化し、ギリシャ支援へまわっています。

 フランスのギリシャ支援は最新鋭のラファール戦闘機を格安で売却するという状況となっており、ギリシャとトルコの対立はNATOを割り込む勢いともなっています。他方、トルコのエルドアン大統領が親ロシア政策を採った事でアメリカのトランプ大統領がこの問題へ間接的に関与する事となりました。これにより、NATOの亀裂は拡大する懸念がある。

 キプロス軍へのアメリカの武器有償供与再開、これは過去30年以上にわたり見合わせとなっていますが9月2日にアメリカポンペイオ国務長官がキプロスのアナスティディアス大統領との電話会談にて発表した指針で、キプロスがトルコ系北キプロスの緊張に晒されているとして、非殺傷的な防衛装備品に限定し再開する方針です。装備名は明らかではない。

 NATOがボスポラス海峡を隔てて東西に割れようとしている、この状況はロシアにとってはNATOへ付け入る時機といえるのかもしれません。そしてロシア国防省は4日、東地中海において海軍演習実施を示唆、9月8日から9月25日までの期間において実弾演習を実施する為に船舶航行注意情報を示し、NATOの罅に駆逐艦を派遣する方針を示した構図に。

 ロシアのNATOへの圧力は現在、トルコのNATO離間工作に一つの重点が置かれているようで、2018年からはトルコ軍へロシア製広域防空ミサイルシステムS-400の供与を発表、アメリカ製ペトリオットミサイルよりも遙かに長い射程400kmとNATOなどは保有していない長射程のミサイルを輸出しました、ロシア製兵器という部分で不協和音を示した。

 現代の兵器システムは汎用輸送車両や小火器などを除けばデータリンクにより能力を最大限発揮するものが多く、部品単位ではなくシステムとして導入する場合は仮想敵国システムを組み込むことはブラックボックスが存在した場合、データリンク漏洩や阻害など悪用される懸念があり、S-400をNATO防空システムに適合するには不確定要素があるのです。

 アメリカはトルコのS-400ミサイルシステム導入中止を再三要請しましたが受け入れられず、この対抗措置としてトルコ空軍が導入するF-35戦闘機について、F-35データリンクシステムとS-400を結ぶことは許されないとして引渡しを中止、これによりアメリカとトルコの間に摩擦を生じさせています。またトルコは中東でサウジアラビアとも対立が広がる。

 ロシアにとりNATOの離間を進める事はクリミア危機以来一つの課題となっています、こうして間隙のような状況を示しますと、様々な手段により有利な状況を醸成します。もっとも、これが外交という意味ですので間隙を造った方に落ち度があるのですが。しかし欧州の微妙な均衡が崩れる事は極東まで波及しかねません、関心を以てみてゆきましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】無人機ガーディアンの躍進と擲弾筒から発射Ninox無人機にHero-30徘徊弾薬

2020-09-14 20:20:21 | インポート
■週報:世界の防衛,最新9論点
 今回は無人機や航空機装備の話題を中心に防衛の話題を視てゆきましょう。しかし最初におつたえるするのはインポート記事ではなく北大路機関記事です。

 自民党総裁選が本日開票され菅氏377票-岸田氏89票-石破氏68票と自民党内での圧倒的支持を集め現在官房長官を務めている菅義偉氏が新総裁に選ばれました。国会議員票とともに地方票でも菅氏89票-石破氏42票-岸田氏10票と過半数の支持を集めました。新総裁は16日に行われる衆議院内閣総理大臣指名選挙を経て第99代内閣総理大臣に就任します。

 安倍総理大臣の持病悪化に伴う7年8カ月という憲政史上最長の安定政権からの総裁交代、新型コロナウィルスCOVID-19のコロナ禍下での景気後退やポストコロナ時代に懸念される中国と各国対立を見据えての米中隣国としての日本の役割、首都圏人口集中と少子高齢化時代に新しい成長戦略を如何に日本と世界に示せるか、重責への手腕を期待しましょう。
■中国海軍最大規模の演習へ
 防衛関係の各国情勢、先ずは海洋監視の無人機重要性を示す我が国周辺での大規模軍事演習の話題から。

 中国人民解放軍は9月22日から26日まで朝鮮半島西方の黄海において大規模な海軍実弾演習を実施するとのこと、訓練海域は民間船舶など航行禁止となる。この訓練には航空母艦を中心とする水上戦闘艦部隊に加えミサイル爆撃機や偵察機等も参加するとしている。人民解放軍によれば2020年に実施される軍事演習としては最大規模になるとしている。

 訓練海域は山東省青島東方海域とともに中国東部江蘇省連雲港においても設定、演習の規模が垣間見えよう。黄海での大規模な演習は今回が初めてではないが空母参加は2016年から、しかし2017年8月に実施されて以来、周辺国を過度に刺激しない観点から避けられていたが今回三年ぶりに実施される。演習海域は朝鮮半島や九州沖縄及び台湾海峡にも近い。
■ベルギー軍MQ-9B導入
 ベルギー軍がMQ-9無人偵察機を導入するとの事です。が、写真は横田で撮ったより大型のRQ-4しかありませんのでご了承ください、五島列島で試験運用の際に撮影に行けばよかったか。

 ベルギー軍はMQ-9B無人偵察機4機と関連機材を1億8900万ドルで導入すると発表しました。これは8月15日にMQ-9を生産するGA社が発表したもので、1億8900万ドルの契約にはMQ-9B無人偵察機4機と地上管制装置2セット、消耗品や整備器材や教育支援等を含むとされ、この契約は2024年3月31日までに器材の納入を期限としています。

 MQ-9Bはスカイガーディアンと称されるものでMQ-9Aリーパーの改良型とされています、全幅は24mで高度15000mを40時間に渡り滞空する能力があり、民間機が運用される空港などでも運用可能となるよう、MQ-9シリーズとしては初めてアメリカ連邦航空局FAAより飛行型式証明を付与されているほか、自律飛行で大西洋無着陸飛行等も実施しました。
■台湾にガーディアン輸出
 ガーディアン無人機はベルギーに加えて台湾でも配備の道筋が見えてきました。台湾は永くP-3C哨戒機増強を希望していましたが海洋監視に無人機を考えている模様です。

 アメリカ政府は中華民国台湾政府へガーディアン無人偵察機有償供与を交渉中のようです。ガーディアン無人偵察機はMQ-9リーパー無人攻撃機の非武装型で武装を搭載しない分燃料を多く搭載する為航続距離を1万1100kmと長大なものです。北東アジア地域では長崎県五島列島での運用試験を経て海上保安庁が広域巡回用に複数導入を計画しています。

 ガーディアン無人偵察機は台湾の中華民国陸軍へ配備されるとみられ、ガーディアン4機と地上管制装置及び整備器材、そして訓練支援費用や地上訓練装置を含む費用は6億ドル程度となる見込みです。ただ、高性能の無人偵察機導入は米中対立を激化させる事が必至であり、ロイター等が報じたほかに駐米中華民国外交代表部からの公式発表はありません。
■エアフォースワン危機一髪?
 エアフォースワンが限定的ですが危険にさらされている可能性があるとのこと。ありそうなエアフォースワンの写真がピンボケなので日本の政府専用機で代用だ。

 トランプ大統領が搭乗するエアフォースワンへ小型無人機が異常接近したという事件があり、アメリカ空軍が調査を進めています。事件は8月16日にワシントンDC近郊のアンドリュー空軍基地近くで発生、飛行中のエアフォースワンから同乗者がX字型で一部が黄色い無人機が確認できたとのこと。アンドリュー基地等コロンビア特別区は飛行禁止です。

 空軍は17日に無人機が飛行していた事への目撃情報がある事を声明で発表し、調査を開始しています。ただ、ワシントンDCコロンビア特別区は小型無人機が飛行していた場合にアンドリュー空軍基地のセンサーシステムが感知し警戒する態勢が維持されているのですが、当該無人機はセンサーに捕捉されなかった事も空軍は認めており対策が求められます。
■NATOのHero-30試験
 NATOは地中海で新型の無人機のようなものとして弾薬と無人機の中間装備を試験したとのこと。

 ドローン、特に自爆型ドローンはミサイルか。この素朴な疑問が多くの方により持たれているようですが、ドローンは広義にはミサイルと云い得るが狭義でいうミサイルではなく、徘徊型弾薬に含まれるものと説明できるかもしれません。徘徊型弾薬というのは発射し目標の位置は不明だが一定時間哨戒飛行し目標が居れば突入、いなければ回収、という。

 Hero-30というNATOにより開発されている海軍用徘徊型弾薬が6月に試験されました。これは速力100ノットで射程は40kmを発揮する、しかし重量は3kgのドローンです。一番想定されるのはホルムズ海峡のようにジェットスキーやプレジャーボートを利用しロケット弾攻撃を仕掛けてくる革命防衛隊のような脅威を空中から早期に発見、阻止すること。

 もちろん、グリフィンミサイルや無人ヘリコプターにヘルファイアミサイルを搭載しても対応できるのですが、前者は発射すると撃沈以外選択肢は無く、無人ヘリコプターは高価であり常時飛行させるには相応規模の施設が必要です、が、徘徊型弾薬であればこのリスクはりませんし、これが普及するならば強力な抑止力として攻撃を躊躇させられましょう。
■極超音速“メイヘル”計画
 極超音速滑空兵器は無人機とミサイルの分水嶺というべきものでしょうか。

 AFRLアメリカ空軍研究所は将来極超音速ミサイル“メイヘル”実証計画を発表しました。これはスクラムジェットエンジンを用いる極超音速兵器で実証計画にはミサイル本体の設計とスクラムジェットとの機体形状適合を期しており、機体形状は兵装搭載のモジュールを換装するもので、モジュールは弾頭、目標に併せて弾頭を交換できる構造を目指す。

 ARRW空中発射即応投射兵器計画としてアメリカ空軍ではAGM-183A極超音速ミサイルの開発がロッキード社を主契約企業として進められています、これはB-52爆撃機などにブースター本体とともに搭載し投射後ブースターにて高高度に上昇した後に分離し極超音速にて滑空する新装備ですが、メイヘルはこれより速度と射程が向上したものを目指します。
■擲弾銃から投射可能のNinox
 小型無人機は歩兵戦闘を変えつつあります、何しろ歩兵が個々に航空機を持つのですから。

 イスラエルのスピア社が歩兵携行用40mm擲弾銃から投射可能のNinox無人機を開発と発表しました。小型無人機には手投げ式や超小型無人機を掌から発進させる機種等が開発されていますが、手投げ式は発射に機材が必要な手投げに際しては目の前に落下事故のリスクがあり、掌からの発進型は強風での運用脆弱性等がありましたが、これを一新します。

 スピア社製Ninox無人機は所謂40mmグレネードランチャーから投射可能で幾つかの種類が発表されている。最軽量のNinox 40は重量250gで40分間の飛翔とともに昼夜に渡る光学情報収集が可能で徒歩移動中にも操作可能、Ninox 66は車載式で飛行管制に車載端末を必要としますが700gまでの爆薬を運搬可能で速力20ノット、50分間の飛行が可能という。

 NinoxでもNinox 103はシリーズ最大で1.5kgまでの輸送と60分間の滞空時間を有するとのこと。Ninox 40は歩兵がボディアーマーのマガジンパウチに収容し手軽に上空からの監視能力を歩兵分隊に付与でき、Ninox 66は戦車に装備する事で戦車兵が戦車車高以上の索敵能力を得られる、40mmグレネードランチャーからの簡易誘導弾としても運用可能です。
■LAIRCM航空機レーザー防御
 航空機がミサイルに狙われたらば逃げの一手ですが今はレーザーによる目つぶしが行える時代です。

 ノースロップグラマン社は七月、アメリカ空軍によりLAIRCM航空機レーザーミサイル防御の改良を受注した。LAIRCMとは赤外線誘導方式の地対空ミサイル等に対し、センサー部分にレーザーを照射する事でミサイルセンサーを破壊し誘導不能とさせるもの、既に横田基地配備のC-130輸送機等にも装備され、装着の様子はネコ耳のようともいわれる。

 レーザーによる迎撃は2000年代より多発した携帯地対空ミサイルによる航空基地周辺でのゲリラ攻撃を念頭に開発され、従来多用されたIRフレアーによる高熱源幻惑が赤外線特性を見破る携帯地対空ミサイルセンサーの発達により確実性を喪失した為のもの。アメリカ空軍は更に進歩し、センサー以外にミサイル本体を迎撃破壊するレーザーも開発中である。

 LAIRCM改良事業は既存機へのアップデートやアップグレードとともに未装備機へのつい会搭載を含むもので契約総額は1 億 5130 万ドルに上る。アメリカ空軍はC-17輸送機、C-130J輸送機、KC-46空中給油機、C-37要人輸送機へ装備を進めている他、同計画に相乗りする形で海軍もP-8哨戒機、海兵隊もCH-53K輸送ヘリコプターへ装備を進めている。

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【日曜特集】第33普通科連隊-久居駐屯地創設61周年祭(6)普通科の戦闘力(2013-04-21)

2020-09-13 20:00:30 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■第33普通科連隊突撃に前へ
 普通科部隊の訓練展示は特科が敵の動きを圧し込め戦車が敵装甲部隊の動きを封じた、いよいよ普通科の時間がやってきます。

 相互に支援しつつ、一斉伏せる。89式小銃と手榴弾に9mm拳銃、実のところこうしたものが市街地戦闘ではおおきな比重を有する部分もあるのでして、平野部の多くが市街地という日本、専守防衛を考えるならば市街戦を重視し国内の都市に籠もる選択肢も、ある。

 敵弾幕下の交互躍進は危険が伴う、訓練でも手を捻挫しやすいし肩も脱臼しやすい、なにしろ全体重をかけて早駆けから伏せるのですから、手の向きや膝肘の関節を考えて伏せなければ怪我をしてしまう。簡単そうに見えてサバイバルゲームで真似をすると要注意だ。

 車と航空機と伏せ撃ちと躍進機動という、これもまた自衛隊らしい情景が展開される。一方が前進するさなかにもう一方が伏せて射撃を展開し敵を牽制する、陸上戦闘の基本の一つ。地形を読み遮蔽物を探し、相手視点になりその先をつく、普通科というものは奥深い。

 普通科隊員の前進とともに梱包爆薬も展開している。早駆けは教範で20m程度づつ躍進しなければ危険という。そして敵前では最後には匍匐前進だ、肩肘片膝だけを付いて素早く進む第一匍匐、けっこう汚れる場所が偏るのでどんな機動を行ったのかが直ぐにわかる。

 FH-70の空包射撃、眩しい発砲焔とともに障害処理支援射撃だ。白リン弾などで敵陣地を煙覆してしまえば、我がほうの障害処理への危険は大きく減退します、敵に近づいた普通科隊員は第二匍匐という片足腿を着いてもう少し姿勢を低くしつつ敵に迫ってゆく。

 障害処理支援にて89式小銃25丁とMINIMI3丁が一斉に火を噴く、軽火器とはいえこれだけの数がそろえばかなり心強い、そして一部は第三匍匐という腰のあたりと肩肘を着いて更に姿勢を低く前進してゆき、素早く射撃姿勢を採って即座に射撃できるよう油断せず。

 89式小銃もこれだけそろうとなかなかの弾幕を張れる。89式小銃は必要ならば06式小銃擲弾により敵を制圧することも可能、これは小銃銃口に装着し空包ににた擲弾薬筒で発射、300m程度先の目標を制圧させることも可能です、訓練展示では出てきませんけれども、ね。

 M-1破壊筒と梱包爆薬の障害処理への前進だ。M-1破壊筒は鉄条網などを破壊する定番、梱包爆薬は爆薬を文字通り梱包したもので障害物などを爆破することもできますし、地雷原を誘爆させることも。軍隊で一番火薬を使うのは砲兵や戦車より工兵であったりします。

 第一線を超越して施設作業小隊が進む。連隊戦闘団を編成する場合には普通科連隊へ師団施設大隊から施設中隊が配属されることもある、いまは方面施設に集約されていますが、75式装甲ドーザ装置や92式地雷原処理車、一部に施設作業車という便利な装備もあります。

 M-1破壊筒と梱包爆薬、M-1破壊筒は点火をイメージする赤いコードが目立っています。実戦では前述の通り、障害構築は陣地構築と一体となっていますので、これはかなり危険だ、場合によっては遅滞のための障害、というものもあります。陣地は用途により異なる。

 鉄条網にM-1破壊筒を挿入する、実戦ならば大爆発、ということになりますので、設置したらば遮蔽物に素早く隠れなければなりません。もちろん、これを実物でやると周辺のマンション窓ガラスが大変なことになりますから、展示のみ。訓練場も限界はあるのだ。

 障害除去の最中、普通科隊員は匍匐によりじりじりと迫ってゆく、第四匍匐というのがいちばん馴染み有る匍匐、というところか。いや、第四匍匐って朝にお布団から目覚まし時計に向けて這ってゆく姿勢と似ているのですよね、ベッドなどでも地形に対応、寝た姿勢に近い。

 爆破成功、梱包爆薬が地形障害をも啓開した。いよいよ訓練展示は終盤へ向かいます、仮設敵陣地を守る防御線を丸裸にしたのですから、戦車と火砲が支援し、そのまま前進してゆけばよい。もう少し国民理解あれば、こうした長期戦のような戦いを国土で避けられる。

 匍匐前進もいろいろある。第五匍匐は第四匍匐よりも姿勢を低くしていまして、顔面を地面にほとんど着け、もう危機的な少しでも姿勢をあげれば敵の射撃を受ける状況で地面に潜らんがばかりの姿勢でそれでも移動、同じところにいたらば撃たれる状況を回避する。

 FH-70の突撃支援射撃で発砲焔が閃く、やはり発砲焔が写ると達成感があります、初めて撮影に成功したのは2005年、FH-70の空包射撃でした。ちなみに生まれて初めて発砲焔全般の最初の一枚を撮影したのは2005年富士総合火力演習の90式戦車実弾射撃の際でした。

 最終弾落下、地上戦闘の決着をつけるのは陸上戦闘の本質が土地の収奪にある点に帰結し、我が国土を占領した敵を陣地から銃剣で引き吊り出す事にある、攻撃準備射撃の最終弾落下とともに間髪入れず普通科部隊が小銃に銃剣を装着、それこそ一斉になだれ込んでゆく。

 74式戦車が最終弾落下とともに躍進機動を開始した、背景にV-107が、戦車と空中機動、という情景を醸しています。V-107ヘリコプターも自衛隊の一時代を築いたものでして、これはCH-47に置き換わっていますが一回ぐらい久居でCH-47空中機動展示を見てみたい。

 着剣とともに89式小銃を手に間髪入れず立ち上がる、小隊長が先ず範を示し、班長が時機を読みとる。前時代的と思う無かれ、結局のところ無人機がどう発達しようとも、ミサイルの射程が世界を覆うとも、修練する先というものは人の技術、そして胆力、といえる。

 戦車の前進とともに一個小隊が全員射撃を開始した。74式戦車の最高速度は53km/h、しっかりと無限軌道が地面を食い込んで確たる躍動へ展開させ、その上で普通科隊員たちも近接戦闘を担うべく、先ず、射撃態勢をとりつつ、いつの間にか小銃着剣されていますね。

 突撃に前へッ。突撃へ移行します、先ほどの匍匐前進は攻撃発起点へ着実な前進を進めるとともに被我の射撃、我がほうの特科部隊の射撃をも意識したものであり、155mm砲弾の最終弾落下とともに部隊の主導権は特科や施設から普通科が主役という時間を迎えました。

 戦車が鉄条網の残滓を踏みつぶし普通科隊員も我先にと前へ、74式戦車は旧式ではあるのですが、正面装甲の防御力は近接戦闘では今なお強く、対戦車ミサイルなど最低射程距離の内側に入ってしまえば普通科部隊の強靱な防盾役割も果たす、ただ10式戦車も欲しいが。

 74式戦車が射撃する、発砲焔写らず、しかし迫力は凄い、なにしろ左右上下に遠近にと全ての瞬間に状況は躍動へ進んでいるのですから寸秒視点視野を転じている内に久居訓練場の至る所で状況動く、望遠ズームレンズ越しに全てを把握することはもはやできないほど。

 MINIMIと89式小銃とともに隊員は鉄条網を越える、M-1破壊筒で爆破しこじ開けたという想定の地点を、普通科隊員が飛び越えてゆく。これ、一見しますと簡単そうですが、フル装備の普通科隊員の装備と柔らかい足場で長い距離を集中力とともに進まねばならない。

 横隊に広がり敵の抵抗を小銃射撃で破砕してゆく、陣形をくむ様子は古代戦術のような印象でして、一応はガンハンドリングとして訓練を実施しているのですが、知識や思考を省いて習慣として技術を文字通り身につけていなければ、という視点で訓練を積んでいます。

 仮設敵倒れた真上を前進へ、撃った、狙った、撃った、当てた、そして前へ。こうして仮設敵陣地へ小銃小隊がなだれ込んだところで、状況終了となりました。仮設敵を制圧し、当面の敵を撃破した、という想定なのでしょう。訓練場には状況終了のラッパが鳴り響く。

 状況終了、UH-1Jが戻ってきた。ここから駐屯地祭は式典と観閲行進に訓練展示、という一連の流れが終了しまして、そしてこれから訓練展示へ。あけの駐屯地の第10飛行隊よりUH-1J多用途ヘリコプターが広い訓練場へ装備品展示のために舞い降りた、一般公開行う。

 装備品展示のFH-70、ここからは道路を越えて隣接する久居駐屯地にて。久居駐屯地は陸軍歩兵33連隊の兵営跡地に戦後自衛隊が第33普通科連隊をおいていまして、駐屯地の歴史は1907年から百年以上にもわたる歴史を紡いだ。しばし駐屯地の中へ装備品展示を巡る。

 61周年記念行事。2013年のこの日は陸上自衛隊久居駐屯地として創設されてから61周年を迎えることとなりました。全国の師団と旅団隷下には普通科連隊が三個、元混成団は2個、一部は即応機動連隊ですが、配置され、こうした陣容で“その時”に備えているのですね。

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9.11アメリカ本土同時多発テロから19年(続),グローバリゼーション複合問題が生む次の危機

2020-09-12 20:20:55 | 国際・政治
■次の危機を如何に回避できるか
 9.11同時多発テロ、これは幾つかの問題領域を横断して複合的な影響を発生から19年を経た今日にも及ぼしています。

 次はこうなる。なにか堺屋太一氏のベストセラーを思い出すような響きですが、テロ対策に任務が偏重するとしても、装備体系まで偏重させてしまったのは失敗であったとしか云いようがありません。そしてテロとの戦いが本格化する頃に広く読まれた文明の衝突、サミュエルハンティントンの名著のような、価値観が単一ではない事が状況を根深くした。

 文明の衝突。これはテロとの戦いを予見したというよりは、民主主義と自由主義という概念は幸福追求のための普遍的価値である、と考えた、一種ヨハンガルトゥング的な解釈と重ねた政策を進めたことが、つまり日欧米の価値観は多寡こそあれ普遍的な概念であると考えた事が、世俗主義を第一とする価値観の地域との摩擦と別のものを起こした、とも。

 帝国。アントニオネグリの、一時期大流行した世界システム論の考え方と扇状に広がるものの世界は一つに向かう、という概念をグローバリズム論が実証しているというような認識が、こう単一ではなく多極化に向かうという、逆行してハーマンカーンやハンスモーゲンソーの時代へと回帰してゆく、歴史は循環するというような状況が醸成されてゆきます。

 同時多発テロはルックイースト、北朝鮮核開発という契機があり一つの不安定地域がありましたが、テロとの戦い、そしてその長期化、特に妥当するべき対象が不明確である非対称の戦いは攻撃到達点も最終確保地域も不明確であるために長期化しやすい、あくまで民主化と民主主義の定着を期したことで自ら泥濘に引水する結果となり、長期化しました。

 不安定の弧。ルックミドルイーストとなり、更に北朝鮮への警戒をも継続したために、中東からアジア地域を含めた東半球全域、そして次第にアフリカまでを含めて"不安定の弧"として警戒を強めたことにより、逆に広域化しすぎたことが安定へ注ぐ安全保障上の資材を分散することとなってしまい、いつ終わったのか続いているのか不明瞭な状況が続く。

 在来型脅威の回帰。問題は地域安定化の為の人間の安全保障というべき視点、民主主義の政治システムと自由主義の経済システムという概念を普及させることが人間の自己実現を惹起し地域は安定化する、と考えた"所謂先進国"の認識が過度な社会変革を生むとともに、これを警戒する地域大国があった、という新しい摩擦が醸成されているといえるでしょう。

 民主主義以外の政治システムと自由主義の経済システム、この両立があり得る事を、中国、そして資源価格高騰によりロシアが実現したことであり、いや地域政治では過去にシンガポールという実例もあるのですが、これらの国々が民主主義の定着を脅威視することで、対立が生まれる。テロの撲滅に人間の安全保障を提示したために悪循環も進みます。

 問題領域の複合化。テロとの戦いに着地点があるとするならば人間の安全保障が確立し自己実現が担保されることにより、世俗主義は政治から文化へと収斂し哲学的な昇華に転じる、こう考えられたテロとの戦いその有志連合諸国が共有する価値観が、かえって強権主義の諸国を刺激し、既得権層以外を刺激することで脅威と認識された構図があります。

 複合化の要素としては、自由主義の経済システムについては、世界全体で共有化しうる概念であったのですね。もちろん安全保証状の制約を保護主義と採られる例外こそありますが。すると、政治システムのグローバル化はあり得ずとも、経済分野のグローバリズムは進むため、覇権国という概念がここに成り立つ、すると係争が生じ政治化するのですね。

 米中対立などはこの典型といえます。そして日本含め中国経済発展の前進に尽力した背景には、経済的成熟が民主主義を生む、と考えたためでしょう。マルクス的といえる。しかし、マルクスの理念を飛び越して共産主義を自称する諸国にはマルクス主義の名を掲げた単なる強権主義の事例がありましたが、今回もその定義に合致したということでしょう。

 自己実現が叶う社会ならばテロには走らず民主主義により破綻国家と呼ばれる地域にも安定が訪れる、そのためには経済だ、と。これは民主主義を実現した諸国の世俗主義国家、破綻国家は地域と称するべきかもしれませんが、この認識を広めようとする、しかし強権により安定している強権国家の視点で考えれば、これは一種の示威行為と捉えうるのです。

 アラブの春などはこの一例といえるのですが、逆説的にアラブの春の地域内戦化などの極端な事象は、強権国家にとり防波堤を構築させる、いわば非対称の戦いに陥らないよう強権主義を用いる地域大国が戦力投射を行い、対象ある支援先を瓦解させないよう軍事力の投射を行い、これが一種の"鉄のカーテン"を醸成させてしまった構図があるでしょう。

 同時多発テロはその分岐点であったのですね。今年で19年、10年ごとに危機が訪れる、という仮定に依拠すれば、20年目の危機はおそらく今回のCOVID-19世界的流行禍となるでしょう、しかしその次の10年では、どうなるのか、日本と世界の次の10年というものを俯瞰し、平和構築と平和維持というものを真剣に考えねば、危機の懸念を忘れては成りません。

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9.11アメリカ本土同時多発テロから19年,冷戦終結後日本と世界の激変した安保環境分岐点

2020-09-11 20:16:41 | 国際・政治
■9.11影響は北東アジア地域へ
 同時多発テロの一方を皆様は何処で知られましたでしょうか、一昔では一種挨拶の様に買われていました話題でもありますがあれから19年です。

 9.11同時多発テロから本日で19年となりました、第一報が日本に入りましたのは2100時台ですので文字通りまもなく19年というところでしょうか。10年一昔といいますが、アメリカによる同時多発テロ首謀者への自衛権は集う、アフガニスタン空爆が始まるのは二週間後、当時は国際法専門家の間で自衛権の要件を満たしているか激論もあったものです。

 10年一昔、日本はアメリカのアフガニスタン空爆に当時の小泉政権は早々と支持を表明、アラビア海海上阻止行動給油支援として護衛艦くらま以下護衛艦と補給艦からなる3隻の艦隊を、当時の憲法解釈では限度という規模ではありますが派遣を開始、日本の戦後安全保障というものが大きく変容を遂げたものでした、そして19年、日本は変容を続けました。

 自衛隊はPKO任務としてアフリカに派遣されT-72戦車とハインド攻撃ヘリの戦闘、自衛隊用語では衝突、が続く中でも派遣が継続され、日本本土には年間1000回を越える国籍不明機への対領空侵犯措置任務緊急発進が実施、沖縄沖に中国公船が張り付き中国艦が支援するなか、和歌山沖にミサイル爆撃機、年間数十発の弾道弾実験が行われイージス艦が。

 原子力発電所が津波で爆発し、日本海にはアメリカの原子力空母3隻が遊弋し相変わらずロシアは日本から離れているとはいえ隣国に侵攻した、2010年代というのはこうした時代でした。19年、いや2000年から19年引けば1981年でソ連がアフガニスタンに侵攻しフォークランド紛争の前夜ですので、その後のソ連崩壊を考えればそれだけ長い期間である。

 10年に一度危機が生じる、1990年湾岸危機、2001年同時多発テロ、2011年東日本大震災、2020年はCOVID-19世界流行禍。1980年は東西軍事均衡逆転が西ドイツで警鐘された80年危機説、日本で当てはめれば少し前の1976年ミグ25函館亡命事件というところでしょうか、その前は1973年石油危機、その前は1961年キューバ危機か少し前のスエズ危機か。

 同時多発テロ、日本にとり象徴的であったのは、アメリカが世界各国にテロとの戦いを掲げ、非国家アクター主体の姿の見えない脅威とと戦い、有志連合を編成する際、参画するか賛同するか反対するか敵対するか、この四選択肢を掲げ、平和主義を標榜する我が国においても旗幟を明確とする必要が生じたためでした、ここに参画しないが賛同を掲げた。

 自衛隊の活動領域がここまで拡大するとは2001年を考えた場合にここまで想定できなかった、こういったところが正直な認識でしょうか。16DDHとして護衛艦ひゅうが型の設計が進む当時、海上自衛隊の活動範囲広域化は予見こそされていました、C-Xとして現在のC-2輸送機の要求仕様も発表され、必要とされていた行動範囲の拡大に繋がる予見は出来たが。

 1992年PKO協力法、宮沢内閣時代の法整備により国連と日本の不明瞭な関係だけは払拭できていました、上記の活動範囲拡大はこの対応にも見えました。この点について、国連憲章には国連への協力義務が明記されており、国連はそもそもが集団安全保障機構、そして国連総会の活動に国際平和維持活動が含まれ、ここに参加するための法整備でした。

 自衛隊の海外での活動は極めて限定的でした、いや徹底していたといって良い、1965年にマリアナ沖漁船大量遭難事件が発生、数百の日本人乗組員が行方不明となる悲惨な状況においても海上自衛隊の災害派遣はマリアナ諸島ということで消極的、海上保安庁に当時YS-11のような大型航空機が配備されていなかったために漸くP-2Vが派遣されています。

 1998年インドネシア騒擾、公共料金値上げを求める当時のスハルト政権にたいし失業率が25%を越える中での増税措置に国民が激怒し全土で暴動と放火が相次いだ当時、日本は邦人救出に着手しましたが、海上自衛隊派遣は当時の法整備では許されず、海上保安庁巡視船を派遣する、という今日ではかなり理解が難しい見せかけの救出命令が行われました。

 法整備、こうした観点からみたならば2001年以降、憲法こそ改正には至っていませんが、武力攻撃事態法の所謂有事法制、オーストラリアやイギリスとフランスにまもなくインドとの包括安全保障協力協定、内閣危機管理局設置と平和安全法制、おおきく前進した、とは考えるところです。すくなくとも同胞を見捨てず済む国家の責任が明確化されている。

 しかし、2001年同時多発テロ以降、大きく変わったのはアメリカのルックイーストが飛んでルックミドルイースト、テロとの戦いを念頭に防衛力整備の偏重が顕在化しています。駆逐艦よりは外洋哨戒艦、車高が高く爆風を逃す耐爆車両を万単位で整備し高高度を低速で長時間滞空する無人機や完全に近い個人防護装備が毎年開発され。歪が生じてゆきます。

 テロとの戦いを念頭とした装備、ここが大きな転換点となるのは、テロとの戦いを念頭とした装備として開発された装備の多くは、従来型の戦闘には応用こそ利くものの十分な威力を発揮できないのです。要するに哨戒艦と駆逐艦が戦えば駆逐艦が勝ち、耐爆車両と装甲戦闘車が戦えば遠方から一方的に装甲戦闘車が勝利します。これらは勝負になりません。

 テロとの戦いを念頭とした装備、問題は決して安価ではないと云うことです、耐爆車両は装輪装甲車と取得費用が同じですし外洋哨戒艦はセンサーが高価であるために在来のフリゲイトよりも高くなることさえある、無人機は安価ですが滞空型となれば機体そのものよりも地上制御装置で結局かなり大きな費用を要します、個人防護装備は兎に角数が多い。

 アフガニスタンにイラクはじめアメリカが展開した一連の作戦とともに国防費は膨大となり、しかしテロとの戦いに応じた装備が優先されたことで、F-22戦闘機量産半減やズムウォルト級駆逐艦は建造十分の一に、将来地上戦闘車両FCS計画中止に海兵隊EFV海兵遠征車両開発中止、F/A-18後継機開発大幅遅延にE-7早期警戒管制機開発中止、影響多大だ。

 欧州などはこの影響が顕著で膨大な戦費を負担するために削減されたのは戦車や駆逐艦と戦闘機、2016年クリミア危機にてロシアの在来型脅威が顕在しますと、重戦力不足は、例えば冷戦時代に1000の戦車を有していたオランダは戦車全廃、4700両保有していたドイツは225両へ、大幅削減し駆逐艦も大幅縮小、戦闘機稼働率も落ち、再編に大わらわです。

 米軍再編。テロとの戦いを念頭に全世界への前方展開を抜本から見直した2005年の在外駐留兵力の本土重点再配置は、朝鮮半島の師団事実上旅団化、在欧米軍の大幅削減、中東拠点の結果的な大幅縮小となり、これがアメリカのポテンシャル、世界におけるプレゼンスを大きく後退させたことも否めません、すると瓶の蓋が弾けた状況が現出してゆく。

 中国海洋進出も瓶と蓋理論、これはもともと極東では日本に対し考えられた概念ですが中国の海洋進出は経済発展とともに著しく、東シナ海と南シナ海全域の管轄権を主張するなど極端化、アメリカのミサイルを持たない哨戒艦的な沿海域戦闘艦は中国の重武装フリゲイトに追い回される状況です。結果、日本の安全保障環境は激変した構図があるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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