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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

豊かさの陰で遺された課題

2015-07-17 23:34:11 | 大学公開講座
 原子力の恩恵を受ける中での「核のゴミ」…。石炭や金属の恵みを享受する中での「鉱山廃水」…。そのどちらもが、私たちの今の豊かな生活を支えてくれる(た)陰で半永久的に排出され続け、解決の目途の見えない課題である。そうした重い課題について考える講座だった。 

 北大公開講座「人と環境が抱える難問」の第4講が7月13日(月)開講された。(第3講は都合により欠席した)この日のテーマは「どうする?!核のごみと鉱山廃水」と題して、工学研究院(環境地質学)の佐藤努教授が講義を担当した。

              

 原子力発電によって発生する放射性廃棄物、特に使用済核燃料の再処理に使われた廃液および固化体は「高レベル放射性廃棄物」と言われているが、これは国で地下300mの深い地層に処分されることが決まっているそうだ。そのことの適否について、受講者に判断の材料を提供することが講義の一つのテーマだったが、私にとっては難解を極めた。
 地質学的な説明は専門的過ぎて、私の理解の及ばないところだった。したがって、以下の部分は私が恣意的に感じたことであることをお断りしておく。

 講師は日本の国土の地質学的特徴について多方面から言及した。そこで言わんとしていたことは、日本という国土が地質学的に見て、地震、火山、活断層が多数ある変動体にある非常に危うい、特異な存在であることを指摘したと私は受け止めた。
 そうした日本において地下深くの地層に処分することの安全性がはたして確保できるのかという難しい問題がある。
 さらに、高レベル放射性廃棄物は減衰するのに数十万年から100万年単位の時間を必要とすることは良く知られたところである。
 ということは、現代が抱えてしまった難しく、危険な課題を未来世代に先送りしてしまうことになる。
 
 専門家の間では、安全性が確保されていない地下処分により、事故等が発生して対処できないという事態を招くより地表近くに貯蔵して監視が可能な状態にする方が被害を最小限にすることができるのではないかとの指摘がなされているとのことだった。
 それにしても、その費用が多年にわたって莫大なことは言うまでもない。

 次に、「鉱山廃水」の問題であるが、こちらも深刻である。
 日本では過去、石炭をはじめ、金・銀・銅山、その他さまざまな鉱山が存在したが、採鉱が経済的に見合わないとの理由から次々と廃山となり、現在稼働している鉱山は国内で僅か二ヵ所だけだそうだ。
 廃山とはいっても、経済的に見合わないだけで、そこには有用な鉱物資源が残っているという。その鉱山跡のトンネルに雨水や地下水が浸透し、取り残された金属と反応し、有害重金属となり「鉱山廃水」として流れ出す問題が発生しているという。
 この処理もまた、鉱物資源が無くならないかぎり付いて回るという問題だということだ。

 こうして見ると、私たちは原子力からも、鉱山からも、多くの恵みを受けてきたが、その見返りというか、豊かさを享受した陰で大きな課題を背負ってしまったことをもう少し自覚しなければならないのかもしれない…。