物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

再度Kさんのこと

2007-05-27 15:14:26 | 数学

少し前にKさんのことを書いたが、会ったときに円周率パイの数を1万桁計算してプリントした昔の計算紙をKさんからもらった。私にもこれについては思い出がある。

私がH大学理学研究科の大学院生だった頃、計算室で夜間に計算することが多かった。陽子-陽子散乱の計算をいまならパソコンよりも性能のはるかに劣る電子計算機(この用語がぴったりだった)HIPAC103でさせていた。コンピュータという語はもちろんあったが、それほどまだ一般的ではなかった。

計算機室のオペレーターの女性が夕方に退庁した後を借りて計算をしていた。そのときに大部分はコンピュータを停止させないでその運転を引き継ぐことが多かったが、たまに停止したコンピュータを再スタートさせることもあった。このときコンピュータがいつも正常に作動していることをチェックするためにこのパイの数を1万桁計算して打ち出すのである。その後で自分の計算をさせるのである。

E大学に赴任してきた頃には同じコンピュータがE大学では動いていた。Kさんはそれを使ったことがあったのであろう。またそのころ電子計算室の室長をされていたT先生の名も出てきて懐かしかった。このT先生は流体力学の専門家で私の亡くなった兄の先生の一人であったが、Navir-Stokesの方程式を数値的に解いて学位を今井功先生のところでもらった人であった。初期値を少しづつ変えて計算をしてそれが論文になるという時代だった。もちろんその当時でもそんなに話は簡単ではなかったろう。

このときになぜ Kさんはこのパイの数値を私にくれたのだろう。ある種の親しみをこの数値のプリントされた紙片に込めていたのではなかろうか。いつかKさんや数学者のN先生を仕事場に招待して数学の話その他をゆっくりとしたいと考えている。

(2024.2.28付記)このブログに書いた数学者のNさんがだれか、はたまたKさんがどなたであったかを自分でも思い出せなくなっている。T先生はたぶん物故された高石先生であろう。私の兄ももう何十年も前に他界している。私の兄は60歳前後であったと思う。