このブログ上において私は「学校を語らない、語るべきでない」という姿勢を通してきたつもりです。
それは学校現場をリタイアした者が、したり顔で教育論を展開したり、「自分はこうした」的な経験論をぶつことは、現場で苦闘している現役の人たちにとって害悪になることこそあれ、益になることなどまったくないと考えるからです。
しかし、今回だけはその禁を破って、フォーラムを拝聴させていただいたことを基に少しだけ感想を述べさせてもらおうと考えました。お許し下さい。
表記フォーラムの開催が新聞に掲載され、前杉並区立和田中学校校長の藤原和博氏が講演、そしてパネルディスカッションに参加すると知り、殺到が予想されたのでその日のうちに整理券を求めに北海道新聞社まで走りました。
当日(11月10日)退勤後、職場の中からも一緒に受講する方がいて、その方々と一緒に会場の道新ホール(地図)に向かいました。
「恐らく満席では」と予想していたのですが、会場は1/3程度しか埋まっていなく、ちょっと意外な感じがしました・・・。
前置きが長くなってしまいました。肝心の私の感想がなかなかまとまらなく本日を迎えたところ、とうとう北海道新聞の本日の朝刊にその時の概要が掲載されました。
さすがにプロの記者は上手くまとめています。そこで、概要はそちらをご覧いただくことにして、ここでは独断と偏見に満ちた私なりの感想を述べてみたいと想います。
藤原氏はリクルートから転進して和田中学校の校長を5年間務め、今春その職を辞された方です。藤原氏の明快な論旨と語りは聴いていてとても心地良く、納得できる内容でした。
それはやはり彼が5年間の中で次々と取り組んだ和田中改革が注目を浴び、そして実を結んだという自信の表れであり、実践という裏付けを持ったものの強みを感じさせてくれるものだからでしょう。
藤原氏の語録の一部を紹介します。
「学力」とは、「情報処理力」と「情報編集力」を合わせたものである、と彼は明快に定義づけます。
「情報処理力」とは、正解を求める従来の狭義の学力。
「情報編集力」とは、生起した課題に対してインプットされた情報を駆使して納得解を求めようとする力。
これまでも「学力」については、さまざまな論者がいろいろと表現していますが、藤原氏は藤原氏流の表現で定義づけしたようです。
そして「情報処理力」を高めるために取り組んだのが、「よのなか」科という和田中独特の教科(?)の誕生です。
「よのなか」科とは、地域の大人と生徒が同じテーブルで、例えば「世の中に『赤ちゃんポスト』は必要か」というような問題について一緒に話し合うような授業です。つまりは一つの正解などない課題を話し合うことによって「情報編集力」を養うというのです。
この「よのなか」科の授業には三つの意義があると藤原氏は説きます。
1) 大人と生徒が一緒に学ぶことによる授業の活性化
2) 身近な話題をテーマにすることによって学習の動機付けを高める。
3) クリティカルシンキングを促す。(本質を見抜く、洞察力を磨く)
そして藤原氏は、「よのなか」科の学習は子どもに「斜めの関係」を築かせることにもなると強調します。子どもたちは従来の縦と横の関係の中で閉塞感を感じていると・・・。彼は縦の関係(先生と生徒)と、横の関係(生徒同士、友だち関係)にプラスして利害関係のない斜めの関係を築くことによって子どもたちは生き生きしてくると主張します。
藤原氏は、知られているだけでも「よのなか」科の他に、「土曜寺子屋」(土曜補習塾)、「夜スペ」(夜間スペシャル塾?)といった取り組みを展開します。
藤原氏の実践のベースとなっているのは、「今や子どもの教育を学校だけで、教師だけで行う時代ではない。地域を巻き込んで、地域の力を活用して、子どもを育てていくべきだ」
という確固たる信念の元に数々の取り組みを実践してきたということです。
私は彼の語ることのほとんどを共感をもちながら拝聴しました。
藤原氏の素晴らしさは、まず時代認識の鋭さです。さすがに情報発信を生業とするリクルートに籍を置いた方です。学校現場に入りすぐさまその課題を見出したということでしょう。
そして課題を分析する力、課題解決のための方策(アイデア)の構築力、それを周りに納得させる説得力といったようなマネジメント力の素晴らしさでしょう。まさに彼自身が情報編集力に優れていたのです。
そのほとんどを、と先に書きました。それは彼の考え、彼の実践には注文の付けようがないのですが、彼の考えや実践を全国の学校現場に普及させるには、彼並みの情報編集力が求められるのかな、と思ってしまいます。
彼ほどの情報編集力がなくとも(私も含めて全国の学校現場の人間はまだまだ情報編集力に欠けているようです)、和田中のような取り組みが可能となるにはどうすれば良いのか。それには、全国の学校現場の情報編集力の足りない部分を補うようなシステムが求められるように思います。
事実、藤原氏は今春和田中学校校長の職を辞し、そうした立場での活動を始めたとのことです。とりあえずは、大阪府を足がかりにその取り組みを進めていくようです。
「改革とはいつも名ばかりで、いっこうに改革の進まない学校現場」とも揶揄されますが、藤原氏がこれまでとは比べものにならない大きなグランドで、そのマネジメント力が大いに発揮され、教育界に新風を吹き込んでくれることを期待したいと思います。
(ふう~っ、けっこう力の入ったレポートになっちゃいました)
フォーラムは、藤原氏の講演の他に、パネルディスカッションもありました。そちらでもいろいろと傾聴に値する提言がありましたが、今回はパスすることにします。
それは学校現場をリタイアした者が、したり顔で教育論を展開したり、「自分はこうした」的な経験論をぶつことは、現場で苦闘している現役の人たちにとって害悪になることこそあれ、益になることなどまったくないと考えるからです。
しかし、今回だけはその禁を破って、フォーラムを拝聴させていただいたことを基に少しだけ感想を述べさせてもらおうと考えました。お許し下さい。
表記フォーラムの開催が新聞に掲載され、前杉並区立和田中学校校長の藤原和博氏が講演、そしてパネルディスカッションに参加すると知り、殺到が予想されたのでその日のうちに整理券を求めに北海道新聞社まで走りました。
当日(11月10日)退勤後、職場の中からも一緒に受講する方がいて、その方々と一緒に会場の道新ホール(地図)に向かいました。
「恐らく満席では」と予想していたのですが、会場は1/3程度しか埋まっていなく、ちょっと意外な感じがしました・・・。
前置きが長くなってしまいました。肝心の私の感想がなかなかまとまらなく本日を迎えたところ、とうとう北海道新聞の本日の朝刊にその時の概要が掲載されました。
さすがにプロの記者は上手くまとめています。そこで、概要はそちらをご覧いただくことにして、ここでは独断と偏見に満ちた私なりの感想を述べてみたいと想います。
藤原氏はリクルートから転進して和田中学校の校長を5年間務め、今春その職を辞された方です。藤原氏の明快な論旨と語りは聴いていてとても心地良く、納得できる内容でした。
それはやはり彼が5年間の中で次々と取り組んだ和田中改革が注目を浴び、そして実を結んだという自信の表れであり、実践という裏付けを持ったものの強みを感じさせてくれるものだからでしょう。
藤原氏の語録の一部を紹介します。
「学力」とは、「情報処理力」と「情報編集力」を合わせたものである、と彼は明快に定義づけます。
「情報処理力」とは、正解を求める従来の狭義の学力。
「情報編集力」とは、生起した課題に対してインプットされた情報を駆使して納得解を求めようとする力。
これまでも「学力」については、さまざまな論者がいろいろと表現していますが、藤原氏は藤原氏流の表現で定義づけしたようです。
そして「情報処理力」を高めるために取り組んだのが、「よのなか」科という和田中独特の教科(?)の誕生です。
「よのなか」科とは、地域の大人と生徒が同じテーブルで、例えば「世の中に『赤ちゃんポスト』は必要か」というような問題について一緒に話し合うような授業です。つまりは一つの正解などない課題を話し合うことによって「情報編集力」を養うというのです。
この「よのなか」科の授業には三つの意義があると藤原氏は説きます。
1) 大人と生徒が一緒に学ぶことによる授業の活性化
2) 身近な話題をテーマにすることによって学習の動機付けを高める。
3) クリティカルシンキングを促す。(本質を見抜く、洞察力を磨く)
そして藤原氏は、「よのなか」科の学習は子どもに「斜めの関係」を築かせることにもなると強調します。子どもたちは従来の縦と横の関係の中で閉塞感を感じていると・・・。彼は縦の関係(先生と生徒)と、横の関係(生徒同士、友だち関係)にプラスして利害関係のない斜めの関係を築くことによって子どもたちは生き生きしてくると主張します。
藤原氏は、知られているだけでも「よのなか」科の他に、「土曜寺子屋」(土曜補習塾)、「夜スペ」(夜間スペシャル塾?)といった取り組みを展開します。
藤原氏の実践のベースとなっているのは、「今や子どもの教育を学校だけで、教師だけで行う時代ではない。地域を巻き込んで、地域の力を活用して、子どもを育てていくべきだ」
という確固たる信念の元に数々の取り組みを実践してきたということです。
私は彼の語ることのほとんどを共感をもちながら拝聴しました。
藤原氏の素晴らしさは、まず時代認識の鋭さです。さすがに情報発信を生業とするリクルートに籍を置いた方です。学校現場に入りすぐさまその課題を見出したということでしょう。
そして課題を分析する力、課題解決のための方策(アイデア)の構築力、それを周りに納得させる説得力といったようなマネジメント力の素晴らしさでしょう。まさに彼自身が情報編集力に優れていたのです。
そのほとんどを、と先に書きました。それは彼の考え、彼の実践には注文の付けようがないのですが、彼の考えや実践を全国の学校現場に普及させるには、彼並みの情報編集力が求められるのかな、と思ってしまいます。
彼ほどの情報編集力がなくとも(私も含めて全国の学校現場の人間はまだまだ情報編集力に欠けているようです)、和田中のような取り組みが可能となるにはどうすれば良いのか。それには、全国の学校現場の情報編集力の足りない部分を補うようなシステムが求められるように思います。
事実、藤原氏は今春和田中学校校長の職を辞し、そうした立場での活動を始めたとのことです。とりあえずは、大阪府を足がかりにその取り組みを進めていくようです。
「改革とはいつも名ばかりで、いっこうに改革の進まない学校現場」とも揶揄されますが、藤原氏がこれまでとは比べものにならない大きなグランドで、そのマネジメント力が大いに発揮され、教育界に新風を吹き込んでくれることを期待したいと思います。
(ふう~っ、けっこう力の入ったレポートになっちゃいました)
フォーラムは、藤原氏の講演の他に、パネルディスカッションもありました。そちらでもいろいろと傾聴に値する提言がありましたが、今回はパスすることにします。