北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都発幕間旅情】名鉄パノラマSuper1000系特急リニューアル車と最新9500系通勤電車

2021-06-13 18:18:38 | コラム
■パノラマSuperの名古屋本線
 名鉄特急や近鉄特急と南海特急は流線型の先頭車両がなにか旅に出るのだという新鮮味を日常に加えてくれる。

 名鉄特急パノラマSuper,1000系特急電車。新塗装は名鉄でも見慣れたものですが、今後は名鉄と云えば赤い電車、スカーレッドの名鉄電車という1961年の7000系パノラマカー以来の塗装は紅白塗装に切り替わってゆくという。その鏑矢が、このパノラマSuperという。

 パノラマSuperは展望車一両を先頭に名古屋本線の名鉄岐阜と豊橋を結ぶ特急として運行され、2002年から犬山線乗り入れ特急に展開、それまでは名古屋本線の特急だけが一般車として特急料金不要の特急、それ以外は全車特別車、いや全車指定席の特急が基本でした。

 名鉄9500系電車、2019年より運行開始となった最新鋭の電車です。実はこの9500系は名鉄の変化を示す列車と云えまして、それは残念な方向へ、と。5700系SR、名鉄は急行型というべき車輛5700系を運行、クロスシート車で前面窓が大きく乗り心地のよい車両です。

 しかし、この5700系、名鉄はさよなら運転は勿論、運行終了時を明確にしないまま形式廃止し、しかも急行型の後継は座るシートを少なくし、省エネの名の元編成を短くした分乗客は立っていろという、ロングシート車で置き換えたのですね。せめてLCカーが欲しい。

 1800系特急、これはパノラマSuperですが、編成は6両編成に2両の増結を行っています。昔は紅白塗装の白の部分が多かったのですが、新塗装は赤の部分が多くなっている。名鉄は駅の間隔は狭いが車両洗浄の間隔が広く、故に白色に汚れの目立つ車輛が多かった、と。

 特急ならば、鉄道会社の顔ですし特に特別車は特別料金を取っているのですから丹念に車両を洗浄すべきと思うのですが、そんなことよりも汚れの目立たない塗装として洗わない事でコスト削減だ、と受け取れるもの。なお自衛隊では洗ってない迷彩服を新迷彩という。

 2200系特急。中部国際空港開業に合わせ導入された2000系特急と共に導入されたもの、パノラマSuperの後継車両です。名鉄のコスト重視はこの車輛にも表れていまして、展望車を廃止し、車両として安上がりとしました。そして特別車の絨毯もコストカットされた。

 名鉄は1993年の3500系電車投入まで、本線車輛はロングシート車ではなくセミクロスシート車輛を通勤車両としていました、これは愛知県岐阜県のモータリゼーションへの対抗策だった訳ですが、乗り心地が良かった。しかし、過去の話となるのは、寂しいですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【土曜特集】横須賀いせ-しらぬい寄港の春,艦艇日記【6】今の護衛艦は凄い(2019-04-14)

2021-06-12 20:01:21 | 日記
■吉倉桟橋に並ぶ護衛艦
 吉倉桟橋に戻ってきました。この横須賀基地の東京湾へ突き出た湾内の桟橋に並ぶ護衛艦の威容に遊覧船からも驚きの声が上がる。

 おおなみ、艦番号111は護衛艦たかなみ型二番艦おおなみ、です。ステルス性と同時多目標対処能力に高い航洋性と航続距離、新時代の汎用護衛艦は任務範囲の増大に対応しました。たかなみ型護衛艦筆頭に汎用護衛艦が勢揃いです。いまの駆逐艦はすごいぞ最高だ。

 むらさめ、艦番号101が奥の方に見えますので護衛艦むらさめ入港中です。あさぎり型に続く新世代の護衛艦は汎用性と将来発展性を見越し、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦の船体配置を参考とした余裕ある設計で建造され、基準排水量も4400tとなりました。

 たかなみ、艦番号110が見えますね。たかなみ型は前型むらさめ型の拡大改良型でミサイル垂直発射装置を統合化し前甲板に集約すると共に艦砲を3インチ砲から5インチ砲へ強化、艦内も前の中部屋を大部屋に戻し居住性向上基準排水量も4550tへと拡大しています。

 てるづき、艦番号116が確認できました。あきづき型護衛艦、僚艦防空能力としまして50km圏内の限定的艦隊防空能力を付与したのが本型で、FCS-3多機能レーダーを搭載しています、名実ともにミニイージスというべき、イージスシステムの日本版を搭載した護衛艦だ。

 ときわ。艦番号423が確認できましたので補給艦とわだ型2番艦が入港しています、基準排水量8100tで満載排水量は12200tという艦隊補給艦で、はるな型しらね型の時代の護衛隊群8隻とヘリコプター8機分の燃料及び弾薬と糧食等を補給する能力を有しています。

 はたかぜ、艦番号171が確認できます、ミサイル護衛艦はたかぜ型の一番艦はやかぜ、ですね。デジタルターターシステムを搭載した艦隊防空艦ですが、イージス艦への過渡期に竣工したため、同型艦は当初の5隻建造が2隻となり、こんごう型へ建造は移行しました。

 あきづき型と、たかなみ型、船体は一の相違点が良く分かる一枚です。もともとFCS-3は護衛艦たかなみ型から搭載される計画でしたが、開発度合い以上に順調に量産が進み、なにしろ、むらさめ型は一年間に3隻建造された事もある、FCS-3が間に合いませんでした。

 はるな。海上自衛隊最初のヘリコプター搭載護衛艦の船体配置、飛行甲板と船体の一体化や上部構造物配置、勿論ガスタービンと蒸気タービン艦の相違やCIC位置の船体内部と艦橋一体化など技術進歩は取り入れられていますが、基本は4700t型護衛艦の延長線上です。

 はたかぜ、むらさめ、てるづき、たかなみ、おおなみ。いまの駆逐艦はすごいぞ最高だ。この繰り返す台詞はアメリカ映画“バトルシップ”にて主人公の海軍大尉が記念艦ミズーリ艦上で小さな子供に戦艦と駆逐艦の違いを聞かれた際の説明、戦艦は恐竜みたいなもの。

 むらさめ型が竣工した当時は複数航空目標同時対処能力を持つためにミニイージス艦と呼ばれ、いつしか忘れられてゆきましたが、最近はイージスシステムを搭載していない中国の防空艦が見た目でイージス艦と似ている事から中華イージスと呼ばれているのは微笑ましい。

 はたかぜ基準排水量は4650tで、むらさめ基準排水量は4400t、船体ではミサイル護衛艦の方が大きなものなのですが上部構造物の設計余裕から逆に汎用護衛艦の方が大きな護衛艦に見えるのですね、はたかぜ上部構造物は、はるな型設計をそのまま踏襲している様に。

 はるな型護衛艦は第一世代のヘリコプター搭載護衛艦の最初の艦という認識ですが、日本護衛艦歴史全体を俯瞰しますと2010年代まで続く非常にエポックメイキングな護衛艦、という評価を加えてみた方が良いのかもしれませんね。その、はるな除籍からもう12年かあ。

 はたかぜ、むらさめ、てるづき、たかなみ、おおなみ。横須賀軍港めぐり遊覧船、惜しむべくは始発が1100時でして、太陽は天頂に近づく時間なのですよね、東京湾西岸に位置する横須賀はどうしても順光は午前中のみ、0900時頃に運行されていれば、と思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和三年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.06.12-2021.06.13)

2021-06-11 20:00:20 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 六月、例年ならば旭川駐屯地祭の季節ですがCOVID-19の感染拡大状況がそれを許しません、そこで感染状況の現実などを視てみましょう。

 今週末の自衛隊関連行事は行われません、そして首都圏と京阪神地区を中心に緊急事態宣言が継続中です。COVID-19変異株、その感染力を増した変異株に対して従来の緊急事態宣言、自粛要請に基づく外出抑制措置が効果を発揮できるかについては、緊急事態宣言再再発令に際して特に懸念したところではありますが、徐々に感染抑制に繋がっています。

 人流抑制、しかし、緊急事態宣言の長期化とともに自粛要請に限界が生じている様にも危惧しまして、これは同時に感染者数の減勢度合いに鈍りが生じている事と無関係とは言い切れません。実際、主要駅の人流を視ますと、確かに2019年と比較した場合には減少しているものの、第一次緊急事態宣言と比しますと顕著な増大がほぼ全ての地域で確認される。

 重症者数、毎日報道では全国重症者数が報道されていますが、明らかに死者数の方が重症者数の減少よりも鈍くなっています、死者90と重傷者減少数40、というように。COVID-19軽視論がまだあるようですが、すると素朴な疑問なのですが、重症者数の内で生きてICU集中治療室から出る事が出来た全快率というものはどの程度なのだろうか、ということ。

 ICU集中治療室から生きて退院できた率はどの程度なのか、明確な数字なのですが日本の死者数と感染者数を割合で計算しますと感染者数は本日1800時で累計77万1679名、死者数は1万3977名です、つまり致死率は1.8%なのですね。重症化率は変異株であるデルタ株で4.7%といいますので、重症化すると38.2%の確率で死亡する、これが現実なのです。

 世界の死者数はAFP通信によれば日本時間10日1900時時点で376万4260名、感染者総数は1億7435万0990名、つまり致死率は世界平均で2.15%となっています、日本は高齢化率が高く危険性が指摘されていましたが、感染者数を抑えた事で医療リソースを重症者に集中できる体制、つまり医療崩壊を回避出来ている為にこの致死率に抑えている訳です。

 重症化すると38.2%の確率で死亡、ただし日本の低い致死率とはいっても重症化した場合のこの数字は現実です、ワクチン接種は着実に進んでいます、ですからこのワクチン接種率が60%から70%の大台に乗ったならば、mRNAワクチンの効力を考えれば確実に集団免疫が構成されますし、mRNAワクチンはCOVID-19の変異株にも有効性は確認されました。

 都市封鎖への法整備、例えば現行法でも道路交通法の拡大運用により公共の福祉を守る為の円滑な道路運用として主要道路の緊急車両及び通行許可車両を除く全面交通規制を敷くとか、繁華街への災害救助法に基づく警戒区域指定を行い外出は禁止しないが繁華街に立入規制する、こうした施策を政治決定ではなく防災防疫の観点から必要となりかねません。

 不思議なのはワクチン目処の立っていない状況ではなく、着実にワクチン接種が進んでいる、即ち危機脱却の目処は見えているにもかかわらず、無防備で外出する方々の増大です。これは軽装での冬山への無謀登山や津波警報下の海岸見物と重なるように思えてなりません、そして感染者数は一定比率を超えた瞬間に爆発的に増大する、勿論それは死者数も。

 感染爆発に日本は至っていません、欧州や北米、続いて南米やインドで生じた感染爆発は、ウィルスが細菌ではなく、自己繁殖できない特性故に、感染者が増大し一定数を超えると、路上や集合住宅の通路と鉄道駅等で滞留するウィルス量が増大し、それまで安全であった感染対策では防げなくなり、医療用防護衣やN95サージカルマスクが必要となるのです。

 緊急事態宣言は今月20日まで、ただ、現状で20日に解除しますと、あと9日間で再拡大防止できる程に感染者数を抑える事はどう考えても相当な感染対策、最後の一週間を都市封鎖する等、無理を重ねなければ数週間後に第五波により医療崩壊の危機を迎える事となりかねません。現行法では国民一人一人が防疫の主役です、忘れないよう立振る舞いたい。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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政府専用機不具合-G7サミットへ菅総理大臣訪英直前,放置されてきた政府専用機予備機の問題

2021-06-10 20:15:41 | 防衛・安全保障
■ボーイング777-300ER
 イギリスでのG7主要七か国首脳会談の席上にどういった論点が交わされるかは安全保障上大きな関心事でしたが、そのまえに長年の問題が土壇場で判明する事となりました。

 菅総理大臣はまもなくイギリスで行われるG7主要七か国首脳会談に向けて政府専用機にて、羽田空港を出発、こうNHKが報じたのは1907時なのですが、1929時になりNHKニュース7の最後の段階で今はいったニュース、という報道に、政府専用機に不具合が発生した為、菅総理大臣が搭乗する機体を交換する可能性がある、などと報じられました。

 政府専用機故障、G7サミットへ出発直前という状況で器材不具合が判明するというのは非常に残念ではあるのですが、問題は前々から指摘されていました、それは政府専用機の予備機材の少なさ、という問題です。もともと政府専用機は要人輸送に際しては、任務機と副務機の2機で運用されます、しかし政府専用機は2機だけしか導入されていません。

 ボーイング777-300ER、政府専用機は北海道千歳基地の航空自衛隊特別航空輸送隊第701飛行隊に配備されています。この特別航空輸送隊は1987年に最初の政府専用機導入が決定した際、政府専用機を導入した総理府には大型輸送機を運用する実動組織が無い為に、防衛庁に運用を移管したことで創設されています。その前は日本航空を利用していたのです。

 日本航空は中曽根内閣時代まで長らく半官半民の半分国有という航空会社でしたので、政府は首相外遊や邦人救出など緊急に航空輸送が必要となった際には日本航空が当時100機以上を保有していたボーイング747旅客機などをチャーターし、対応していました。しかし、イランイラク戦争邦人救出に際し日本航空は安全上の理由で拒否したという歴史が。

 総理大臣が搭乗する政府専用機、といいますと贅沢だ、と反論される方もいるようですが、導入の経緯をみますと分かりますように、政府専用機とは航空自衛隊が運用する大型旅客機を転用した人員輸送機に他ならず、総理大臣だけの専用機ではなく、過去には自衛隊員のイラクへの輸送、北朝鮮からの拉致被害者救出輸送にも運用された、輸送機なのですね。

 政府専用機は、1980年代、日本国民の経済活動範囲が地球規模で拡大すると共に国として必要な場合に即座に運用できる航空機として導入されるとともに、また、当時政治問題化していた日米貿易摩擦の相殺に大型旅客機を日本政府が保有する、という意味合いも含め導入されています。しかし、日本の財政は有限であり、政府専用機に問題が生じました。

 三機体制、要人輸送は一機に閣僚全員が搭乗し、万一の事態となった場合は取り返しがつきません、過去には国連事務総長や国家元首が搭乗したVIP専用機が墜落した事態も実際に発生していますので、国家としてはリスクを回避せねばなりません、その為に、任務機と副務機の2機で運用する原則があるのですね、閣僚と随行員と首相は別々に移動する。

 任務機と副務機の2機、航空自衛隊はそれで2機体制で運用するには、一機が定期整備中に移動する必要が生じた際、また、一機が故障した際に対応できない為、任務機と副務機に加えて予備機の3機体制が必要である、と主張し続けてきましたし、実際、ボーイング747-400を政府専用機として導入した際には実際に、予備機を防衛庁が要求しています。

 大蔵省は、しかし予備機を導入する必要はないとして査定の際に調達を認めませんでした。ただ、航空自衛隊も要人輸送の重責を担う為に、そのまま予備機無しの状態でそのまま放置、という訳にも参りませんので、過去には政府専用機のボーイング747-400に加えて中古のボーイング767旅客機2機を導入する案も示しましたが、財務省は認めませんでした。

 U-4多用途機という、航空自衛隊には要人輸送にあてるビジネスジェットを3機保有しています、2008年の北京五輪には当時の福田総理大臣が政府専用機ではなくU-4に登場し北京を訪問しています、ただ、こちらは航続距離が7800kmしかなく、これはビジネスジェットとしては優秀なのですが、太平洋横断や今回の訪欧には十分とは言い難い性能です。

 現在であれば、2000年代に導入したC-2輸送機やKC-767空中給油機などが航続距離も長く、またKC-767などがありますが、政府専用機が故障したと云って即座に代替に充てられるようにはなっていません、KC-767は旅客機に準じた人員輸送用の客席こそ有していますが、給食設備などは欧州や北米までのVIPの長時間飛行を想定したものではありません。

 任務機と副務機、報道されている限りでは報道員は任務機に搭乗しており、この後に菅総理大臣が搭乗して出発、というところで故障が発覚し、報道陣は副務機に乗り換える事となったようです。すると、今回の訪英はボーイング777-300ERの副務機だけで先行する形で派遣し、不具合が判明した任務機は修理完了後にそのまま派遣、となるのでしょうか。

 政府専用機、しかし、上掲の通り2機体制では不充分であると指摘され続けていますし、防衛省も3号機の導入を幾度も要求してきました。なにしろ日本の政府専用機は単なる大型人員輸送機であり、アメリカのエアフォースワンのような大統領が個人的にも利用できるVIP専用機ではないのです、もう1機を追加したとしてもそれ程負担にはなりません。

 G7サミット訪英へ菅総理出発のその瞬間に、政府専用機故障、もっともアメリカのバイデン大統領もエアフォースワンが大発生したセミの影響で出発が遅れたという椿事も同時に発生しているのですが、敢えて政府専用機の予備機予算、第701飛行隊の3機体制というものを、補正予算ででも考えてみてはどうでしょうか、今がその時機だとも考えるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】金崎宮(福井敦賀)織田信長金ヶ崎の退き口の城址は南北朝時代の恋の宮

2021-06-09 20:08:24 | 旅行記
■金ヶ崎城址は中世の恋の宮
 福井県敦賀市は中世からの日本海における海上交通の要衝ですが、その敦賀港を眼下に収める小高い山に静かな神社の神域が広がるのはご存知でしょうか。

 金崎宮、ここは福井県敦賀市金ヶ崎町の、北陸本線敦賀駅を延々と敦賀港の方へ散策の歩み伸ばしました処に鎮座しています社殿で、もともと金ヶ崎城という、あの織田信長が小豆袋の両端を縛った便りから退路遮断を知らせた、あの金ヶ崎城の城址にある神社です。

 建武中興十五社の一社に列せられています社殿は、また神社本庁の別表神社にも列せられている社殿でして、金ヶ崎山という標高86mの小山の山頂に至る山道の中ほどに参道が石階段を積んでいます。その参道には境内社の愛宕神社などもありまして静かなたたずまい。

 恒良親王と尊良親王を奉じる社殿は、境内に一千本の桜並木が植樹されていまして、敦賀市屈指の桜の名所でもあるといいます。金ヶ崎城の史跡はそれほど多くは残らず、本丸である月見御殿の跡や木戸跡、曲輪と堀切がうっすらと確認できる程度となっていますが。

 金ヶ崎城の歴史は源平合戦の頃、治承寿永の乱の治承年間1180年まで遡る事ができます。敦賀は若狭湾に突き出た小山を城郭とした要衝であり、南北朝時代、新田義貞が籠城し足利尊氏の軍勢と戦った延元元年こと西暦1336年に再度歴史の表舞台に現れる城郭という。

 官幣中社に列せられました金崎宮の歴史は、しかし拍子抜けするほどに新しく明治23年こと西暦1890年に創建成りました。尊良親王を祀る官幣中社金崎宮、この所縁は上掲の新田義貞との歴史まで遡るものがあります、新田義貞は恒良親王と尊良親王を奉じていました。

 足利尊氏の包囲を受けた新田義貞は恒良親王の勧めもあり、いったん包囲を隠密裏に退却し、支城に残る残存兵力を固めて反撃を試みますが、尊良親王はこの城郭にて運命を共にします。明治時代に入りまして神社が創建された背景には、こうした歴史があるのですね。

 金崎宮はもともと金ヶ崎城址のまさに山頂の位置に創建されましたが、社殿を築くには城郭遺構を破壊する事ともなり、また手狭でもあったことから本殿は中腹に造営されることとなりまして、明治26年こと1893年に完成、この本殿が現在に至る社殿となりました。

 金ヶ崎の退き口、さてこの城郭は元亀元年こと西暦1570年の織田信長と朝倉義景との戦いで知られる城郭でもあります、織田徳川連合軍30000名と朝倉浅井連合軍20000名が激突した戦いでは、まず織田信長はこの金ヶ崎城を攻略し越前、今の福井市へ攻撃を進めます。

 しかし、義弟浅井長政が治める小谷城が織田信長に反旗を翻し、この小谷城が琵琶湖東岸に位置する事から本拠地の美濃から遮断される危機的状況となります、これを知らせたのが浅井長政に嫁いでいたお市の方からの陣中見舞いに両端を縛られた小豆袋だった、と。

 織田信長は危機一髪の状況で反転離脱に成功、木ノ下藤吉郎はじめ殿として奮戦した事でも知られています。小豆袋の両端を縛り、こ・これは!、と掌に載せて驚いて見せる冗談は令和時代にも続いているほどですが、その戦いの場所の歴史舞台でもあったのですね。

 御匣殿こと西園寺公顕女。さて合戦の血なまぐさい歴史もさることながら祀られています尊良親王は夫婦関係として西園寺公顕女との恋愛がかの太平記にも記されていまして金ヶ崎恋物語として知られています。後醍醐天皇の子尊良親王は絶世の美男子であったという。

 尊良親王は、とあるときに絵巻物に描かれた美女に恋をするという、今風な二次元への恋の病に悩まされますが、相手が二次元ではどうにもなりません、そこで気晴らしに下鴨神社に詣でますと、糺の森にて琵琶の音が流れ、親王はついふと牛車を降りたと太平記に。

その女官こそが絵画の女性と瓜二つ、中宮という高位の女官であったという。親王は実に千もの恋文を書き続けついに結ばれた、と。こうした歴史から花換祭という祭事が百年ほど前に始り、恋の宮、とも呼ばれるようになっています。戦争の歴史よりも温かみがありますね。

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【防衛情報】イギリス:チャレンジャー3戦車とBGOAA戦闘群,新空母プリンスオブウェールズ

2021-06-08 20:05:41 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回はイギリス特集です。チャレンジャー3戦車の話題を筆頭に日本の防衛政策や90式戦車の改修を含め参考となる点も多いでしょう。

 イギリス陸軍は新たにチャレンジャー3主力戦車の導入を開始する、国防省が5月7日に発表しました。チャレンジャー3は現行のチャレンジャー2主力戦車の近代化改修型にあたり、2027年までに初号車を陸軍第一線部隊へ配備させる方針です。新規製造ではありませんが、全廃の可能性さえあったチャレンジャー戦車は2040年まで運用が続けられる事に。

 チャレンジャー3への改修は、148両が対象となります。改修点は第一に主砲です、弾薬生産が終了しチャレンジャー2の寿命の論拠となっていた120mmライフル砲はL-55/120mm滑腔砲へ換装、分離式弾薬も通常の砲弾へ転換します。第二にエンジン及び懸架装置の換装でイギリス戦車は伝統的に防御と攻撃を重視し機動力の優先度が低く、此処は強化へ。

 改修はもう一つ、防御力についてモジュラー装甲への換装とアクティヴ防御装置の追加が構想されています。改修費用には8億ポンドが想定、一両当たり540万ポンドで邦貨換算では一両当たり8億2000万円の改修費用となります。現在のチャレンジャー2戦車は227両が維持されていますが、改修対象となる148両以外の戦車については発表がありません。
■BGOAA複合地上戦闘群計画
 日本には軽量戦闘車両システム計画や中止となった近接戦闘車計画がありますがイギリスのBGOAA複合地上戦闘群は日本の将来戦闘計画の参考ともなりましょう。

 イギリスのDSTL国防科学技術研究所は2030年代に実用化するBGOAA複合地上戦闘群計画の構成要素と将来展望を発表しました。イギリスはチャレンジャー戦車の改良を決定したばかりですが、2050年代をにらむ将来装備体系としては1980年代の基本設計は必ずしも相応しくは無く、BGOAA複合地上戦闘群は複数の無人戦闘車両により構成される。

 BGOAA複合地上戦闘群はDSTL国防科学技術研究所によれば、CISD近接自衛戦闘能力、MCCO長距離近接戦闘監視能力、CCAAW近接戦闘対装甲兵器運用能力、等を基本とし、具体的には車両間データリンクにより競合地域へ進出し監視及び先鋒としての戦闘を担うと共に、敵機甲部隊への対処も想定しており、2023年ごろに計画を具現化するとのこと。
■BGOAAとボクサー&AJAX
 日本では装軌式共通車体の開発が評価試験段階となっていますがイギリスではまだ導入の始っていない装備をもBGOAA計画へ応用するという。

 イギリスのDSTL国防科学技術研究所が進める将来装備BGOAA複合地上戦闘群計画について、DSTLは既存装備体系の有効活用と新型無人車輛の統合運用を模索しているようです。具体的にはイギリス陸軍が運用を開始したAJAX装甲偵察車の派生型、そしてFV-432後継として導入決定したボクサー装輪装甲車の車体を応用する計画等がこれにあたります。

 ボクサー装輪装甲車は、共通車体を用いたモジュール構造を採用しておりVLS方式でミサイルを搭載した場合射程10km程度の新型ブライムストーンミサイル16発を搭載可能という。ただ、ロッキードマーティン社によれば交戦距離が10kmであれば装甲車に搭載する必要はなく、MAN-SVトラックに50セルものミサイルを大量搭載する案を提示しました。

 AJAX応用車輛については、車上にそのまま8発のミサイルを搭載する案、無人先頭車両はタレス社が既に提案しており、アンテナポールマストに複合センサーを搭載し武装としてRWS遠隔操作銃搭とジャベリン対戦車ミサイル2発を搭載した六輪装輪装甲車の将来軽量車輛概念図が発表されています。DSTLは費用とリスクを慎重に見極めようとしています。
■スピアフィッシュMOD1魚雷
 スピアフィッシュMOD1は海上自衛隊の潜水艦にも欲しい新型魚雷です、物凄い速度を誇るホーミング魚雷ですからね。

 イギリス海軍は改良型のスピアフィッシュMOD1長魚雷のアスチュート級原潜からの運用試験を完了しました。試験に当ったのは原子力潜水艦オーディシャス、アスチュート級原潜の4番艦で2020年就役しました。今回の試験はバハマのアンドロス島に在るAUTEC大西洋海洋評価センターにおいて実施、運用最大深度での実魚雷発射試験を実施しました。

 スピアフィッシュMOD1長魚雷は1992年に開発されたスピアフィッシュ長魚雷の改良型で、80ノットと実用化されている魚雷では当時世界最速となっています。最速の座はロシアのシクヴァール魚雷が200ノットを発揮しますがこれはホーミング装置の無い直進用魚雷であり、誘導可能な現用魚雷では今なおスピアフィッシュ長魚雷の80ノットが最速です。
■新空母プリンスオブウェールズ
 海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦として全通飛行甲板型護衛艦の数を揃えましたが遠征主体のイギリス海軍ではこうした選択肢もあるもよう。

 イギリス国防省は5月6日、新空母プリンスオブウェールズが初の海上公試へ出航したと発表しました。空母プリンスオブウェールズはクイーンエリザベス級航空母艦の二番艦です。建造を担当するBAEシステムズ社はブロック工法により建造され完成していた船体にSI共通インフラストラクチャーネットワークを搭載、システムが完成したとのこと。

 クイーンエリザベス級航空母艦は基準排水量45000t、満載排水量67800t、全長284mの航空母艦で乗員は679名、司令部要員と航空要員を併せ1600名が乗艦、最大の特色は世界初の第五世代戦闘機専用設計を採っている点でF-35B戦闘機を最大40機と各種ヘリコプター8機、合計で48機を搭載します。発進は甲板上スキージャンプ台による短距離発艦を行う。

 プリンスオブウェールズは2011年5月26日に起工、2017年に進水式を迎えており2019年に竣工式を迎えています。イギリス海軍では竣工式とともに初度作戦能力を獲得するまで公試が継続される建造方式を採用しています。建造費用は31億ポンド、近く初度作戦能力を獲得の際にはイギリス海軍は2隻の空母によるローテーション運用が可能となります。
■テジャスmk2戦闘機へ協力
 航空自衛隊将来戦闘機へのイギリスの技術協力が一時模索されました、テンペスト計画の延長線上の話題です。

 イギリス政府はインドが開発するテジャスmk2戦闘機へ技術協力する方針を発表しました。これは5月に行われた英印電話首脳会談においてイギリスのボリスジョンソン首相と印度のナレンドラモディ首相との間で交わされたインド太平洋地域での安全保障協力強化の一環として示されたもので、この他に情報共有や艦艇用エンジン開発でも協力を進める。

 テジャスmk2戦闘機は、インドが長年の期間を掛けて開発したナット軽攻撃機後継機計画で、余りに長期開発された為に完成しないのではないかと危ぶまれていた航空機です。イギリスはロールスロイス社による戦闘機用エンジン開発や、操縦システム開発支援など、ユーロファイター計画での知見をインドの国産戦闘機改良型の短期開発へ活かすという。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】イージス艦SPY-6レーダー実用化と中国055型駆逐艦,P-8AとNOMARS無人艦

2021-06-07 20:13:05 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回は海軍艦艇や潜水艦などの話題について論点を集めてみました。先ずはイージス艦まや型よりも新しいイージス艦のレーダーについて。

 アメリカ海軍が導入する初のSPY-6レーダー搭載イージス艦ジャックHルーカスがSPY-6レーダーの搭載を開始したとの事、インガルス造船所にて建造が進むDDG125ジャックHルーカスはアーレイバーク級ミサイル駆逐艦最新型のフライト3最初の艦で今やイージス艦の代名詞となったアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の75番艦となっています。

 SPY-6レーダーは従来のイージスシステムを支えたSPY-1レーダーの次世代レーダーにあたり、探知距離や追尾目標数が大幅に増大しました。アーレイバーク級に搭載されるSPY-1は初のイージス艦タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦よりも小型のものでしたが、新型のSPY-6レーダー搭載によりその防空能力はタイコンデロガ級を大幅に上回る事となります。
■パキスタン輸出用054型
 写真は大型の052型で代替します。なかなか中国の艦艇を日常的に日本が親善訪問で行き交うには厳しい情勢が。

 パキスタン海軍が中国から取得する054型フリゲイト江凱型はVLSとAESAレーダーを搭載するとのこと。054型は中国海軍最新型のフリゲイトで満載排水量は4050t、ステルス性に配慮した設計となっています。搭載されるAESAレーダーはSR2410Cフェーズドレーダー、またVLS垂直発射装置は32セル型で、YJ-12巡航ミサイルを搭載するという。

 環球時報が報じるところによればパキスタン海軍は2017年の契約で4隻の054型フリゲイトを導入する事としている他、元型潜水艦の導入、そして将来的には中国海軍が初めて導入する事となった対潜哨戒機の導入を要請しているとのこと。VLS以外にもC-803対艦ミサイルを発射筒に搭載しており、複数の巡航ミサイルを搭載する不思議な設計の艦ですね。
■中国KJ-600艦載早期警戒機
 中国も空母部隊を増強するのに当ってアメリカのE-2Cのような早期警戒機の艦上型を模索しています。

 中国海軍は空母艦載用に新たにKJ-600早期警戒機を開発し1月27日から試験飛行を実施中ですが、KJ-600早期警戒機について現在運用している中国海軍2隻の航空母艦からは運用できない可能性があるようです、KJ-600早期警戒機はアメリカのE-2C早期警戒機、自衛隊も多数を運用する早期警戒機とよく似た形状の双発早期警戒機となっていますが。

 KJ-600早期警戒機について、現在中国海軍が運用する空母遼寧、空母山東はスキージャンプ台方式の飛行甲板を採用している為、仮に最高度のエンジンを搭載したとしても現在の飛行甲板延長とスキージャンプ台では運用は難しく、今後中国海軍が建造するカタパルト採用の航空母艦でなければKJ-600早期警戒機は運用できないという構造上の限界です。

 中国海軍は空母建造を大車輪で進めていますが、現在建造中の空母はSu-27クラスの大型艦載機を運用する事は出来るものの、重装備の艦載機を運用させるカタパルトを有さず、また艦載機もMiG-29のような戦術戦闘機ではなく、スキージャンプ台に向かない制空戦闘機であることからその能力に限界があり、中でも早期警戒機を運用出来ない点は問題です。
■中国ソブレメンヌイ級近代化
 中国海軍が初めて導入したまともな水上戦闘艦艇はロシア製のソブレメンヌイ級でした。

中国海軍はロシアから2000年代前半に導入したソブレメンヌイ級駆逐艦にYJ-12対艦ミサイル搭載の近代化改修を実施したとのこと。ソブレメンヌイ級駆逐艦はソ連が冷戦後期に建造した防空駆逐艦でアメリカのターターシステムに匹敵するシチル防空システムを搭載すると共に、強力なサンバーン超音速対艦ミサイルを搭載、極めて強い打撃力を有した。

 ソブレメンヌイ級を導入した2000年代初頭に中国海軍はまともな艦隊防空艦を有さず、重宝されているが、サンバーン対艦ミサイルは巨大であり、また中国国産ミサイル体系の整合性に不協和音が生じていた。この為、YJ-12対艦ミサイル4連装発射装置を2基、サンバーンに代えて導入している。また中国海軍はVLS垂直発射装置の追加も検討している。
■ジョンCステニス核燃料交換
 原子力空母のジョンCステニスがおおがかりな核燃料の交換工事に入ります。

 アメリカ海軍は原子力空母ジョンCステニスRCOH核燃料換装工事に関して29億ドルのハンティントンインガルスインダストリーズとの契約を結んだとのこと。これはRCOH複合重整備といい、核燃料や原子炉周辺区画の核燃料交換に関する整備とともに艦内の航空機用および僚艦用燃料区画の改良や2300の区画の近代化、システム改良等をおこなう。

 ハンティントンインガルスインダストリーズはこのRCOH複合重整備により原子力空母の耐用年数を50年に渡り高い水準とする事が可能とのこと。もっとも原子力空母は50年間の運用に際して全体の35%が、このRCOHにより造船所に入渠していることとなっており、今回のジョンCステニスRCOHについても29億ドルの巨費を投じ3年間造船所に留まる。
■仏次期戦略ミサイル原潜
 フランスは核戦力の維持と近代化を重ねていますが北朝鮮からの遠いフランスへの核恫喝や中国の核戦力強化を考えますと安易に核軍縮に踏切れば逆に戦争を引き起こす懸念を理解しているのでしょう。

 フランス海軍はルトリオンファン級戦略ミサイル原潜後継艦となる第三世代型SSBN4隻の建造計画を開始したとのこと。これはフランス国防省がSNLE-3G計画として進めているもので、フローレンス-パルリ国防相が2月19日にノルマンディーのヴァル-ド-ルイユDGAフランス国防調達庁船体形状研究センターを視察した際にてその開始を発表したもの。

 ルトリオンファン級戦略ミサイル原潜はフランス核戦略の中枢を担っており、冷戦時代にはアルビオン高原に配備されたソ連西部を狙う中距離弾道ミサイルやミラージュⅣ戦略爆撃機が配備されていましたが、いずれも除籍されています。空軍や海軍のラファール戦闘機にはASMP核巡航ミサイルが配備されていますが射程は戦術用、SSBNの地位は高い。

 SNLE-3G計画におけるルトリオンファン級戦略ミサイル原潜後継艦は、現行よりも大型化するものとみられ、全長は150mと水中排水量15000tを想定し2035年以降順次竣工させる方針という。フランスはドゴール政権時代から原子力潜水艦は攻撃型原潜よりも戦略ミサイル原潜を重視していますが、今回の計画は新空母建造と時期が重なることとなります。
■インドネシア潜水艦増強
 先日事故が痛ましい沈没発生したインドネシアの209型ですが韓国でライセンス生産された改良型を取得しています。印象ですがインドネシアは潜水艦運用基盤が増強に追いついていない。

 インドネシア海軍は3月17日、韓国よりドイツ209型韓国仕様チャンボゴ級潜水艦新造艦アルゴロの引渡を受けました。インドネシア政府は2011年に韓国との間でチャンボゴ級3隻の導入に関する11億5000万ドルの契約を締結しており、2017年に引渡一番艦となるナガパサが、2018年に二番艦となるアルダデダリがインドネシアへ引き渡されています。

 チャンボゴ級潜水艦は韓国がドイツより技術移転を受けライセンス生産したもので水中排水量1290t、1993年に一番艦チャンボゴがドイツより到着、4番艦から韓国で建造、2001年までに9隻が建造され韓国海軍へ引き渡されています。インドネシア政府はチャンボゴ級について、今回まで引き渡された3隻に加え、更に3隻の導入を2019年に契約しました。
■055型駆逐艦二番艦は”ラサ”
 占領地の地名をそのまま軍艦に関するというのは若干無神経なように思えます。

 中国海軍は10000t級055型駆逐艦二番艦の艦名をチベットの地名であるラサとしました。055型駆逐艦は全長182mで満載排水量12000tから13000t規模とする大型の防空駆逐艦で、10000tを越える大型船体の設計は、中国海軍が建造を進める航空母艦部隊の護衛用に開発されたため、航続距離を延伸し充分なミサイルを搭載するべく船体が大型化しました。

 055型駆逐艦の防空能力は比較的高く、大型と小型のAESAレーダーにLバンドレーダーとSバンドレーダーの異なる電波特製を有する周波数帯域のレーダーを搭載し、5860-2006型垂直発射装置VLSに各種ミサイル112発を搭載しており、これは数ではアメリカ海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の122発に迫る強力なミサイル搭載数といえるでしょう。

 ラサ。2番艦の、この艦名には中国による人権侵害が強く指摘されている各国のチベット地域からの亡命者団体により批判の声が上がっています。艦名については一番艦が南昌、また建造が進む5番艦が大連となっていまして、055型駆逐艦は8隻まで進水式を終え建造が進められており、遅くとも再来年までには055型駆逐艦は一定数が揃う事となります。
■台北が人民解放軍艦候補に
 ここまでやられると除籍した初期のタイコンデロガ級を台湾に供与して台北という艦名を先に命名してはと思う。

 055型駆逐艦将来の艦名に台湾の台北が冠せられる可能性があります、これは中国海軍が竣工させた055型駆逐艦二番艦ラサはチベット自治区の首都ラサ市の名が冠せられていますが、中国国営CCTVによれば、中国国内において2018年頃に055型駆逐艦2番艦の艦名候補を募集する機会があり、もっとも票数を獲得したのが台湾の台北であった、という。

 台北の艦名が決定していれば、台湾との関係が更に明かした事は想像に難くありません。台北の他にCCTVによれば、広西チワン自治区の広西やチベット自治区のチベット等が票を集めたとしており、現在055型駆逐艦は8隻が建造中であるとともに5隻の艦名が2番艦竣工時点で未定である事からこうした艦名が国際係争に影響を及ぼす可能性もあります。
■ドイツのP-8A導入計画
 P-8A哨戒機、ドイツ軍も日本製のP-1哨戒機は採用してくれませんでしたね。

 ドイツ連邦軍はアメリカ製P-8Aポセイドン海洋哨戒機5機を17億7000万ドルで取得する計画で2021年3月にアメリカ国務省が対外有償供与を決定しました。ドイツ海軍では1989年よりフランスブレゲー社製アトランティック2対潜哨戒機を運用していますが、5か国に採用されたアトランティック2の生産数は28機と少なく、後継機もありません。

 アトランティック2哨戒機に続いてブレゲー社はアトランティック3の開発を一応予定していましたが、冷戦終結により対潜哨戒機の需要が激減し28機で完了すると同時に後継機開発を中止しています。また近代化改修の頻度も低く陳腐化が進むと共に運用期間を24年と見込んでいた為に老朽化が進み、ドイツ連邦軍は中古のP-3C哨戒機を暫定導入しました。

 アメリカ製P-8Aポセイドン海洋哨戒機5機の導入は、このP-3C哨戒機老朽化を受けてのものでした。総額17億7000万ドル契約の内訳は機体価格に加え、MIDS JTRS統合戦術無線装置5セット、AN / AAQ-2(V)I音響システム、APY-10レーダー、ALQ-240電子支援装置、CCM-701A暗号化装置、AN/ALE-47機体自衛装置等を含んだものとなっています。
■NOMARS無人艦船
 アメリカ海軍は艦艇の無人化を次世代の水上戦闘システムに大胆に内部化する取り組みを進めています。

 アメリカ国防総省国防高等研究計画局DARPAは将来のNOMARS無人自律航行型艦船コンセプト設計についてL3ハリステクノロジーズとの間で覚書を交わしたとのこと。NOMARS無人自律航行型艦船はセンサー等を搭載し太陽光発電を補助動力として数か月間に渡る情報収集や哨戒任務にあたる艦船を想定しており、無人機との連携も視野に置く。

 NOMARS無人自律航行型艦船は今のところセンサーとしての機能を求めるとともに将来的には自航式艀のような形状とした上で無人航空機と連動し海上兵站拠点を構築する研究や、水上戦闘艦との連携に留まらない運用等も研究している。L3ハリステクノロジーズとの契約は基礎的な船体設計を目指すフェーズ1に位置付けられ、更なる発展も見込まれる。


北大路機関広報:以下は”F-16戦闘機用MS-110偵察ポッドとロシア製Su-34&Su-35戦闘機輸出交渉”として誤って二重作成した記事です。
■週報:世界の防衛,最新12論点
 今週は空軍関係の話題を中心に。F-16が新型の偵察ポッドを搭載するとの事で無人偵察機全盛時代にあって戦術偵察機の必要性を垣間見た印象です。

 アメリカ空軍はF-16戦闘機用MS-110広領域空中偵察システムについてレイセオン-コリンズエアロスペース社との間で契約を締結しました。MS-110広領域空中偵察システムはポッド式偵察装置でF-16戦闘機胴体下部に装着するもの、増槽型のポッドは側面及び下部にセンサー窓を配置しており、F-16戦闘機の高い戦術機動下でも作動が確保されています。

 MS-110広領域空中偵察システムは、長距離目標に対する昼夜天候を問わないカラー映像及び識別用偽色着色映像をリアルタイムで収集且つ伝送可能で、平時の監視任務は勿論、有事の戦術偵察にも威力を発揮します。近年この種の任務はMQ-9,RQ-4といった無人偵察機が多用されている一方、生存性を考えた場合にアメリカ空軍の選択肢は興味深いでしょう。
■EA-18G電子攻撃機近代化
 EA-18Gは電子攻撃能力の高い航空機であり電子戦専用航空機の導入を自衛隊も検討していた事を考えますと興味深い装備です。

 アメリカ海軍はEA-18G電子攻撃機の近代化改修について5年間の改修契約をボーイング社との間で締結しました。EA-18G電子攻撃機は海軍が運用する唯一の電子攻撃機でありアメリカ陸海空海兵宇宙の五軍で唯一の電子攻撃機となっています。この近代化改修は電子監視能力の強化、データリンク性能の強化、次世代妨害装置ポッドの搭載が主眼という。

 EA-18G電子攻撃機の近代化改修は既に3月中に初号機が納入されており海軍での評価試験から既存運用体系の適合化という段階まで進んでいるとの事で、問題が無ければ2021年6月にもフルレート生産により既存のEA-18G電子攻撃機の近代化改修が開始される予定で、海軍は今後五年間で保有するEA-18G電子攻撃機全ての改修を完了させる予定です。
■ロイヤルウイングマン最新論点
 ロイヤルウイングマンは無人航空機の長所である長時間の滞空などの利点を敢えて切り捨てて有人戦闘機の支援に当る航空機です。

 オーストラリア軍が開発を進めるロイヤルウイングマン無人僚機は3月2日、初飛行を実現しました。ロイヤルウイングマンはボーイング社とともに開発を進めていた無人航空機で従来の大型無人機が速度と機動性を犠牲に滞空時間と進出距離を強化していたのに対し、ロイヤルウイングマンは有人戦闘機に連携し共に飛行する機動力を持つ無人機という。

 ロイヤルウイングマンは機体完成後、初飛行に向け地上でのデータリンク実験やナビゲーションシステムの試験などを経て高速滑走試験に移行、そして3月2日の初飛行に至った形です。無人僚機の任務はセンサーを搭載し索敵支援、若しくはミサイル等に追われた際の囮、また将来的には無人空中給油機等の用途が見込まれる新しい世代の無人航空機です。

 無人僚機は高い機動力を以て第五世代戦闘機と協同しますが、僚機は同型機という原則から外れている事は確かです。更に機首を交換する方式というセンサー部分の性能次第で取得費用が増大する可能性はあり、また果たして超音速巡航性能を有する第五世代戦闘機に随伴できるかは未知数の部分があります、今後の展開を慎重に観る必要があるでしょう。
■インドネシアSu-35輸出交渉
 Su-35,航空自衛隊のF-15戦闘機近代化改修型に匹敵する第4.5世代戦闘機です。

 インドネシア政府はロシアとの間で2018年に契約されたSu-35戦闘機導入を一時停止した可能性があります。これは2月18日にインドネシア政府が発表した2024年までの国防調達計画にSu-35戦闘機が含まれていなかった点によるもので、正式な費用契約は早くとも2025年以降まで延期される事となります。この頃には仕様も変更されていましょう。

 Su-35戦闘機はロシア製の第4.5世代戦闘機で優れた空戦機動性に対し稼働率を抑える分、取得費用を抑えられる事でも知られます。しかしインドネシアはロシア経済制裁を理由としてSu-35戦闘機の費用支出への難色を示しており、一方でインドネシアからは韓国とのKF-X共同開発、ラファールやF-15仮契約、またF-35希望等様々な発表が流れていました。
■イスラエルKC-46導入へ
 イスラエルもKC-767の系譜に当るKC-46を導入するのですね。

 イスラエル政府は2月22日、KC-46空中給油機やF-35戦闘機導入に関する90億ドルの国防支出計画を閣議決定した。イスラエル政府はアメリカ政府との間でこれら装備品とともにV-22可動翼機及びCH-53K重輸送ヘリコプターの取得交渉を進めており、F-35増強計画を加えると全体で380億ドルに達する国防計画を推進中、内90億ドルが決定へ。

 KC-46空中給油輸送機はこの中でも、現在運用するKC-135空中給油機の老朽化が深刻であり、この代替が求められていた。今回の90億ドルに上る閣議決定にはKC-46空中給油輸送機2機の取得費用が含まれており、イスラエル航空宇宙軍では将来的にKC-46空中給油輸送機8機を2億4000万ドルで取得する計画だ。今後はアメリカ国務省の審査を受ける。
■サウジのSu-35国産化交渉
 サウジアラビアは防衛装備国産化を進めるようですがF-15ライセンス生産ではなくロシア製装備の方へ舵を切るもよう。

 サウジアラビア政府はロシア政府との間でSu-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステムの導入及び技術移転の交渉を本格化させました。これはロシアのロステック社セルゲイチェメゾフ最高経営責任者がロシアテレビとのインタビューに応じたものでサウジアラビア政府は2030年までに国軍が必要とする防衛装備50%の国産化を目指す計画の一環に。

 Su-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステム、この導入は2019年より交渉が開始され、サウジアラビア政府は国営防衛産業SAMIにこの二つの装備の国内生産化を目指しており、現在既にカラシニコフAK-103,TOS-1A広域熱圧焼却兵器等の生産移転交渉が進められています。ただ、アメリカの反発は必至でF-35等にアクセスできなくなる懸念があります。
■エジプトはSu-35要再検討か
 エジプトもSu-35を導入するようですが長期的に考えれば機体寿命の長いF-15Eを導入すればエジプト空軍の既存のF-16と整合性がとれるようおもう。

 アメリカ政府アントニーブリンケン国務長官はエジプト政府が進めるロシア製Su-35戦闘機導入について懸念を表明した。エジプト政府はSu-35戦闘機の調達へ20億ドルのロシアとの契約を締結しているが、アメリカ政府はエジプト政府へ毎年10億ドルに上る国防援助や、今後エジプト軍が最新のアメリカ製兵器へアクセスできなくなる可能性を示唆した。

 Su-35戦闘機については導入する事によりエジプト軍の装備するF-16戦闘機などとデータリンクを形成する為、ネットワークの一体化が損なわれると共に技術情報が自動的に連接し漏洩する懸念が指摘されている。この点について、アメリカは常に厳しく、トランプ政権時代にトルコ軍がS-400ミサイルを導入した事でF-35戦闘機供与を停止したままである。
■自衛隊,コヨーテ標的機追加
 超音速無人標的機、自衛隊は訓練支援艦から複数の高速標的無人機を用いて飽和攻撃を再現し高度な訓練を行う事が可能です。

 アメリカ海軍は日米両軍が運用するGQM-163Aコヨーテ超音速標的機18機について5550万ドルの契約をノースロップグラマン社との間で締結したと発表しました。18機のGQM-163Aは14機がアメリカ海軍に、3機がアメリカミサイル防衛局に、1機が海上自衛隊に納入されます。今回のGQM-163A生産は計画全体では第15次生産分となりました。

 GQM-163Aコヨーテ超音速標的機、これは直超音速目標への対処を訓練する為のドローンで巡航速度はマッハ2.5以上、海面上6mの低高度を飛翔した場合の飛翔距離は90kmに達するといい、全長5m、直径は30cmとなっています。このドローンは所謂シースキミング極超音速ミサイルを再現するもので、艦隊防空の基盤構築には重要な標的用無人機です。
■ヴェトナムがアメリカ製練習機
 T-6Aはプロペラ機ではありますが高出力エンジンを採用し限定的にジェット練習機の訓練を代替する事が可能です。

 ヴェトナム空軍はアメリカ政府よりT-6AテキサンⅡ練習機3機導入の提案を受けたとのこと。これは現在ヴェトナム空軍の戦闘機要員養成の一部がアメリカ国内で実施されている為で、既にヴェトナム空軍には34名のアメリカ留学出身要員が操縦要員として任務に当っているとのこと。ここでT-6Aをヴェトナムが導入した場合、訓練の効率化が図れます。

 T-6AテキサンⅡ練習機はスイスのピラタス社製PC-9高等練習機のアメリカ仕様で、一見初等練習機の様なターボプロップ機ではありますが、強力なエンジンを搭載しておりジェット練習機を用いる中等練習課程の一部を担えるだけの性能を有しています。アメリカヴェトナム艦の地域安全保障協力支援戦略的プログラムの一環としての提案といえましょう。
■ハンガリー,ロシア機生産
 T-7練習機よりも前の基礎練習機というものが世界には在るのですが、初等練習機とモーターグライダーの中間あたりです。

 ハンガリーのZrtアビエーションエンジニアリング社は3月17日、ロシアのイリューシンIl-103初等練習機のライセンス生産契約を締結したとのこと。ハンガリーはNATO加盟国で、ロシアからの兵器技術移転はクリミア併合を受けての対ロシア経済制裁へ影響する可能性がありますが、イリューシンIl-103初等練習機のハンガリー軍採用は行われません。

 イリューシンIl-103初等練習機は定員4名の初等練習機で単発式、初等練習機としての用途に加えて連絡飛行や後部座席をフラット化し急患輸送にも対応するとのこと。ロシア機らしさといいますか、格納庫以外での長期保管でも機体構造が劣化しない。イリューシンは本機を民間用と強調していますが、NATO加盟国を潜在的市場と考えているのでしょう。
■アルジェリアSu-34輸出交渉
 Su-35とよく似たSu-34,これは輸出が実現するならば初の事例となります、多用途性が高く対艦攻撃は勿論対潜哨戒まで可能ともいわれる。

 アルジェリア空軍はロシアからSu-34戦闘爆撃機14機の導入について大きく前進したとロシア国内報道スプートニクニュースの報道がありました。アルジェリアは2020年にロシア製第五世代戦闘機Su-57戦闘機14機を20億ドルにて取得する契約を結んでおり、この延長線上に強力な打撃力を有するSu-34戦闘機の交渉も2021年内の締結を目指すという。

 Su-34戦闘爆撃機はSu-27戦闘機の余裕ある機体設計を原型とし、カモノハシの嘴やアヒル顔と称される独特の並列複座式の操縦席が外見上の大きな特色となっています。アルジェリア仕様の機体はSu-34MEとされ、ロシア空軍は中期計画に20機のSu-34を取得する計画ですが、この内の14機をSu-34MEへ改修する見込み、Su-34輸出は今回が初となる。
■F-35B,機関砲ポッド不具合
 F-35B,自衛隊が採用したF-35Aは機関砲を搭載していますがF-35Bはポッド式を採用している。

 アメリカ海兵隊が運用するF-35Bに機関砲のPGU-32/U-SAPHEI-T砲弾に不具合が発生したとの事です。アメリカ海兵隊は3月12日、ユマ試験場においてGAU-22/A25機関砲よりPGU-32/U-SAPHEI-T焼夷曳光機関砲弾発射試験を実施した際、砲弾が発射直後に爆発し、機体の一部が損傷する事故となりました。人員負傷や墜落事故には至っていません。

 PGU-32/U-SAPHEI-T砲弾の事故はクラスA事故と位置づけられました、これは250万ドル以上の物損か航空機全損若しくは死者が出た場合の事故となります。F-35BおよびF-35Cは機関砲をガンポッド方式で搭載しています。GAU-22/A25機関砲には220発の砲弾が内蔵されており、海兵隊では事故発生を受け、爆発事故の原因を調査しているとのこと。

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【映画講評】史上最大の作戦-The Longest Day(1962)【2】200万上陸の欧州大反攻

2021-06-06 20:10:28 | 映画
■20世紀フォックス渾身の大作
 この映画は1962年というまだ第二次世界大戦の記憶が確かな頃に思い返す映画、という気概のこもった大作です。

 史上最大の作戦。本作はダリルザナック制作渾身の超大作ですが、一人一人に焦点を充てた映画というよりは、幾つかの舞台、部隊でもある、その一幕一幕の群像劇を集大成し、一種のクラウドのようにノルマンディー上陸、歴史の転換点、というものを描いています。そして登場人物もそれだけ多いのですね。その登場人物は一幕ながら主演級が支えている。

 ドイツ西方軍参謀総長ブルーメントリット大将を演じるクルトユルゲンスは、全般情勢を冷静に俯瞰した上で事実と、そして実行したならば歴史を転換させ得る助言を参謀の職責として提言するが政治的に受け入れられない、という様子があります。そして司令部や第一線師団、市民とレジスタンスと、複数同時進行でDデイへと向かってゆく構成で進む。

 ジョンウェインが演じる第82空挺師団バンダーボルト大隊長を筆頭に一人でも存命ならば大作映画を撮影できるほどに多くの名優を惜しみなく投じたところが本作品の特色というところでして、それは同時に連合軍とドイツ軍の複数主人公たちが織りなす群像劇の同時進行から、連合軍の大陸反攻という一大作戦を交響詩のように織り上げてゆく作品です。

 ロンメル将軍は元帥でドイツB軍集団長、そしてもう一人フランスにはドイツ西部軍総司令官のゲルトフォンルンテシュテット元帥、連合軍はどこに上陸するのか、当時すでに地中海のイタリアに上陸している連合軍はイギリスにも集結しており、イギリスから近いパドカレーか、逆に遠いノルマンディか、オランダベルギーか、どこかに上陸すると備える。

 ハンスクリスチャンブレヒ演じる第352沿岸師団のブルスカット少佐は愛犬のシェパードとともに海岸トーチカに重砲と機銃を並べつつ、師団司令部のノルマンディは遠すぎて上陸はないとの楽観論に不安を抱く。同じ頃第84軍団長マルクス大将はじめ数人の指揮官は、敢えて悪天候に乗じて遠いノルマンディに上陸するのではないかと危惧はしているが。

 ハインツラインケ演じる撃墜王ドイツ第26戦闘航空団司令のプリラー大佐は西方空軍司令部の講じた戦闘機部隊の内陸疎開に電話で激しく抗議する、電話を受けるヘイガー大将に第一線指揮官と撃墜王の勘から、今きたらどうにもならない、海岸線を即座に叩ける位置に戦闘機を戻せと主張するが、自らと僚機以外の戦闘機は遠く疎開したままであった。

 第82空挺師団のジョンウェイン演じるバンダーボルト大隊長と副師団長のロバートライアン演じるギャビン准将とともに第82空挺師団はイギリスで待機しつつ命令を待つ、その命令とはノルマンディ上陸に先立ち内陸部へ空挺降下し、連絡線を遮断し、反撃のために内陸に温存されているドイツ軍戦車部隊主力の海岸堡への前進を身を挺して阻止する任務へ。

 ピーターローフォード演じるイギリス第3歩兵師団コマンド中隊のローバット中佐はイギリス第6空挺師団の兵士とともにグライダーで内陸部を強襲したうえで援軍到着まで橋梁を確保し、死守、最後の一人が戦死するまで橋梁をドイツ軍に通行させないとの命令を受けるが、果たして短機関銃と手榴弾だけの装備でドイツ軍を阻止できるものなのだろうか。

 リチャードバートン演じるイギリス空軍スピットファイア操縦士キャンベル少佐は任務飛行を終え一人パブにグラスを傾ける、戦友が戦死した飛行の直後、声をかけられた同僚にその事実を伝えると同期はもう数えるほどしか残っていないなと呟かれ、しかし次の作戦はより過酷なものになるだろうとの予見し、幸運が続くか倦怠感かとグラスを傾ける。

 ドワイライトアイゼンハワー大将を演じるのはヘンリーグレイス、連合軍総司令官のアイゼンハワー大将は悩み抜いていた、上陸するには大潮など日にちが限定される、時機をはずせば取り返しのつかない人的損耗を強いられ、アメリカイギリスフランスはじめ自由を標榜する有志連合の連合国は枢軸国に破れる、今が決断の時機なのか、悪手で次なのか。

 アイゼンハワーは決断できまい、ドイツ軍上級指揮官は今上陸したならば完璧な奇襲となりうるが、アメリカ軍の北アフリカ戦線での判断力、イタリア戦線での状況を考えれば、政治的な判断を軍人に強いている状況から、アイゼンハワーは決断できないだろうと思い描くそのころ、アイクは幕僚たちを集め、自らの決断を吐露する。こう映画は進みます。

 ロバートミッチャム演じる第29師団副師団長コータ准将は揺れる輸送船の上で延々と続く待機命令とともに、しかし上陸作戦へ備える。上陸作戦では艦砲射撃とともにドイツ軍の海岸要塞を徹底的に叩くはずだったが、彼らが上陸したのは上陸地点を誤り、無傷の海岸要塞がコンクリートの巨大な海岸トーチカ群を聳えさせるまさにその目の前であった。

 史上最大の作戦、世界史で学ぶ通り、オーヴァーロード作戦がどのように進んだのかは歴史として知っています、ただ当時の空気を描こうとしている、それもノルマンディー上陸を背景とした個々の戦闘を描くのではなく全体像として、という、これが史上最大の作戦という映画そのものです。それだけに監督も一人ではなく、数多くの監督が協力している。

 ケンアナキン監督、“バルジ大作戦”の監督として名高い監督はイギリス部分を、有名なドイツ末期戦での少年兵の戦いを悲壮に描くあの“橋”のメガホンを執ったベルンハルトヴィッキ監督がドイツ部分を、朝鮮戦争に挑むF-86飛行隊の活躍を描いた第八ジェット戦闘機隊を撮影したアンドリューマートン監督が、アメリカ部分を、それぞれ撮影しています。

 NHK-BSプレミアムにて明日6月7日1300時からの“プレミアムシネマ”放映映画に放映されます映画“史上最大の作戦”、もちろん平日ですので直接視聴するのは簡単ではありませんが、録画して1944年6月6日の出来事、連合軍にもドイツ軍にも一番長い日となった6月6日戦いの様子を回顧する意味合いのある大作映画、ご覧になっては如何でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【映画講評】史上最大の作戦-The Longest Day(1962)【1】ノルマンディ上陸作戦描く

2021-06-06 18:12:30 | 映画
■六月六日,欧州反攻発動
 富士総合火力演習が毎年島嶼部防衛を想定し盛上るところですが本日はあの”Dデイ”です。

 NHK-BSプレミアムにて明日6月7日1300時からの“プレミアムシネマ”放映映画に“史上最大の作戦”が放映されるとのこと。1962年のアメリカ映画なのですが、6月7日に放映する、というところがNHKさんわかっているなあ、というところでしょうか、そうその前日である本日6月6日は“Dデイ”なのですね、これに併せての戦争映画放映という。

 史上最大の作戦、1944年6月6日に実施されたノルマンディ上陸の連合国軍欧州反攻作戦の火蓋が切って落とされたその瞬間に至る人々を描いた映画で、原作はThe Longest Day,いちばん長い日。アメリカ人ジャーナリストのコーネリアスライアンが著したノンフィクションを20世紀フォックス映画が文字通り社運をかけた超大作として映画化したものです。

 20世紀フォックス映画のダリルザナックはこの作品に先んじて会社が映画“クレオパトラ”を制作しましたが、壮大な歴史叙事詩を映画で再現するという交渉な試みは、最盛期のエジプトを映画セットとして装飾品を含め再現する事となり、要するに制作費が過大となり映画会社が傾く程となったのですね。そこで、同時期に制作された本作が注目されました。

 オーヴァーロード作戦、大君主作戦と呼ばれるこの作戦は両用艦艇5000隻を一挙に投入し、ドイツ軍の警戒の薄いフランス大西洋岸へ200万の連合軍を上陸させるという途方もない作戦で、上陸した連合軍の規模は1991年湾岸戦争の4倍、沖縄戦の5倍という規模、上陸初日だけでも16万の兵員が上陸しています。そしてドイツ軍は38万が布陣していました。

 運命に立ち向かう人々を群像劇で描く映画、史上最大の作戦というものはそうしたものといえるかもしれません。なにしろ1944年当時の欧州は、1940年にフランスが降伏しフランス救援に派遣されたイギリス軍が武器さえ捨てて身一つでダンケルクからドーバー海峡を渡り撤退した後、ノルウェー含め全欧が枢軸国とその占領地、イギリスのみが生き残る。

 しかし1941年12月の真珠湾攻撃を受け、日本は枢軸国の一翼を担った事からアメリカ参戦はドイツへの参戦も意味し、巨大な工業力をもつアメリカの参戦により徐々にイギリスは不利ではない状況が醸成されています、北アフリカではエルアラメインの戦いでドイツ軍の前進を阻止し、地中海の制海権を維持、ドイツはソ連との戦いで消耗を重ねてゆく。

 オーヴァーロード作戦は、ここで西欧地域に連合軍が上陸する事でドイツにソ連との東部戦線と並ぶ西部戦線を構築させ、二方面作戦胃より戦力を分散、各個撃破を図る、という構想のもとで行われていますが、成功したというのは後世わたしたちの視点であり、当時は成功するか怪しかった、1943年にフランスのディエップへ上陸作戦を行い失敗している。

 The Longest Day、この意味するところは映画の冒頭にヴェルナーヒンツ演じるロンメル将軍が海岸線防御陣地構築を視察しつつ、"連合軍が上陸したその日の内に全てが決まる、その日が連合軍にもドイツ軍にも一番長い日となるだろう、いちばん長い日、だ"と訓示する描写によるもので、24時間以内に撃破できなければ海岸堡を捕られドイツは敗北だという。

 ノルマンディ上陸、しかし激しい戦闘は繰り広げられますが、後の作品の様な生々しい戦闘描写はありません、それもそのはず、1962年公開は終戦から17年、私たちが2003年イラク戦争を思い浮かべる程に皆さん戦争の体験者でしたので現場は知っている、あの戦争は何であったのかを思い返す、全体像と命の意味を知りたい、そうした映画だったのですね。

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【総火演2021特集-第四回】須走海岸へ敵上陸!島嶼防衛想定の富士総合火力演習後段演習

2021-06-05 20:20:45 | 防衛・安全保障
■総火演後段演習状況開始
 実況口述筆記から疑似体験する富士総合火力演習2021はいよいよシナリオ仕立ての後段演習が状況開始です。

 須走海岸へ敵上陸、偵察小隊の通信が入る、120mm迫撃砲による前進阻止射撃が行われました。すると続いて中距離多目的誘導弾が実際に射撃を行う。120mm迫撃砲と中距離多目的誘導弾の連携が展示され、座標目標を共有した点を強調した。いよいよ戦闘開始へ進む。

 105mm砲が動き始めた、つづいて16式機動戦闘車が近接戦闘部隊として射撃、敵装甲車を撃破すると陣地変換へ。敵装甲車のイラストがコマツの車両にそっくりでして、あれ問題はあったと思うのですが、そのまま開発中止開発費返却を求める防衛省もどうもなあ。

 コマツの新型装甲車、確かにパトリアAMVやモワクピラーニャと比較すると不整地突破能力も防御力は見劣りする、しかし要求仕様の難しさを考えるならば支援装甲車両としてはかなりよくできた車両ともおもう。指揮通信車に電子戦車両や重迫撃砲牽引車などなど。

 小松製作所の装甲車の話題ですが続いて小松の96式装輪装甲車が12.7mm機銃と40mm擲弾、そして84mm無反動砲の射撃が続く。車両ごとに装備が違うのですけれども、いつも撃てる位置に各種いるとは限らず隔靴掻痒とならないよう、例えば装輪装甲車に砲塔を。

 96式装輪装甲車にAAV-7と同じような12.7mmと40mmのUGWS砲塔を載せてもよいのではないか。UGWS砲塔ならばそうは重くありませんし、夜間射撃も可能です。まあ、即応機動連隊はこうした火力をもって敵の内陸部への侵略を阻止する防御戦闘を進めた。

 水陸機動団の上陸はライブ映像、前のようにボートを抱えて出てくるわけではないのか。空挺団などの事前展開部隊の戦闘加入とともに機動師団上陸にむけ即応機動連隊は陣地変換してゆく。そして畑岡地区、いや海岸へは重要正面へ空挺団と水陸機動団が展開する。

 護衛艦もライブ映像参加のみ、いっそのこと沼津沖に富士総合火力演習沼津会場を設置し、海上自衛隊にお願いして護衛艦3隻程度を遊弋させてもらうのは、とおもう。名前だけ護衛艦てるづき参加、127mm艦砲での支援を行う、交信を英語で行っているのですが。

 英語の交信、これ日本語の早口のほうが傍受された場合の秘匿性は高いとおもってしまった。続いてF-2もライブ映像で参加、2機編隊の映像でした、爆弾投下はなぜか飛行開発実験団の試験塗装の映像が。支援火力調整所誘導は成功、想定で敵指揮所を破壊したという。

 このころにF-2戦闘機の実際の音が聞こえてきました、実際に展開して上空でホールドしていたのですね。そしてOH-1観測ヘリコプターの援護とともにAH-64D戦闘ヘリコプターが展開、実際に展開していました、なぜか映像では対戦車ヘリコプターと字幕が、並ぶ。

 AH-64D戦闘ヘリコプターが戦闘ヘリコプターから区分変更されたのでしょうか30mm機関砲の射撃を実施し、続きAAV-7が展開しました、戦闘上陸大隊の装備ですね。広場を海岸と見立てて海岸を制圧、AAV-7の車体はやはり巨大です。AAV-7は複数が参加しました。

 AAV-7は複数が参加しましたが、車体が大きいだけに乗れる人員も多い、12.7mm機銃と40mm擲弾を砲塔から繰り返し射撃し下車を支援します。下車した水陸機動団要員は小銃を繰り返し射撃するとともに片手保持で60mm迫撃砲を射撃、MINIMIも射撃してゆく。

 機銃の曳光弾が標的へ集中してゆく。AAV-7は4両が並ぶ、AAV-7の4両による12.7mm機銃の集中射撃はなかなかものになっていますね。射撃が続く車内へ下車要員がそのまま戻って行くのも、新しい試みか。89式装甲戦闘車ですと展示の射撃中は下車はしなかった。

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