熱力学の第1法則で不思議なことの一つは内部エネルギーの微分は状態量で完全微分であるが,仕事と熱の微少量は状態量ではなく道筋に依存しているということで、これらは不完全微分と言われる。
しかし、その二つの不完全微分の和d'W+d'Qが完全微分dUに等しいというのは不思議の一つであろう。ここで、d'Wとd'Qのdの上にプライムがついているのは不完全微分であることを表している。
この不思議を理解するには このごろ有名になっている、田崎晴明さんの「熱力学」(培風館)を読めばいいのだろう。私もこの本を数ヶ月前に読んでいたが、熱がちょっと冷めて4章か5章で今読むのを止めてしまっている。
しかし、この不思議の説明はムーアの「物理化学」の訳本の上巻に熱の力学的定義というところに書いてあり,それを読めば,たちどころにわかる。それによればちっとも不思議はない。田崎さんの本もそういう趣旨であるようだ。
大学で昔に熱力学をならったときにdU=d'W+d'Q の形で熱力学第一法則を教わった記憶がない。
同じ等式ではあるが,熱力学第一法則はd'Q=dU-d'Wとして習って,dUが完全微分だという認識はなかった。そういうことを知ったのは大学に勤めるようになって、M先生という物理の先生に入試の出題委員でご一緒したときにそれとなく教わったことであった。
レオントビッチの『熱力学』(みすず書房)がテクストだったのだが、そのことをきちんと書いてあったのかどうか確かめたことがない。