物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

熱力学の第1法則

2007-05-02 13:49:26 | 物理学

熱力学の第1法則で不思議なことの一つは内部エネルギーの微分は状態量で完全微分であるが,仕事と熱の微少量は状態量ではなく道筋に依存しているということで、これらは不完全微分と言われる。

しかし、その二つの不完全微分の和d'W+d'Qが完全微分dUに等しいというのは不思議の一つであろう。ここで、d'Wとd'Qのdの上にプライムがついているのは不完全微分であることを表している。

この不思議を理解するには このごろ有名になっている、田崎晴明さんの「熱力学」(培風館)を読めばいいのだろう。私もこの本を数ヶ月前に読んでいたが、熱がちょっと冷めて4章か5章で今読むのを止めてしまっている。

しかし、この不思議の説明はムーアの「物理化学」の訳本の上巻に熱の力学的定義というところに書いてあり,それを読めば,たちどころにわかる。それによればちっとも不思議はない。田崎さんの本もそういう趣旨であるようだ。

大学で昔に熱力学をならったときにdU=d'W+d'Q  の形で熱力学第一法則を教わった記憶がない。

同じ等式ではあるが,熱力学第一法則はd'Q=dU-d'Wとして習って,dUが完全微分だという認識はなかった。そういうことを知ったのは大学に勤めるようになって、M先生という物理の先生に入試の出題委員でご一緒したときにそれとなく教わったことであった。

レオントビッチの『熱力学』(みすず書房)がテクストだったのだが、そのことをきちんと書いてあったのかどうか確かめたことがない。


理解のヒントはどこにあるか

2007-05-02 13:46:49 | 科学・技術

「数理科学」の最新の5月号に薩摩順吉さんが偏微分方程式の理解にはその離散モデルが役立つと書いている。

これは「パリティ」に「数学と物理のはざま(?)」というシリーズのエッセイを彼が連載しているときにそういう趣旨のことを書いていたが,再度そういうことが大切だと再確認した。

ソリトンの独特の解法で有名な、広田良吾先生もそういう趣旨のことを持論にされていて、ベクトル解析のrotの演算を差分法で考えるとよくわかるというご意見であった。

確かに、このごろではrotの物理的意味を説明した本もいくつかあるのでそう新しいことでもないかもしれないが、そういった理解のヒントは注意して集めておかねばならない。

そういえば、ベクトル代数の式もいくつかの基本の式を押さえておけば,複雑になった式はこれらの2,3の式からベクトル積等を別の文字でいったん置き換え、それらの基本式を使えば,大抵は導けるのである。

それで、テンソル解析のLevi-Civitaの記号を使う必要が必ずしもないことをマージナウとマーフィの物理数学の本から知ったのは、Levi-Civitaの記号の有用性についてのいくつかのエッセイをすでに書いた後であった(注)。

そういうknow-howはやはりテキストに書いてあるべきだと思う。何が基本であるか。後はそれらの適用で導けることを示すことが大事であろう。

(注) もっともいくつかの方法を知っておくことはいつでも重要である。だから、Levi-Civitaの記号の有用性を学んでおくことは望ましいと思っている。